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2019年9月 9日 (月)

2020年からの中学入試(07)公立中高一貫校の全国約200校の意義。

★2022年までに、茨城県が公立中高一貫校を10校新設しますから、全国の公立中高一貫校はそれまでに200校以上になります。この数は何を意味しているのでしょうか?片方で、IB(国際バカロレア)認定校200校計画が推進されて久しいですが、こちらもすでに130校を超えています。おそらくいずれ200校に到達するでしょう。

★IB校は必ずしも公立学校ばかりではないですが、ここも増えていくことは必至です。一体これらの動きは何を意味するのでしょうか?それは結論先取り的に言ってしまえば、私立中高一貫校の教育システムを変容させるという大きな意味があるということです。

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(首都圏模試センターのサイトには、茨城県で、2022年度までに中高一貫校を10校開設する情報や東京都立の公立中高一貫校10校のうち、併設型の高等学校・附属中学校として設置されていた5校(武蔵・富士・両国・大泉・白鷗)が、2022年までに高校募集を停止し、中学募集の規模を拡大する情報について詳細に記述されています。)

★リーマンショック以降から2013年ぐらいまでの私立中高一貫校の生徒募集の減少は、経済の低迷と少子高齢化の影響が大きいわけですが、実は公立中高一貫校の増加が関係していないわけはありません。中学入試において、家庭層が年収1000万円以上とは限りません。しかも世帯年収でなんとかやりくりしているという実態もあります。そこに無料の公立中高一貫校ができたのですから、そこへ流れるのは当然です。

★しかしながら単純にお金でだけではなく、カリキュラムの質がよいからその流れが大きくならないわけがないのです。エッ!どうやってそんな中身までわかるの?それはすでに人気のある成城と東洋大京北のカリキュラムを見ればわかります。両方とも、公立中高一貫校や日比谷の校長だった先生が校長に就任して、カリキュラムを改善しました。その質の高さはすぐに評価され、成城はもともと人気だったのに、もっと人気がでました。東洋大京北は、東洋大学の附属化になったということもありますが、実はカリキュラムそのものが変わり、人気がうなぎ上りになったのです。

★このようなことが、うすうす私立中高一貫校側もわかってきました。そして開成や麻布のように大学合格実績を出そうと、右へ倣えをするのをやめる私立中高一貫校が登場したのが2011年前後です。適性検査型入試を開始し、はじめは公立中高一貫校の受け皿になろうとしましたが、思考力入試という論理的・批判的・創造的思考に注力した<新入試>を開発しはじめたのです。

★なぜかというと、ミニ開成はもうたくさんあって、今更そこに参入しても、そう簡単に打ち勝つことはできません。そうしているうちに生徒は来なくなるでしょう。別次元の方法を考えなくてはならなかったのです。しかし、アイデアはそう簡単には生まれません。一般に学校の教師は、塾の教師と違い他校の入試問題を研究することはありません。

★しかし、人気の本質的なものは何かから調べなければ、持続可能なアイデアは生まれないということもあり、麻布や開成、栄光、東大、Aレベル、IB、特に東大の帰国生対象入試問題を研究する学校が現れました。

★そして、先生方は、そこには、自分たちがあえて触れてこなかった批判的思考力や創造的思考力を問う骨太の学力観があることに改めて気づいたのです。そして、ため息をつきながら、今間のままのうちの学校では、このような問題をいきなり入試に出せないし、まして授業で行っても、生徒もついてこないだろうと。

★そんなとき、適性検査をもう一度分析してみると、知識の問題が全くないことに気づきました。知識は調べながら考えていけばよいというスタイルの入試問題なら出題できるし、知識を憶えるところから始まるのではなく、調べるところから始める授業なら骨太の問いをあるタイミングで出せるかもしれないと気づいたのです。

★そこから、思考力入試とPBL(Project based Learning)の研究開発が生まれました。折しも大学入試改革や学び方を変える必要性の話が、経産省から提言されていたころです。文科省が公にするのは2013年ころからですが、それ以前に、私立中高一貫校の<新入試>やPBLは生まれていたのです。

★それは、世界同時的な動きでもありました。中国やインド、シンガポールなどの経済的な台頭は目覚ましく、IT革命は、どんどん階層構造をぶち破っていく動きがグローバルな動きでもありました。先進諸国は少子高齢化という共通の問題がありました。もちろん課題先進国は日本ですから、改革の話題は、一気に広まりました。

★2020年大学入試改革が大山鳴動してなんとかになりそうで、残念ですが、だからといって、この改革がなくなったわかけではありません。

★教育イノベーションによって人口減でも人口が多かった時以上に経済を活性化させようとする方向性は堅実に進んでいます。その表れが、公立中高一貫校の増加であり、IB認定校の増加です。<新しい学びの経験>を生み出すことがポイントです。

★そして、公立中高一貫校とIB認定校の合わせた数は、400校にもうすぐ手が届きます。これは、全国の高校の数に占める割合が約7%ということを意味します。

★現状、私立中高一貫校はどうかといえば、シェア7%です。私立中高一貫校の教育が<従来型の学びの経験>で終わったら、どうなるかは火を見るより明らかです。

★それゆえ、公立中高一貫校やIB認定校の増加は、私立中高一貫校がサバイブするためにさらなる教育イノベーションとして<新しい学びの経験>を開発実施する必然性が生まれているのです。それが<新入試>の実施であり、グローバル教育であり、STEAM教育であり、ICTを活用したPBL授業の展開です。そして、首都圏模試センターの北氏の分析にあるように、この<新しい学びの経験>の出現が、2013年以降、中学入試人口を右方上がりにしたのです。

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