PBLの世界(36)世界の変化は迅速に拡散してウネッている 聖学院で感じたこと ①
★前回紹介した聖学院で開催された「未来の教師セミナー」を世界の変化と関係づけるとどう考えることができるのか想いを馳せてみました。レゴを使ったり、U理論やEQ、システム思考が背景に在ったり、生徒が参加者といっしょにワークショップを協働していくだけではなく、自らの考えを述べてみたり、ハーバードのアクティビティを活用したり、very50もつながったり、カンザキメソッドと結びついたり・・・。参加者も多様で、教師だけではなかったり。
★この「~たり」の多様性が、21世紀型教育研究センターというこれまたいろいろな学校の先生がい「たり」する多様性のチームと「1つ」になっています。
★この状況は世界が変わってきた証ではないでしょうか。もちろん、当事者はその変化を感じています。しかし、その変化をどうとらえるかはまだ感覚的でしょう。また、その感覚も多様で、参加しつつ解放されたりしている場合もあるし、戸惑ったりしている場合もあります。感覚でさえも「~たり」なのです。
★このことは、実は哲学自身が水面下で大きく変わってきていることの予兆です。哲学そのものは、今もありますが、現代思想として大学入試問題まで巻き込んで、一大ムーブメントを生みだしていた時代は、1989年ベルリンの壁崩壊後、消滅したかのようでした。現代思想はポストモダニズムをどうとらえるかの足がかり手がかりだったのですが、対象を見失い、古くから存在する哲学という専門領域を細々と残しているかのようでした。
★現代思想は、「主観と客観」という二元論的な認識フィルターを壊し、新しいフィルターに交換しようとしたのですが、結局はできずに、姿を消しました。しかし、ちゃーんとサバイブしています。それはビジネスの世界です。「モノからコトへ」とか「コモディティ化」とか「ティール組織」とかビジネス書の世界でしっかり生きています。
★マーケティングや組織開発論、人材開発論などは、現代思想で彩られています。心理学の世界にも生きているし、実はPBLという学びの理論にも生きています。井庭先生が「パターンランゲージ」でシステム論という現代思想を広めているのもそうですね。デザイン思考やMITメディアラボもそうです。
★EQとかU理論などは、まさに理性中心主義から感性の復権という現代思想の一つのテーマを具現化している理論でしょう。
★ハワード・ガードナーが、MI理論にピアジェとレヴィ・ストロースという心理学と文化人類の複眼視点を用いているのもそうでしょう。
★もちろん、そんなことを意識してビジネス書が書かれているわけではないし、教育学の書籍が書かれているわけでもありません。それがゆえに、問題もあります。現代思想が乗り越えようとした「主観―客観」図式ですが、発展途上だったために、それを継承しようという流れと、わかりやすさという観点から、継承しないで「主観―客観」図式をそのまま使ってしまっている場合があり、一般に、モダニズムのままの思想が拡大してしまっています。
★だからビジネス界でも、変わりそうで変わらないという過渡期がずっと続いています。しかし、過渡期ですから、いずれ変わるのです。そのウネリはゆったりと蛇行していますから、遅々として進まないように見えますが、迅速に拡散しています。でなければ、このようなセミナーは実現しなかったでしょう。
★上記写真には、カンボジアでチェンジメーカーのきっかけを仕掛けたvery50の谷弘氏も写っていますが、東南アジアを拠点に行っているということは、意識しているかどうかはわかりませんが、体験者に文化人類学の視点が自然とはいりこむわけです。これが「~たり」という多様性の発想を体験者にもたらします。
★この発想を一身に引き受けているのが、児浦先生ですね。つねに多様なネットワークで充満している稀有な教師です。このネットワークは多様な視点を児浦先生にもたらしています。おそらく児浦先生が見ているものは、「主観―客観」図式のフィルターでみているまだまだ変わらない人とは全く違うでしょう。
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