2020年からの中学入試(08)4科入試の思考型問題のモデル~海城の社会
★適性検査型入試、思考力入試、自己アピール入試、算数一科入試、得意選択入試という<新入試>の根底には、知識優先ではなく思考優先の問題を出題し、従来型の優秀生とはまた違う才能をもった生徒を見出したいという考えがあります。
★そういう流れの中、いやそんな「謎の入試」をやるまでもなく、4科入試の中で「思考型問題」を出題できるという考え方もあります。いずれにしても、既存の知識の定着だけではなく、考える過程を重視する問題が出題されることは、未知なる事象や現象が多くなる時代にあって大切です。2024年以降の本格的な大学入試改革にも有効でしょう。
★しかし、それなのに、「2科4科」でいいんんだというこだわりはなんでしょう。そのこだわりには、「2科4科」は偏差値で測れるからよいというものです。ところが、そういう論者は<新入試>は偏差値で測れないから「謎の入試」だと否定的ですね。
★4科入試であっても、「思考型問題」は記述式になりますから、実は選択肢問題に比べて採点許容があり、そう簡単ではありません。
★たとえば、今年の海城の社会の入試問題の120字の論述問題などは、4科入試の思考型問題のモデルといえますが、やはり、採点はそう簡単ではなさそうです。この大変さは<新入試>でも同じ程度です。
★採点許容というのは、実はルーブリックと同じ考え方のものですから、偏差値で測れる測れないというのは、形式だけ見て判断されている可能性があります。海城の思考型問題も、適性検査型入試や思考力入試などの<新入試>の思考型の問題も、思考過程をみていくわけですから、採点許容とかルーブリックという内的な評価がされています。
★思考過程をみるというより、思考の構成要素をみるといった方がよいかもしれません。その構成要素の組み立て方が論理的構造になっているかもみるでしょう。
★さて、ここまできて、もう一度上記の海城の問題をみてください。この問題は、平安後期の上皇らの言動を情緒的側面からと社会現象の変化からの両側面から考えることと、情緒的側面と社会現象の変化の関係について考える問題です。さらに、記憶をひもとくというよりは、資料を読み解くリサーチ力も活用できているかどうかもみる問題です。リサーチというアクティビティと関係を考えるコンセプトマップなどを活用するアクティビティがふだん授業などで体験されてきたかもみることができます。つまり新しい学びの構えができているかどうかも見ることができます。上質の問いというほかありません。
★とはいえ、この問題は社会の問題ですから、記述の文章の中に、「末法思想」とか「浄土教」というキーワードが書き込まれなければ、そこは減点でしょう。しかし、この時代を表す知識を一般化することで、社会変化と人々の生活の変化と時代心理の関係の歴史的構造を見抜いた生徒がいたとしたら、どう採点するのでしょう。ここは、海城の場合どう判断するのかわかりません。少なくともこの問題に限れば、知識も必鶯ということははっきりしています。
★実は、この時代を超えた構造に着目して出題するのが麻布や聖学院の思考力入試です。これについてはまた考えるとして、ここで一つ注意をしておくことを述べておきます。
★4科入試でも思考型問題を出題するようになってきたと言われたとき、ただ記述式問題であっては、必ずしも思考型問題でない場合があります。たとえば、上記の海城学園の問題と同じ場所から問題を出している学校があるとします。
★そして、その学校が「末法思想」について50字以内で書きなさいとか、「浄土教」について50字以内で説明しなさいなどという記述式問題を出したとします。これは果たして「思考型問題」でしょうか?
★論理的に書かなければなりませんから、そういう意味では思考していますが、許容はそう難しくありません。なぜでしょう。これは知識問題で、憶えたことを記述という形式に転記するだけの問題です。思考コードで言ったら、A2ぐらの問題です。
★海城の場合は、「末法思想」とは何かや「浄土教」とは何かを記憶しておかなくても、資料から推理できますから、明快に思考型問題です。
★実は、記述形式でも簡単に採点できるようにするには、このA2レベルで、形式を記述式にするという操作ができるわけです。このように思考コード分析をしていくと海城の場合はB2ですから、同じ記述式でも思考の深さの差異がわかるのです。
★この観点から言えば、4科入試で思考型問題を出題しているところは、まだまだ限定的なのです。
| 固定リンク
「中学入試」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(12)3Fマインドと3Tスキルを大切にする教師がいる学校を探そう(2025.02.17)
- 2026中学入試準備(06)知られざる工学院と聖学院の思考力セミナーものすごいバックボーン(2025.02.11)
- 2026中学入試準備(05)すべてが才能創出型入試の中で海外進学準備もしている学校は(2025.02.11)
- 2026中学入試準備(04)すべてが才能創出型入試へ(2025.02.11)
最近のコメント