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2019年6月30日 (日)

<Peer>という個人 「個人」という概念の再構成?

『月刊教員養成セミナー 2019年8月号』(「教育心理入門」より)の記事<先生や親ではなくて「仲間」のカウンセラーが大きな威力を発揮する!>という記事がある。先生や親よりも、友だちとの対話がピアカウンセリングになるという。たしかに、そういうことはある。

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★しかしながら、これは同世代の友人というだけではなく、世代が違っても<Peer>ということはある。つまり、これは、子供たちの生活が、学校という生活の場に圧倒されているから、<Peer>=<友だち>になってしまう。学校と家庭の往復が生活の中心だろうから。

★そして、どうしても<自分>と<友だち>はそれぞれ<個人>といわれる。

★これに対し、平野敬一郎氏の考えはおもしろい。

≪Individualは、in+dividualという構成で、divide(分ける)という動詞に由来するdiviidualに、否定の接頭語inがついた単語である。Individualの語源は、直訳するなら「不可分」、つまり(もうこれ以上)分けられない」という意味であり、それが今日の「個人」という意味になるのは、ようやく近代に入ってからのことだった。(『私とは何か~「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書2012年3ページ)≫

★しかしながら、これからは<Idividual>(個人)ではなく、<dividual>(分人)という新しい概念を持ち込もうと。人間は、多様なキャラクターで成りたっていて、どれが本当の自分で、どれが嘘の自分であるかということはないのだと。

★学校で、友だちと対話すると、先生や親に否定された部分が認められれる。それは、ある意味<分人>としての個体が分かち合えているのあかもしれない。とはいえ、友人どうしだって、「君がそういう人間だとは思わなかった」などと喧嘩になることもあるし、そこから亀裂がはいることもある。

★ピアカウンセリングが友人同士でうまくいっているとき、実は「個人」ではなく「分人」という状態になっている可能性がある。しかし、それは意識されていない。たまたまということだろう。

★ただし、このたまたまが意外と多いのだろう。なぜだろう。それは教師とか親とか固定されたキャラクターと対峙する必要がないからだ。つまり、従来の「個人」とは、固定された「キャラクター」が「個人」の顔で、その背景には「分人」が<in>(内面化)されて見えない状態になっているということだろう。

★いつのまにか、キャラクターがアイデンティになっていたわけだ。しかし、引退して、そのキャラクターがなくなると、ようやく内面化された多様な分人がでてきて溌溂となる人もいるし、内面化を無意識層まで埋め込んでしまって、取り出すことができず、結果空洞化してしまっている人もいる。

★どうやら<Peer>というのは、「個人」という仲間どうしの場というよりも、「個人」が互いに「分人」になれる場ということであるのかもしれない。

★しかし、それが社会にでると、キャラクターという「個人」をだすしかないというのが、現代社会の構造なのだろう。

★ところが、その現代社会の構造が、劣化している可能性がある。構造を再構築したり脱構築するには、どうやら、この「個人」という概念を考え直すときが来たというコトではないか。今まで通りのキャラクターとしての「個人」という概念では、そうではない自分を否定したり抑圧したりする。この否定や抑圧の機能をなくさない限り、どんなに制度上の社会構造を変えたところで、何も変わらない。

★最近、学校は外部の人材との連携の機会を増やしてきた。そのとき、その外部の人材が個人>分人ではなく、個人<分人という感覚(現状では無意識の場合が多い)のある人材だと、そこに生徒との間で、ピアカウンセリングの場がナチュラルに生まれる。多くの学校の先生は、個人>分人という感覚だから、なんかフラットに話しているなあぐらいしか気づかない。

★しかし、なかには敏感な個人<分人の感覚をもっている教師がいて、その外部の人材と<Peer>関係を自らが結び、そこに同じ匂いのする教師や生徒を結び付ける。そこに未来がある。そこに希望が生まれる。

★今回のこの記事の内容は、学校内の話で終わらせるのではなく、「個人」の概念の再構成や学校外との連携による新しい<Peer>関係作りの大切さという話に広がっていけばと期待している。

 

 

 

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