工学院のPBL アクティビティと思考コードの知のシステムの共有
★これまで、工学院は、PBLを思考コードと思考スキルの組み合わせで構築してきたし、問いの種類を思考コードに合わせて授業のシークエンスにどう配置するかを追究してきた。これは、今も変わらないのだが、そのシークエンスの流れで様々なアクティビティが使われているので、むしろアクティビティと思考コードでPBLのデザインを作成してはどうかというアプローチにシフトした。
(ディスカッションというアクティビティ)
★PBLと言えば、ディスカッションというアクティビティが展開されるし、これは極めて重要な生徒の言語と思考と感性の知のシステムがトレーニングされる行為である。
★しかし、四六時中ディスカッションを行っているわけではない。知識の背景を広げるときには、ペアワークによる相互通行的な情報交換が最適である。
(ペアワークというアクティビティ)
★ブレストしたり、多面的なアプローチをしたりするときは、ディスカッションが有効だが、知識のデフォルトネットワークを掘り起こすのは、ペアワークというアクティビティが最適だ。
★また、ゲームというアクティビティは、創意工夫によっては≪Hard Fun≫になる。
(クイズレットというゲームも人気のアクティビティ)
★授業の最後に、クイックライトというエッセイライティングのアクティビティも効果的だ。これはDo Nowというルーチンアクティビティになっている場合、相当効果がある。授業の最後は、エッセイを限られた時間で創作するというマインドセットが常にできているというのは、思考する姿勢を習慣づける。
(田中歩先生の英語のPBL授業のフィナーレは、クイックライトというエッセイライティングのアクティビティ)
★このように、工学院では、一時間のPBL授業の中に幾つかアクティビティを織り込んでいく。ルーチンとしてのアクティビティとサプライズとしてのアクティビティ。アクティビティはもともと遊びの要素も含めているから、非真面目と真面目のバランスでできている。さらにシークエンスがルーチンとサプライズのアクティビティを組み合わせるから、ワクワクドキドキ好奇心や興味関心がその都度新しく湧いてくる仕掛けになっている。
★そして、そのアクティビティが、思考コードの9つのキーをできるだけ多く使おうとするから、アクティビティ自体に思考の広がりや深さが付加価値としてくっついている。
(プレゼンテーションというアクティビティ)
★アクティビティという行為は、実は問いの深さをはじめから含んでいる。そして、問いは思考スキルによって生まれるから、思考スキルの分析を研修で必ずしもする必要がない。
★スクライビングで、どんなアクティビティを活用しているのか分析していくと、おもしろいのは、レゴや思考スキルマップなどを活用するのとは違って、思いもよらない目的が広がる。道具というのは目的がはっきりしているから、使い方によっては硬いPBLになる。
★ところが、アクティビティは、非真面目と真面目の合力だから、真面目としての当初の目的を超えて、生徒にとって、自分なりの目的が見えてくる。それこそが、生徒にとって未来や世界に立ち臨む自分のプロジェクトとなる。
★工学院のように、多くの授業で、このようなアクティビティ(工学院の先生方は30種類くらいの中から取捨選択している)を意識(しかもルーチンとサプライズのコンビネーション)したPBLをデザインすると、感性や思考の広がりと深さがでてくる。生徒も楽しく思考に取り組むことができる。1時間があっという間に過ぎてしまう。
★もちろん、思考スキルは最終的には必要だ。特に大学入試のような試験においては、アクティビティができないわけだから、思考スキルを自在に使えるようになっていることは大切なのであるが、中学から高1までの授業は、アクティビティ重視でよい。
★実はアクティビティとは、ミニ経験と置き換えることができる。経験とは、自問自答とかセルフリフレクションを伴い、そこに思考スキルが自然と浮き出てくる。この経験の積み重ねの後に、思考スキルを可視化してシェアすることの方が戦略的には効果的である。
★そんなことを工学院の先生方とのスクライビングで気づいたのは、研修時のファシリテーターをはやくも新海先生が挑戦してくれたからだ。その姿をメタ的に観察することによって、気づけたのである。思い切ってそういうことを挑戦するように仕掛ける田中歩先生の組織開発の手法はなかなかおもしろい。
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