PBLの世界(21)経験とアクティビティのコンビネーション ①
★デューイやピアジェの本を紐解くまでもなく、パパートやレズニックの学びに身を沈めるまでもなく、イギリスやドイツの近代哲学を学ぶまでもなく、アメリカのプラグマティズムを研究するまでもなく、≪経験≫が人間の母なる大地であることは誰もが受け入れることだろう。
★にもかかわらず、授業から≪経験≫を排除してきた近代教育。その反省として、上記にあげた哲学者とか心理学者が≪経験≫の復権を唱えてきたわけである。とはいえ、各教科の授業の中に≪経験≫をいれることはなかなか難しい。そこで、特別教育活動や総合的な学習(これからは「探究」の時間という枠を創意工夫して≪経験≫をとり入れる教育をしてきたわけだ。
★しかし、2020年から急に授業の中で「主体的・対話的で深い学び」つまり、アクティブラーニングをやって≪経験≫を取り戻すように変わるという。デジタルネイティブでグローバルネイティブである今の小中高生にとっては歓迎だけれど、現場の教師には知識の量と配列が変わらないのにできるのかという疑問や不安が広がったわけである。
★たしかに、≪経験≫は重要だ。ある一定の時空の中でおこる生徒にとっては未知なる事象や現象の中で、五感を研ぎ澄まし、筋肉と神経系を総動員して知ろうとする。既存の似たような事象や現象を想像して、照合しなんとかわかろうとする。ワクワク、ドキドキ、仲間の激励にやる気を起こして、感情を高め、思考していくという≪行動≫を通して、気づきが生まれ新たな知識や技術を獲得する。
★そして、その同じ経験を反復することによって、気づきはいつしか暗黙知と化する。すなわち、知識を、身心脳神経全体を総動員してプロセスを生みだしてきて結実してきたのに、そのプロセスはコンパクトに圧縮されたり自動化して暗黙知となる。結果、知識はプロセスの前提なしに、手軽に使えるようになる。この気づきから暗黙知になるまでの一連の関係全体を≪経験≫というわけだ。
★しかし、最初の時空の事象や現象との出会いのマインドセットによっては、知識が普遍的ではなく、偏狭なままの場合もあるので、暗黙知を分析し、見える化し、訂正していくというリフレクションが必要なのであるが、いったんできあがってしまった≪経験≫は崩し難い。
★それゆえ、こうして憶えてきた知識体系を憶えていく授業経験を変えていくのは難しいし、そんな変容のための≪経験≫は、海外に浸ってみるなど非日常的な≪経験≫のマインドセットが必要になる。このインパクトによって、目からウロコとなって、自己変容が生まれるというシナリオ。
★ところが、そんな非日常体験を誰でもできるわけでもないし、四六時中できるわけでもない。
★それゆえ、その≪経験≫を≪アクティビティ≫化して、ふだんの教科授業の中にコンパクトに埋め込み、知識が生まれてくる過程を引き出せる≪思考スキル≫を見える化して、学び方を学ぶ授業にしようというのが、2020年以降のアクティブラーニングなのであるが、このことを明確に意識して授業をデザインできるのはやはりPBLというシステム思考なのである。そのことについては、今後少しずつ考察していきたい。
★ともあれ、海外研修やその他の特別教育活動、探究、キャリア教育では、≪経験≫を、授業では系統的な知識の記憶と分離あるいは役割分担するのではなく、授業でも≪アクティビティ≫を埋め込み、≪経験≫の効用と≪アクティビティ≫によって≪経験≫の相対化=クリティカルシンキングできるコンビネーションを創っていくことが、今後必要とされる≪未知への対応力≫=サバイブスキル=≪野生の思考≫が身に着くというものだ。もちろん、系統的な知識も身に着けることができる。
★これを、≪アクティブラーニング≫ではなく、≪経験≫を授業にいれることがアクティブラーニングだとすると、当然、知識の量は限られることになる。≪アクティブラーニング≫はコンパクトだが、≪経験≫は果てしない。だから月分けは大切なのである。思考と知識の循環を生み出すには、≪経験≫と≪アクティビティ≫の連携が有効だ。
★9月1日の静岡国際シンポジウムでは、この破格なグローバルな≪経験≫とそれを本質にまで深める思考力を生み出す≪アクティビティ≫が埋め込まれたPBLのコラボレーションを垣間見ることができるだろう。
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