2020年からの中学入試(28)ドルトン・プランと水都国際
★遅ればせながら、マリヤン B プレキシコ氏の著書「ドルトンスクール方式」 (祥伝社 2018/10/17)を読みました。1920年代にアメリカのマサチューセッツ州のドルトンの小学校において試みられたヘレン・パーカーストの教育の理念と方法論が、ドルトン東京学園に息づくのかと思うと、胸が熱くなりました。
★ヘレン・パーカースト自身、モンテッソーリやJ.デューイに学んでいて、そこから着想を得て実践を積み上げていったのでしょう。
★そういう意味では、国際バカロレアやHTH、日本の21世紀型教育など、根っこはいっしょです。子どもを子ども扱いせず、1人の人間としてその才能を1人ひとり開花するサポートをする学びの環境を創っていくという点では同様です。
★1920年代に子どもを子ども扱いしないというのは、今とはちょっと感覚がちがうかもしれません。甘やかすなとか子供中心主義とか、まあそういう考えもありですが、ヘレン・パーカストの時代は、「子供」の権利など認識されていませんでした。考えてみれば女性でさえ、権利の闘争をしていた時代です。
★ですから「子供」をどのようにとらえるかは、時代によって違うでしょう。そこに注目すると、本書を読んで結びついたのは、水都国際の今の教育実践でした。ここはIBのディプロマの候補校ですが、そのコースを受けるのは、30人弱でしょう。大人気の学校で、それ以外の生徒はどうするのか?とお思いでしょうが、21世紀型教育の粋を極めた教育を実施しています。
★そして、その姿は、本書が述べているドルトンスクールの理念そのものが行われていると言っても過言ではありません。IBとか21世紀型教育のようにMITメディアラボやスタンフォードやハーバードの流れを汲む教育は、J.デューイやピアジェ、レヴィ・ストロースなどの考え方の系譜にあるから当然なのかもしれません。
★もちろん、水都国際は、本書に書かれている以上にSTEAM教育の側面も色濃いですが、生徒は、1人1台パソコンをもって、英語も話し、PBLを授業で行っていくだけではなく、自分たち自身が水都国際の教育をデザインするプロジェクトを立てています。
★何より、教師一人一人も生徒と同様ICTを駆使し、全員が英語を学んでいます。<新しい学びの経験>を教師も生徒も一丸となってっ創っています。思考コードという表現を使っているかどうかはわかりませんが、太田教頭は「思考コード」を生み出してきたプロフィールもあり、そのコーディングのメガネを持っています。
★IBの構造の話を聞いても、実によく理解していて、それ以上の教育を水都国際のメンバーといっしょに考えています。
★私は、ドルトンであれ、IBであれ、MITやスタンフォード、ハーバードの系譜であれ、根っこはデューイ、ピアジェ、レヴィ・ストロースにあると思っています。つまりDPLの系譜。
★もっと言えばJ.J.ルソーです。
★ですから、PBLという授業には、この系譜がコアの部分で反映し、現代化されているかという2つの側面で見ています。その現代化の方法は、多元論です。いろいろあってよいのです。
★そして、何より重要なのは、これらの<新しい学びの経験>を創出する教師自身が、DPLの系譜でありイノベーターであるということです。水都国際は、すべての教師がそうなのです。これは生徒にとって最高の環境です。
★たいていの学校は、進歩派と守旧派は必ず存在し、革新的に進んだり、揺り戻したり、なかなか大変です。
★ドルトン東京学園の教師がすべて、DPLの系譜でイノベーターであることを期待しています。
★そうそう、<「高校教育は学問ではない」上野千鶴子が17歳の時に訴えたこと 寄稿文を発見>(週刊朝日:10/13(日) 7:00配信)で、教育ジャーナリストの小林哲夫氏が発見した53年前の上野さんの貴重な文章が掲載されています。<新しい学びの経験>とは、言うまでもなく、上野さんの描く自らを見失った高校教育ではなく、上野さんが現状から脱して欲しいと考える教育と同期しています。それにしても、上野さんの訴えから、53年経ってようやく時代は動き出したとは、社会変容の難しさとそれがゆえにイノベーター教師の価値に改めて感じいりました。
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