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2019年5月10日 (金)

2020年首都圏中学入試動向(03)跡見 国語重視型入試を開設 その重要な意味

首都圏模試センターは、「跡見学園、国語重視型入試を実施。詳細は5月11日の説明会で発表」という記事を掲載。

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★このグローバルな時代になぜ「国語重視入試」なのか?日本文化を知っておくことがグローバルな視野を広げる時に重要であるし、英語でエッセイライティングをするときにも、英語のスキル以上に、何を語りたいのかその想いが重要で、それを考えるには、実はふだんから考えていなければそう簡単に書けるものではない。ふだん考える時の言語は日本語の場合が多いから、やはり言語=思考という側面がある以上、国語を大切にしなければということだろうか。

★もちろん、そういう理由は言うまでもなくある。しかし、それなら、一般入試で国語の問題を出題しているからよいのではないかということになるが、実は一般入試の国語の問題は、晶文社の「中学受験案内2020」を調べていくとたいへん恐ろしいことが判明するのである。

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★というのも、同受験案内には、首都圏模試センターのデータ「思考コード」分析も掲載されていて、各学校の国語の問題で深い思考を要する問題の割合が開示されている。

★驚いたことに、算数は平均して30%以上は「深い思考(思考コードB2B3C2C3)」を問う問題を出題しているのに、国語は20%行かないのである。

★合格するには、60%~70%が解ければよいので、これだと国語の場合、「深い思考」をせずに、漢字や慣用句などの知識問題と読解リテラシーといっても、文章中の言葉を探すスキャニングしか学ばなくなる。「深い思考」の問題はできなくても合格点をとれるからだ。

★そんな中で、算数以上に国語の深い思考を問う問題をきちんと出題している学校がある。60%以上が深い思考問題なのである。その学校とは、たとえば、栄光、麻布、開成、桜蔭、鴎友学園女子なのである。駒東が55%で、海城が48%である。

★これら以外の学校の多くは、一般入試において国語の問題では深い思考問題は重視されているとはいえない。

★なぜこうなってしまったのかは、複合的要因があるから、ここでは語らないが、大事なことは、このような国語の問題では、言語による思考力をきちんと育成できないということなのだ。中学受験準備をすると、算数は深い思考が養えるが、国語ではそうなっていない。

★一握りの学校は、算数でも国語でも、深い思考を養う準備ができる。

★英語でできるから大丈夫だという方もいる。しかし、それもまた一握りの生徒の話である。

★しかし、だったら深い思考問題の量を増やせばいいじゃないかといわれるかもしれない。たしかに、そうだが、受験業界というのは、そんなに簡単ではない。

★いずれにしても、国語で深い思考問題をきっちり出題している先に挙げた学校を見れば、教育の質がいかによいかは明らかである。ではどうしたらよいのか。そこで、新タイプ入試なのである。

★従来通りの教科入試と深い思考問題を出題する新タイプ入試の併用が当面続く。そして、やがては、新タイプ入試と教科入試が融合する方向に動く。その方が合理的であり、すでに、数学的思考も、言語的思考も融合した形で出題している公立中高一貫校の適性検査が有効であることは事実上証明されているのだ。

★適性検査に比べれば、先に挙げた麻布や開成などの教科入試では、もっと「深い思考」問題を大量に出題している。他の私立学校も、適性検査以上の入試を出題するようにせざるを得なくなるだろう。

★今回の跡見の国語重視型入試問題の開設は、このような中学受験生の学びの根本的な問題の解決に歩を進めるすばらしい判断である。

 

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