創造的才能 ハワード・ガードナーの考え方をきっかけに
★埼玉大の池内慈朗教授は、ハワード・ガードナーの研究家として有名だし、ガードナーの翻訳も出版している。そのガードナーの著書を読みたいところだが、私は、夏目漱石の「草枕」的読解リテラシーしかなく、告白すると、何せ、長文をリニアーに読み続けることができないのだ。
★それゆえ、インターネットで概要を検索する。今回も池内教授の「ハワード・ガードナーの創造性理論および米国における関係諸理論」を見つけた。しかし、それとても、全文は読めない。ぱらぱらとめくって、次の一文にぶつかったところで、満足してしまう。
≪ガードナーは、創造性の定義を、「創造的な個 人が、専門とするドメインにおいて、あるいは、 少なくとも一つの文化的な集団のなかで、問題を 解決したり、時代の流れを創り出したり、新しい 問題を提起すること」としている。≫
★あとは、ガードナーのMI理論の本の断片とかピアジェやレヴィ・ストロースを研究していたという断片やミハイ・チクセントミハイと共感しているという情報やレッジョを尊重していたという情報を重ね合わせ、勝手に考える。だから、ガードナー教授がそう考えたのかどうかは実のところわからない。
★ただ、先日のカウンシルの時、立ち話で、聖学院の内田先生が、ガードナー教授は、創造性は多重知能とは別物ではなく、むしろそれぞれの知というドメインで働くのであると語っていたことが気になっていた。内田先生は、技術という教科ドメインを受け持っていて、そこで創造的才能を発揮している。いやむしろいくつもの多様な知の結合ドメイン(おそらくこれこそが教科横断的というものの真の在り方)で、創造的才能を発揮し、メディアに取り上げられ、市場というフィールドで認めらえている。
★まさに、ガードナー教授の創造性の定義を貫いている方なのである。その先生がそう言うのだから、もう一度ガードナー教授の創造性について調べよう思ったわけだ。
★すると、先の一文に出遭ったわけだ。ガードナーは、すべての個人が創造的才能者だと考えているかどうかは今のところ不明だが、すくなくともレッジョを注目し、就学前教育を研究し、幼児期のメタファー表現に創造性の作用を見ているから、生まれたときは、みな創造的才能者だとみなしているだろう。ただし、教育が始まると、MIや創造性の作用が十分に発揮できる教育が行われてこなかったために、創造的才能は摘まれてしまうと考えている可能性はある。
★それを取り戻すために、MI理論や芸術教育のプロジェクトを展開してきたのだろう。
★さて、ガードナーと内田先生のプログムを通してわかることは、創造性は学びを通して生まれてくることは可能だというコトだ。それはメタファー機能を学びに活用することなのである。
★メタファー機能とは、実は「思考スキル」と呼ばれるものである。スキルと表現すると、なぜか受験テクニックに直結してしまうが、思考スキルは実は修辞学である。
★表現とは、表現者がいいたいことを伝達する機能を有しているが、それは論理的思考のときに限られる。そういうドメインやフィールドも必要である。しかし、表現は思いもよらないリアリティを創造/想像する技術でもある。
★direct表現とindirect表現のカップリングが常に生まれるのが表現というものであろう。ただ、事実に力点をおいたとき、direct表現が前面に出てくる。そして、ファンタジーを思い描こうとしたら、伝達以上の内容を生成するindirect表現になる。かくして表現とはルビンの壺である。
★では、その創造性を生み出す修辞学としての思考スキルとは何か?それは、隠喩とか提喩とか換喩とか呼ばれている「置換」スキルであり、パラドクスや矛盾、差異と呼ばれる「比較対照」スキルであり、具体と抽象という「挿入」スキルや「削除」スキルであり、順番を決める「優先順位」スキルなのである。特に、「置換」スキルはユークリッド幾何という硬い数学を非ユークリッドやトポロジーという空間変容に誘う最強のそして当たり前すぎて気づきにくいスキルなのである。
★こういうと、そんなもんですかと言われそうだ。だいたいいつもそう言われる。基本原理はいつもシンプルである。リニアモーターカーの基礎原理は電磁石のプラスとマイナスの差異によって動くのである。真理はいつもシンプルである。だから、すべての子供たちが創造的才能者になる学びはデザインできるのである。それには、幼児期から修辞学的思考スキルの気づきを途絶えさせないことである。
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