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2019年9月 4日 (水)

PBLの世界(24)ダニエル・ゴールマンとピーター・センゲと思考コードと。

★「個人の内面の世界」と「社会的な関係の世界」について、ダニエル・ゴールマンは20世紀末に、IQで測れないEQという形で新しいマインドに対する考え方を世に出した。同時期に、同様の発想で、ハワード・ガードナーも多重知能としてMIを発表していたが、当時はIQ vs EQというのがわかりやすかったし、ダニエル・ゴールマンは、学校や企業にEQを取り入れるビジネス展開をしたから、その普及の速度と拡大はすさまじかった。

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★一方で、組織開発の新しい発想として、学習する組織の概念を生みだし、その中にシステム思考をわかりやすく図式化も加えて紹介したのがピーター・センゲだった。この学習する組織やその柱であるシステム思考も、20世紀末の激変の時代に生まれた環境破壊、格差問題など全体を捉えながら経済社会を創らざるを得なくなった時代の精神にマッチし、広く伝わった。

★20世紀末から私学の先生方とHondaと研究・開発し始めたPBL(Project based Learning)には、EQの発想やMIの発想を導入していたから、PBLが単なる認知的問題解決だけではなく、社会的な人間関係も含む(今でいう非認知的能力とかコンピテンシーと置き換えることも可能だ)トータルな問題解決プログラムとして開発実践していた。しかし、この段階ではまだ「総合的な学習の時間」で実施するPBLが想定されていた。

★ところが、2011年からは、21世紀型教育機構の通常の授業そのものをPBLに変容するミッションが時代の要請にしたがって湧き出てきた。知識集約型の授業経験で育つ人材では、地球全体の問題が身近な問題と重なってしまうグローバルな社会にあっては、役に立たないということが身に染みてわかる事件が世界で頻繁に起こるようになったからだ。

★化石燃料による自然環境破壊の反動としての自然の猛威、化石燃料奪取の絶え間ぬ競争が生み出す社会格差とその格差の反作用として勃発するテロの脅威、化石燃料奪取競争によって社会経済生活の土台に抑圧的な組織構造が慣習化し、それによって人間精神が崩壊していく凄惨さが三つ巴になって毎日のようにニュースになった。

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★身近なところに地球全体の循環が不具合を起こしていることが露になってきたわけだから、それを理解し、課題を発見し、解決するには、自然と社会と精神の全体のシステムを探究できるシステム思考が必要だった。自分事としてのシステム思考というわけだ。

★そして、PBLがすべての教科授業で行えるには、学習する組織をベースにすることが必要であり、そこでシステム思考を展開しようとした。それがPBLという授業のアップデートだった。

★この学習する組織形成とシステム思考創出のために、授業で教師も生徒もどの段階にまで進化したのかリフレクションするコンパスを作成した。それが思考コードである。学校によって違うが、標準形としていつも紹介している21世紀型教育機構の思考コードは図のようなものである。

★もともとグレゴリー・ベイトソンの「精神の生態系」に影響を受けていたから、「個人の内面の世界」「社会関係の世界」「自然と社会と精神の関係総体」はつながっているとは想定していた。しかし、システム思考は「自然と社会と精神の関係総体」を考えるのには使いやすいが、「個人の内面の世界」「社会関係の世界」を洞察するにはモノサシが大きすぎた。

★ベイトソンのこの3つの世界がつながる思想は魅力的だが、文化人類学者で精神分析学者で、教育実践家ではないから、そのメタメッセージを日々の授業にどう具体化するかは自分たちで解決するしかない。

★そんなときに、EQは活用しやすいと思っていた。聖学院のマインドフルネスリーダー内田真哉先生がEQコーディネーターの資格をもっていて、共にPBLの研修を行う機会もあり、やはりEQを盛り込んでおくことは間違いがないと確信しながら思考コードを使っていった。

★とはいえ、ベイトソン、ゴールマン、ガードナー、センゲという発想を、パッチワーク的に組み立てて思考コードを創ってみたものの、彼らの発想に耐えられるかどうかは証明のしようがなかった。

★そんなときに、ゴールマンとセンゲが、三つの世界のシナジー効果を考える小冊子を共に書いていることを知った。三つの世界は、二人が出会う前は、それぞれ独立して展開されていたが、それらは繋がっているはずだという実践例があふれでていて、その3つの世界をつなぐステージに積極的に進まなければ、その3つは繋がっているはずなのにというフラストレーションは解消されないだろうということで、共著となったという。私のつながるはずだが証明が今イチだというストレスは世界標準の違和感だったということに気づいて驚いた。

★結果的に、時代の精神を読み解く行為は、地球上のどこにいても、呼吸を一つにするというか同期するというか、実に興味深いシナジー効果を生みだしているものである。

★かくして、2021年以降のPBLは、ベイトソン、ゴールマン、ガードナー、センゲ、そして、ガードナーが研究したピアジェやレビ・ストロースの系譜であるMITメディアラボやハーバード大学、スタンフォード大学などの世界標準の見識をますますPBLの中に統合していくことの重要性に内発的モチベーションは燃えるのである。中でもベイトソンの再起動は最重要だろう。

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