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2019年6月12日 (水)

「深い思考スコア」と「偏差値」(了)私立公立中高一貫校の入試問題が巻き起こす思考力革命 硬い思考から柔らかい思考へ

 ★晶文社学校案内編集部発行の「首都圏中学受験案内2020年度用」に記載されている「思考コード」で「深い思考スコア」を算出して分析することによって、私立中学入試あるいは公立中高一貫校の適性検査に向けて準備をするとうことは、「深い思考力」を学ぶことになるということが明らかになった。

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★上記表をみてみると、私立中高一貫校の受験準備を<一般的に>した場合、やはりなんといっても算数と国語の<勉強>が中心になってしまう。公立中高一貫校の適性検査に向けての準備は、新タイプ入試の<学び>のみである。

★もし、私立中高一貫校の受験準備も新タイプ入試に照準を合わせると、新タイプ入試の<学び>に力点が置かれることになる。しかし、私立中学受験準備塾に通うと、基本は、算数と国語の<勉強>となり、新タイプ入試の<学び>については各学校で開催されている新タイプ入試のための対策ワークショップで<学ぶ>ことになる。

★思考力入試セミナーを行っている聖学院や工学院、静岡聖光学院などのワークショップは有名だ。

★もし公立中高一貫校の適性検査のみならず、私立中高一貫校の新タイプ入試も活用するという受検生は、新タイプ入試でも適性検査型入試を受ける場合は、塾の公立中高一貫校の対策コースで十分に対応でできる。しかし、公立中高一貫校の適性検査の準備だけでは、思考力入試や自己アピール入試などを行っている学校の対策としては不足する部分がある。同じ「深い思考問題」でも、思考コードで分析すると、ズレがあるからだ。

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★つまり、算数と国語で出題する「深い思考問題」は、論理的に考え表現する問題でいわゆる難度の高いB2B3の領域が中心である。適性検査型は論理的に考える一方で、それに基づいて創造的思考を生み出す、つまり学びに基づいた創造的思考問題を重視している。

★思考力入試は、C3という直感的な創造的思考が中心で、そのインスピレーションを刺激するB2B3問題やC2問題が足場づくりとして用意されている。だから、一見難度が高そうなのだが、ものの見方を変えると気づく仕掛けになっているから、B2B3のみの準備をしている生徒には、わけがわからない可能性がある。

★C3は、隠喩的には、非ユークリッドやトポロジーなどノーベル賞受賞者が活用する柔らかい思考で、それに比べると、B2B3は、あくまで相対的だがユークリッド的な硬い思考である。

★今この柔らかい思考領域が注目されているのは、この領域こそAIでは、まだ踏み込めない思考力領域だからだ。もちろん、この領域は見える化されてすぐに硬い思考で乗り切れるようになるから、常に新しいものの見方考え方への知の旅をしなければならないのだが。

★そして、今この柔らかい知性、レビ・ストロースの言葉でいえば「野生の思考」が注目されているのが、幼稚園などの就学前教育なのである。2020年大学入試改革やそれに伴って改訂されている新学習指導要領に影響を与えている考え方、特に「主体的・対話的で深い学び」と表現されているアクティブラーニングやPBLは、ハーバード大学、MITメディアラボ、UC系大学、スタンフォードなどが提唱している学びであり、北欧の学びである。

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★ヘックマン教授、おおたとしまさ氏、レズニック教授の上記写真の本が注目されているのも、その証拠の一つであろう。就学前教育において、算数や国語のような勉強はあまりしない(最近はこの領域をすでに行ってしまうところもあるようだ)。「砂場」のような、硬い思考の領域と柔らかい思考の境界を簡単に往来する創造的な思考を体験している。創造的思考は、想像、発想、協力なども必要で、必ずしも認知的な能力だけでは、生まれない。

★ヘックマン教授がデータで示した非認知的能力が生成されている。これを柔らかい思考と、ここでは呼んでいるのだが、この思考領域は、20世紀までの教育は初等中等教育で排除されてきた領域である。

★それが、21世紀になって、シリコンバレー草創期に生まれた柔らかい思考領域が重要であることが広まり、その領域は、実は就学前教育にあったことが再発見されたのである。

★一方で、その柔らかい思考ができる人材が、18歳になるにつれてが少なくなってしまっているという教育への見直しも起きたのである。この本当の意味での21世紀型教育は、まだまだ道半ばであるが、避けることはできないし、止めることもできない。

★そして、中学入試における多様な新タイプ入試は、この柔らかい思考領域を開き始めたのである。それゆえ、かつての中学受験準備のための<勉強>をしている層ではなく、おけいこを続けてきた柔らかい思考領域で<学んで>きた生徒が、新タイプ入試に挑戦して、私立中学に入学する新しい道が開かれたわけである。

★新タイプ入試は生徒募集における学校側の創意工夫した方法論ではあるが、市場がそれを活用するウネリが生まれてきたということは、そのような柔らかい思考の道が望まれているということも示唆されている。

★PBLやアクティブラーニングを行っていないで、新タイプ入試だけやるとしたら、それは入学後、柔らかい思考を求めている生徒の期待を裏切るだろう。

★逆にアクティブラーニングやPBLをやっていながら、新タイプ入試をやっていない学校は、そのアクティブラーニングやPBLは、硬い思考領域で難しい問題をやっているというカリキュラムデザインになっている場合が多い。

★硬い思考から柔らかい思考へと言ったとしても、もちろん、硬い思考を排除することはない。むしろ両領域の境界線を往来できる柔軟な創造的思考のことを示しているととらえるのが正しいだろう。

★この21世紀のウネリを「思考力革命」と言いたい。そして、この始まりは1997年、あのジョブスが宣言した。世界を変える人になろう。クレージーになろう。つまり天才に!それはもちろん、今までのように一握りの人間の特権ではなく、すべての人に機会はあるのだと。

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★それを1分の動画にしたのがあの<Think different>ではないか。幾人もの天才を登場させて、その最後は、無名の少女の未来を見つめ眼差しで締めくくるストーリー。その未来の道は<思考力革命>によって確かなものになるだろう。

 

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