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2019年10月

2019年10月31日 (木)

工学院のPBL授業の深い学び(03)2人の数学教師に学ぶ③

★放課後は、チーム田中(TGプロジェクト)で、2人の数学教師のPBL授業のスクライビングと気づきのシェア。この一連の記事の冒頭部で、チーム田中が佳境に入ったと述べたのは、スクライビングのあとに思考コード分析をショートカットして、数学的思考とは何かという哲学的な対話にすぐに進んだことを示唆しています。

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★最初、新海先生の授業のスクライビングでは、アナログとデジタルの両方を活用することの意味は何かという問いをみつけ、対話しました。多角的な視点を生徒が自ら見出し、適用できるということではないかという考え方に収束していきました。

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★堀口先生の授業のスクライビングでは、論証過程の中にやはり数学的思考の特徴があるのではないかという問いを見出し、対話しました。よく論理的思考と言われますが、各教科ごとに、その論理の仕掛けが随分違うことにメンバー全員が改めて気づき、ただ論理的思考が大切だと言っていても生徒にとっては空虚な言葉ではないかという気づきが生まれてきました。

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★田中歩先生は、2人の数学の教師のアプローチの違いに気づき、工学院の数学教師全員の特徴もその場で思い巡らしました。そして、教員免許をもつことでは数学教師としては同じでも、実は教育学部で学んだのか、理学部で学んだのか、情報系で学んだのか、工学部で学んだのかなどによって特徴があるのではないかという仮説をたてていました。

★もしそうだとすると、工学院の数学科として統一した何かをというより、違うんだということを生徒と共有することの方が大事だという話になっていました。PBLという授業を共有していくと、統合されたものというより、それぞれの教科の特徴のみならず、教師の背景にある学問の違いまで見えてくるわけです。

★キャリアデザインとか探究というのは、実は教科の授業を運営する教師の学びの背景にこそ大切なものがあったということでしょう。

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★メンバーが堀口先生と新海先生の授業分析をしている一方で、2人は、互いの数学的思考の特徴の違いを確認し合っていました。もしその違いを共有していなければ、自分の世界が数学的思考の世界であると無自覚になっていたかもしれない。同僚の学び合いも必要なのかもしれない。

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★もちろん、正解はありません。これから深めていけばよいことですが、教科を超えて哲学対話ができるチームにアップデートしていたことに参与的観察者のつもりが、感動してしまったのです。

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工学院のPBL授業の深い学び(02)2人の数学教師に学ぶ②

★2人目は、新海先生の中3の数学授業を見学リサーとしました。そここでも感動しました。二次関数の式で、一つの定数が決まっていないので、無限に関数グラフが書けるわけですが、その頂点を求める問題に取り組んでいました。どうやら、前回の授業で式から、つまり判別式を活用して求めていたようですが、今回は、その同じ問題をグラフを描くアプリを活用して、そこからアプローチして考えようということのようでした。

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★生徒は、1人1台タブレットをもっているので、自分でアプリを操作し、グラフを描き、移動させながら、イメージを描いていくわけです。新海先生は、分析的な数学の論理は基本ですが、最終的には数学的直観による数式と世界の一致する見通しを立てるところがおもしろいので、このようなソフトを活用するわけですと。

★おそらく、1人1台ないと、説明するための道具として教師がアプリを活用するのでしょうが、1人1台の環境なので、生徒が自分で描きながら。動かしながら、操作しながらという中で、気づいたり、直感的なイメージを結んだりしているのでしょう。

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★生徒によるプレゼンも、アプリを操作しながら解説していきます。

★紙と鉛筆というアナログとパソコンというデジタルの両方を往復しながら数学的な思考の特徴である、多角的なアプローチを生徒自身がイメージしていく新海先生の授業に感動というより驚愕という言葉の方が適切かもしれませんが、本当に世界が広がるとはこういうことなのだと納得したのです。

★堀口先生と新海先生の共通点は、すぐに解答をいわずに、生徒が考える時間を大切にしながら、授業を展開していくことです。数学は楽しくそして深いということに魅力を感じている生徒が多いのは、彼らの眼がそれを物語っていました。

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工学院のPBL授業の深い学び(01)2人の数学教師に学ぶ①

★工学院のチーム田中(TGプロジェクト)のPBL授業研究も佳境にはいってきました。授業を見学(リサーチ)後、その先生と田中歩教務主任や私と一緒に対話しながら、リフレクションを簡単に行います。そこで、気づきが相互に起こります。放課後、チームメンバーが集い、その授業をスクライビングしながらさらに多くの気づきを共有していきます。メンバーの教科が違うので、発想もまた違いたいへん興味深いのです。

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★今回も多くの気づきを私は得ました。2人の数学の先生の授業を見学して、チームでシェアをしました。まずは、堀口先生の高1の数学授業。素因数の<世界>がそこには広がっていました。数の分野は、数学の得意な生徒にとっては非常におもしろいといいますが、私の中高時代は、さっぱりでした。

★しかし、工学院の生徒は、その世界を楽しいでいるではありませんか。いったい何が起きているのか?私自身は最初すごいアウェイを強烈に感じました。しかし、だんだんその理由が了解できるようになってきました。

★たんたんと問題の解法を説明して、板書し、生徒はそれを写すということをやっているわけではないのです。机こそ島をつくってやっていませんが、生徒は自由に話しながら、堀口先生の話に耳を傾けつつ、質問したり自分の考えを伝えているのです。

★クラス全体がPI(peer instruction)の生態系になっているのです。

★それもそのはずです。数学の解法以前の基礎的な話をしているのです。つまり数学的な哲学対話ですね。論証を書いていきながら、先生が生徒に、ところで、どこか論理的に抜け落ちているところはないかなあと問うわけです。生徒が堀口先生の論証に突っ込みをいれていきますから、教師と生徒がいっしょに論理を組みたてていきます。しかも、堀口先生がわざと抜けをつくっているわけではなく、たぶんそれでもいいじゃないかと思えるレベルのモノをさらにクリティカルシンキングで洗練させていくというのが本意のようです。

★しかも、その論理の組み立ては、他の教科とちょっと違っていました。それは分解と合成を繰り返す仕掛けでした。これって数学的思考の一つの大きな特徴ではないかと気づきました。分割と合成の数式がどんどん置きかけられてシンプルな関数式に結実する美しさに生徒は魅了されているのでしょう。もちろん、無意識でしょうが。

★そうかと思えば、ビッグ・クエスチョンが飛び出します。素因数の中で一番大きい数字は何だろうね。これって、発見すればすごい賞金がもらえるほど大事な話なんだけれどというや、素因数の世界がそこには一気に開けます。もちろん、そう簡単にはわからないわけです。その意味を語っていくと、AI社会の話に直結していく数学のロマンがそこには広がるわけです。

★数学の授業は、感動するものだということに気づいたのです。

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2019年10月30日 (水)

内田先生ありがとうございます!日本の教育の足りない点が明らかになりました。

★聖学院の学びの実践家であり理論家であり研究家である内田先生が、前回の私の記事をシェアしてくれました。すると、内田先生の友達が「おもしろうそうだけど、新コードって欧米にすでにあるのではないか」という趣旨のコメントを書き込まれていました。内田先生は丁寧に返答するすてきなコミュニケーションを行っていましたが、この友達のコメントに別の機会でも私も同様の事を述べましたが、日本の教育の足りない点が指摘されているのです。そこに光をあてるなんてすてきすぎますね。

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(今月、聖学院で行われた「未来を創る教師セミナー」で行われた内田先生のワークショップのシーン。同セミナーのサポートを私もさせていただきました)

★どういうことかというと、欧米にはあるけれど日本にはないということなのです。それは文化的な差異で、なくてもそれはそれでいいのではないかと思われる方もいるでしょうが、ないことによって、どんなに英語が堪能な生徒が欧米に行って議論しても、なかなか思考を交換することができないというケースが多々あるのです。サポートという役割やものづくりの作業という役割をチームワークの中で果たすので、それなりに活動価値を感じて帰国するのですが、多くの生徒が、やはり議論をもっとしたかったし、考えを交わしたかったと振り返るのです。

★それが、その生徒の能力というよりも、教育の差という構造的なものだとしたらどうでしょう。そんなこと気にしなくていいじゃないかと国内にいると思われるかもしれませんが、世界のコミュニケーションはデストピア的関係が多いですから、そこをのり超えたり解決したりすることができないのはやはり問題でしょう。欧米の生徒の教育を知っておくことは必要なのです。

★日本でも国際バカロレアのDPにあるTOKを学んでいる一握りの生徒はそれを知っていますね。しかし、一般の生徒はなかなかその機会はありません。

★そんなわけで、そこを補充する教育も必要です。欧米に既にあっても、やはり一握りの生徒が体得してている学びなので、教育格差はなくなりません。そこを開いてしまおうというのが今回のプロジェクトです。どうせやるならTOK以上のパワフルさでと。

★それに欧米にそのままあるわけでもないので、アレンジしたりバージョンアップしたり編集したりする作業は必要です。内田先生と学びの情報交換をしていて楽しいのは、私が不得意な学びの理論を持っているし、実践しているので、刺激的です。

★内田先生の得意としている理論と私の得意としている理論が相乗効果を生みだして、あらたな学びの経験が生まれるときはなかなスリリングで楽しいです。私の得意としている理論は欧米ばかりでなく、十牛図の世界や岡倉天心、九鬼周三の世界も加わります。TOKは東洋思想は意識して排除していますから、そういう意味では欧米にもあるけれど、日本にもあった理論といえるかもしれません。

★重要なことは、理論を生徒の学びにあてがうのではなく、実はその理論は、すでに子供たちの内側にあります。それをまずはいっしょにカタチにする作業から始めるのです。

★思考コードも最初作ったときは、かかわったメンバーの内なる可能性をスキル化したわけです。まとめるときに、使いやすい理論をベースにしたということはあります。ところが、マーケットに広がった瞬間、そのことは忘却されて、つまり本質部分は捨てられてしまうものです。痛しかゆしですね。

★やはり、コードは、教育現場で教師と生徒とともにその都度つくりリファインしていく循環が肝ですね。いずれにしても、ここ数年、内田先生とワークショップのコラボをさせていただきながら、ヒントを頂きました。ありがとうございます!

 

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2019年10月29日 (火)

<新しい学びの経験>を共に創る(01)動態的「新コード」に基づいた今までにない学びを!

★本日2時間半のブレスト会議。「新コード」(内容は企業秘密です)によって、教師と生徒がいっしょに世界を創ってしまう超絶シンプルスキルを実装する今までにない<新しい学びの経験>を創ることにしました。

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★数学的哲学と芸術的哲学と言語的哲学を合成した「新コード」を実装できるようになると、ダンス、ショップ、芸術作品、小説、動画、心理などから始まって、政治や経済、国際社会、世界平和にまで、幅広い領域に対し、発案力と実現力の両方を発揮できます。

★もちろん、トレーニングが必要で、「新コード」をそれぞれの潜在的可能性から生まれ出ずるファシリテートのあとは、ピアコーチングが大切です。

★この学びの組織は、経験的な側面と理論的側面が合わせ鏡のようになっていて相乗効果が生まれます。しかも、その理論は社会構成主義とか構築主義ではありません。抽象的な関数生成主義です。19世紀末に発案された数学と世界の実在的関係を生み出すアイデアを現実化する試みです。

★何言っているかわからないということですよね、私たちが8年前に立ち上げたプロジェクトも当初はわからないと言われ、石が飛んできましたが、今回も同じです。次のステージにシフトする時、それをイメージしない人には見えません。それはいじわるではありません。もっとわかりやすくといわれても、進化の途中ですし、そもそもわかりやすくと他者依存の方には永遠にわからないでしょう。

★わかろうとする意志がお互いに必要です。そんなの互いにマナーですよね。わかりやすく表現しないやつが悪いとさんざんいわれてきましたが、それは違うでしょう。そういう人にかぎって、手法だけロハで手に入れて、なんでもかんでもTTPです。あなたの自己利益のためにアイデアを共有するのはもうウンザリです。

★今回共に創っていく先生方の学校は全面的に応援します。私自身が受験業界にかかわることはありませんが、そこを介さずダイレクトに受験生と保護者が応募するチャンスを応援したいと思います。正しいアドミッションポリシーのモデルにもなるでしょう。Z世代の生徒さんもいっしょになって、IBをはるかに超える未来からイメージする学びの経験を創り上げていきたいと思います。IWANABEさん、楽しみにしていてください。あっ、でもまだその学校の名前は内緒です。

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「思考コード」の中学受験市場での広がり加速する。これにて「思考コード」の伝達はお役目御免。来年度中学受験業界から引退します。

★「思考コード」の中学受験市場での浸透力が広まっています。石川一郎先生が「2020年3部作」で「思考コード」を論じていますし、神崎史彦先生も新著の中で論じています。そしていよいよ森上教育研究所がベネッセのサイトで「思考コード」のC軸を外した使い方で分析を掲載しはじめました。

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★いよいよ首都圏模試センターの「思考コード」は加速度的に中学受験市場に広まっていきます。これはまず喜ぶべきことです。使い方はどうあれ、市場で支持を得ることは大事です。

★まして、いろいろなところで、思考コードのレクチャーを聞くようになりました。そういう具合に説明するんだなあと妙に感動します。本質を伝えようとすると小難しくなるので、そこらへんはカットしています。私のワークショップでも、これは難しいからカットねと仲間に言われることもしばしばあります。

★本質は不要だと。

★そうですよね。ルーマンのシステム社会論だとそんなものは無用なんです。

★それにしても、ある学校の理事の方に、どうやら最高学府をご卒業された方のようですが、石川一郎先生の新著を読んだか?思考コードを知っているか?21世紀型教育機構の思考コードは違和感あるぞと講釈を垂れられました。石川一郎先生は21世紀型教育機構の理事長なんだろう?とか。

★念のため、その思考コードは首都圏模試センターが開発したものですというと、わかっているということでした。一応名刺を交換しているので、私の事を本間だと知った上でです。もう一つ余計にも、機構の思考コードは標準形で、各学校によってバリエーションがあります。ルーブリックってそういうものですよねまでは聞く耳をもたれなかったようです。授業用とテストやレポート用とか違うのですがとも付け加えようといたしましたが、そんな感じでもありませんでした。

★感動しました。こんなに思考コードについて研究している方がいるなんてと。批判的であれ何であれ、これはいよいよ広がるなあと実感した次第です。

★ここまできたら、ぐじゃぐじゃ本質を語っても時間の無駄です。自由に活用されていけばよいと思います。

★私のおせっかいの思考コード解説は、ホンマノオト21で書くことはもうないでしょう。これにて、今年度を持ちまして、中学受験業界から去ります。といっても何の影響力もなかったですが。

★首都圏模試センターの模擬試験での保護者会を今年からしていませんが、そのようになる道をつくっていただいた2人の学校の先生に心から感謝いたします。二足の草鞋をはくのではなく、自分の道を貫けと。これからは思考コードに変わるコードを作成します。それは、受験業界とはなんら関係ありません。未来をつくるコードです。そこに専念すようなきっかけを与えて頂けたのはその学校の先生のおかげです。

★やはり、ミネルバは、空が灰色になってから飛び立ちますが、思考コードもいよいよそのタイミングだと思います。市場ができたら、次の市場を創るのがセオリーです。来年度からはそちらの世界でがんばります。もっとも体調がもつかどうかは超不安ですが^^;)。

★中学受験業界の方々本当にありがとうございました。

★そうそう、そうはいいながらも盟友鈴木氏主宰のGLICCでは、新しい物語のカリキュラムや諸々を開発(企業秘密です)するために、その場にいます。もっともGLICCは、いわゆる受験業界をはみ出ていますから、そこにいるのはゆるされるでしょう。

★ホンマノオト21は続けます。来年度からは受験情報は流しませんが、本質的な教育情報は流します。すると、扱う学校が少なくてすみます。マーケティングがうまくいっている学校は本質は希薄ですから。

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2019年10月28日 (月)

今年度を持ちまして、21世紀型教育機構を引退いたします。今までお世話になりありがとうございました。

★今年設立した21世紀型教育研究センターと21世紀型教育機構サポート新メンバーによって、今年は新タイプのイベントを3月から5つ行ってきました。あと旧タイプのイベントを12月に残すばかりです。21世紀型教育センターの活動は小さく始まり、各加盟校がかなりの教育の質を磨き上げてきました。

★それに伴い、21世紀型教育のコーディネーターが学校側と機構側と合わせ鏡のように組織的に活動できるようになりました。私は、初期メンバーの事務局と理事を務めさせていただいてきました。たいへん大きな学びを得ました。同時に組織的に動けるようになったので、先導者(だったのかわかりませんが)の役割はこれにて終了となりました。

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★思い出せば、C1英語なんてできるわけがない!PBLをやって意味があるのか!PILだああ!ICT1人1台必要かあ!何がリベラルアーツの現代化=STEAM×哲学だあ!何が思考コードだ、思考力入試だ!海外大学進学なんて無理だあ!とさんざん石が飛んできました。外からはもっとすごかったですね!三田国際以外はだめなんじゃないかとか、機構を分断させるような受験業界の陰口。いつの世も汚いですが、その言葉をその時までは信頼していた人に言われたときには超驚きました。

★ホンマノオトは、加盟校の提灯記事で信用してはいけないとも外から言われましたが、実は中からも書きすぎじゃないと言われもしました。エンパワーメント評価しているだけなのですが。。。

★しかしながら、これらはすべてクリアしたのです。2021年に出るはずの大学合格実績も、すでに加盟校で出始めています。21年にはさく裂するでしょう。

★これも、そんな罵詈雑言に屈しない加盟校のジェダイである先生方及び21会のメンバーとタッグを組んで突き進んでくることができたからです。心から感謝しております。

★そして、その先生方や21会メンバーは、コラボレーションして進める土台が昨日ようやく完成したのです。それで、ちょうどよい潮時だなと感じ入った次第です。私は先生方やメンバーと比べればかなりの年長です。哲学もマニアックで、現代最先端の哲学を求めています。しかし、その目で機構のビジョンをみると、市場より先きに行って、市場での支持を得られないと直言され、それはそうだなと素直に感じました。思考コードも最初は反対されたし、思考力入試も今でもやらないところもあるぐらいです。

★市場はまだ見ぬ本質は追いません。あくまで空が灰色になってようやくミネルバは飛び立つのです。灰色になる前に飛び立つと失速します。マーケティング!ブランド!と古い強欲資本主義のアイデアは、残念ながら2040年から考えると偽善だと思ってしま自分がいます。

★私は、なんとか今の強欲資本主義からクリエイティブな資本主義に教育でシフトができないものかとマニアックにも考えてきました。到底それは受け入れられません。体調が思いのほか悪くなったので、忍耐よりも、こうしたいこうすべきだが勝るようになりました。そこで、自分の想いを貫くことにしました。

★そちらの新世界は、今までとはまた違う純粋な教育の世界ですから、そこからゆっくりでもダイナミックにやっていきたいと思います。21世紀型教育機構の皆さま方のご活躍を心から祈念して、感謝の心をお伝えさせていただきました。本当にありがとうございました。

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STEAM教育(06)Peer Instructionのアップデートが明日の世界を創る

★明日の世界を創る方法は、すでにあります。特にZ世代のinter脳身体循環系の中に暗黙知としてあります。世界の作り方スキルを引き出すワークショップは90分くらいあればできますが、それを実装して適用し、さらに新しいものを生むとなると、1人の力ではできません。

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★そして、時間もかかります。学習する組織をつくって、トレーニングをリアルにやると2040年には間に合いません。小学校高学年から高校3年生までのZ世代が大学卒業して40代後半になっている時期にまだ、今のままのくだらない哲学もどきや素朴自然科学論や感情的社会論やゆでガエル安心安全マインドフルネスでサバイブできるのでしょうか。

★できるわけないですね。そういうの全部、ゴミ箱に捨てましょう。そして、教育はICTと対話のダイアローグで、まっしぐらに化石燃料を使わなくても生きていけるエネルギーイノベーションをつくってしまいましょう。自然エネルギートは別物です。

★こういうのをユートピアだと言って、ダースベーダーがディストピアの正当性を誘うのを断固拒絶して、新しい学びの世界を創ってしまいましょう。いきなり学問の世界でいいんです。

★初等中等教育と大学の境目をつくるから、世の中おかしくなったわけです。階層構造で、進める人間と進めない人間を生み出す社会構造、経済構造。そんな構造自体不要でしょう。もはやZ世代には。

★現実主義者がニヤニヤし、ギラギラした目つきで、ユートピア発想にアイロニーをいい、クソ論理でどうやって証明するのだともっともらしいことをいいますが、まだないものは検証できないでしょう。確からしさしか言い得ないででしょう。

★教科も探究も捨てて、いっきに学問へ。ただし、この学問は象牙の塔の学問ではなく、好奇心、開放的精神、なぜだろうという問いの視点(COD)をフル活用する学びのことです。そこで気づいた問題を、ただひたすすら好奇心、開放的精神、なぜだろうという問いのループを続けていく、時には組み替えていくCODシステム思考あるのみです。

★教育の改革、それは幼稚園から学問を行う姿勢を養う環境を創るというコトですね。

★それには、エリック・マズールのPIという学びのイノベーションは実に奥行きが深い。このことに気づける人は、ほとんどいなかったのですが、今日ミーティングしてきたある私立小学校の先生方で構成しているプロジェクトメンバーは、ブレイクスルーしました。

★その学園は幼稚園・保育園がないので、小学校から学問としてのCODシステム思考を形成していきます。ICT1人1台の環境にありますから、それはできるのですが、手法を学ぶ姿勢では絶対にできません。CODシステム思考がZ世代にとって命をつなぐ武器だと思う直感があるからこそできるのです。

★その学校は21世紀型教育機構の学校ではありません。新しい学校に生まれ変わるでしょう。もはや今の学校という形はなさなくなると思います。次の学びは、構成主義とか構築主義(英語は同じです)とかを超えていきます。

★21世紀型教育機構もなんとかここに追いつきそうですが、学校組織が従来のままではブレイクスルーにはもう少し時間がかかります。2021年に目覚ましい結果を出しますが、それはブレイクスルーではありません。今までの教育とは違うけれど、土台は同じで、そこでシナリオが違うだけです。

★新しい学びは、土台そのものが違います。新しい地平から出発するということでしょうか。私は残念ながらそこの世界には行けません。ただ、見送るだけです。今の受験態勢の市場で生きているからです。ここを立ち位置にしている限り、次の世界を創ることはできません。悲しき世界で生を全うするしかないのです。

★でも、娘夫婦やその子供たちのために、そして、Z世代のためにバトンではなく、この世界をぶっ壊して新しい世界を創るイノベーションスキルを創れたら本望です。

★エッ!ウザイ?ですね!自分が受験態勢の市場の外に生きればいいじゃん。その通りですね!了解です。ワクワクしてきました。

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2020年からの中学入試(35)女子に人気の共学校

★男子にも女子にも人気のある学校、男子の人気はそれほどないが女子には人気があるという学校という2つのタイプの共学校がありますが、その区別はともかく、まずは前回までと同様、昨年の女子の志望者数よりも少しでも増えた共学校を地域別五十音順で並べます。データは、いつものように首都圏模試センター主催の「10月の統一合判」のデータに拠ります。

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郁文館
かえつ有明
啓明学園
国士館
駒込
桜丘
品川翔英
自由学園
修徳
淑徳巣鴨
城西大城西
聖徳学園
成城学園
成立学園
多摩大聖
多摩大目黒
帝京八王子
東海大高輪
東京立正
東洋大学京北
新渡戸文化
日本工業大学駒場
日本大学第一
八王子実践
文教大付属
武蔵野大学
明治学院
明星
目黒学院
目黒日大
目白研心
立正大学付属立正
早稲田実業
聖ヨゼフ学園
日本大学
横須賀学院
市川
渋谷教育学園幕張
昭和学院
東海大浦安
青山学院大学系属浦和ルーテル
浦和実業
狭山ヶ丘
西武学園文理
聖望学園
東京成徳大学深谷
東京農業大学第三
武南
本庄東高等学校附属

★啓明学園、駒込、桜丘、品川翔英、城西大城西、聖徳学園、成立学園、東京立正、日本工業大学駒場、武蔵野大学、目黒日大、目白研心、立正大学付属立正、聖ヨゼフ学園、昭和学院、青山学院大学系属浦和ルーテル、西武学園文理などは、それぞれ違いますが、何らかの大きな改革を進めている学校です。

★やはり、教育イノベーションは注目を浴びます。

★東洋大学京北は、改革が成功してしばらくたちますから、安定的に人気といったところでしょう。

★成城学園、市川、渋谷教育学園幕張は、隔年現象はあるでしょうが、不動の人気の共学校です。

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2019年10月26日 (土)

STEAM教育(05)ハーバード大学のエリック・マズール教授のPI(ピア・インストラクション)に大きなヒント

明日10月27日(日)、工学院で「第1回21世紀型STEAM教育フォーラム」を開催します。創作物を生み出すSTEAMワークショップとPILを挿入したSTEAMワークショップの2タイプを実施します。前者は外部のコンクールやイベントで活躍している工学院のZ世代生徒がファシリテートするワークショップです。デジタルネイティブには私たちがかなわないことがわかります。Z世代の才能が開花する<新しい学びの経験>とは何か体験します。

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★後者は、PBL授業の中にPILを挿入したワークショップを実施します。一見知識問題なのですが、ICTである仕掛けをすると、多角的なアプローチの問いがあふれ出ます。思考のトルネードが生まれフェルミ推理が触発されます。この触発体験を共にしましょう。

★PILは、Peer Instruction based Learningで、ハーバード大学の物理学のエリック・マズール教授のConcepTest(conceptとtestをマズール教授がつなげました)という、知識を問いながら概念を学ぶ多肢選択問題のシステムであるPI(Peer Instruction)にヒントを得て、理科だけではなく、社会や国語でも活用できるように発展させたものです。

★たとえば、中学受験でも出題されるような次のような問題を見てください。

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★上記のマズール教授の著書の中に出ている問題ですが、どうなりますか。何だと思いますか?この問題は、「電流」で捉えていくか「電子」で捉えていくかで、解答率がきれいに分かれる問題です。「電流」で考えても正解に到るのですが、「電流」を水の流れの譬えで置き換えると誤謬推理に陥ります。

★ハーバード大学の学生も「2」の解答率が高くなるのは、ちょっと驚きです。

★この問題はただ解くだけではないのです。まず個人で考えて解いたあとに何人かと話し合って考えていきます。そのbefore-afterの集計をとった結果をみて、マズール教授がようやく講義をするという、最近アクティブラーニングの1つの手法として活用されています。

★しかし、マズール教授にとっては、電流とは何かとか電子とは何かを考えるトリガーとして活用しているわけで、そこからクリエイティビティを生み出すことの方が重要なのです。

★というのも、「電子」を「量子」に置き換えることによって、この問題はスッキリ解けるのですが、このよく中学入試でも出そうな問題が、量子論にどう結びつくというのでしょう。いきなり解いて、正解を教師から聞く授業では、フェルミ推論が生まれないので、クリエイティビティも生まれないのです。

★ところが、この問題の使い方によっては、フェルミ推論が起こり、うまい具合に誤謬推理に傾けば、どうしてそういう論理が成り立つのか考えることになります。この一見易しい知識問題が、量子論という物質の在り方の概念を変える授業に変わります。この誤謬推理は、しかしながら、私たちは意外と身近なところで、行っています。電子は物として客観的にあると思っていますよね。しかし、それでは、この問題は解けないのです。

★物ではなくて関係としてとらえなおす必要があります。パラダイムチェンジが起こるわけですが、そんな大げさなと思うかもしれませんね。小さなシンプルな問題からパラダイムチェンジなんてバカバカしいと。

★しかしながら、科学の発見はたいていそんなところからというケースが多いですね。<新しい学びの経験>を創るということは、実はこんな小さなところから始めることも重要です。とにも、まずは体験してみましょう。明日お待ちしています。

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STEAM教育(04)ビル・ゲイツの創造力生成システム思考に注目

Forbes JAPAN2019/10/18 06:30に<ビル・ゲイツ成功の秘密 「必ず持ち運ぶ」トートバッグの中に>という興味深い記事が掲載されています。出だしはこうです。

<ビル・ゲイツは、基本ソフト(OS)とコンピューターの世界で財を成したが、その知識の源は“古臭い”システムにある。ゲイツは、本でいっぱいのトートバッグを「どこに行くときも必ず持ち運んでいる」という。>

★1995年デジタル世代が誕生する時代を切り開いたのは、紛れもなくビル・ゲイツです。そのゲイツが、Z世代の生みの親の1人アラン・ケイのようにノートパソコン1冊で世界を変えるというのとは対照的に、重量感ある本を持ち歩いて読書している姿は実に興味深いですね。

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★しかも「思考週間」というのをつくって、マーラーやコルビジェ、谷川俊太郎が湖畔に面していたり、海岸に面していたり、森の中に位置していたりと場所は様々ですが独り小さな創作スペースを大切にしていたのと同じような空間で読書するというのですからおもしろいですね。

★どの読書もジャンル横断的で、実に好奇心旺盛な読み方をしているということです。ビル・ゲイツはクリエイティブ資本主義という理想をなんとか社会の<真理>に近づけようとします。そのためにはどういう社会構築が必要なのか、膨大な読書体験で蓄積したデータで<推理>するわけです。

★しかし、現実はなかなかその<真理>には近づきません。そこでその<GAP>を埋めるにはどうしたらよいのか<創造力>を使い自分の<推理>を脱構築<refine>していきます。その連続がトルネードように現代のデジタル社会にインパクトを与えてきたわけです。それに、この脱構築の過程で<真理>だと思っていたものもパラダイムチェンジしてしまうんですね。

★とにも、当然その社会貢献はビジネスにもつながり大富豪になりましたということですが、このようなビル・ゲイツのシステム思考をPIL×PBLの中にICTを統合することによって、特にPILアプリによって、ビル・ゲイツのシステム思考をすべての子供たちにとってデフォルトモードに切り替えてしまえと言うのが、STEAM教育の1つの在り方です。

★このICTによって、多くの人々が生活を変えていくことがデフォルトモードになったのは、ビル・ゲイツのおかげですから、その叡智を初等中等教育の学びに埋め込もうというのが、21世紀型教育機構のねらいです。

★国際バカロレアのようなすてきなでも一握りの生徒のための学びだったものをデフォルトモードに転換して、すべての生徒にシェアしてしまおう。すべての生徒の才能をビル・ゲイツのように開花できる環境をつくってしまおう。そういう<新しい学びの経験>を創ってしまおうということです。

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10月27日は、工学院で、「STEAM教育のダイレクトなワークショップ」と「このデフォルトモードにするワークショップ」の2つを実施します。そして、来年に向けて、実はこのビル・ゲイツの読書をどのようにデフォルトモードに転換できるのか研究していくつもりです。それは実はデジタルネイティブであるZ世代の麻布中学受験生の学びのシステムにヒントがあります。

★ビル・ゲイツや麻布生のシステム思考や読書思考をデフォルトモードにしてしまうというプロジェクトが立ち上がります。

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2019年10月25日 (金)

STEAM教育(03)工学院の女子生徒 世界で活躍する。

★工学院大学附属中学校・高等学校の生徒10人は、Asian Student Leadership Conference2019に参加しました。シンガポールで開催される5日間のプログラム。ASEAN諸国の若者が集い、今年度の会議テーマ、Building a Sustainable Society に沿った5つのトピックについて議論し、最終日はアジア諸国の起業家を招き、生徒たちは自分たちの起業案を発表したということです。

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(写真は、同校facebookから)

★そして、中学の女子生徒チームが見事にゴールドメダルを受賞したのです。グローバルな視野、英語力、アプリを制作するテクノロジー、世界の問題を見通す思考力などトータルな力を発揮したのでしょう。

★今回のプログラムでは、アントレプレナーシップというものは、創造性とテクノロジーとビジネスの話だけではなかったようです。たとえば、シンガポール国立大学にてリーダーシップ・チャレンジ活動をするプログラムもあったようです。そこで、リーダーの5つの資質、手本を見せる、展望を共有する、創造性を発揮する、協力する、他者を巻き込むことを、ガンジーなど世界を代表するリーダーのエピソードと、プログラムの経験の両方から気づいていったようです。誰もがリーダーであり、世界を変える可能性を持っていることを共有したとはものすごい経験をしてきましたね。

★また、Givefunds創設者のエドワード氏と建築家のヤン氏のキーノートスピーチ、SIMのCEOであるチン氏からの激励も受けたそうです。『社会問題を見つけた時はいつでも、その問題を解決するのための仕事を作り出すチャンスがある』ことを学んだということです。ビジネスと社会貢献の統合という社会的インパクトの重要性について気づいたということです。

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★かくして、工学院の生徒は、STEAM的な技術力や創作力と世界のリーダーの語りを英語で聞き、東南アジアの国々から集まってきた同世代やシンガポール国立大学のメンター学生と対話できるグローバルな視野と英語力を総合した能力を開花しているのです。

★STEAM教育というのは、やはり世界貢献とビジネスを統合する創造力を生み出す教育が土台にあるわけです。ダイレクトにその創造力を使って、モノを作るSTEAM教育とインダイレクトですが、創造力を生み出す教育という2つの教育活動があるわけです。

★工学というと男子生徒の18番というイメージがあると思いますが、これからは、創造力を生み出す哲学的な学びと制作物を創造する科学技術的な学びの両方が必要になります。そうなったとき、もはや男子向きとか女子向きという古いイメージは払しょくされることでしょう。両者の協調こそが重要であり、そういう意味で、共学校の新しい教育システムをデザインしているのが工学院だといえます。

10月27日は、工学院で行われるSTEAM教育フォーラムには、新しい共学校、新しい女子校、新しい男子校を生み出そうとしている学校の先生、塾の先生方、教育関係企業の方々、ジャーナリストが参加します。そして、そのような学校を選択しようという保護者も参加します。スモールサイズのフォーラムですが、世界を変えるエネルギー量はかなり大きなものになるでしょう。

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2020年からの中学入試(34)人気女子校を追う

★首都圏模試センターが10月に実施した「統一合判」の志望者数登録のデータから、前回同様の方法で首都圏人気女子校を抽出しました。地域別五十音順で並べています。

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跡見学園
桜蔭
神田女学園
共立女子第二
国本女子
光塩女子
晃華学園
麹町学園女子
佼成学園女子
昭和女子大学附属昭和
女子美術大学付属
白梅学園清修
田園調布学園
東京家政大附属
東京女子学院
日本大学豊山女子
富士見丘
和洋九段女子
北鎌倉女子
相模女子
聖和学院
日本女子大附属
フェリス女学院
横浜雙葉
和洋国府台女子
札幌聖心女子

★跡見学園、桜蔭、光塩女子、晃華学園、田園調布学園、日本女子大附属、フェリス女学院、横浜雙葉はブランド女子校ということでしょう。

★神田女学園、国本女子は新たなダブルディプロマの導入という果敢な動きが評価されています。

★麹町学園女子と佼成学園女子は英語教育の凄まじさということでしょう。

★昭和女子大附属昭和、富士見丘、和洋九段女子は、新しい女子校の象徴として進取の気性に富んだ保護者が評価しています。

★女子美は、毎年人気ですが、やはりクリエイティビティ溢れるアートやデザインの学校であるからでしょう。美術専門中高ではないのですが、他校に比べて圧倒的にアーティステック、ファッショナブル、コンテンポラリーな生徒で溢れています。アート好きには、「楽しい!」がとまりません。世界が全く違います。

★相模女子、聖和学院は、神奈川エリアで、新しい学びに果敢にチャンレンジしているその姿が投影されているからでしょう。

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2019年10月24日 (木)

2020年からの中学入試(33)男子に人気の共学校を追う

今年10月に実施された首都圏模試センターのデータから、首都圏男子に人気のある共学校を抽出してみます。抽出方法は前回と同じです。地域ごと五十音順で並べました。

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慶応中等部
工学院大附属
國學院久我山
駒込
淑徳
城西大城西
聖徳
成立学園
青稜
創価
多摩大目黒
東海大高輪
ドルトン東京学園
日本工業大学駒場
八王子学園八王子
文教大学附属
武蔵野大学
武蔵野東
目黒日大
立正大付属立正
アレセイヤ湘南
東海大相模
桐光
日本大学
森村学園
横浜創英
横浜富士見丘
渋谷学園幕張
千葉日大第一
東海大浦安
日出学園
麗澤
青山学院大学系属浦和
浦和実業
大宮開成
春日部共栄
狭山ヶ丘
秀明
昌平
西武台新座
土浦日大
茗渓
國學院大學栃木
佐久長聖
長崎日大

★男子に人気があるとしたのは、共学校だからと言って男女両方に人気があるとは必ずしも言えないからです。

★とにも、こうして眺めると、慶応中等部や渋谷教育学園幕張、國學院久我山は、常連でしょう。

★工学院、駒込、聖徳学園、成立、昌平、茗渓は、<新しい学びの経験>プログラムを創出しています。

★淑徳のように、大学進路指導重視でありながら、ICT教育にも力を入れているところは、城北とシンクロしています。城北も人気がありますから、やはり大学合格実績プラス1は人気のでる理由かもしれません。

 

 

 

 

 

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2020年からの中学入試(32)人気男子校を追う

今年10月に実施された首都圏模試センターのデータから、首都圏人気校を抽出して今後追っていこうと思います。10月くらいから併願の決定も進み始めているはずですから、時期的にはちょうどよいでしょう。各校の勢いや、全体の動向が推理できると思います。ここでいう人気校というのは、同センターが集計している志望校の登録者人数が昨年より増えている学校のことを示しています。

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★まずは男子校から。寮制学校は東京会場の志望者数です。五十音順です。

海城
学習院
暁星
京華
攻玉社
城北
巣鴨
聖学院
世田谷学園
高輪
桐朋
日本学園
日本大学豊山
早稲田
栄光学園
城西川越
静岡聖光学院
函館ラサール

★同センターのデータによると、男子校は48校集計されていますから、上記人気男子18校は、男子校の37.5%を占めています。

★隔年現象で人気校というところもあるでしょうが、海城、暁星、城北、巣鴨、聖学院、世田谷学園、静岡聖光学院のように学内で新しい動きを開始したところあるいはその中でも、海城、巣鴨、聖学院、静岡聖光学院のように<新しい学びの経験>の環境を生みだしているところには、志望者が集まっているというのは、日本にとっても希望です。

★英国の「エコノミスト」元編集長ビル・エモット氏などは、日本は教育投資で人的資本を強化することで世界に貢献できると語っていますが、それは昨年のノーベル経済学賞受賞者ポール・ローマ氏の「内生的成長論」にも呼応しています。もっとも。ポール・ローマ氏は、日本だけのことを言っているわけではないですが。

★中高段階では、<新しい学びの経験>の環境を創っている学校を選ぶというのが、教育投資と言えるでしょう。もちろん、ビル・エモット氏やポール・ローマ氏は、個人レベルの投資ではなく、もっとマクロの話なのでしょうが、AI社会へ徐々にシフトしている時代です。個人の投資判断は小さいようですが大きな影響を与えるようになるでしょう。

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2019年10月22日 (火)

日本の幾つかの希望

★今日は、200人強の塾の先生方が集まるセミナーで登壇しました。石川一郎先生と三瓶勇美先生との対話のナビゲーターをさせていただきました。<思考コード>と<思考スキル>の中学受験における実用性と有効性と新しい学力を生み出す学力の未来につながっていることなどについて具体的に話が展開していきました。

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★石川一郎先生は教員側及び著作家としてのアプローチで、三瓶勇美先生は、問題制作者としてのアプローチと思考コードや思考スキルのデータ分析研究者としてのアプローチで、多角的に語っていました。ナビゲーターの私とは、カジュアルなもので、綿密な事前打ち合わせがなかったのですが、お二人は流れるように神対応しながら対話されていました。<思考コード>や<思考スキル>は、IBにも通じるので、じわじわと広まっているなあと実感しました。

★中学受験を通して、子供一人ひとりの才能の芽を大切にできる可能性を大いに感じたひと時だったのです。

★そして、受験情報をジェンダー問題からアプローチしている市川理香氏と会うこともでき、女子校をウーマンリブフェミニズムとラディカルフェミニズムと伝統的女子校などでカテゴライズする話で盛り上がりました。市川氏は、女子校の情報を集めながら、今までにないカテゴリーの新しい女子校が生まれてくる可能性について関心があるということでした。

★まだ、それがどんな性格で、どんな女子校なのかは、探索中だそうです。女性と社会の関係を深く考える市川氏の鋭い視点に、私立学校の新しい希望の光を垣間見たような気がしました。

★今日は即位の礼でしたから、そのセミナーの会場の周りは交通規制がありましたが、迂回しながら次の仕事場に移動しました。すると一瞬ですが、国会議員と出遭いました。すれ違ったというほうが正しいかもしれません。

★名刺を交換し、今度また会おうという話になりましたが、テーマはSDGsや第4次産業革命の本当の問題の話でした。そこを解決すれば、日本社会の多角的な側面での復活はあるという話になったわけです。わずか3分でしたが、すぐに根本問題とは何か?その解決はいかにしたら可能かが共有でき、そこに希望のエネルギーがあるパースぺクティブが映し出されたのは興味深かったです。

★政治家としては比較的若い議員で、社会哲学的な基盤は、私と親和性がもともとあったのは著書から知っていたのですが、それにしても瞬間でしたね。とにも、ちゃんと見通している政治家がいることに、まだまだ日本も捨てたものではないと感じたのです。議員も私立学校の理事にも就いていて、教育が21世紀日本のカギであることも十分心得ていました。したがって、多くの私立学校がSDGs関連の活動に取り組んでいることに当然ながら関心をもっていたのです。

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2019年10月21日 (月)

STEAM教育(02)新しい女子校はSTEAM教育で世界を変える。

★和洋九段女子は、SDGsに本格的に取り組んでいるうちに、実はSTEAM教育にも力を入れようとしています。同校は、ローマクラブの「成長の限界」から警鐘を鳴らされ続けている地球環境の根源的問題を継承しています。また「持続可能な開発」という言葉を生んだノルウェーの初代女性首相であり医者であったブルントラントさんの生き方と親和性があります。

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(10月27日のフォーラム詳細及び申し込みはこちらから)

★和洋九段女子のSDGsの詳しい取り組みは、次のサイトをご覧ください。

 和洋九段女子が新しい社会を開く(1)

 和洋九段女子が新しい社会を開く(2)

★同校の生徒は、SDGsに取り組む中で、平和的アプローチ、格差解消アプローチ、新しい経済設計アプローチなど問題意識が深まっています。そして、サイエンスやテクノロジー、エンジニアリングなどの側面からも問題意識を深めています。

★すなわち、リベラルアーツ的アプローチ、社会科学的なアプローチ、自然科学的なアプローチなど多角的にアプローチしているわけですが、このアプローチこそSTEAM教育と同根なのです。

★つまり、新しい女子校が世界の根源的問題を掘り起こし、それを解決するためにSTEAM教育的発想を思い切り使うことになるのは必然です。和洋九段女子以外にも、STEAM教育に目覚めている女子校は豊島岡女子があります。

★豊島岡女子は高校募集を廃し、中学入試だけにしますが、それは東大、医学部進路指導のみならず、STEAM教育のように新しい女子校への道を開こうとしているのでしょう。

★和洋九段女子、豊島岡女子のように、STEAM教育をテコにして、新しい女子校に変容する女子校はどこでしょう。

★これからが楽しみです。新しい女子校を模索し始めている新たな女子校が、今回工学院で行われるSTEAM教育のフォーラムに参加する予定です。やはり時代は大きくウネッテいます。

 

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対話の世界(4)聖パウロの世界史の授業 未来を見通す論理的思考力

★聖パウロ学園の望月先生(広報部長・社会科教諭)の世界史の授業は、歴史のダイナミズムを生徒と共有していきます。ある程度必要な知識については、ストーリーテラーよろしく歴史物語を語たったり、わかりにくいその時代の制度や経済については、現在の身近なケースに<置き換え>て語ります。

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★知識のインプットといえばそうなのですが、実は生徒がインプットするときに同時に<想像力>を活用するようになっているわけです。それゆえ、生徒からは望月先生の授業はわかりやすいし何よりおもしろいと人気なのです。

★しかしながら、歴史のダイナミズムを共有するというのは、<置換>スキルと<想像力>を駆使して、わかりやすく知識をインプットすることによってだけではないのです。

★生徒自らが、望月先生のようにストーリーテラーになり、論理的思考力をトレーニングしていくことによって共有していくのです。

★この論理的思考力のトレーニングは、インプットの時とは逆です。たとえば、19世紀末から20世紀半ばにかけての中国史を学んだあとに、今ニュースでも毎日のように取り上げられている香港のデモがなぜ起こってしまったのか、既存の知識で推理していく問いを投げかけます。

★1989年にいたる冷戦の終焉やEUが生まれた背景知識があれば、かなり正確に理由を詰めていくことができるのですが、そのような知識がない状態で、歴史物語を推理していくのです。歴史はある意味権力闘争史だったり、権利の闘争史だったりしますから、従来の歴史の力学構造を重ね合わせて推理することは可能です。

★望月先生は、物語を推理するときのキーワードをグループワークで抽出し、それをつなぐ物語を生徒がプレゼンするという仕掛けをまずします。そして、そのキーワードに基づいて物語を語る時、自分たちがあげたキーワードのときには気づかなかったキーワードを生徒は語りますから、それを赤字で追加していきます。

★各グループがあげたキーワードと生徒が語った話から望月先生が大事だと気づいたキーワードすべてをつないでいくと、一つの歴史物語ができます。

★生徒が自らつくったプロトタイプとしての物語。この過程を通過した生徒は自信をもてます。モチベーションもあがります。そして、新しい知識や情報を追加することによって、プロトタイプはリファインされ、洗練されていきます。生徒はこの仮説と検証、あるいは試行錯誤の連続を望月先生の授業で体験していくのです。

★生徒と生徒の対話、生徒と望月先生との対話が、縦糸と横糸のように織りなされていきます。おもしろくて深く考える授業。<Hard Fun>と呼ばれる授業そのものです。

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STEAM教育(01)工学院の生徒 時代を変える 東京ビックサイト「Maker Faire Tokyo 2019」でも活躍

★工学院大学附属中学校・高等学校の生徒が、STEAM教育とグローバル教育で、ダイナミックな活躍を繰り広げています。その活躍そして実績は多様で、生徒1人ひとりの才能が開花する<新しい学びの経験>をたしかなものにしています。とにも、あまりにもダイナミックで、その活躍を追跡するのはなかなかたいへんです。

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(現在は、Fab3Dコンテストに応募する作品を多くの生徒が創っている最中です。クリエイティブな雰囲気に満たされる工学院です。)

★たとえば、2019年8月3日・4日で東京ビックサイトにて行われた「Maker Faire Tokyo 2019」でも大活躍でした。べネッセコーポレーションがプラチナスポンサーとして初出展したブース「School Maker Faire」で繰り広げられました。

★STEAM教育(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematicsを重視した教育)を先進的に学びに取り込んでいる学校による作品展示がなされ、イベント2日目の8月4日には、生徒たちによる制作発表と協力企業賞の授与が行われたようです。そして、赤堀侃司先生<日本STEM教育学会幹事 日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)会長 ICT CONNECT 21(みらいの学び共創会議)会長 東京工業大学名誉教授>から各校へ講評がありました。

★そのSTEAMに取り組んでいる先進的学校とは、首都圏からは、麻布、聖光学院、豊島岡女子、広尾、そして工学院大学附属中学校・高等学校だったのです。赤堀先生の講評は、こうでした。

「工学院大学附属中学校・高等学校は、おもしろい視点が際立っていました。同校の他の生徒は、フロッピーディスクを入れることで音楽が奏でられるツールを作っていました。これも斬新。古いデバイスと新しいテクノロジーを掛け合わせる視点は素晴らしかったです。」

★賞も「創意工夫賞 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント」で、日ごろ工学院が実践している創造力を養う学びが見事に評価されたものとなりました。

★この工学院の創造力を養う2つのSTEAM教育について、10月27日(日)、同校で「第1回21世紀型STEAM教育フォーラム」でワークショップを体験しながらシェアできます。いよいよ偏差値ではなく、創造力育成の学びの在り方で学校を選ぶ時が到来しました。しかも、そのような学びが、大学合格実績まで生成してしまうのです。時代は完全に変わりました。

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2019年10月20日 (日)

2020年からの中学入試(31)GLICCの帰国生を巻き込み新しいアクション

★GLICC主宰の鈴木裕之代表は、中高大の帰国生の入試をケアしたり、麻布などの思考力を要する入試対策をする小規模だけれど、実績は大きい<新しい学びの拠点>を形成しています。

Glicc

★中学入試における帰国生入試の要項は言うまでもなく、各学校の出題する入試問題の分析を徹底的にしている学びの拠点は他にはないでしょう。大学入試における帰国生の入試問題も当然分析していますが、東大や一橋大学をはじめとする帰国生入試のための小論文対策や志望理由書の書き方の指導は、教室というリアルスペースのみならず、Web上での議論やププラットフォームを形成してバーチャルな学びを実施しています。

★したがって、身構えているスペースは小さいのですが、生徒は世界各国にいて、実はスケールが大きいのです。

★しかしながら、大手塾が実施している海外での帰国生入試のための説明会は、とても情報が偏っていて、一般受験生の情報をベースに流しているので、グローバルに活躍したいと思っている帰国生の発想を生かすことができないでいるという実情も、Webを通してコミュニケーションをしているうちにわかってきたといいます。

★GLICCのスタッフは、鈴木氏の教え子がほとんどだったり、その友人で構成されています。またケンブリッジなどの世界ランキング100位以内の大学で学んできたネイティブスピーカーの講師も多いですね。したがって、扉を開くとそこはまるでどこでもドアを開いたかのようです。急にグローバル圏になるのです。

★そこから、今の帰国生の現状をみて、もっとケアしなければ、せっかくの世界的視野や発想の芽を摘まれてしまうと思いたち、今回12月2日にドバイのミレニアムプラザホテルで海外生対象(小・中・高)の海外進学説明会を実施する決断をしたようです。

★ほかの塾のように学校の説明会ツアーを組むのではなく、1人で乗り込むわけです。他の塾がそういうことができずに、ただのつなぎ役になるのは、それは日本の帰国生入試の情報を幅広く公平に情報収集していないからだし、自分で三田国際や東大やケンブリッジ大学に合格させる経験がないからです。そもそも入試問題の中身まで知っている大手塾のコーディネーターは少ないのが実情です。

★ようやく、真実を語る帰国生のための救世主がドバイの地に現れるのです。鈴木氏は、英語堪能、ICT技術堪能、PBL授業の達人、小論文指導の第一人者です。Webの世界では有名人ですが、日本では、帰国生入試はそれほど注目されないので、知る人ぞ知る達人です。真実は、世界から見なければ見えませんね。

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2019年10月19日 (土)

2020年からの中学入試(30)「進学レーダー2019年11月号」で中学入試の全貌を見通そう

★「進学レーダー2019年11月号」(みくに出版)は、<中学受験SDGsと新しい入試>の大特集を組んでいます。そして、この時期大事なもう一つの特集<「学校別」入試の採点基準>とそれを活用できる<過去問分析シート>がとじこみで手に入れることができます。

★「聖学院」が8ページ圧巻の<私立中高一貫校レポート>で登場しているのも驚きでした。SGDsの活動などでも有名なZ世代リーダーYujinさんをはじめとする聖学院の生徒さんがトップページ全面でバーンと登場しているのもすてきでした。

★「宝仙理数インター」「横須賀学院」の<クラス1日密着ルポ>や「成城学園」の<私学の校舎散歩>も読みごたえ見ごたえたっぷりです。

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★さて、同誌は、数多くの私立中高一貫校がSDGsに取り組んでいることの国際的な重要性を背景に着目しています。グローバル教育の本質的な活動を見通した視点です。そして、中学入試問題は学校の顔ですから、SDGsの取り組みを行っている学校の多くが、SGDs関連の入試問題を出題していることを丁寧に検証しています。

★この取り組みが、大学にもつながっているということにも触れ、受験の世界が、国連広報センターの野望の1つSDGsの告知に実は一役買っていて、受験の重要性について社会貢献や国際貢献という観点から光をあてる画期的な特集になっています。

★それとZ世代高校生がSDGsをテーマに未来会議を開催している活動も紹介し、2040年に相当混迷した日本社会であると予想されている時期にリーダーシップを発揮せざるを得ないZ世代の希望も取りあげています。

★そして、このSDGs関連の入試の出題方式が、4科入試以外に、新しい入試で出題されていることにも射程を広げています。これらを合わせ読むと、2040年から考えてZ世代にとって有益有効な<新しい学びの経験>を創ろうとしている各私立中高一貫校の創意工夫が浮かび出てきます。

★とはいえ、もちろん、<中学受験>という視点できっちりまとめられています。いまこの時期に、中学受験生の保護者は2040年から想いを馳せながらわが子の受験態勢に臨むということはしないでしょう。それは当然です。

★偏差値60以上の学校の9割は、4科入試中心で、その中でSDGs関連の問題は当然出題されるわけです。中学受験マーケットでは、この層に生徒が集まりますから、4教科の受験勉強をサポートすることが極めて重要です。大手塾の中には、ここだけにターゲットを露骨に当ててそれ以外を切り捨てるようなことを公言するところもあるぐらいです。

★しかし、この層の中でも、麻布や武蔵は、4科入試でも新しい入試で重視しているような「高次思考力」はもともと出題していて、この層の中でも特別で大切な位置を占めています。もともと新しい入試の登場は、公立中高一貫校の適性検査を意識して作成されるケースと麻布や武蔵の「高次思考」を偏差値が低くても考えてなんとか突破できて自信と勇気を取り戻すことはできないかという問題意識から作成されるケースの2通りありました。今では、もうそのような意識は曖昧になるほど、拡大しましたが。

★そんな中で、開成は、昨年、「高次思考」の問題を作ろうと思ったらできるぞというサインを出しました。今年筑駒の詩では、正解がたくさんでうるような問題も工夫次第では採点がきっちりできるぞという筑駒叡智の面目躍如の問題を出題しています。

★だいたい開成の数学や化学の授業などは、もともとアクティブラーニング(同校はそんな呼び方をしていないでしょうが)ですから、創造的という意味での「高次思考」の問題を出題しようと思えばできるのです。ただし、開成に入学してくる生徒は、もともとそこの部分はもっているので、知識と論理をベースにハードルを越えてきてくれればよいということでしょう。

★そんなわけで、偏差値が50前後の学校群が<新しい入試>を実施するケースが圧倒的に多いのです。だから、そこから飛び出てきた今では偏差値が高くなった三田国際は、通過点として一度<新しい入試>をやっただけで、あとは算数一科入試に変更しました。マーケティングに俊敏な学校は実に戦略的です。

★しかしながら、このような戦略的な学校は例外的です。大事なことは、この4科入試と新しい入試の背景にある偏差値グルーピングという事態は、「進学レーダー」に取り上げられるほど一つの「事実」として定着してきたわけです。グルーピングができるということは、実はダイナミックな動きが意図しなくても発生するというのが歴史的な力学というものです。2020年中学入試は注目ですね。

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2019年10月18日 (金)

第6回 サイエンスをテーマにしたアクティブラーニングデザインとTOK

2019年10月18日(金)3時限目

ニュース)探究授業にSTEAM教育導入で一致 中教審高校改革WG
0)Speed Date:感じたことを語る。

1)「サンゴの白化」をテーマにアクティブラーニングをデザインする。


参考資料1:地球環境研究センター
参考資料2:気候ネットワークブログ
・どのアクティビティを活用するか? アクティビティ参照ページ→ablconnect
  基本のサイクルは「リサーチ×ディスカッション×編集×プレゼン」

2)アクティブラーニングデザインの評価分析


・TOK的問いはどこに盛り込まれたか。
・10の学習者像との関係はどのくらい意識されたか。
・思考コード分析

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・思考スキル分析

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

3)事後学修「自分の関心あるテーマでアクティブラーニングデザインをする」→メールで提出

・学年、時間数、教科などは、自由に設定してください。

 

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2019年10月17日 (木)

2020年からの中学入試(29)中学入試問題で出題される詩が新しい世界を開く

★<相互主観>はまあいいとして、<相互客観>とか<相互存在>なんて言い出した本間はついに狂ったかと思われている方もいるでしょう。もともとそうじゃないかあという人も当然いるでしょう。まあ、20世紀は未開人、子供、狂人の発見の時代と言われていますから、前世紀に生まれた私としては、それでも構いません。

Mado

★しかし、まど・みちおさんの詩が中学入試で出題されているということは何を意味するのでしょう。最近雙葉は詩の問題は出題しないようですが、30年前までは、雙葉と言えば、筑駒と同様、詩のすてきな問いが出題されていました。筑駒は、今でもなかなか素敵な詩の問題が出題されています。

★さて、当時雙葉が出題した詩の問題にこんなのがありました。

<どうぶつえんのタヌキ

どこにもいない>

★タイトルの方が詩よりも長いというか、両方で詩なのでしょう。この詩を出題して、問いはこんな感じでした。

<どうしてタヌキはいないのですか?>

★子供たちは、そんなのタヌキに聞いてみなければわからないよねとすぐに反応していました。しかし、この反応がすごいですね。子供たちは、タヌキを客体としてみていないのです。

★雙葉の先生としては、正解はなく、相手に伝わるように、説明していれば〇ですよということでした。

★これはすごいですよね。すでに<主観―客観>図式を超えてしまっている子供たちの世界観を、入試の世界で受け入れているからです。もっとも、今や雙葉はそういう問題を出題していないのは残念です。

★期待は、まど・みちおさんの詩を筑駒が出題することです。過去10年、結構ひらがな詩を出しているのですが、まど・みちおさんはまだ出題していません。もっと前に遡れば出題していたかもしれませんが、記憶にありません。そうだとしても、そろそろ出題していただきたいですね。特に、上記写真の詩集。この詩集は、まさに<interbeing>の世界です。

★かつて麻布が、たしか40年位前でしたか、工藤直子さんの「ライオンの哲学」という詩が出題されたことがあります。これは擬人化された詩と読むこともできますが、麻布は、ライオンそのものの世界観に気づくかどうか楽しんで論述問題を出題していました。

★ライオンに世界観があるのか?まるで、オックスブリッジの問題ですね。「カタツムリに意識はあるのか?」とか「リンゴについて説明してごらん?」などという口頭試問の問題に匹敵します。

★ジョン・レノンが、インスピレーションを得た、オノ・ヨウコさんの詩「聞いてごらん、地球の回る音を」もすごいですよね。中学入試の問題に向き合うことは、これからの宇宙世代の小学生にとって、新しい世界に気づくチャンスなのかもしれません。世界観のパラダイムシフトのチャンスは、逆説的ですが中学受験の中に隠れています。

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PBLの世界(43)STEAMも社会構成主義も少し超えられそうな気が!ZENの時熟か?

★SNSでつながりながら、リアルに対話しながら、ふと気づくと、いよいよ<自己>とは自己ではなく、<相互自己存在>でもなく、<相互存在>そのものだということです。リンゴは<私>であり、クラウドも<私>であり、森も<私>であり、社会も<私>であり・・・。とうとう狂ったか?

Interbeing

★しかし、究極の十牛図の境地は、そういうことでしょう。ZENの世界の境地です。マインドフルネスとは私としての<私>を超えることです。超えたところに何があるのでしょう。人のいない時代にあっても存在していた私がいない<相互存在>というやつです。そこにあとから<私>がやってきた。

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★不遜にも<リンゴ>は私でない<客体>としてのたんなるモノだと幻想を抱いたのが環境破壊の始まりですね。<私>は<私>であり、ある民族は客体としてみなす権力の横暴が絶えませんでした。

InatersubjectO 

★フッサールは、そんな権力者に対し、いやいや君が<客体>とみなしている人と君は相互に存在として立っているんだよと。ふざんけんな弟子のハイデガーよ、なんとかしろ。君の師は狂っているぞと。そこでハイデガーは、<相互主観>とモノを分けるのに、民族への郷愁を持ち出したわけた。失われた故郷を取り戻す<相互主観>という間違った幻想。

★そこで、次代の哲学は、そんな怪しげな<相互主観>を捨ててしまえ。もう一度<主観>と<客観>図式に立ち戻り、権力の横暴をチェックするために<主観>を排除する<客観主義>になってしまったわけです。

★京都学派も、ハイデガーと無縁ではなかったので、批判されましたが、西田幾太郎の世界観にはZENがありましたから、そこを超えようとしたのでしょう。田辺元は、反省しまくっていましたが、数学的思考を哲学に盛り込んでいたのだから、本当は、ZENへの道を数学的に切り拓くとよかったですね。

★ともあれ、怪しげな<相互主観>をどうやったら、世界に根づかせるのか?1989年のベルリンの壁崩壊後、その思考の継承はいったん絶たれます。

★しかし、SGDsの登場で、どうやら<相互客観>という自然と社会と精神の循環を取り戻すことで、<相互主観>と<相互客観>を橋渡しする<相互存在>という<自己>が現れてきました。これが、西田幾太郎のいう<純粋経験>なのかもしれません。マインドフルネスの世界は、この<相互存在>=<純粋経験>のメタファーであり、それがZENの悟りの境地である<対話>ということなのかもしれません。

★STEAMや社会構成主義が、<主観―客観>や<相互主観―客観>の世界を超える学びの環境になり、そこに到達するや、STEAMも社会構成主義着も自らを脱ぎ捨てるのでしょう。なんて弁証法的プロセスなのでしょう。

 

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PBLの世界(42)工学院フォーラムで、クリティカル&クリエイティブシンキングを生み出すSTEAM発想を共に考えましょう。

10月27日(日)、工学院で「第1回21世紀型STEAM教育フォーラム」が開催されます。本格的STEAM体験ワークショップと教科授業の中でのSTEAM発想の体験を通して、STEAM教育の大切な思考であるクリティカル&クリエイティブシンキングをいかに生成するか共に考えましょう。おそらく、この過程はIBのTOK的な発想も含んでしまうでしょう。IBだけがTOK的発想を活用できるわけではないということが了解できることは大切です。それはなぜか?一握りのエスタブリッシュな層の知を共有できることが未来を拓く大きなエネルギーになることは想像に難くないでしょう。

C3

★今、世の中は災害後の訴訟の問題、組織の労働問題、学校のいじめの問題など、訴える側と訴えられる側の両者の葛藤があります。その事件自体は、たいへん凄惨で悲しく、胸がしめつけられます。しかし、その両方の気持ちを考えることがクリティカルシンキングだと、訴えられる側の気持ちもわかってくれよとときどき言われます。

★そもそも、物事は両義性があり、多義性が横たわっています。そこを理解するのは、知識と論理的思考です。葛藤の事実をできるだけ多角的に知ることは、クリティカルシンキングまではいきません。あくまで、ロジカルです。葛藤は感情がぶつかります。怒りがぶつかります。ですから、民主国家は、そこは法に基づいて、調停者である裁判に委ねられます。示談になるか訴訟になるかそれは当事者と調停者とのコミュニケーションと解決しない時には、第三者である調停者によって裁定がくだされます。それをジャスティスといいます。法的正義ですね。個人的道徳感情正義を前面に出してくることは、非論理的思考です。

★しかしながら、その法が間違っていたらどうなるでしょう。その法が改正されたり廃棄されない限り、論理的に悪法も法なのです。

★そこで、それでは困るので、クリティカルシンキングの発動です。その法を成立させる制度設計、そのような葛藤がおきる組織的構造や社会的構造、環境の悪循環のシステムなど葛藤の深層にある多様な構造を探り、最終的に根源的な問題構造を見出します。それらの制度や構造は正しいはずだったのに、そうではない何かがあるという仮説をたてながら検証していく思考過程がクリティカルシンキングです。

★自然科学の場合は、日常の現象を論理的に追い詰めていくと矛盾にぶつかります。そこから、その矛盾を成立させる条件を探りはじめます。やはりこの矛盾を成立させるシステム的な根源的な問題に行き着くわけですが、その思考過程がクリティカルシンキングです。

★そこまで行ったとき、U理論なんかではプレゼンシングと言われていますが、その根源的問題構造や根源的問題をいかに解決するかとなる段になって、クリエイティブシンキングが発動します。

★このような意味でのクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングは、今までの日本の教育では行われてきませんでした。知識の誤謬や論理の正誤問題をクリティカルシンキングだと言われたりするのですが、それは論理的思考の発動ということでしょう。

★さて、それでは、このクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングをいかに生徒が開花するか?そのプログラムはエスタブリッシュな学校やIBのようなアッパー層向けの教育にはあります。

★しかし、生徒1人ひとりすべてが共有するには、難しすぎます。そこで、ICTの登場です。STEAM発想によって、その難しさを無化します。あるいはデフォルトモードとします。つまり、IBのTOKのようなプログラムをスルーしても、その力が身に着くというのが、21世紀型教育です。すべての子どもが才能者であるというビジョン目指して、その学びの仕組みを考えましょう。

★さて、その奥義は、世界制作スキル(World Production Skills)と思考スキル(Thinking Skills)の関係を生徒の中に眠る暗黙知から形式知化するICTによる技術です。特に、世界制作スキルはおそらくなんだそんなことかという話です。具体的には、このスキルを生徒自ら引き出すワークショップは、順天で開催されるグローバルウィークの「未来を創る学校」という講座でチャレンジします。フォーラムでも、そこに少し触れられればと思っています。

★思考コードのC3について語る何人かの執筆者がいますが、ここまできちんと理解して活用してくれるとよいのですが、そこはまだ直感の段階です。現状はそれでよいと思いますが、だんだん知識誤謬や論理の正誤を考える問題をC軸問題だとすり替えるようなことが起こっています。どこかで理論的に表現しなければならない時期が来たようです。

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2019年10月16日 (水)

この秋、工学院で、STEAM教育をカリキュラムにどう位置付けるか?共に考えましょう。

★グローバル教育だとかプログラミング教育だとかSTEAM教育だとか、初等中等教育のカリキュラムにどんどん新しい考え方やプログラムが接ぎ木されている昨今です。断捨離も削除もしないで追加挿入されるだけでなので、現場の先生方も何よりも生徒も不安です。中途半端になりがちでこれでよいのかなあと。そうはいっても、2040年から考えると、新しい学びの経験を構築しないわけにはいきません。さて、どうしたらよいのでしょうか。

 

Steam

(STEAMのSやAをどうとらえるかによって、STEAMや探究の位置づけが微妙に変わる)

★そんなことを感じていた折、教育新聞2019年10月15日に「探究授業にSTEAM教育導入で一致 中教審高校改革WG」という記事が掲載されました。同記事によると、<中教審は10月15日、高校改革を議論する「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ」(高校改革WG)の第4回会合を都内で開き、新学習指導要領で始まる「総合的な探究の時間」や「理数探究」におけるSTEAM教育の位置付けを検討した。委員らは、STEAM教育を探究などの学習で取り入れる方向性でおおむね一致した>ということです。

★これは、新たなに「探究」に「STEAM教育」が接ぎ木されたということを示唆しているのでしょうか?それとも「探究」=「STEAM教育」として、2つを1つにショートカットして効率を上げたとみるべきでしょうか。あるいは「探究」と「STEAM教育」を統合するということでしょうか?これも効率を上げることになりそうですが、「統合」という作業は少々厄介です。

★同記事の中でWG委員の奈須正裕・上智大学教授が新学習指導要領の教育課程におけるSTEAM教育の位置付けについてこう語っています。<高校の新学習指導要領の探究的な学びとSTEAM教育の親和性の高さを指摘した上で「STEAM教育は自由度の高いカリキュラムでやる必要がある。また、孤立的に展開するのではなく、カリキュラムの核としてSTEAM教育を位置付け、各教科・科目の学びをつなげていくことが重要だ」と。

★どうやら、「探究」と「STEAM」は親和性があるということで、コインの両面ということにしようということでしょうか。しかし、これも委員の一人のアイデアですから、現場では柔軟に考えてくださいということでしょう。STEAMのSであるサイエンスを、自然科学だけを意味するのか社会科学も意味するのか、実ははっきりしていません。どう考えるかによって微妙に位置は変わります。

★また、同記事の中では、STEAMのAについて、<Science、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字を取ったSTEMに、ArtsまたはLiberal ArtsのAを加えたSTEAM教育>と紹介している箇所があります。Aをアートとるかリベラルアーツととるかによって、またSTEAMの位置づけも変わります。

★どの捉え方が正解かはありませんから、各学校で捉え返せばよいだけで、その捉え方によってその学校のカリキュラムの独自性がでるでしょう。

★ただ、奈須教授はSTEAM教育をカリキュラムの核と捉えているようです。そしてなおかつ探究と親和性があると、となると、これはIBのディプロマのコアに近いイメージになります。

★すると、Aは自ずとリベラルアーツの様相になってきます。すると哲学的問いがそこに必要だということになっていくでしょう。まさにTOK的発想を期待しているのでしょう。

★それでなければ、奈須教授の語る「各教科・科目の学びをつないでいく」ということはできないでしょう。もちろん、各授業は座学ではなくてPBL型になるのは大前提です。

★さて、それはどうやってできるのでしょうか。各教科でもTOKのような発想の問いを生徒と考えながら授業を展開していくことは可能なのでしょうか?しかし、そうなると、今からすべての教師がTOKを学ぶということでしょうか?

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(工学院の高校1年生のサイエンスコースの生徒が隣接地工学院大学八王子キャンパスを訪問し、大学で学ぶテーマで行われる実験講座に参加。新4号館の愛称は「あどらぼ:Advanced EngineeringとLaboratory」で、ワクワクするような実験室が設置されています。さて、そこで、実験の仕方を教えてもらい、実験を行うわけではありません。目的の分析ができる実験はいかにしたら可能かから考えます。この問いは極めて重要です。現在、理数探究の教科書のサンプルが執筆されていますが、自分たちならどんな条件を考えて実験をするのかからスタートするようにしようということらしいです。とはいえ、多様な実験のリスクマネジメントについて議論され、実際にはなかなかの難局ではあるということですが、それだけ、重要な問いということでしょう。)

★いいえ、それをしなくてもできる。というかTOKの学びをショートカットできる、あるいはデフォルトとみなしてしまえるのが、ICTの活用の大きなメリットですね。このSTEAM教育と教科の授業を結ぶTOK的な発想をショートカットしながらも、授業の中に埋め込むことはいかにして可能か?これに挑戦しているのが工学院をはじめとする21世紀型教育機構の同士校です。

★10月27日、工学院で開催されるフォーラムで、共にこの重要な問いについて体験的に考えてみませんか!

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2019年10月15日 (火)

必読!「令和は早慶逆転!? 大学激変の時代、そのワケは?<週刊朝日>」世界の変わり目がわかる

10月14日の「令和は早慶逆転!? 大学激変の時代、そのワケは?<週刊朝日>」の記事を読むと、世界の変わり目がわかります。世界の変化は複雑で、そう簡単に鳥瞰できないし、読み切れませんが、そういうときはある限られた領域を切り取ってみてみると、そこに変化が集約されている場合があります。

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★同記事が扱っている「大学激変の時代」はまさにそのケースにあてはまるでしょう。というのも、同記事にはこうあります。

「大学激変の時代に入った。少子化が進む中で、各大学では学生獲得に向けた改革が進む。主に偏差値を基準にした大学の序列にも変化が起きている。今後は偏差値が機能しなくなり、大学の特色から受験先を選ぶ時代もやってくると言われる。」

★しかしながら、「令和の大学序列の新潮流を緊急リポートする」と続きます。なんだやっぱり「偏差値序列」なのかと一瞬思うかもしれません。ところがそうではないのです。「令和の大学序列」とは言っていますが、「令和の大学偏差値序列」とは言っていないのです。編集者の表現選択の妙ですが、これは、いきなり大学の特色からのみ大学を選ぶ時代はまだやってきていないが、偏差値だけで選ぶ時代でもないという過渡期であることを含意しているのでしょう。

★というのも、1979年に大学共通一次試験が始まり、1990年に大学入試センターになるとともに、実は「MARCH」という偏差値序列のくくりができたのです(ある受験情報誌の編集者が造ったと言われています)が、今回は混迷を極めているけれど、大学入学共通テストに変更されることによって、大学入試改革の理念は、偏差値序列を超えて、コンピテンシーや創造的思考力をみようとしている「雰囲気」がでています。

★しかも、その「雰囲気」は、9.11以降のテロの日常化、リーマンショック以降世界が気づいたグローバル経済の一蓮托生問題、そして3.11に象徴される東日本大震災以降から急激に起こる異常気象の日常化、グローバル政治の分断化を乗り越えるサブカルチャーのグローバル化などによって、世界の政治経済は、着実に大きく変わろうとしている。その変化の変わり目が、今回の大学入試改革の「雰囲気」に反映しているのです。

★したがって、同記事で取り扱われている、「SMART」「GCH」(中身については、詳しくは同記事をご覧ください)という新たなククリは、「GMARCH]のときのように、単純に偏差値序列を基準にカテゴライズされているわけではありません。

★同記事には、記者が取材した一人として、中学受験情報誌「進学レーダー」編集長の井上修氏が登場してきていますが、このククリを創ったのは井上氏でしょう。また氏でなければできません。

★先ほども言ったように、偏差値だけではカテゴライズできないからです。このククリには、もちろん偏差値も含まれているでしょうが、井上氏のように中学受験から大学受験まで各学校、大学にきちんと足を運び取材して、それこそそれぞれの「特色」を把握している教育ジャーナリストはいないからです。さらにサブカルチャーやグローバル政治経済まで幅広い情報リサーチや文献リサーチ量は右に出る人がいないでしょう。

★そういう井上氏だからこそ、世界の変わり目を埋め込んだ「SMART」「GCH」をつくることができたのでしょう。

★大学の特色として、「グローバル関連の学部設置に力を入れている」「グローバル経済の学部に力を入れている」「海外大学との提携に力をいれている」「リベラル・アーツに力を入れている」などのアプローチで、彩られていますが、中でも注目は「リベラル・アーツ」かもしれません。

★井上氏は、このリベラル・アーツで注目している大学8つを、「リベラル8」と呼んでいます。国際教養大、東京外国語大、国際基督教大の3単科大学に、早稲田大国際教養、慶應義塾大総合政策・環境情報、法政大グローバル教養、明治大国際日本の5学部だそうです。実は、世界がどう変わろうと、AI社会にシフトしようと、新しい学問が生まれようと、その根っこうには、リベラル・アーツがあるかどうかは、重要だと言われています。

★ということは、この「リベラ8」こそ、中高のキャリア教育では見逃せない大学・学部です。そういう見方で、キャリア・デザインを構築している中高は、まだ少ないでしょう。しかし、いずれ気づいたとき、、ここから本格的に大学激変の時代はやってくるのでしょう。

★それに、専門職大学が今のところ3校しか開校していませんが、今後増えるわけです。グローバル経済のマーケットが、ビジネス×アート×学問×テクノロジーを実装した人材を欲しているからですが、従来の大学の中には、この動きについてこれなくなるところもでてくるでしょう。

★大学入試改革の混迷の背景で、着実に大学再編成の変化が起こっています。世界の動きの潮流に同期しているこの変化はもはや止めることはできません。井上氏のような教育ジャーナリストの目を追跡していくことによって、その潮流のパースペクティブを見定め、飲み込まれるのを回避することができるのです。

 

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2019年10月14日 (月)

PBLの世界(41)武蔵野大学中学校・高等学校の新設「PBLインターナショナル」の意義。

★武蔵野大学中学・高等学校は、来春から高校に「PBLインターナショナルコース」を新設します。ここでいうPBLは“Project based Learning”の略。経産省の主催する「未来の教室」のキーワードですね。インターナショナルコースといえば、すぐに英語力育成というイメージが浮かびますが、PBLを冠にいだくことによって、たんなる英語育成コースではないことが了解できます。

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★いよいよ日野田校長も改革2年目にして<PBL>を前面に出してきたということは、意義深いものがあります。まず改革1年目から、外部ネットワークとつながり多様なプロジェクトを発信してきました。中でもMITが行っている「アントレプレナーシップ研修」は、有名です。そのプログラムが<PBL>で展開されているのは、もちろんです。

★改革1年目は、おそらく合理主義者であり創造的破壊者としてイノベーターである日野田先生は、何を行うのか社会的インパクトを生みだすために、このような外部ネットワークをつかったのでしょう。学内外でなるほどという輪が広まったに違いありません。

★そして、今度は<PBL>の内製化に着手したということでしょう。主体的とか対話的とか、自律/自立したとか、社会貢献的とか、社会協調的というような能力を生かすには、座学の授業では十分ではありません。やはり<PBL>は、最適の学びの環境なのです。

★しかし、<PBL>型の授業やプログラムを今までの教師が全員できるようになるかといえば、すぐにはできないということは、多くの学校のチャレンジで了解済みでもあります。

★全員<PBL>を行えるようにするには、研修を定期的に行う必要があるし、授業リサーチが小まめに行われる必要もあります。それよりも何よりも、<PBL>を好む進歩主義派と<座学>を好む保守派との葛藤の調整が、合理主義者日野田校長としてはコストや労力がかかって、改革が遅れると判断した可能性があります。

★水都国際や三田国際のように、ほぼゼロから学校を組み立てなおす環境にあれば、教師を採用する段階で、英語能力、PBL能力、STEAM能力か哲学能力などがあることを条件とすれば、教師全員が<PBL>を行うことができるでしょう。

★しかし、既存組織を変容させながら改革をしていく場合は、そうはいきません。そこで、「PBLインターナショナルコース」それ自体、プロジェクトとして発信したのだと思います。定員60名ですから、小さく始めて、大きく育てるというセオリー通りの展開でしょう。

★では、ほかのコースは<PBL>はやらないのかというと、そうではありません。ただ、毎回PBL型授業を行うことはないという程度でしょう。それに、まだまだ保護者の方も大学進学準備教育の一環として<座学>が選ばれるのならば、特に問題視しないというのが普通でしょう。

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★東大教授のあの上野千鶴子さんのように17歳の時から座学中心の高校の授業を批判し、2002年には「サヨナラ、学校化社会(太郎次郎社)」(ちくま文庫で2008年に再発刊)で、<PBL>を思わせるアクティブな授業実践の有効性を説くような進取の気性に富んだ保護者が、たくさんいるとは統計的に思えません。

★それゆえ、60名からプロジェクトを開始しようということなのでしょう。

★しかし、イノベーター日野田校長がそこまでして戦略的に行わなければならないほどの<PBL>なのです。世界から日本を見通している日野田校長も避けて通れない<新しい学びの経験>のコアは<PBL>なのでしょう。あの苅谷剛彦教授もアクティブラーニングやPBLの有効性を論じながらも、日本の教育ではなかなか難しいと語っていますが、だからこそ価値があるのです。それゆえ、多くの私立学校は<PBL>に挑戦するのです。学校が挑戦せずして、生徒にチェンジメーカーを求めても、それでは、モチベーションは上がらないからです。<PBL>のすてきなところは、教師と生徒が共に新しい学びを創っていけることなのです。

 

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2019年10月13日 (日)

2020年からの中学入試(28)ドルトン・プランと水都国際

★遅ればせながら、マリヤン B プレキシコ氏の著書「ドルトンスクール方式」 (祥伝社 2018/10/17)を読みました。1920年代にアメリカのマサチューセッツ州のドルトンの小学校において試みられたヘレン・パーカーストの教育の理念と方法論が、ドルトン東京学園に息づくのかと思うと、胸が熱くなりました。

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★ヘレン・パーカースト自身、モンテッソーリやJ.デューイに学んでいて、そこから着想を得て実践を積み上げていったのでしょう。

★そういう意味では、国際バカロレアやHTH、日本の21世紀型教育など、根っこはいっしょです。子どもを子ども扱いせず、1人の人間としてその才能を1人ひとり開花するサポートをする学びの環境を創っていくという点では同様です。

★1920年代に子どもを子ども扱いしないというのは、今とはちょっと感覚がちがうかもしれません。甘やかすなとか子供中心主義とか、まあそういう考えもありですが、ヘレン・パーカストの時代は、「子供」の権利など認識されていませんでした。考えてみれば女性でさえ、権利の闘争をしていた時代です。

★ですから「子供」をどのようにとらえるかは、時代によって違うでしょう。そこに注目すると、本書を読んで結びついたのは、水都国際の今の教育実践でした。ここはIBのディプロマの候補校ですが、そのコースを受けるのは、30人弱でしょう。大人気の学校で、それ以外の生徒はどうするのか?とお思いでしょうが、21世紀型教育の粋を極めた教育を実施しています。

★そして、その姿は、本書が述べているドルトンスクールの理念そのものが行われていると言っても過言ではありません。IBとか21世紀型教育のようにMITメディアラボやスタンフォードやハーバードの流れを汲む教育は、J.デューイやピアジェ、レヴィ・ストロースなどの考え方の系譜にあるから当然なのかもしれません。

★もちろん、水都国際は、本書に書かれている以上にSTEAM教育の側面も色濃いですが、生徒は、1人1台パソコンをもって、英語も話し、PBLを授業で行っていくだけではなく、自分たち自身が水都国際の教育をデザインするプロジェクトを立てています。

★何より、教師一人一人も生徒と同様ICTを駆使し、全員が英語を学んでいます。<新しい学びの経験>を教師も生徒も一丸となってっ創っています。思考コードという表現を使っているかどうかはわかりませんが、太田教頭は「思考コード」を生み出してきたプロフィールもあり、そのコーディングのメガネを持っています。

★IBの構造の話を聞いても、実によく理解していて、それ以上の教育を水都国際のメンバーといっしょに考えています。

★私は、ドルトンであれ、IBであれ、MITやスタンフォード、ハーバードの系譜であれ、根っこはデューイ、ピアジェ、レヴィ・ストロースにあると思っています。つまりDPLの系譜。

★もっと言えばJ.J.ルソーです。

★ですから、PBLという授業には、この系譜がコアの部分で反映し、現代化されているかという2つの側面で見ています。その現代化の方法は、多元論です。いろいろあってよいのです。

★そして、何より重要なのは、これらの<新しい学びの経験>を創出する教師自身が、DPLの系譜でありイノベーターであるということです。水都国際は、すべての教師がそうなのです。これは生徒にとって最高の環境です。

★たいていの学校は、進歩派と守旧派は必ず存在し、革新的に進んだり、揺り戻したり、なかなか大変です。

★ドルトン東京学園の教師がすべて、DPLの系譜でイノベーターであることを期待しています。

★そうそう、<「高校教育は学問ではない」上野千鶴子が17歳の時に訴えたこと 寄稿文を発見>(週刊朝日:10/13(日) 7:00配信)で、教育ジャーナリストの小林哲夫氏が発見した53年前の上野さんの貴重な文章が掲載されています。<新しい学びの経験>とは、言うまでもなく、上野さんの描く自らを見失った高校教育ではなく、上野さんが現状から脱して欲しいと考える教育と同期しています。それにしても、上野さんの訴えから、53年経ってようやく時代は動き出したとは、社会変容の難しさとそれがゆえにイノベーター教師の価値に改めて感じいりました。

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2019年10月11日 (金)

第5回 国際バカロレア教育における小論文

第5回 国際バカロレア教育における小論文
                                    2019年10月11日(金)3時限目

ニュース)ノーベル化学賞吉野彰さんのキャリアにみる論文博士の価値0)Speed Date:感じたことを語る。
1)この記事からどんなテーマを設定するか?
・IBの10の学習者像との関係は?

アクティビティ リサーチ×ディスカッション×編集×プレゼン
どの思考スキルを活用したか?

2)課題論文のテーマを作ってみる?
・TOKと課題論文の違い。
・課題論文のガイドブック

アクティビティ リサーチ×ディスカッション×編集×プレゼン
どの思考スキルを活用したか?

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

★第1回レポート提出「国際バカロレアが育成する人物像の意義」400字~800字。→メールで提出

3)評価について

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2019年10月10日 (木)

2020年からの中学入試(27)新しい女子校の可能性を2科4科の思考コード分析で考える

★新しい女子校は、新しい世界観、新しい哲学、新しいパラダイムを創る可能性が高いですね。それは男子校にも言えるのですが、何せ女性の虐げられ方は、日本ではすさまじい。それゆえ、女子校というのは、特殊現代日本の社会構造上の問題を引き受けていると考えるのは間違っていないでしょう。

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(2科4科重視型の女子校の中で、気になる女子校のデータを調べてみました。)

★女性の社会進出のあり方は、ざっくり3通りあります。1つは、パラダイムチェンジメーカー型社会進出。今までの社会制度そのものを変え、そのパラダイムチェンジメーカーとしてのリーダーシップを発揮するタイプ。これは中学入試で<新タイプ入試>を行い、授業も<新しい学びの経験>を創出している女子校がそれである。富士見丘、和洋九段女子などが筆頭でしょう。

★しかしながら、2科4科だけもしくは、2科4科を重視している女子校の場合、国語の入試問題で創造的思考を必要とする問題を出題しているところがそうです。上記の表(データは、晶文社「中学2020受験案内」から)でいえば、田園調布学園、フェリス女学院、日本女子、桜蔭、立教女学院がそうでしょう。

★2つ目は、イノベーション型社会進出。イノベーションを起こす研究者や開発者としてリーダーシップを発揮し、結果的に社会が変わっていくというタイプ。

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★これは、数学的思考を重視している女子校です。白百合、洗足学園、フェリス女学院、立教女学院、雙葉がそうでしょう。

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★3つ目は、アッパー層型社会進出。社会制度がどうあれ、その社会の中で男性と競争して、勝ち抜けばよいというアッパー層を狙うタイプ。

★2科4科の問題を思考コードで分析していみると、桜蔭、雙葉、フェリス女学院、立教女学院、白百合がそうでしょう。

★こうしてみてみると、3つのタイプすべてに顔を出しているのがフェリス女学院と立教女学院です。多様なリーダーシップが生まれる女子校だということでしょう。

★入試問題は学校の顔。その学校の先生方の知恵が反映しています。その知恵は、建学の精神も学校文化も背景に含みます。学校情報の重要のリソースです。解けるかどうかももちろん大切ですが、その学校の授業文化の質を調べるには、絶対的な資料といえましょう。ここをきちんと分析している晶文社の学校案内は必見ですね。

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2019年10月 9日 (水)

2020年からの中学入試(26)新しい女子校のランドマーク 和洋九段女子のPBL

★和洋九段女子のPBLが新しい女子校のランドマークになっています。中込校長によると、ある他の高校の生徒からインタビューを頼まれ、応じたと言います。その内容は、なぜアクティブラーニングやPBLは教育において広がらないのか?というものだったそうです。将来教師になりたいというキャリアデザインの一環として、PBlと言えば和洋九段女子だよと聞いて扉をたたいたようです。

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★未来の教師がなぜ和洋九段女子はPBLの授業を浸透させているのかリサーチに来たというのに、中込校長は驚愕したとのことです。そして、ずいぶん自分の周りでPBLに取り組んでいる仲間も増えて、PBLの時代を実感しているそうです。

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★中込先生は、化学の教科書を執筆していて、執筆仲間の論文が掲載される「化学と教育」にも寄稿しています。今回も中込校長の論文はフロントページに掲載されていますが、その仲間に当然開成の教師などもいるわけです。お互いに授業の研究もやっていて、やはりこれからはPBLだということになっているそうです。

★未来の教師にも、現役教師にも和洋九段女子のPBLはモデルになっているわけです。

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★しかし何よりも、通常授業のPBLの浸透が、ものすごい成果をあげはじめました。いや、だからこそランドマークなのでしょうが。

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★今年の中3は、SGDsスゴロクプロジェクトをつくり、SGDsを知るだけではなく、世界の政治や経済、文化など多角的に理解し、世界の問題を共有するオリジナルのスゴロクゲームを作りました。国連広報センターも巻き込んだり、中2の時から実施しているSGDsに力を入れている企業に訪問しリサーチをしてきたことなどの集大成的な試みです。もっともこれが出発点だということですが。

★ともあれ、これが、ものすごい広がりをもって展開し始めたのです。世界を変える女性が和洋九段女子には現れたのです。しかも、1人や2人ではないのです。みなそうなのです。プロジェクトチームのメンバー4人にインタビューしました。しっかりした女性でした。中3とは思えませんでした。企業とコミュニケーションをとったこの和洋九段生は、将来是非ウチにと誘われれいるほどだそうです。

★彼女たちと対話していて、グレタさんは、日本にもたくさんいるのだなあと何か希望をもらいました。インタビュー内容はいずれ21世紀型教育機構サイトに掲載します。乞うご期待。

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工学院フォーラム STEAM視点が開く新しい世界

10月27日(日)、工学院で、「第1回21世紀型STEAM教育フォーラム」が開催されます。ファシリテーターは、田中歩先生(工学院教務主任・21世紀型教育研究センターリーダー)、後藤隆宏先生(工学院国語科教諭・21STEAM教育リーダー)、福原将之氏(株式会社FlipSilverlining 代表取締役・21世紀型教育機構サポートメンバー)、そしてパネラーとして児浦良裕先生(聖学院21教育企画部長・国際部長・広報部長・21世紀型教育研究センターリーダー)も登壇します。

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★なんといっても、工学院生のファシリテーターといっしょにマイクラで世界を創るワークショップを行えるのは画期的でしょう。

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(国際コンクールのゴールドメダリストもファシリテーターとして参加)

★後藤先生によると、ICTを活用することで、頭の中で描いたものを創造することもあるが、ICTを使いながら創造物を生み出すこともあって、そこはレゴ同様セカンドブレインの作用も大きいということです。しかし、プログラミングは2つの脳を巧く活用し試行錯誤しながらもの創りにつなげていくなかなか今までにない学びがあるそうです。

★そして、このSTEAM視点とデバイスを教科授業に持ち込むことによって、たとえば、源氏物語の世界の見方が変わると言います。今回は社会の知識問題をICTを使うことによって、思考に転換してしまう世界を教科授業の中で広げてしまうということをやるそうです。

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★田中歩先生も、英語の授業でICTを使わないことはなく、ICTという「モノ」が実は世界を教室に広げる作用を認めないわけにはいかないというのです。つまり、主観が世界をつくるのではなく、客観的と思われてきたモノに眼があるわけです。主観と客観は互いに融合し合い、人間には見えない世界を授業の中で見てしまう新しい世界との接点が生まれているのです。

★ここには、「主観―客観」図式という近代哲学を脱構築する新しい哲学の発想が既にあります。まだ、日本の教育ではこの新しい哲学の必要性について気づいていません。ところが、IBを取り入れている学校では、当局が気づいているかどうかにかかわらず、来年から変わるTOKによって、この新しい哲学の視点を若干とり入れることになるでしょう。

少しずつですが、新しい世界が日本の教育にも訪れています。そんな状況の中、工学院や聖学院では、すでに訪れています。聖学院セミナーは先日終了しましたので、27日は、工学院フォーラムに参加して、新しい世界とは何か感じてみませんか。今年最後のチャンスです。

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八雲と工学院のZ世代 ラウンドスクエア国際会議で複眼思考と新しい倫理を学ぶ

★八雲学園と工学院の生徒は、インドのThe Emerald Heights International Schoolで開催されているラウンドスクエア国際会議に参加しています。そこはインド中央部のマディヤ プラデーシュ州インドールに位置します。一般に学校当局が企画する海外研修では、まずいかないでしょう。さらに、そこからバスで2時間ほど北上した、古い城下町マヘシュワールを訪れて、インドの歴史や文化そして近代化の矛盾についてフィールドワークをしたりしていますが、歴所の教科書には詳しくは載っていないでしょう。

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(写真は両校のサイトから)

★それに、ラウンドスクエアの理念であるIDEALSの1つであるService(ボランティア)も体験しています。バラザグループというチームに分かれてそれぞれ違う場所を訪問し、社会貢献活動をしたそうです。

★このバラザというチームは、世界の国からやってきた生徒で構成されるわけですから、当然、各チーム日本人は1人ということになります。

★世界50各国180校(200校ともいわれています)の代表生徒が1000人くらい集まってきて、主催加盟校の国や地域の歴史、文化、近代化の矛盾をバラザチームで議論し、主催加盟校の奉仕活動プログラムを共体験します。また自然体験プログラムも共体験します。

★ラウンドスクエアの国際会議のプログラムは、添乗員やエージェントがサポートしてくれる研修プログラムではありません。学びのゴールは世界とは何か?人間とは何か?自然とは何か?社会とは何か?矛盾とは何か?という壮大なものです。具体的なゴールは自分で決めるしかありません。

★しかもこの180余りの加盟校は、各国のエスタブリッシュ校です。もちろん、偏差値は関係ありません。世界的視野と寛容性と思考力と繊細な感性と大胆なリーダーシップだけがものをいいます。そして何よりも新しいパースペクティブをバラザで描いて共感できるかですね。

★簡単に言うと、ラウンドスクエアの生徒は、学内で哲学やTOK的視点(ラウンドスクエアはIB創設者の1人クルト・ハーンが尽力して創り出したので、親和性があります。ただ、IBのようにプログラムではなく、その学校の独自の超壮絶体験教育=アドベンチャー教育が決定的に違います)を学んでいますから、日本の教育ではマスクがかかっている最前線の哲学的な発想も身に着けています。

★工学院の生徒は、新宿キャンパスで英語による哲学授業があります。八雲学園は9カ月留学プログラムでみっちり世界観をもちろん英語で学びます。

★準備はしているのですが、それでもなかなか大変だと思います。それは当然ですし、すてきなことでしょう。ここからも、世界を変える新しい知が生まれる可能性が大です。

★ほとんどの方が、この重要性に気づくことはないでしょうが、やはり世界から眺めるパースペクティブを有している学校選びは今後ますます大切になってくるでしょう。

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2019年10月 8日 (火)

PBLの世界(40)世界の変化は迅速に拡散してウネッている 聖学院で感じたこと (了)

★受験業界でどれくらい気づいている方がいるかはわかりません。しかし、とにかく、日本は国際社会からどんどん遠のいています。ジェンダー問題しかり、教育格差然り、経済システムの劣化しかり、通貨システムの遅れしかり、そしてついに哲学まで最先端から置いていかれています。

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★それでも、あと20年は自分たちは生きていけると50代以上の世代は動こうとはしません。そんな中にあって、Z世代自らが自らの未来のパースペクティブを描いている聖学院生と及び生徒と一緒にそのパースペクティブを描こうとしている聖学院の教師は、いちはやく新しい哲学を東南アジアで見つけてきました。

★聖学院だけではなく、工学院の生徒も教師も同様です。

★もちろん、それは東洋大の准教授清水高志氏のように自覚的に理論的に捉えているわけではありません。しかし、最前線の哲学自体が、もはや理性中心主義でもないし、感性中心主義でもありません。多様なものの見方感じ方で理解すればよいのです。

★したがって、「未来を創る教師セミナー」に集った方々は、少なくともこの最先端の哲学の臭いや雰囲気や響きを共感しているはずです。

★日本の転換拠点は、まさにこの最先端の哲学を実践している人々のつながりから生まれるでしょう。

★で、その最先端の哲学とは?それは清水先生の本をどうぞご覧ください。私は本は斜め読みしかしません。草枕に登場する画家ではないですが、インスピレーション型読書ですから、紹介するほど読み込んでいません。

★私は直感的に、最先端の哲学はついに、「主観―客観」図式を「intersubject-ineterobject」図式にシフトしたのだと感じています。なんだ二元論ではないかと言われますか?いいえ、「inter」は、多元論です。あらゆるものが、このinterという繋がりの中で自分を見出すのです。自分であって自分でないわけです。自分は括弧にくくられ、前面に押し出されるのはinterというつながりです。

★国際政治は分断に向かっているように見えますが、それは二元論の多元論に対する最後の挑戦です。

★そうそう、この多元論は、人間の多様性レベルではありません。自然も社会も多元論のパースペクティブで眺めてみる必要がありますね。ミツバチからみた自然、野の菫からみた自然、アリからみた社会、ダニからみた社会・・・。

★そんなばかな?でもカタツムリに意識はあるんでしょう。だとしたら、人間だけの多様性ではリアルな世界は充満しませんね。そんなわけで、カンタンメイヤスーは、祖先以前性を唱えるのです。人間が存在していないときもリアルは存在していたのだと。

 

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PBLの世界(39)世界の変化は迅速に拡散してウネッている 聖学院で感じたこと ④

★現代思想はビジネス書に潜り込み、学問の世界からは身を隠してしまいました。哲学は大事だと叫ばれながらも、ポスト・ポストモダンを見通す哲学は日本では広まっていません。哲学は命脈を絶たれたのでしょうか?いいえ、欧米では全く新しい哲学が勃興し、文化人類学と協働し、新しい地平を見出しています。

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★日本でも教育哲学は注目を浴びていますが、その知見は、カントやヘーゲルで止まっています。それを大事にしてあがめている方もいるようですが、その哲学は未来を見通していないのです。道徳で終わる可能性があります。自ら、倫理を捨て、道徳の自縄自縛に陥ってしまうでしょう。

★そんなことを思っていた時、聖学院の「未来を創る教育セミナー」で新しい哲学がちゃんと動き始めているのに驚きました。先にご紹介した聖学院の生徒たちは、まさに哲学の最前線をすでに歩いています。彼らは英語を自在に使い、カンボジアばかりかタイにも行き、自然も社会も精神も全く自分たちと違うことに直面します。

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★そして、そこには、自分たちとは違うはかなくも豊かな世界が厳然とあるのです。レヴィ・ストロースが先進諸国以上の世界が未開の地にあったのを発見し愕然とし、欧米人の傲慢さを打ち砕いたのと同じ感覚を共感しているのです。

★そこには「主観―客観」図式の近代思考様式とは全く別の思考様式があるわけです。聖学院生は、そこに気づき、次なる世界を模索し活動し始めています。リアルとは、自分の知っている世界だけではないのです。多様なリアルが1つの世界に充満しているのです。その充満しているリアルそのもののパースペクティブを有することができるかどうかが新しい哲学を有しているか否かを決めます。

★そのことに既に気づいている教師もまたファシリテーターの役割を果たしていました。工学院の田中歩先生と聖学院の本橋先生です。田中歩先生は、英語の教師で、世界を経めぐっています。最近では東南アジアや上海にも飛び立っています。

★本橋先生は、最初英語の教師かと思ったほど英語が堪能で、東南アジアの多言語にも造詣が深いのです。数学の教師なのに!もちろん、東南アジアを経めぐっています。

★二人の先生に共通していることは、英語で世界中の人と対話して、共感の難しさとすばらしさを感じる経験値が高いということです。それから、欧米以外も旅しているので、文化人類学的な視点も自然と環境から開発されています。すでにカント的な認識論は超えているわけです。

★あらゆるものを客観的にみることや主観的にみることはもちろんしますが、それ以外の多様なものの見方ができるという柔らかさがあります。ヒーローのような鋼鉄のリーダーシップは発揮しませんが、集まったメンバーが化学反応を起こすジェネレーターとしてのリーダーシップを発揮します。今回もそうでした。≪ineter≫とか≪com≫という媒介こそがリアルなのです。

★新しい哲学は新しい人間を生みだします。新しい哲学は新しい自然へのアプローチを見つけます。新しい哲学は新しい社会を創り出します。未来を創る教師とは、哲学者ではありませんが、哲学者以上に新しい哲学を実践しているのです。

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PBLの世界(38)世界の変化は迅速に拡散してウネッている 聖学院で感じたこと ③

★今回第一部のプログラム、第二部での解題は、内田先生がファシリテーターを果たしました。内田先生はLego®︎Serious Play®︎の資格を有していて、学びのプログラムにレゴを活用しますが、そのレゴをinterObjectとして組み込んでいきます。これは内田先生自身が理事を務めている「日本SEL推進協会」で活動しているEQやシステム理論の統合によって、IQ中心社会に抑圧されていた子供たちをEQやMI、システム思考などの方法論を活用して、いかにして自己開示するかというある意味ライフワークによっているでしょう。

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★このような子供たち自身が、自己への気づきから自己の殻を破りながら創造性そのものを生みだしていく学びの多様な道具立てをしていく授業は、革命的といえるでしょう。ここにはもう「主観―客観」図式はありません。

★内田先生は、手や指が第二の脳と語りますが、それは実はメタファーではありません。むしろ脳というのは頭蓋骨の中にあるというあたかも客観的な先入観をぶち壊しているのです。

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★内田先生のすばらしいところは、授業という実践家であり、同時に多様な学びの理論を習得し、統合しようとしているところです。従来だと、生徒は、主観を排除し、客観的な知識を憶え理解し、その定着度がたった一つのモノサシで評価されてきたのです。

★しかし、内田先生の授業は、実践そのものが多様であり、理論も多様で、一つのものの見方・考え方でものをとらえる固定化した視点を砕きます。

★世界を変えるということは、世界の見方を変えるということでもあります。どんなにいろいろな経験をしても、世界の見方が変わらなければ何も変わりません。1つの見方を定着させる授業と多角的なものの見方に気づく授業と、どちらを世界は選ぶのでしょう。当然後者ですね。

★内田先生の一挙手一投足の描く軌跡は、新しい世界のデザインだったのです。

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PBLの世界(37)世界の変化は迅速に拡散してウネッている 聖学院で感じたこと ②

★今回総合司会は、株式会社カンザキメソッド代表神崎氏でした。神崎氏は、「志望理由書の書き方」「AO・推薦入試の取り組み方」を中心に私立公立問わず、多くの高校でアドバイザーをしています。自身の塾も経営しています。

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★21世紀型教育機構が神崎氏と出遭うのはおそらく必然でした。というのも、氏は、従来型の大学入試問題が「客観主義」で生徒の主観を排除する受験勉強であることに、真正面から挑んでいます。生徒自身がみずからの存在意義を考え抜き、自分が何をするのかパースペクティブを生み出す学びによって大学を目指す方法論に挑戦しているからです。

★この方法論は、「主観―客観」図式の脱構築への挑戦です。ただ自分の想いを述べるだけでは、「主観主義」なだけで、「主観―客観」図式は乗り越えられません。

★しかしながら、この挑戦は、一般入試だけではなく、AO入試や推薦入試もまだまだ「主観―客観」図式で捉えられているために、常に葛藤を抱えます。一般入試は「客観主義」だから、客観的な事実や知識を憶えればよい、AO入試や推薦入試は「主観主義」でいけばよく、何を言っても入りやすいところを受験するからよいのだとなりがちだからです。

★神崎氏は、そうではなく、多様な主観を認めながらも、その主観が独りよがりではなく、共感共鳴できるような主観=intersubjectをどうやって生徒が生み出していくのか。主観から相互主観への成長を生徒と格闘しているわけです。格闘とはオーバーのように聞こえるかもしれませんが、多くの生徒が「主観―客観」図式のフィルターをなかなか壊せないでいるからです。気づきを待ちたいでも、時間がない。。。

★今回聖学院の4人の生徒は、みずからZ世代であることの意味を考えています。したがって、ものの見方・考え方が当然「主観―客観」図式から解放されているのは当然だと思っているでしょう。彼らには「権威と服従」という図式もありません。英語とICTを駆使して、どこにでも行けるし、いろいろなものを創造できます。児浦先生同様ネットワークが充満していますから、なにかやるときに協働することは当然です。

★神崎氏は、だから、この集まりが、いつもの自分の葛藤の空間とは違うので、ときどき戸惑うときもあるでしょう。21世紀型教育機構のキャリアデザインの手法自体多様で、古きも新しも包摂してしまているからです。何せ方法多元論ですから。

★今回バックヤードで私と役割を果たしていたGLICC代表の鈴木氏も全く違うキャリデザインの志向者です。彼の周りには帰国生や留学生しかいません。大学進学準備教育の射程が日本ではなく世界なのです。ですから、実に多様な世界から日本を見つめているわけです。

★かくして、近代のものの見方である「主観―客観」図式から解放された、もちろんその解放のされ方もまた多様ですが、仲間が集まっているのが21世紀型教育研究センターです。新しい哲学のあるいは実存のフィルターを身に着けているひとの集まりということです。

★こういう世界が生まれてきたということは、やはり世界は変わりつつあるのでしょう。

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PBLの世界(36)世界の変化は迅速に拡散してウネッている 聖学院で感じたこと ①

★前回紹介した聖学院で開催された「未来の教師セミナー」を世界の変化と関係づけるとどう考えることができるのか想いを馳せてみました。レゴを使ったり、U理論やEQ、システム思考が背景に在ったり、生徒が参加者といっしょにワークショップを協働していくだけではなく、自らの考えを述べてみたり、ハーバードのアクティビティを活用したり、very50もつながったり、カンザキメソッドと結びついたり・・・。参加者も多様で、教師だけではなかったり。

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★この「~たり」の多様性が、21世紀型教育研究センターというこれまたいろいろな学校の先生がい「たり」する多様性のチームと「1つ」になっています。

★この状況は世界が変わってきた証ではないでしょうか。もちろん、当事者はその変化を感じています。しかし、その変化をどうとらえるかはまだ感覚的でしょう。また、その感覚も多様で、参加しつつ解放されたりしている場合もあるし、戸惑ったりしている場合もあります。感覚でさえも「~たり」なのです。

★このことは、実は哲学自身が水面下で大きく変わってきていることの予兆です。哲学そのものは、今もありますが、現代思想として大学入試問題まで巻き込んで、一大ムーブメントを生みだしていた時代は、1989年ベルリンの壁崩壊後、消滅したかのようでした。現代思想はポストモダニズムをどうとらえるかの足がかり手がかりだったのですが、対象を見失い、古くから存在する哲学という専門領域を細々と残しているかのようでした。

★現代思想は、「主観と客観」という二元論的な認識フィルターを壊し、新しいフィルターに交換しようとしたのですが、結局はできずに、姿を消しました。しかし、ちゃーんとサバイブしています。それはビジネスの世界です。「モノからコトへ」とか「コモディティ化」とか「ティール組織」とかビジネス書の世界でしっかり生きています。

★マーケティングや組織開発論、人材開発論などは、現代思想で彩られています。心理学の世界にも生きているし、実はPBLという学びの理論にも生きています。井庭先生が「パターンランゲージ」でシステム論という現代思想を広めているのもそうですね。デザイン思考やMITメディアラボもそうです。

★EQとかU理論などは、まさに理性中心主義から感性の復権という現代思想の一つのテーマを具現化している理論でしょう。

★ハワード・ガードナーが、MI理論にピアジェとレヴィ・ストロースという心理学と文化人類の複眼視点を用いているのもそうでしょう。

★もちろん、そんなことを意識してビジネス書が書かれているわけではないし、教育学の書籍が書かれているわけでもありません。それがゆえに、問題もあります。現代思想が乗り越えようとした「主観―客観」図式ですが、発展途上だったために、それを継承しようという流れと、わかりやすさという観点から、継承しないで「主観―客観」図式をそのまま使ってしまっている場合があり、一般に、モダニズムのままの思想が拡大してしまっています。

★だからビジネス界でも、変わりそうで変わらないという過渡期がずっと続いています。しかし、過渡期ですから、いずれ変わるのです。そのウネリはゆったりと蛇行していますから、遅々として進まないように見えますが、迅速に拡散しています。でなければ、このようなセミナーは実現しなかったでしょう。

★上記写真には、カンボジアでチェンジメーカーのきっかけを仕掛けたvery50の谷弘氏も写っていますが、東南アジアを拠点に行っているということは、意識しているかどうかはわかりませんが、体験者に文化人類学の視点が自然とはいりこむわけです。これが「~たり」という多様性の発想を体験者にもたらします。

★この発想を一身に引き受けているのが、児浦先生ですね。つねに多様なネットワークで充満している稀有な教師です。このネットワークは多様な視点を児浦先生にもたらしています。おそらく児浦先生が見ているものは、「主観―客観」図式のフィルターでみているまだまだ変わらない人とは全く違うでしょう。

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2019年10月 7日 (月)

聖学院セミナー アイウイングからプレゼンシングへの変容

★昨日6日(日)、聖学院で「第1回未来を創る教師セミナー」が開催されました。秋の学びを楽しみに多くの方が参加していました。同校が行っている思考力セミナーや授業で活用するレゴを素材に「感情・認知・資質能力・創造性」が授業の中でいかに内的連関しながらダイナミックに展開し、生徒も教師も“Hard Fun”のフロー状態にディープにダイブし、そこから水上にでてきたときに、まるで違う価値観を抱き意味付けをしている自分にいかに気づくのか、参加者と共感を深めるセミナーとなりました。

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★参加者は、教師、教育関係者、ジャーナリスト、保護者で、<新しい学びの経験>に高い関心をお持ちの方々でした。しかし、実践しているかとなるとまだこれからという方も多かったので、ファシリテーターの内田先生や児浦先生は、ある程度慎重に前提作りをしながら本番に入っていきました。

★というのも、聖学院や工学院で研修をやるときは、大前提が、大学合格実績を第一義に目標とするというのではなく、生徒1人ひとりの才能が生まれる学びの環境をいかに整えるか、生徒1人ひとりが自らの存在意義をいかに創り出すのかが理念となっているので、生徒や教師が自分の価値のフィルターの多様性を豊かにするディープダイビングしていく学びに抵抗はありません。

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★したがって、プログラムデザインの背景にあるU理論的シークエンスが描きやすいわけです。今回もそれぞれのワークで行われているアクティビティがこのUの弧を描いくようになっていたことが、プログラム終了後内田先生によって解題されました。

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★解題の前に、内田先生のプログラムのスクライビングとアクティビティ分析がされました。

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★聖学院のZ世代の生徒も参加し、驚きの活躍をしていました。

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★スクライビングやアクティビティ分析は、仲間と自分たちの学びの感情・認知・資質能力・創造性をモニタリングする対話で、同じ経験をしてもいろいろな経験があるという共感がうまれるわけですから、分析はハードな部分もありますが、基本気づきが生まれることはUのカーブを描いて解放されて楽しさで溢れるわけです。

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★スクライビングとアクティビティ分析のファシリテーターを行っていた田中歩先生(工学院教務主任)と本橋真紀子先生(聖学院数学科教諭)が途中で笑顔になりましたが、実はこれには意味があったのです。今回、参加者の日常の環境は、21世紀型教育機構の環境とは違います。競争社会の中で果敢に戦っている方ですから、いきなりU理論ベースの研修をやっても、Uのカーブは描けない場合が多いのです。

★それゆえ、内田先生と児浦先生は、用意周到に90分のうち40分準備の時間に費やしたわけです。

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★つまり、20世紀型教育をうけてきた私たちは、つねに競争の中で勝っても負けても傷ついてきました。そのような社会のことを人を幸せにしないシステムとまで揶揄されてきたものです。どうしてそうなのかというと、逆Uカーブを描いてきたのです。

★イカロスの翼で、自らの存在の響きがない人から与えられた目標に向かうことが正義であるという幻想を抱きながら、ひたすら上に向かって飛びます。到達してもしなくても、そこから失速していくカーブを描くのが20世紀型教育の正しさだったのです。

★ですから、鋭くも田中歩先生は、逆Uを結構払しょくできないまま進んでいるということに気づきました。ですから、そこを失速しないで、どうやってプレゼンシングに変容できるかが重要なファシリテーションになるなあと私たちファシリテーターとささやきながらワークショップを軌道修正していきました。

★ワークショップのファシリテーターや司会者は、あらかじめ決められたスケジュールで進む機械的動きはしません。常に刹那に話し合います。別の空間で少し長めの時間をとるときもありますが、今回は互いにささやきながら進んでいきました。

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★何がそうさせたのか、ロジカルには実はなかなか解明できません。しかし、ロゴスとアイコンとシークエンスを組み合わせることによって、多様な視点が生まれ、その周りに渦が生まれます。この渦の中心に聖学院の生徒がいましたから、Z世代という、前世代とは全く違う価値観に自分たちのものの見方が拡大されていくのを感じるまさにプレゼンシングに転換したことを田中先生と本橋先生は気づいて笑みが漏れたのです。

★ファシリテーターは、そこにいる参加者の内的変化の鏡ですから、その表情には自らハラハラドキドキそして喜びも悲しみも反映されます。今回は、Uカーブと逆Uカーブという二次関数曲線同士が、融合して3次関数に変容していました。アイウイング(イカロスの翼の略)からプレゼンシングへの転換というのは、新鮮でした。

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★そのうえで、聖学院の生徒がこの夏カンボジアで自己変容プログラムの体験についてプレゼンしました。Very50と協働して行った貴重な体験だったようです。このプロジェクト体験は授業をはるかに超えた、もしかしたら大学でもなかなか体験できない優れものです。

★時間が限られていたので、細かい話までは聞けませんでしたが、才能が爆発して、1人ひとりが未来を今自分の手にしている力がみなぎっていたことは参加者と共有・共感できていました。

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★今回のセミナーの流れを簡潔にまとめたのは、株式会社カンザキメソッドの代表神崎氏です。授業というPBLとカンボジアプログラムのような教育活動のPBLが有機的につながる実感を共有できたと思います。あるいは化学反応を起こすつながりかもしれません。学校という空間が、才能あふれる学びの場となることこそ<新しい学びの経験>を生み出す源泉ですと。

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★そして、参加者の1人工学院の後藤先生から、今月27日(日)工学院で2つのSTEAMをつなぐフォーラムを行うことのPRもしっかりありました。10月を学びの色で染める21世紀型教育機構の先生方の活躍が続きます。そして、当日は、聖学院同様工学院のZ世代もファシリテーターとして活躍します。

 

 

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2019年10月 5日 (土)

PBLの世界(35)日本の学習指導要領では世界に通じないわけ それを解決するために

★日本語IB校200校目指してという文科省が旗を振って、もう137校(必ずしも日本語ではないが)が誕生したと言われています。しかしながら、DPを受講している人数は、各校20人前後。他の生徒はIBのエッセンスを学ぶということになっている可能性が高いわけです。

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★また、新学習指導要領の中で「探究」というキーワードが随所に出てきます。おそらくIBのDPのプログラムモデルをなぞって、イメージして、上記のような絵を描いている方が多いでしょう。やたら「教科横断型」という言葉を使う方が多いところからもわかります。

★しかしながら、実際にはIBのようにコアカリキュラムの領域が他の教科と結合しているようには、新学習指導要領では有機的に結びつくことは難しいでしょう。標榜することはできますが、現実はバラバラです。なぜなら、IBのように結合するシステムが考案されていないからです。システムなき精神主義。教科横断でなければならないという道徳主義で実効性が薄いわけです。

★探究は、IBのEE(課題論文)とCAS(創造性・活動・奉仕)の部分は行うことができます。すでにそのようなカリキュラムになっているところも多いでしょう。しかしながら、TOK(知の理論)に相当する学びの経験を用意していません。これこそ、有機的に結びつけるシステムの1つです。

★もう1つあります。それは「10の学習者像」です。日本の学習指導要領にこのような考え方があったとしても、あくまで最終的なゴールや理念という位置づけになるでしょう。

★しかし、IBの場合、TOKでもEEでもCASでも教科でも、どの学びの中にどのように10の学習者像が生きているのかそのつどリフレクションされます。

★いまここで学んでいることがどんな人間存在として成長しているのかリフレクションしていくわけです。決して大学に合格するためのテクニックや思考力をトレーニングするわけではありません。TOKと人間存在なのです。それが根源システムです。

★日本の学習指導要領で、そんなリフレクションはまずないでしょう。せいぜい単元や授業の知識の目標が達成されたかどうかのリフレクションで、そこに人間存在を意識することはないでしょう。

★IBでなくても、TOKや10の学習者像に相当するものは欧米の各国の教育の中にはあります。それはクリティカルシンキングと哲学授業です。

★TOKを行わなくてもクリティカルシンキングを入れればそして10の学習者像がなくても、哲学授業があれば、日本の学習指導要領の欠陥を補うことができるでしょう。

★今は、これがないから、思考力ってなんだとか、AO入試や志望理由書を書くにあたって、その前提の構えがなっていないとかいう議論になります。クリティカルシンキングと哲学なんて嫌いだという先生もいっぱいいますね。その場合は、数学的思考を持ち込みます。これは実にシンプルで、強力です。

★この大学入試改革の混乱は、多くの関係者が、クリティカルシンキングや哲学的な素養を持っていないか、数学的思考を決定的にもっていないかどちらかですね。

★だから、フェルミ推定ができずに、いつも現場主義です。現場が困っているからどうしてくれるんだというのは道徳です。倫理ではありません。正義でもありません。

★高校生が真剣に考えない読解力がない自己肯定感が低い、モチベーションが低いと嘆く方も多いですね。自分の小さな理念つまり道徳に合わしてくれないからと嘆いているだけです。

★そもそも大学受験システムそのものが間違っているのですよ。それに合わせること自体辛いですよね。でも社会がそう簡単に変わらないのだから、その中でどうサバイブし、機会を見つけて変えていこうとするのか共に考えていくのが倫理です。

★しかしながら、TOK的視点や10の学習者像のアプローチがなくても、クリティカルシンキングの素養や哲学的素養がなくても、まして数学的思考力がなくても、なんとかできる方法があります。

★それは、教育や学びの基礎である「経験」を記号論的に授業の中に組み込む手法です。多くの人がいやがる枠やフレームやテンプレートですが、記号論的「経験」というフレームはなぜかあまり抵抗感がありません。

★フレームや枠やテンプレートのない思考力や想像力がお化けのように存在していると信じる現場の先生は意外といます。だから、枠組みやフレームやテンプレートは思考力の自由を奪うみたいなあるいはT型フォードのようにベルトコンベアに乗せて物をつくるような間違ったメタファーを使いがちです。

★肉体がなくなっても魂は存在するのだという宗教的というか道徳的発想ですね。

★しかしながら、なぜか活動と思考は一体化ととらえることは疑問がないようです。

★であれば、この記号論的「経験」を活用しようではありませんか。この記号論的「経験」の表現方法の1つが井庭教授の「パターンランゲージ」という記号論的「経験」手法があります。

★それ以外にハーバード大学の「アクティビティタイプ」です。この記号論的「経験」は、U理論やEQ、そしてMIなどの認知的能力非認知的能力全体と親和性が高いものです。

★もちろん、教育学的にも心理学的にも社会学的にも文化人類学的にも哲学的にも言語学的にもかなり深いものがありますが、デューイ的発想ではないですが、記号論的「経験」という道具を使っているうちに自然にそこに新たな世界や思考が生まれてくるのです。システムこそ世界であり思考であるというのはそういう意味ですね。

★デバイスという道具をZ世代が、深い理屈を知らなくても、使っているうちにいろいろなアイデアや発想、思考を生みだしていくのと基本は同構造なのです。これは東洋思想のタオや岡倉天心の茶の道に通じる発想です。

★東洋思想なんて?と欧米の教育をモデルにしている経産省や文科省は思うでしょう。しかし、ヨーロッパ啓蒙思想は儒学にそもそも影響を受けています。思考とは壮大な歴史的遺伝子を継承しています。遺伝子はフレームがなければサバイブできません。

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【速報】八雲学園と工学院の代表生徒がラウンドスクエア国際会議に参加

★今、八雲学園の工学院は、インドのインドールのThe Emerald Heights International Schoolで行われているラウンドスクエアの国際会議に参加しています。ガンジー生誕150周年とも重なり歴史的な会議になりそうです。1,000人以上が世界50カ国から集結しているということです。

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(ラウンドスクエア理事長ロッドフレーザー氏と撮影する八雲生)

★今回のテーマは、Sarvodaya ~The world we wish to seeで、Sarvodayaとは、サンスクリット語で「全ての人が進歩すること」を意味するということです。

★各学校の紹介パフォーマンスから始まり、キーノートスピーチは、ノーベル平和賞を受賞したカイラシュ・サティヤルティ氏と世界で初めて市民権を与えられたロボット"The First Robot Citizen"とキランガンジー氏のスピーチが行われたそうです。

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(工学院の生徒はRSの国際会議は、今回が初めてです)

★キーノートスピーチの後は、チームに分かれてディスカッションをしたり、The Emerald Heights International Schoolのボランティア活動や自然体験などを経験していくでしょう。ラウンドスクエアの加盟校のプログラムは極限の体験を通して人間の深い存在意義に気づき、それがゆえ世界を確かなものにしていくリーダーシップを発揮するミッションを身にしみ込ませる学校ばかりです。

★日本から八雲学園と工学院が参加し、日本人も経済システムだけではなく、人間存在という意味から世界を創るリーダーの仲間に参加していく挑戦をしているのです。

★海外研修とか留学とかとはまた違う次元のグローバルな活動がようやく日本でも始まりました。これからますます注目していきたいと思います。

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2019年10月 4日 (金)

第4回 国際バカロレア教育における哲学型授業TOK。

第4回 国際バカロレア教育における哲学型授業TOK。
                                            2019年10月4日(金)3時限目

ニュース)トロッコ問題の是非

0)Speed Date:感じたことを語る。

1)トロッコ問題をTOKとして出題するとしたらどういう問いになるか?

TOKガイドブック
・IBの10の学習者像との関係は?

アクティビティ リサーチ×ディスカッション×編集×プレゼン
どの思考スキルを活用したか?

2)物理学の問題「なぜ宇宙船の中ではキャンドルを燃やせないのですか?」をTOK的として問うとどうなるか?
・TOKと教科の関係

アクティビティ リサーチ×ディスカッション×編集×プレゼン
どの思考スキルを活用したか?

比較
根拠
カテゴライズ
具体化
抽象化
置換
変換・転換
矛盾・逆説
統合
文法・計算
インプロ(Improvisationは英語のみならず創造的思考において重要な能力)

3)事後リサーチ
「あなたならリンゴをどう説明しますか?をTOKとして問うとどうなるか。400字で記述。」→メールで提出
・パラグラフライティングに従って書く。

5)事前リサーチ
「TOKとEE(課題論文)の違いについてWebリサーチをして、概要をイメージしてきてください。」

6)評価について

 

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2019年10月 3日 (木)

PBLの世界(34)香里ヌヴェール学院小学校の西山校長の情熱 生徒の心を動かす

★今春、香里ヌヴェール学院小学校の校長に就任した西山校長の教育の情熱の右に出るものはいないのではないかと思えるほど。生徒が破格に変容する<新しい学びの経験>として英語のディベートを学内に広め、中高の生徒も巻き込んでいます。

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★理事長赤野先生が主宰の聖母女学院グループの教育研究センターで行われているPBL研修会で、西山校長は、英語ディベートの成果についてプレゼンしました。とはいってもワークショップ型プレゼンで、参加していたグループの園長、校長、学院長にミニディベート体験のワークショップを挿入しながら展開していきました。

★西山先生のディベートは、麻布や栄光や豊島岡女子などが実施しているガチなものからスタートするのではなく、即興ディベートを生徒と行いながらだんだん本格的になっていきます。

★参加した中高生は、最初は麻布や栄光に比べて偏差値が違いすぎる、自分たちにできるのかと、予想通り不安だったそうですが、やっていくうちに、思考力は偏差値は関係ないと自分で自分の中につくっていた壁をぶち破り始めたそうです。

★西山先生は、ディベートもPBLの1つのスタイルで、自分の殻を破り羽ばたいていけるGrowth Mindsetを行う場づくりなのですと主張します。けっして英語のスキルだけを小学校の時からトレーニングするわけではないのですと。

★来年に向けての小学校の募集も、昨年比2倍になっているのも、西山先生の情熱が伝わっているからでしょう。もちろん、西山先生は自分の力を過信することなどありません。

★むしろ組織のチームワークをいかに形成するかそこにマネジメントを集中しています。

★西山校長自身がPBLとは何かの意義を知り尽くし、実践家でもあります。たしかに同校の先生方とのチームワークがものすごいことはわかります。しかし、やはり校長の情熱は保護者にはダイレクトに伝わるものです。

★そして情熱家であるだけでなく、誰が見ても賢い方です。ホットハートとクールヘッドの持ち主。天は二物を与えたわけです。いつのまにか関西地区のディベートグロースマインドセットの拠点に香里ヌヴェール学院はなっているそうです。

★赤野理事長の若手校長登用の戦略ははやくも成果をあげそうです。情熱と賢さという破壊的創造者の校長の出現。様々なルサンチマンを愛に変えて前進していくことでしょう。未来の教師の希望であり、生徒が勇気と自信を自ら生み出すエネルギーの源太陽神。それが西山校長の構えです。

 

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PBLの世界(33)聖学院の毎回の授業で生徒は成長する

★昨日、聖学院フューチャーセンターで、児浦先生主宰の「授業デザイン研究会」が開催されました。10月12日(土)の思考力セミナーのプログラムに同僚が参加するデモンストレーションであり、セミナーに込められている授業のエッセンスを「アクティビティアイコン分析」と「思考コード分析」をしました。

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★また、10月6日(日)に同校と21世紀型教育機構と児浦先生がリーダーの21世紀型教育研究センター協働主催による「第1回未来を創る教師セミナー」の準備も兼ねて、内田先生のU理論分析も行いました。

★多角的なアプローチで授業を分析したり統合したりしたけわけですが、それに耐えられる豊かな質の授業が思考力セミナーで行われていることが改めて同僚の先生方とシェアできていたようです。

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★まずは、思考力セミナーに小学校6年生になったつもりで、同僚の先生方が参加。内容は10月12日(土)に行われますのでここでは公開できませんが、同僚力がすさまじく、いろいろな反応を受験生になったつもりでロールプレイしていました。ファシリテーターである本橋先生と内田先生は、その反応をみながら、プログラムを軌道修正していました。

★こうして、本番はもっと洗練されたプログラムになるという仕掛けです。

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★セミナーのワークショップ終了後、すぐにスクライビングをして授業の流れをフローチャート化しました。もうこのスクライビングは聖学院の先生方にとってはお手のもので、授業を議論しながらリフレクションし再構成していきます。

★そして、いつもなら、学びのスタイルを分析するのですが、今回はアクティビティアイコンでフローチャートを置き換えなおしました。そのうえで、それぞれのアクティビティで、生徒はどんな気持ちになっているのか、どんな能力を発揮しているのか、どちらかというと非認知能力の言語化をしていきました。

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★このスリリングな詳しい内容は10月6日のセミナーのワークショップでも行いますので、ここではまだ控えておきます。とにかく、聖学院の先生方が、一時間の授業の中で、生徒の内面のダイナミックな変容(外から見ていると小さなサインでしかありません)を見逃さない目を有しているのに感動しました。このような教師がたくさん存在しているから人気があるのは当然ですね。

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★さらに、そのアクティビティでどのような思考の深さに生徒は没入していくのか「思考コード」分析をしました。先生方は、思考コードをすでに使い慣れているので、思考コードをプラットフォームから引き出さないで、自然に分析していきました。

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★そして、内田先生がU理論(このUは内田を示しているわけではないそうですが、どこか象徴的でした^^)に沿って、各チームが分析した「アクティビティアイコン分析」「思考コード分析」を子供の成長のダイナミズムに「統合」していきました。

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★気づきを生みだした生徒自身が自分の創造性を発見し、それを結晶化していく授業展開を自分たち教師は行っているのであり、その結晶化したプロトタイプを世界に広げていく多様な教育活動の意味を改めて先生方は味わっていました。児浦先生は授業と多様な教育活動が有機的に結合している実感を共有できたとリフレクションしながら研究会を終えました。

 

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2019年10月 2日 (水)

PBLの世界(32)学力も伸ばす才能も開花する学びのコンビネーションは?

★才能は伸ばすけれど、現状の大学入試問題が解ける学力は伸びないでは困ります。もちろん、学力は伸びるけれど、才能は開花されないは、今後の<新しい学びの経験>では論外です。しかし、学力だって捨てたものではない。才能が開花すれば、学力が伸びなくていいなんて、それも論外ですね。

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★授業は「レクチャー」「問答講義」「PIL」「PBL」に大きく分けられるけれど、学びの内容によってコンビネーションが妥当です。学力だけを伸ばしたいのなら、「レクチャー」が最適でしょう。

★生徒との対話を重視し、理解を定着させるには「問答講義」がよいでしょうが、これだと学力も伸びないし、才能も開花しませんね。もちろん、生徒自身の能力で、勝手に学力を伸ばし、才能を開花する場合はあるでしょう。

★しかし、もっとも「学力」を伸ばす方法は、「PIL」です。残念ながら、これはほとんどの学校で実行できていないですね。ICTがないとうまくいかないからです。

★「PBL」は才能を開花するけれど、学力を伸ばすのは、ダイレクトな目的ではないから、やはり「PIL」とのコンビネーションが最適です。

★このPIL×PBLを行う準備ができているプログラムを用意している学校を探しましょう。

★10月6日の聖学院でのセミナーと10月27日の工学院でのフォーラム両方参加するとそれがばっちりわかります。

★才能も開花し、大学合格実績も出せる方法です。教育は理想主義だけでも現実主義だけでも、生徒にとっていい迷惑です。両方必要です。プラグマティックな教育実践こそ希望です。

★理想ばかり語っている教育者は空虚だし、現実ばかり語っている教育者は愚かです。メディアに幻惑されないようにしましょう。

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2020年からの中学入試(25)新しい女子校の希望 和洋九段女子

★OECD加盟国の中で日本の女性の社会進出度は、後ろから数えて2番目という醜悪さです。したがって、現政権は女性の社会進出に道を開こうとして必死なわけですが、新しい女子校である和洋九段女子は、目指すべき志や世界的視点が全く違います。

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(和洋九段女子フューチャールームは知の拠点)

★少子高齢化だから、女性も働けば生産労働者人口を補えるという発想や家事をIoTで代行し女性を労働力として活用しようとか、社会進出して女性は輝くとかいう発想は、ないよりましですが、それはすべてGDPの右肩さがりを抑制するための政策で、根本的な社会の問題が放置されたままです。

★和洋九段女子は、全校挙げてSDGsに取り組んでいますが、これは、現状の男性中心社会を持続可能にし、そこで女性が社会進出する学歴や資格を身につければよいのだという以前からあるそして今ご紹介したような発想にも通じる従来型の女子校の発想では全くないのです。

★SDGsに取り組んでいる団体には、実際にそんなことを考えないで、ただマーケットで流行っていて儲かるからという理由で行っているところもあります。そのような時流を巧みに利用する団体はSDGsに限らず、たとえば、復興支援という名の下で行ってしまうところもあるぐらいですから、悲しいことに従来型の欲望経済社会の中で女性の社会進出を果たそうとすることに結果的になってきたということは否定できないのです。

★しかし、和洋九段女子は、そこに一石を投じます。中1でSDGsの考え方を徹底的に学びます。中2でSDGsに取り組んでいる企業研究をします。どう取り組んでいるかだけではなく、その企業のSDGsの取り組みがどのような社会的インパクトを生みだしているのか、社会にどれくらい貢献しているのか、その企業価値は自己利益のためなのか社会的な繋がりの中で生まれようとしているのか、徹底的にインタビューしています。

★このインタビューの活動は、実は事実を調べるというだけではなく、SDGsの本来的な価値を共有できるかという根源的な問いを企業側に投げかける創発行為です。

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(中3はSDGs双六をつくって、ワークショップを行います)

★中3では、SDGsの考え方を自分たちで世の中に広める社会貢献活動を主体的に行っています。たとえば、文化祭の時に見学できたのですが、SDGs双六を自ら創り、参加者とワークショップを行い、リフレクションして、社会がどのように変化したらよいのか互いの気づきを共有するのです。

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★ファシリテーターは、もちろん中3の生徒が自分で行います。こうした活動ができるのは、和洋九段女子のすべての授業がPBL(プロジェクト型の学習)になっているからです。

★高校になると、沖縄平和学習、過疎地の町おこし活動、キャリア教育などで具体的にSDGsと絡んでいきます。

★もちろん、シンガポールをはじめとする海外研修や海外大学準備教育においてもそれは一貫しています。

★なぜ和洋九段女子はSDGsなのか?それは自然を破壊し、格差社会を広げていった男性中心社会に替わる新しい循環型社会を構想する力を身に着けることにつながるからです。イノベーションによって右肩下がりの従来型の欲望経済社会を活性化するのではなく、イノベーションによって新しい循環型社会に変えるという意味でチェンジメーカーとして社会進出する女性を育てるのが新しい女子校としての和洋九段女子なのです。希望の新しい女子校です。

 

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2019年10月 1日 (火)

2020年からの中学入試(24)新しい女子校の誕生 富士見丘

★先進諸国で、日本の女性の社会進出は極めて低迷しています。そんな中で、富士見丘のZ世代は、既存の閉塞状況の男性中心的社会で活躍するというよりも、それを解消し好循環に転換する新しい秩序を形成するグローバルリーダーとして活躍することになりそうです。

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★先日の文化祭でも最上階のラウンジであるペントハウスで説明会を開く予定でしたが、入りきれないというので、急遽200人収容できるホールに変更になりました。

★受験市場で、何かが動き始めたようです。

★文化祭の模様は、次のページをご覧ください。新しい女子校の出現の意味が伝わると思います。

富士見丘 魅力的なグローバル教育(1)

富士見丘 魅力的なグローバル教育(2)

富士見丘 魅力的なグローバル教育(了)

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