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2019年6月27日 (木)

学校雰囲気(04) 湘南学園のESD教育が身近なところから世界の雰囲気を変える

★「WEB料理通信」に、<湘南学園の中学生が取り組む「幸せを届けるチョコプロジェクト」>という記事が掲載。受験情報WEBではないサイトに掲載されているというところがすごい。「WEB料理通信」は、「食で未来をつくる・食の未来を考える」をテーマとした、みんなでつくるプラットフォームというビジョンを持っている。

★湘南学園のチョコプロジェクトは、まさにチョコに注目することで未来をつくるビジョンが広がり、食という生活の未来を創り出すきっかけになると「WEB料理通信」の編集者は確信したのだろう。

★この記事の内容については、ぜひ読んでいただきたい。ここで解説することは不遜だ。

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★私がここで確認したいことはただ一つである。それは同校のESD教育が教科教育からグローバル教育、キャリア教育など多様な教育活動を有機的につないでいることの一環として、ナチュラルにこのプロジェクトが立ち上がっているということである。

★ユネスコスクールでもあり、SDGsの取り組みも授業においてもなされている。多くの学校では、これらの教育活動はたいていはバラバラで、いろいろやっているというだけで終わっている。ところが湘南学園の多様な教育活動は、ESD教育として有機的に循環している。

★このチョコプロジェクトも清水先生の地理の授業から生まれ、記事にあるように世界に広がっていった。清水先生は、同記事の中でこう語っている。

――「社会への不安が先行し、無関心になることが多い中、子どもたちには社会の構造を理解し、課題を正確に捉えることで、希望を見出し、主体的に行動できるようになってほしい。僕は距離を保って支えるだけなんです」と。

★「社会の構造」とは、ここではフェアトレードの概念の中にある「適正価格」のメカニズム。これはヨーロッパ中世からルネサンスに移行する段階で、すでに大問題になっていた。キリスト教における利息の問題の浮上で、「適正価格」というキーワードが広まるというコトは、そこに「適正価格」でない現状があふれていたことを示唆している。

★中世の遠隔地商人が自由都市に持ち込んだ貿易商品の適正価格をいかに設定するのか?資本主義の萌芽である。そこから近代世界の広がりとともに、適正価格は格差を覆い隠す資本主義のメカニズムとして、市場の価格にシフトしていく。

★チョコプロジェクトは、発展途上国と先進諸国の関係の格差の問題に気づき、問題解決のためにアクションを起こしている。しかし、それを生み出しているメカニズムは、実は自分たちが日々生活している政治経済社会そのものの中に構造的に埋め込まれていることにやがて気づくだろう。

★それは、世界を変える根源的な気づきであり、ここに到るESD教育のような環境が在る学校こそ開かれた世界の論理を土台にしている本物教育を形作っていると言えるのではないか。

★同校は、中学入試においても、深い問いを考えるESD入試という新タイプ入試を開発してもいる。このような一貫性のある教育こそ質の高い教育と呼ぶにふさわしい。

※ESD教育とは、同校サイトにはこうある。「ESD(Education for Sustainable Development)は、「持続可能な開発のための教育」と訳されます。これは、私たち(まだ生まれていない、私たちの子孫も含めて)が生きていくことを困難にするような問題について考え、立ち向かい、解決するための学びです。即ち、「持続可能な社会の担い手を育成する教育」といえるのです。」

 

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