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2019年7月15日 (月)

公立中高一貫校の衝撃 日本の教育をどこに連れて行くのか。

★公立中高一貫校の意味は、どんどん大きくなっている。2020年大学入試改革の年の卒業生、つまり2021年春の大学合格実績の様相が随分変わる。しかも、その合格実績は、Old Power Schoolの進学準備で出るだけでなく、New Power Schoolの教育によってもでてしまう。

(表1)

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★今までは、入学時で高偏差値の学校は、合格実績も高かったのだが、2021年春以降は、New Power Schoolという偏差値よりも教育のイノベーションで選択される学校の合格実績も高くなっている。もっとも、今ではNew Power Schoolの学校の中から高偏差値校も出てきてしまっているが。

★どんな学校も2030年や2040年の時代の変化に対応するから、完全にOld Power Schoolという学校はない。ただ、傾向としてOld Power Schoolという分類にはいるか、New Power Schoolの分類にはいるかどうかである。いずれにしても、従来の学歴ブランド校が頂点に集中するピラミッド構造は崩れている。

【表2)

New-vs-old

★東京都の中高一貫校のうち、公立中高一貫校の数のシェアは5%で、公立中高一貫校の私立中高一貫校に対する教育力の影響は、東京私学にとってはまだ危機的な意識の段階にはないかもしれない。ところが、京都府では19%シェアで、公立中高一貫校の教育の質が私立中高一貫校に大きな影響を与えているのは、京都府の受験業界も、私立学校当局も実感している。

★この影響を脱するためには、New Power Schoolへの体質改善が必要であることも理解されている。しかし、だからといって、New Power Schoolの動きが京都で広がっているかというと、まだまだ意識の段階で、実行段階はこれからだ。

★そういう意味では、東京はすでにその動きは始まっている。21世紀型教育を推進するNew Power Schoolの中でも、特に三田国際のようにすでにイノベーティブブランド校として、学歴ブランド校の併願校になり、綱引きを始めている学校もでてきているぐらいだ。

★こうしたNew Power Schoolの学校はどんどんふえ、その特徴的な動きは、公立中高一貫校の適性検査型入試を新タイプ入試として実施する勢いになっている。

★この動きは、同時にさらに公立中高一貫校の存在意義を高め、私立の学歴ブランド校の幾つかは、すでにその教育の質でも、大学合格実績でも溝をあけられるようになった。

★この動きは、2021年の中高一貫校のポジショニングを (表1)のように変えてしまう。御三家というような超学歴ブランド校を頂点とするピラミッド階層構造はなくなり、(表1)のような長方形の階層構造になるだろう。だからといって、フラット構造になるとはいえない。

★一般の公立中学が、置いていかれる。教育の階層構造の在り方が変わるだけで、この格差をどうするかはますます重大な問題として浮上してくる。

★しかし、公立中高一貫校が、私立の学歴ブランド校と競り合うことができる存在になることによって、フラット構造への希望は開かれたと認識してもよいかもしれない。

★その未来予想は、大阪市立水都国際中学校・高等学校の生徒の教育活動の様子を見れば明らかである。ここの生徒は、たとえば、開成、麻布、武蔵、桜蔭、雙葉と比べても、グローバル市民のリーダーとして資質や思考力、英語力は引けを取らない。

★学校自体を生徒自らが教師といっしょになって「しなやかでタフな学校」にしていこうと動いている。

★桜蔭や麻布、武蔵が学校の特徴的な教育として骨太の論文制作をしているが、これとても水都国際のTOKベースの授業が、もっと好奇心旺盛で、オープンな精神で、おもしろい探究活動を学校全体に広げている。

★このような学校が、歯が立たない(もっとも競争する必要はまったくないのだが)学歴ブランド校はおそらくJGだけだろう。ただ、水都国際の生徒は、JGのような斜めから見る精神の構えはない。それがよいかどうかわからないが、それが公立学校の所以でもある。たいへん素直な生徒が多い。

★時代が変われば、学校のポジショニングも変わるのは当然だ。それをどう読みとるのか?それは各教育情報シンクタンクの見識によるだろう。いずれにしても、その読みのアプローチに、公立中高一貫校の適性検査と教育の質のアップデートは欠かせない存在になっているのである。

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