PBLの世界(8)PBLは、リーマンショック以上のクラッシュを乗り越えるために最小で最大の成長力を生み出す学びのメカニズム
★たとえば、文春オンライン2019年7月25日では、「“欧州最強”ドイツ銀行、苦肉のリストラ 破綻すれば「リーマン・ショック」以上の衝撃」という記事が掲載されている。
★世界の投資家ジム・ロジャーズは、日本への投資を引き上げると警鐘を鳴らす本を出版している。
★1998年・1999年のバブル崩壊後の波が山一證券破産、拓殖銀行破綻をもたらし、86年以来右肩上がりだった中学受験業界は急激に停滞した。しかし、それを乗り越えるためにOld Powerの持続可能なイノベーションとしての反ゆとり政策によって、不思議なことに中学受験業界は変わらず右肩上がりになったが、そのときに、同時にNew Powerの創造的破壊としてのイノベーションを先導する学校も現れた。かえつ有明や広尾学園、宝仙理数インター、聖学院のように新しい教育を独自に展開する学校が出現したわけである。かえつ有明や聖学院は2011年3・11をきっかけに、21世紀型教育を宣言したぐらいだ。
★2011年前夜の2008年リーマンショックがあり、復活の兆しのあった中学受験業界は再び右肩下がりになる。しかし、このあたりから2011年っかにかけては、21世紀型教育宣言校が出現する準備期間ともなった。従来の学歴ブランド校の競争だけではなく、そのグループとは次元の違う21世紀型教育が現れ、今では学歴ブランド校とNew Power校が共存するようにまでになった。
★そして、現在、中学受験業界は新型入試とグローバル教育の盛り上がりと共に三度右肩上がりになった。
★しかし、日本においては2020年の東京パラリンピック・オリンピック閉幕後から、急速に経済は低迷すると言われているし、その前にイギリスがEU離脱を果たす可能性が高く、それに連動してドイツ銀行も破綻する恐れがある。
★中国・ロシアは、ヨーロッパとの貿易は重要なために、そうなることをなんとか抑えたいが、米国のトランプ大統領は自由貿易の立場からは嫌われているが、よいかわるいかともかく、万が一に備えて、まずは自国のみで生きて行けるように模索を始めている。とはいえ、米国の経済好調を支えているのか、好調だから生まれたのかは判断が難しいが、サブプライムローンと同じ構造の債権が販売されていて、リーマンショックの前触れかと言われてもいる。
★日本はといえば、借金大国で、食料自給率も先進諸国で相当低く、世界の大混乱に日本はどれくらい耐えられるかわからない。だからといって、何ができるわけではないが、来たるべきインパクトのために備えるために、最小限の学びで最大の生徒の成長を生みだすメカニズムを作っておく必要がある。
★おそらくリサーチは、Webコミュニティが主流になるだろうから、英語とICT技術は必須。しかし、これはWebの中でできてしまうので、必要最低限のコストでしのいでいける。もちろん、このコミュニティが壊滅になると、もはや「野生の思考」のみでサバイブするしかないのだが、英語、ICT、野生の思考で授業のメカニズムをつくるということは、結局PBL授業を各教科の授業でコンパクトに創り出すしかないことになる。
★もしかしたら、HTHのように学際的なPBLのみになるかもしれない。
★第二次世界大戦中だって、授業は行われていた。どんなときも教育は必要最小限でも残る。世界経済の最悪のシナリオを考えたとき。備えるべきはPBL授業である。
★そして、この最悪のシナリオが、最高の新しい政治経済社会を生み出す大きな契機になるが、そのときこそPBLは最大の効果を発揮する。結局改革前夜は、最悪のシナリオが勃発する。最悪のシナリオがおこらずに、ゆっくりと改革へのシフトが行われるのがもちろん望ましい。そうだとしても、PBL以外の授業はほかにないだろう。
★ジム・ロジャーズではないが、今起きている小さな変化に世界を変える大きな変化の要因がある。まだまだ少数派のPBLであるが、1998年から2008年の間に学歴ブランド校以外の新しい教育が生まれ、そのNew PowerのコアシステムはPBL授業である。
★しかしながら、PBL授業はその当時から少数派であったから、学歴社会を支えるOld Powerの学校や受験産業は、自分たちが主流だと認識し、そのような少数派の動きの意味を一蹴してきた。
★ところが、そのOld Powerの教育が支えてきた社会システムが本当に危なくなってきた。それを象徴するのが、facebookの仮想通貨リブラ叩きである。先進諸国が大同団結して規制をしかけている。リブラが動けるかどうかはわからない。しかし、リブラの創造的破壊イノベーション派あまりにもすさまじい。中央銀行をスルーして万人がお金のやりとりをできるようになる。まさに究極のグローバリゼーション。
★国家と中央銀行は一蓮托生だから、貨幣のコントロール権力が低下して、国家機能も衰退する。官僚政府を維持できなくなる。ドイツ銀行破綻の警鐘、それゆえイギリスはEU離脱を考え、米国も自国主義になっている。米中貿易戦争は、国家の覇権争いの象徴であるが、この背景には、経済的な破綻を防ぐために、金利を下げ、危ない債券を生みだし、借金をしという綱渡りをしている。
★今に始まったことではないが、バブルがはじけても、今までは、国家と中央銀行のコントロールによって回復できた。しかし、もしリブラのような仮想通貨が世界を席巻したら、その回復は仮想通貨に移行してしまう。仮想通貨は、「知」の象徴である。
★帝国から国家へ移行した時、軍事力から経済力に基盤は移行した。今、国家の支えである通貨コントロールがゆらぎ、新しい世界秩序に移行しようとしている。それは知の力によって起こる。
★この「知」の力は、従来の教育システムでは生まれてこない。PBL型の学びのシステムによって生まれてくる。Old Powerの防衛機制イノベーションとNew Powerの創造的破壊イノベーションの相克が本格的に始まるのかもしれない。その源泉がPBLという世界なのである。
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