適性検査で養われる「X」なるもの
★適性検査型入試、思考力入試、自己ピーアル入試などの新タイプ入試の価値は、従来の日本の教育で無視されてきた多様な領域を結び付ける「X」なるものを回復するところにある。この「X」なるものは、イギリスのAレベルやIBのテスト、フランスのバカロレア、ドイツのアビツーアなどには、もともとあるし、今も健在だ。
★米国のSATは、かつてはなかったが21世紀になって着々とそこは改革してきた。TOEFLやIELTSには英語の試験というのを超えてそれがある。しかし、他の英語民間試験はない。
★ここらへんの整理が全くないままテキトウ極まりない教育改革論議がなされているのが日本という国だ。だから、わるいというわけではない。それが文化なのだ。だから、論文指導している学校であるはずなのに、ビブリオが適当で、蓋をあけてみればTTP(徹底的にパクる)でオリジナリティがない。配列こそ思想だということだろう。まあ、それもいい。
★ だから、まともにやってられない。では、どうするのか?このような脇が甘いから、権力や権威が忍び寄る。自由を封鎖されることに気づかずに。しかし、まてよ。わきが甘いのであるから、正義もまた忍び寄ることができる。
★適性検査は、OECD/PISAから生まれている。TTPだから、参考にしましたなんて公言しない。全国学力調査テストもPISAからの流れだ。TTPだから、参考にしましたなんて公言しない。
★そこで、私は友人のPISA分析をして本にして世に流す作業を支援した。それはある意味きっかけになった。大手教育関連産業の心ある人材数名とそれを契機にその流れの学びをつくる作業にも取り組めた。その流れは今やあちらこちらに拡散している。もちろん、心なき人材によってコモディティ化されて拡散されている局面もあるが、そんなのはかまわない。
★世の中に「X」なるものの回復が拡散されれれば、それでよいのだ。しかし、まだ経験値としての「X」なるものしか拡散していない。そこで首都圏模試センターと21世紀型教育機構と協力して、「思考コード」とか「メタルーブリック」などというものを作成した。
★これは着実に浸透している。
★しかし、その本来の意味は、もう少し未来にある。とにかく、教科書という存在や大学受験という存在が「教育的配慮」という怪物を生みだし、パブリックなルールを使えなくしているのだ。だから、麻布はその怪物を撃退したのだ。ともあれ、忍び寄る権力。そしてこの権力にぶら下がる企業であふれている日本の教育ステークホルダー。受験界の悪の三種の神器という象徴的な言われ方もしている。
★中高でしか使えない論理やアプリ、その最たるものがデバイスを学校で活用する場合、一般社会では不要なセキュリティがガチガチにかかる。
★そんな「教育的配慮」が闊歩しているような世界で生徒が暮らしていたら、社会では役に立たない。何せ、自由はいつも幻想なのだ。そのわけのわからないくだらない担当者レベルの「私」の一存で決まる村社会で、どんなにグローバルなことをやろうとしても、それは無理だろう。
★だから、そっと武器を準備しておくのだ。そこには、できるだけ、普遍的なルールを織り込めるコンパクトでシンプルなシステムが重要だ。グレゴリー・ベートソンやネルソン・グッドマンのようなデューイやピアジェを超えたところにある日本では未だだれも到達したことのない「X」なるものの埋め込み。もちろん。欧米では当たり前だ。
★しかし、日本の「教育的配慮」によって、それが見えなくされている。だから、世界から日本を見ることができる状況になっている学校の生徒や、Z世代の帰国生や留学生などは、その「X」なるものを使って、「教育的配慮」のバリアを崩しているのだ。それが今の動きだ。
★年寄りの私が40歳代にそのようなことに気づいたのは、その友人が留学生だったからだろう。友人と言っても一回り違うから、いっしょに研究所をやろうと意気投合した時に、おじさん(と私は呼ばれていた)、まずはすぐにロサンゼルスに飛ぼうと、1998年1月にいっしょに渡米した。それ以来、世界中をともに回ったが、目からうろこの連続だった。
★その旅で体得した素材で、PBLプログラムや思考コードをつくってきた。さんざんそんなんで大学合格実績がでるのかと言われたりした。でも、そのときはまだ「X」なるものを明快には説明できなかった。いまなら、すでに大学合格実績を出している同士校があるから、検証的な説明もできる。
★いずれにしても、世界から見た教育になっているかどうかだ。Z世代の中高生団体に期待をしているのは、そういう意味である。
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