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2019年7月 9日 (火)

聖学院の難関思考力入試と麻布の社会の中学入試と東大帰国生入試 「X」なるものが必要

★多様な学びをつなぐ「X」なるものが育つと、好奇心はさらに旺盛になり、開放的精神とどこまでも追究しようという意欲が湧き出てくる。このような科学者や詩人などの創造的才能者が有している精神を生み出す「X」なるものとはいかなるものだろうか。

Lego

(写真提供:聖学院21教育企画部長児浦先生。同校の難関思考力入試では、いきなり論述を書くのではなく、様々なデータを読み取ったうえで湧き出てくる発想をいったんレゴで可視化する。指を動かしながら自分の考えを編集していく。)

★それは、明快にこれだというものを示すことはなかなか難しい。ただ、この「X」なるものがなければ、次のような東大の帰国生入試は問題解決できないだろう。

≪2020 年には東京でオリンピック・パラリンピックが開催される予定であり、2025 年には大 阪で万博(万国博覧会・国際博覧会・World Exposition)が開催されることが決定した。こ うした国際的で大規模なイベントを現在の東京や大阪に誘致し開催することの是非を、過去 に開催された東京オリンピック(1964 年開催)および大阪万博(1970 年開催)と比較しな がら多面的に論じなさい。 平成31年度外国学校卒業学生特別選考小論文問題 文Ⅱ≫

★この問題は、たんなんる小論文のような書き方ではうまくいかない。歴史的知識や歴史的変化による価値観や政治経済の変化、世界の情勢の変化、イノベーションの進化など多方面から考察し、メリットとデメリットを考えるだけではなく、むしろメリットの背景にあるリスクを論じ、その是非を問うところまで詰めていく必要があるだろう。

★多大な知識が必要とされているように見えるが、それを並べただけではだめである。むしろその知識は大雑把であっても、ある歴史的見通し、経済的価値観の捉え方などを展開し、メリットとデメリットの整理で終わらずに、メリットの背景にあるリスクというパラドクスにまで至る必要があるだろう。

★これが「X」なるものの正体である。パラドクスの発見という高次思考(=クリティカル&クリエイティブシンキング)が必要であり、ロジカルシンキングできれいに整理しただけでは、世界の問題を見抜けないのだ。さらにいうと、「X」なるものは、この高次思考という複合的システム思考という関数になっている。システム思考はループ関数がどんどんつながって拡大していくが、「X」がなければ、何も生まれない。

★東大の一般入試は、ロジカルシンキグで十分なのに、帰国生入試はそれを超えているのである。これは東大推薦入試も同様である。東大は、合格者の数が少ないから目立たないようにふるまっているが、東大推薦入試と東大帰国生入試で随分以前から大学入試改革を実行していたのである。

★その人数があまりに少ないがゆえに、一般入試を受ける生徒にとっては、無関係とばかり、顧みてこなかったのが受験業界なのである。

★しかしながら、麻布の中学入試問題は、すでにこの領域にもっと昔からあったのである。だから麻布の生徒は、中学入試の準備段階で、すでに「X」なるものを身につけてきた可能性が大なのである。自覚的であるかどうかはわからないが。

★そして、このところメディアが取り上げている聖学院の思考力入試、特に難関思考力入試は、入試対策講座の中で、受験生は準備をしながら「X」なるものを身につけるのである。もちろん、6年間の学びの中でそれはさらに豊かになる。特にレゴなどに転換する過程で、「X」なるものをメタ認識するのである。だから、中学当初はいわゆる偏差値はそう高くないが、高校卒業時に大いに化けるのである。

★ともあれ、論より証拠、今年の上記の東大帰国生入試と同じテーマの問題が麻布の社会の中学入試で出題されたし、実は聖学院の難関思考力入試でも出題されたのである。ただ、聖学院の場合は、レゴなどを使い、考える過程を可視化しながら考えていく入試になっているから、意欲のある才能者すべての受験生(もちろん男子校なので男子に限られるが)に開かれた試験なのである。

★IBの高スコアや高偏差値という壁がある東大や麻布の入試とは、そこが大いに違う。この違いが聖学院という学校が有している社会的使命である。すべての生徒が才能者になれるのだと!

 

 

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