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2019年8月25日 (日)

令和元年度福島県私学教育研修会(了)21世紀型授業PBL

★福島県私学教育研修会は2日目は、部会ごと研修会が開催された。部会は、5つ。「21世紀型教育部会」「高大接続部会」「ICT活用部会」「生徒理解教育部会」「法人・事務室運営部会」となっている。

★「高大接続部会」では、リクルートのキャリアガイダンス編集部編集長の山下真司氏が講演されていた。テーマは「主体的な学びを育てる授業づくり、学校づくり」ということだった。私は、「21世紀型教育部会」で、「21世紀型授業PBL」の作り方体験を担当した。山下氏の講演を聞いてからワークショップを行えば、さらにワークショップを洗練できるのにと思ったが、同時間並行して行っていたので、それはできなかった。残念。

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★山下氏とは、先月も東北全体の私学教育研修会でお会いしたが、やはりパラレルに部会の研修が行われたので、講演を聴くことはできなかった。しかし、山下氏の編集コンセプトや問題意識を懇親会や朝食時に少しお聞きすることができ、勉強になった。今回も昼休みや帰途に就いたときいわき駅などで立ち話をすることができた。学校の組織開発とそのソフトパワーである授業や教師力を、全国を取材しにまわり、つなぐことによって化学反応を生みだしていくジェネレーターの役割を果たされていることに頭がさがった。

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★ともあれ、私の方は、21世紀型授業としてのPBLを、先生方とワークショップ型講演を通して共有していった。9時から15時までだったが、あっという間でしたと帰りがけに何人かの先生に声をかけていただいた。少しほっとした。東北の部会にかかわって、5年目になる。最初はやはりわかりにくいという感想も多かったが、なぜか毎年お声がかかるので、できるだけわかりやすくそれでいて伝統と最新の考え方も交えて共有できるように創意工夫をしてきたつもり。自身のワークショップやPBLに対する考え方もアップデートしてきたわけだが、それはこのような機会を継続的に頂いているからである。とても感謝している。

★ホンマノオト21も読んでくださる先生方もいて、共通言語ができてきたということもあり、毎年≪Hard Fun≫感覚でできる。あるいは、学びと遊びの統合した感覚で展開できる。

★もちろん、毎年新たにお会いする先生方だから、やはり、ワークショップ中に、共通言語を創り出しながらすすめることが大切である。このことは、共通言語を話し合いながら、互いに共通する部分と相違する部分を確認しながら相互信頼をつくっていくことにもつながる。そのために、アクティビティとして、スピードデートを、今回はかなり多用した。

★さて、今回は3側面でPBLをいっしょにつくっていった。

①問い:問いづくり

②アクティビティ:問いに対応するアクティビティの選択(ハーバードのプロジェクトのものを活用)

③思考コード:問いやアクティビティが生徒のどの思考の構えを想定するのか思考コードでの予想

★問い作りは、今まであまり、紹介してこなかったが、古典的な手法としてPIL(Peer Insutruction Lecture)というハーバード大学のマズール教授の手法にヒントを得た知識と思考の折り返しのアクティビティを行った。

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★知識を知識として転写するのではなく、知識が足りなくても、周辺の知識を動員しながら、フェルミ推定をしながら知識を導くアクティビティ。これをやると、推定の中で、いろいろな問いが生まれる。その問いをさらに発展的に問い返すと、一見A1の思考の構えの問題も、C3の思考の構えにジャンプするという体験をすることができる。

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思考コードは、21世紀型教育機構の標準コード<昨年出版した上記写真の本で公開>をつかった。機構の各校は、このコードと共通するところもあるし、学校の独自の文化を加味してアレンジしている。21世紀型教育機構のアクレディテーションのメンバーである神崎先生も、カンザキメソッドの中で、AO入試や小論文対策、志望理由書を書く授業の中で、活用できるようにアレンジしていただいている。首都圏模試センターも「思考コード」を創っているが、これは授業用の思考コードではなく、テスト用のコードである。思考コードは各学校や団体の生徒の活動に応じて多様な種類があるし、思考の目的に応じて次元が違う。中1から高1までは、21世紀型教育機構バージョンの思考コードが活躍するし、AO入試をメインとする生徒は、この思考コードが機能する。しかし、高2・高3で一般入試をメインにする場合は、戦略的なPBLが大切になり、そこでは、首都圏模試のような学力重視の「思考コード」が有効。よくPBLでは大学入試に役立たないと言われるが、そのような懸念はAO入試型のコンピテンシをベースにしたエンリッチメントPBLと一般入試型の認知能力をベースにした促進型PBLの違いを理解していないからである)

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★今回は、「ぐるぐる(眩暈)」というアクティビティや根源抽出アクティビティもできた。問いの問いを、議論しながら追究していくことができた。問いの問いの問いの問いの・・・と追究していくと、シンプルに「比較」と「置換」という思考スキルに収束していく。

★エッ!そんな簡単なことと思われるかもしれないが、すべての現象や事象は、極めてシンプルな原理から生まれ出でる。「比較」とか「置換」があるから、融合とか統合とか化学反応ということが起こる。湯川秀樹ではないが、ノーベル賞受賞者は、このシンプルな原理の追究者である。

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★最近の教育キーワード「探究」がおもしろいと思われるのは、複雑な現象や事象がどんどんシンプルに一貫しているところに行き着くからだ。複雑なイリュージョンを振りまいている授業は、生徒が、誘蛾灯に誘われる生物のように踊らされているだけである。

★人口が増えている20世紀後半は、一部の人間だけでがこのことを独占し、多くの人間は読み書き算盤の技術を養われ、楽しいイベントに惑わされ、コントロールされてきたが、今後の人口減少時代は、すべての人間が、シンプルな原理にたどりつき、それを実用化できる創造者でなければどうしようもないが、この学習経験を通して1人ひとりのバリューを高める経済理論が、昨年ノベール経済学賞受賞者の1人ポール・ローマーの「内生的理論」である。

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★この内生的な人材イノベーションを生み出す場が、PBLであるが、そんな思いを共有しながら、大学入試問題を素材に、実用的にPBLを組み立てることができるようにと、ワークショップ型講演をデザインしたつもりである。知識重視のはずの大学入試の問題の問いを解放すると、世界を救う問題解決にジャンプする問いかけに変容するのである。

★しかし、予想は所詮予想に過ぎない。先生方との対話や議論は、それ以上の発見をもたらしてくれる。今回も、PBLとは何か?アクティビティとは何か?ということについて、霧が晴れるようなイメージ像が脳裏に結びついた。先生方、ありがとうございます。この2点については、今後またご紹介したいと思います。

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