« PBLの世界(8)PBLは、リーマンショック以上のクラッシュを乗り越えるために最小で最大の成長力を生み出す学びのメカニズム | トップページ | 週刊東洋経済の特集「中高一貫校」(4)駒込のSTEM入試紹介される。背景に白山4校の動きも。 »

2019年8月 1日 (木)

PBLの世界(9)工学院のPBLの潜在的力

★工学院は、教師も生徒もいつも忙しい。この時期は夏期講習に、面談の日々だし、高1生のチームは、7月25日からシンガポールで開催されるAsian Student Leadership Conferenceに参加し、見事金賞を受賞し帰国の途に就いているという。続いて8月に中3は2・3週間のオーストラリアや米国研修旅行がある。MOGの下見やUPAAの大学とのコミュニケーションに東南アジアに米国に飛ぶ先生方もいる。

Photo_20190801084801

(写真は、同校サイトから)

★そんな合間を縫って、田中歩先生(田中先生自身、このあとリーサーチのために海外出張が控えていた)は、プロジェクトチームと≪対話≫する時間をつくった。2時間ずつ、2つの時間帯を用意。参加は自由だったが、学校にいるメンバーは空いている時間に立ち寄っていた。

Dsc09402

★クイックダイアローグになるのかなと思っていたら、予想外に深い話になっていた。PBLのやり方というより、評価方法について話し合ったり、カリキュラムにある知識量とPBLのバランスについて話し合ったり。

Dsc09373

★田中先生はいつものワークショップとは違い、テーマはメンバー各人の課題意識に任せて、そこに参加したメンバーで共感的コミュニケーションを行うようにファシリテートしていった。

Dsc09380

★非常に興味深かったのは、PBLを実践しているから出てくる課題意識がほとんどで、目の前の問題というより、PBLを推し進めていくと必然的に現れる発展的な課題だった。

★日本史の授業も、年間通して「外交」「交流」「交換」というアプローチで歴史を切る流れでつくっていくのだという話は、単元ごとの知識をその切り口で関係づけていったらどうなるかという一つの長いスパンのPBLにもなっている。毎時間のミニPBLとその連鎖が年間通じてのPBLになるデザインは、今までにないアイデアである。

★ただ、ある時代がその切り口でアプローチしにくいというような悩みもあり、それについて、家庭科的側面からかんがえたらどうだろうという他教科からの提案もあり、気づきもそこで生まれていた。

★知識に関しては、知識のインプットとアウトプットの循環メカニズムは、教科を超えて共通する部分もあるから、それは解明してみようというプロジェクトも自生的にできていた。

Dsc09386  

★そうかと思えば、教師という職業について改めて考えるという対話のシーンもあった。これはPBLという実践が、その背景に時代の大きな変革の流れがあるから、当然の発想であり、実に感度がよいと感じた。

★それについて、参加者が自分たちの考えをシェアしているシーンは、なるほどメンタルモデルの掘り起こしと共有の場になっていると、田中先生の無手勝流の仕掛けに感動した。

★私の立ち位置は参与的観察者だったわけでが、PBLとかかわることによって、Old Powerの持続可能なイノベーションとNew Powerの創造的破壊のイノベーションの渦の中で、生徒のみならず、教師としての自分自身の未来をどうするのか、自分の価値をどのように豊かにしていくのか真剣に自分に立ち向かう人間の姿をそこに見た。

★人間とは何か。そんな本来的なテーマについて対話が生まれる瞬間をつくる工面を田中歩先生はしているのだとしみじみ思った時間だった。

|

« PBLの世界(8)PBLは、リーマンショック以上のクラッシュを乗り越えるために最小で最大の成長力を生み出す学びのメカニズム | トップページ | 週刊東洋経済の特集「中高一貫校」(4)駒込のSTEM入試紹介される。背景に白山4校の動きも。 »

PBL」カテゴリの記事