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2019年9月12日 (木)

2020年からの中学入試(09)4科入試の思考型問題のモデル~麻布の場合

★4科入試で思考型問題が増えてきたという傾向がでてきたと言われています。これは時代の要請から考えればよい傾向です。しかしながら、その質を問わなければ、記述でも記憶の問題だったりすというのは、前回述べました。という意味では、海城学園のような骨太の思考型問題を出題するところは実はまだまだ限定的かもしれません。

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★一方で、麻布の問題は、海城学園以上に深い思考型問題を投げかけてきます。もしも、海城学園と同じ末法思想と浄土教の関係を扱うとしたら、麻布の場合は、海城学園と同じような問題も出題はしますが、さらに平安後期の末法思想の時代に限らず、病や天変地異が同じように発生したり、時代としては行き詰まっている他の時代をいくつか素材文章の中に記述して、時代の変化と不安や恐れが生まれるメカニズムを考える問いを投げかけてくるでしょう。

★末法思想や終末思想、デストピア思想は、長大な歴史の中で何度となく出現します。そして、おそらくその変わり目のときには、それぞれの時代の都市生活がピークを過ぎている共通点がありますから、都市を多角的に考える問いを幾つか出して、社会の変化が生まれるメカニズムを広い視野で考えていく問いが配置されると思います。

★そのうえで、毎年必ず、現代の問題に到達します。たとえば、いろいろな国で起こっているデモや抗議運動など、共通のメカニズムや時代の違いを考える問いを出題したうえで、今日本で不安や恐れが原因で発生しそうな動きを予想させ、その不安を払しょくするために人々はどう動くのかまで推理させるでしょう。そして、君ならそのような情況をどのように解決しようとするのか最終問題で問うてくるでしょう。

★システム思考と言えばそうなのでしょうが、とにかく歴史や社会の変化のメカニズムやその構造を考える視座を広げる問いを設定し、現代の問題をどのように生徒が引き受けていくのか問いかけるのです。知識の問題ももちろん、出題されますが、そのような流れを大きく捉えるための問題ですから、教科書にある程度の基本的な知識です。

★このような問題は、適性検査では出題されません。適性検査型問題は、一つのテーマで作問することはないからです。

★すべての学校が、麻布のような問題を出題することはできないでしょう。何せ、麻布の問題は、2月1日1回だけで、問題を練りにい練って作成できますし、合格発表も2月3日と採点に十分時間をかけられます。

★ですから、即日合格発表を出す学校が多い中、2科4科入試で骨太の思考型問題を出題するというのは、実は無理なのです。記述の形式の問題は出題することはできます。しかし、それはキーワードがあるかないかで、減点していく採点しやすい問いです。

★それでは、この状況は麻布や海城のような学校に限られた話なのでしょうか。いいえ、それでは、受験生の才能を見出す機会が設定できません。そこで、出題したいでも時間的に難しいというジレンマを乗り越えるために創意工夫して開発されたのが、聖学院、かえつ有明、工学院のような思考力入試だったのです。

★これによって、偏差値にかかわらず、思考力を発揮するチャンスが生まれたのです。これは、偏差値階層は不動だという幻想を崩すきっかけになりました。中学入試の<新しい学びの経験>が加わることによって、このマーケットにも新しい息吹が広まりました。

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