経験主義の罠を超える。「経験」が生成する「X」なるものを通して、たとえ未経験なことでも、シミュレーションできる。
★Newsweek2019年07月12日(金)17時15分の記事「女性、独身、子なしを責められた台湾総統、FBで反撃」は、経験主義の罠を物語っている。まず、記事の一部を引用する。
≪台湾は、総統が女性だったり、アジアで初めて同性婚が法的に認められたりするなど、性別における多様性がアジアの中でもかなり先端を行っているような印象を受ける。しかし総統の蔡英文は、政治の世界に足を踏み入れて以来、女性であることや独身であること、子どもがいないことなどを理由にした個人攻撃を受け続けていることを明らかにした。≫
★蔡氏が、来年1月の再選に向けて総統選へ出馬するのが決まっているが、総統選に新党から出馬する対立候補である楊世光氏が蔡氏に向け「口撃」しているというのだ。
★記事によると、楊氏は蔡氏について、≪「自分の子どもがいない彼女は、次世代について語る資格がない」と話し、「女性」で「独身」であるため、蔡氏が総統であることを自分は認めない、とも発言した≫というのである。
★おそらく、選挙戦術として、経験しているしないを根拠に、楊氏は蔡氏を追い落とそうとしたのだろうが、経験していないから、経験していないことに対して語る資格がないという言い方は、言論の自由からいっても人権を軽んじた言い方で問題だが、そもそも経験していないから理解ができないという理屈は間違いである。逆に経験したとしても理解できない場合も多い。
★しかし、経験したほうがわかりやすいことも一方で確かだから、ルビンの壺の壺の部分だけデフォルメして攻めているのだろう。
★「経験」はたしかに重要である。しかし、すべての「経験」を人間はする必要がないし、できない経験もある。それゆえ、経験者にインタビューしたり、意見を聞いたり、連携しながら未経験な事柄も補っていけばよいのだが、それとても、経験しなければわからなければ、どんなに未経験のことにつて説明を聞いても理解はできないはずだ。しかし、理解ができてしまうのはなぜか?
★それは、人間の理解は学びによって可能になるからだ。この考え方を全面に押し出し、教育の大きな流れを創ったのが、ピアジェだ。この学びというのは経験による同化(assimilation)と適用(accommodation)の繰り返しのことを示唆する。
★ピアジェとアプローチは違うが、教育的において合流したのが、デューイ。同化と適用の対話的統一というヘーゲリアンウェイを脱構築しながら教育学を構築した。この二人の流れが、パパート→レズニックという流れをくむMITメディアラボにつながっていて、現在世界に大きな影響を与えている学習理論となっている。
★しかし、ここで同化と適用ができるのはなぜかということが、スルーされ続けてきた。対話的統一ってなんだ?というのがスルーされてきた。
★それで、それを「X」なるものとした。この「X」なるものを関数とかコアモデルとか置き換えてみてもよい。それがあるから、未知の体験や経験にも適用できるのだ。そして適用できないときは、別の経験の「y」なるものを融合して、適用していく。
★対話的な統一というのは、一つ一つの経験によって生成された「x」「y」「z」・・・・を「X」なるものに統合していくわけだ。経験が豊かであれば、その「X」なるものがより質料が高くなる。
★そうはいっても、なぜ経験=「X」なるものというのができるのか?この「=」という「置換」こそ「reflection」というモニタリングなのである。この「経験」・「refrection」・「X」という置換連鎖が弁証法=対話である。
★かくして「X」なるものであるコアモデルや関数は、この対話が繰り返されるたびに成長するのである。そして、この「X」なるものこそ「世界」である。「世界」はしたがって変形され続ける。世界を変えるとは、この「X」なるものの「置換」→「変換」→「転換」という物語。世界のアップデートとともいう。
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