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2019年6月 4日 (火)

【思考力革命02】いよいよ局面が変わる雰囲気か?

★いつも会っているし、この間もカウンシルですれ違いながら対話していたが、3人だけで晩餐をするというのは、令和になって初めてだった。不思議と、こういうときは、互いにアポをとるのが、一発で決まる。

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★4時間以上対話していたから、話は、多岐に渡ったが、話の軸は、時代の雰囲気を読むというコト。最初は、いまここのリサーチ結果を持ち寄りながら、その背景にある通時的視点を見出すために、それぞれの知恵をメタダッシュボードに入れて、がちゃがちゃ振り回す。

★そのうち通時的視野と共時的視野の交差点がいくつか見え始める。

★鈴木さんは、デューイやローティの系譜で語るし、僕はフッサールやピアジェあたりから、しかし二人はガードナーで合流する。石川先生は、その流れの中にクリティカルシンキングを挿入し、自分たちがイメージしている思考力や対話の意味を問い返し、ああでもないこうでもないと盛り上がる。

★3人の原点は、2009年あたりだ。それ以前から互いに情報交換はしていたが、3人がいっしょに共創造をするというのは、そのあたりからだった。今のかえつ有明とか宝仙理数インターとか少し遅れて広尾が立ち上がり、そろそろキャズムを迎えるという局面で、3校のみならず、多くの学校が突破口を見出そうとしていた。2006年・2007年と教育基本法や学校教育法などが改正され、今の大学入試改革の準備が国立教育政策研究所でスタートしていたころだった。もっともきっかけは経産省の動きだったが。

★官の動きを気にしていたわけではないが、もともとOECD/PISAの問題と分析をリサーチしていたこともあって、同研究所がリサーチしていることが、たしかに時代をつかもうとしているということだということは感覚的につかんではいた。21世紀型スキルという名のコンピテンシーやブルーム→アンダーソン→マルザーノのタキソノミーのバージョンアップなどが研究対象になっていたのは、なぜかシンクロしていたのを思い出す。

★一方で、私立学校は経営上の問題があるから、その一環として生徒募集をなんとかしなくてはならない。その当時はアドミッションポリシーとかカリキュラムポリシーとかディプロマポリシーという言葉はまだトレンドになっていなかったが、入り口ープロセス―出口という表現を使っていて、入り口だけではなく、くし刺しするアイデアを議論していた。

★つまり、外部の市場や学内の内部、そして社会との接点の関係総体を変えるものはないかと。点だけの変更という対処療法はなるべくとらないようにしようと。もちろん、現実的にはそういういときもあったが。そうして生まれたのが「思考力入試」だった。しかし、予想通り、塾には一笑に付され、「思考力なんて昔からあるでしょう」と言われたり、「こんなもんですか」と言われたりした。

★3人は、この言葉がでてきたら、キター!と思う。コペルニクス転回とかコロンブスの卵とは、世の人がそういう捨て台詞を吐いてくれた時やってくる。まあ最初は、「思考力入試」というネーミングは学内でも塾の対応をおもんぱかって却下され、「作文入試」というネーミングで行った。

★聖学院の当時の校務部長の平方先生が、だったらウチでと、「思考力入試」というネーミングを使ってくれたことを契機にかえつ有明も「思考力入試」というネーミングを使うコトができた。やはり協力関係は必要で、それがきっかけで、2011年に発足した21会で共通のネーミングで進撃することにした。聖学院の校務部長だった平方先生が、工学院の校長に就任したらすぐに「思考力入試」を実施することを決めたから、新タイプ入試の一角を占めることができた。

★デューイやフッサールやもっと前から哲学的な「思考力」というパースペクティブでみている私たちと、「思考力・判断力・表現力」というカントの「認識・実践・美学」に重なる意味での学習指導要領の言説である「思考力」とでは、その歴史的文化的構造的意味が違うのは当然で、同じ「思考力」という言葉を使っていても、対話が成立しないのは当然である。

★しかし、それを逆手に取れば、外部・内部の変容を生みだせるし、局面を変えられる。そこで「思考コード」という基準に準拠した思考力入試を軸にしたのだった。「思考コード」のコードは基準とかルールという重たい意味をカジュアルに表現しておこうという作戦だ。

★コードには「法典」という意味もあり、ローマ帝国の成立史の要件にあるインフラというコード、ローマ法というコード、パックスロマーナ精神というコード、ラテン語という言語コードなどを、もちろんその背景には軍事力という」コードがあるから、そのまま鵜呑みにはできないが、アイデアを転用した。それはプラトンやアリストテレスだってそうだ。奴隷制の上に成立していたから、そこを無視して転用できない。

★ともあれ、学びのあるいは人材育成のコードをきちんと脱構築するコトがミッションだった。

★21会がC1英語とかPBLとかICTとか思考コードにこだわるのは、その背景には、現状の強欲社会システムをwell-beingに変容する基準・ルール・法典の考え方のコペルニクス的転回=思考力革命を生み出すことだった。

★鈴木さんが、今月実施されるかえつ有明の思考力対策講座である「思考力のトレーニング講座」は、24時間で定員の50名が満たされたという話をしながら、2009年に行ったときは、石川先生は、最初は5人でもいいから集まって欲しいといっていたのを思い出しますと感慨に浸っていた。すると、石川先生は、でもそれは初回でしょう。11月以降はその当時から50名くらい集まっていたわけで、だから各校に思考力入試をやる価値があると啓蒙しているわけで、今もそれは同じですよと。するとすかさず、鈴木さんも、でしたねと、じゃあやりますかと。

★そこで、やはり思考力革命の流れは来ているわけで、こうなったら、局面を変えることを次元を変えて創りますかということになった。時代が変わらない理由をああでもないこうでもないといっている時間がもったいない。だったら創ってしまえばよい。思考力入試対策講座で「信長とジョブス」の対話を創作するプログラムをつくって、在校生の皆さんと事前シミュレーションした時のことを思い出した。アクティブラーニングの実験も石川先生はそのときから実施していた。

★2009年、2011年、そしてしばらくマイナーチェンジで進行してきて、2019年、三度新次元を創る話に盛り上がった晩餐だった。

 

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