聖ドミニコ学園 伝統と革新の教育が大きく動き出した。
★今春、聖ドミニコ学園は、21世紀型教育推進を開始して2カ月が経過した。しかし、はやくも、新しい2つのコース「インターナショナルコース」と「アカデミックコース」は順調に進んでいる。
★インターナショナルコースの数学と英語の授業を見学したが、すでに実績を積んでいる同じようなコースを実践している学校の授業と甲乙つけがたい出来栄えだ。新しく設置したとは思えない。シンプルなPBL授業だが、中1ということもあって、知識の理解から丁寧に始める。しかし、知識はすぐに活用・適用し、自然とロジカルシンキングに移行する。
★教頭生方先生によると、インターコースの理科も、自然豊かな聖ドミニコ学園のキャンパスをフィールドワークの場として利用し、採集してきた植物を調べて、もちろん英語でレポートに仕上げるなど、PBLがスムーズに展開しているということだ。
★さらに驚いたのは、アカデミックコースの英語の授業。中学から入学してきた生徒は、英語にまだ慣れていないので、取り出し授業で丁寧にサポートされているという。最初、生方先生の言っていることがわからなかった。取り出し授業というのは、アカデミックコースでインターコースとまではいかないが、かなり英語のできる生徒を集めて行うというものだと思っていたからだ。
★いやいや、そうではなく、何度も繰り返すが、中学から入学してきた生徒でアカデミックコースを選択した生徒を集めて取り出し授業を行っているというのだ。
★つまり、小学校から入学してきた生徒は、すでにかなり英語が出来ているのである。たしかに、これがアカデミックコースのクラスなのかと目を疑った。いや耳を疑った。これって、他校のグローバルコースのうちのアドバンストコースと同等レベルだったからだ。
★生方教頭は、今回の新しいコースを設置したことにより、私たちの学園全体で取り組んできたことの正当性がある意味証明され、自信を持ち始めていると語る。だから、より小学校と中高の英語のカリキュラムのつながりを調整する連携が行われるようになったということだ。
★このような改革の動きが加速しているのに感動した。
★しかも、改革は中1から徐々に始めていくはずなのだが、学年を越えて教える講師もいるから、その波及は学内に確実に広まっている。
★中1以外のライティングの授業なども、1人1台のiPadを活用しながらPBL授業が行われていた。もっとも、iPadは、すでに高2まで、1人1台の環境になっているという。見学した日の5・6時間目は、中1がiPadを手にするガイダンスがある日でもあった。
★中2の宗教の時間も、PBLで授業が行われていた。聖書の放蕩息子の一節を理解するために、登場人物になりきって日記風にその一節を書き換え、チームでさらに物語をブラッシュアップしていく展開だった。
★宗教の時間と聞いて、聖書解釈の講義が行われるのかと思っていた。たしかに、聖書はほとんどが隠喩というレトリックで書かれているから、それを解釈せざるをえない。しかし、だれか権威ある聖職者の解釈を憶えたり、押し付けられたりするのではなく、生徒が自分たちで聖書の理解を深めていく対話をすることが中心だった。
★これは、歴史的解釈学や哲学的解釈学、法律的解釈など、言語に関する議論の絶えない領域の学びの入門編でもある。ハイデガーの影響を受けながらも距離を置きながら哲学的解釈=ヘルメノイティークを生みだしたガダマーの世界の入り口である。ガダマーは、ハーバーマスやデリダなど超有名哲学者や社会学者と論争したが、もともとハイデッガーの根っこにある、トマス・アクイナスをいかにして超越するかというテーマも内に持っているはずである。このトマス・アクイナスこそ、ヨーロッパの歴史的水脈に流れる思想を生みだした1人である。そして彼は、ドミコ会士でもある。
★そんな妄想をいだきながら、豊かな宗教のPBL授業を見学した。
★そして、5・6時間目。中1生の一人一人の手にiPadが渡されるガイダンス。使い方や情報のセキュリティーなど、多角的な学びが行われ、その後いよいよ真っ白い箱の蓋が開けられた。白い箱から黒い画面がのぞく。白と黒は、聖ドミニコ学園のロゴのカラーでもある。
★伝統と革新が相まって聖ドミニコ学園の挑戦がダイナミックに動き出しているのである。
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