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2019年9月29日 (日)

PBLの世界(27)工学院PBLさらなる進化/深化①

★工学院のPBL(Project based Learning)は、あることを契機にグンと進化あるいはグググっと深化しました。その契機とは最後の章で語りたいと思います。ここでは、まず、そのPBL授業の様子を簡単にご紹介します。

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★柳田先生は、中1の歴史の授業で、東大の社会の一般入試レベルの思考の視点を最初の20分で、問答形式で展開していきます。東大の一般入試のレベルというのは、教科書以上の知識はあまり必要ないのです。知識と知識の関係をアウトプットできることと、時代が異なっても共通の構造を見出して、知識を紡いでいく視点があればよいのです。

★すなわち、共時的な知識の関連と通時的な知識の関連の複眼思考ができればそれでよいのです。それでよいといっても、中1の段階でこれはかなり挑戦的です。それゆえ、生徒によってレベルが高すぎます。すると、そういう生徒は内発的モチベーションを鎮火してしまいます。

★そこで、普通なら外発的モチベーションや抑止力を外から発動するあの見た目、ピシッとした授業が成り立つわけですが、柳田先生は、それをやっては教師として負けだと語ります。あくまでも、内発的モチベーションにこだわります。

★歴史は、ある意味権力関係の変遷史でもありますから、その生徒が好奇心を持っている世界の言葉をふってみます。奈良時代の政権について、授業をしていたので、部活やポケモンの人間関係を「見立て」るわけです。この「見立て」は、カイヨワに言わせればミミクリーであり、アリストテレス以来重視されているリベラルアーツの「ミメーシス」です。つまり、模倣ということですが。

★しかしながら、それだけではまだまだ足りないので、生徒1人ひとりの最近接発達領域を見出し、そこから思考が展開するようにするにはいかにしたら可能か、柳田先生の探究はさらに深まっていきます。自己マスタリーに余念がないわけです。

★そして残りの30分は、いきなり「幸せな社会を君ならどうつくるか、チームで話し合ってプレゼンしてね」とぶち上げます。生徒は、いつものことだという雰囲気です。もちろん、この問題を考える時に条件は提示します。税金や法律について言及すること。そうなると、iPadでリサーチしないわけいにはいきません。

★これは、歴史の学びは過去の事ではなく、ある意味物語を編集してはその事実性の検証をしていく作業であると同時に、その時代の人々にとっては、未来の歴史物語を紡ぐことだという再認識をすることでもあります。過去を見れば事実性ですが、過去から見れば未来性なのです。

★というわけで、その時代その時代の社会を学ぶと同時に今ならどうするのかを考えるわけです。共時性、通時性、未来性の3点で歴史のPBL授業を展開していくのが、奥田先生のPBL授業の特徴でしょう。生徒は、ピータ・センゲ教授のいうシステム思考を拡大していくのです。

★そして、この未来性の視点は、東大の帰国生入試の小論文を考える視点とシンクロします。東大の文Ⅰの帰国生入試問題でもズバリ「幸せな社会をあなたはどうつくっていきますか、論じなさい」と問いかけてきます。

★グローバル教育を推進している工学院のコンセプトは、柳田先生の歴史のPBL授業にも反映しているのです。

★とはいえ、この挑戦は教師も生徒も並大抵のものではありません。同僚がその経過を切り取ってみると、ハラハラドキドキでしょう。しかし、授業は点ではありません。全体の見通しが必要ですね。

★すなわち、その全体の授業のダイナミズムをまるで嵐の海を教師と生徒が乗り越えていくかのように踏ん張るわけです。柳田先生の心の葛藤は凄まじいけれど、同時にそれを乗り越える学問に対するあくなき追究力と生徒の成長を願う心意気がそのつど、その葛藤をポジティブエナジーに転換していきます。

★それができるのは、もちろん、そういうメンタルモデルを持っている柳田先生の資質が大きいですが、チームTGプロジェクトのメンバーであるがゆえということもあります。このチームは要するにチーム田中ですから、教務主任の田中先生や仲間と対話できる機会が一般の学校に比べて多いということも大きな要因でしょう。

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