聖パウロ学園 対話が生み出す物語思考と編集思考
★聖パウロ学園の授業を見学していていつも感動するのは、教師と生徒の関係が極めて良質だというコトだ。もちろん、教師も生徒も個人的にはいろいろな悩みもあるだろうし迷いもあるだろう。若い先生方も多いし、生徒はまさに青春の疾風怒濤の中を歩んでいるのだから当然だ。
★しかし、その悩みや迷いをどう自分で解決するか、乗り越えるのか、生徒は、そのヒントを教師と生徒の良質な関係の中で見出していける。まさに関係の環境が自らの内面に気づきを生みだし、それを互いに理解し合える状況を生成しているのである。
★森の中の私立高校ということもあるのかもしれない。背景には高尾山が控えいるから、どこか厳かで、どこか癒しの空間で、なにか地球全体を感じないではいられないし、静かに耳を傾けたり、ゆったりと静かに語り合っても空気が実によい。
★大変人気のある高校であるが、定員充足していながら、少人数制であるから、授業も面談の空間でも、どこでも同じように対話がある。この「対話」が、実は並のコミュニケーションではない。生徒の自己肯定感は、持続可能性にすることはなかなか難しい。それに、生徒によっては万能感と肯定感を間違えるし、自分のすばらしさに懐疑的で不安感がいっぱいの生徒もいる。
★これは、大人も同じで、世間とはそういうものであるが、聖パウロの場合は、互いの目配り、気配りがすてきなのだ。もちろん、たがいのというのは、教師同士、生徒同士、教師と生徒と縦横無尽の関係である。
★これを可能にしているのが「対話」なのだが、聖パウロ学園の「対話」とは何かというのは、極めて豊かで一言では話せないし、その豊かさを先生同士が語っても尽きない時間を日常の中でかけている。
★授業をみると、英語では、ネイティブスピーカーの教師と日本人教師の連携関係がうまくいっているし、ディスカッションやプレゼンテーションは当たり前である。文法は文法できちんと学ぶが、ライティングやスピーチでは、文法的誤りを恐れずに、自分の想いを大事にしている。その想いが心身に充満するのは、教師と生徒との対話やディスカッションの機会がたくさんあるからだ。
★数学は、生徒がどのタイミングで最適な「置換」ができるのか、対話によって生徒が気づく瞬間を見守っている。教えるのでも誘導するのでもない。間接的な仕掛けを対話によってマインドセットしていく。数学は「置換」ることによって、ルビンの壺のように見えなかったものが見えるのだと。
★そして化学の授業と世界史の授業がこんなにシンクロしているのかと、また感動するのだ。
★化学の世界は、元素という目に見えない世界をどのように生徒とイメージし化学記号や化学式に移行できるか。実はこのイメージが重要だ。それゆえ、化学の教師が日常の化学反応を次々と化学記号で物語にしていく。理系も文系も区別なく、化学の元素の世界に没入していくのだ。
★世界史もそうだが。歴史物語というより、世界の神話や日本の昔話の背景にある歴史的世界観を紐解いていくストリーテラーなのである。
★国語は、もちろん読解リテラシーや小論文を書くトレーニングもするが、それらは「編集」の視点に収束していく。だから、教師がストリーテラーなだけではなく、生徒も物語を企画提案を編集していく。
★「置換」によって発見する数学的思考は、発想を生み出す泉であり、化学や世界史は、目に見えない分子の異次元の世界や歴史という時間と空間の世界を物語に「置換」るテクノロジーである。そして英語や国語は自らのいまだ目にしない未来を紡ぐ表現を「編集」するテクノロジーである。
★果たして、この発想、テクノロジー、編集するスキルはいかにして実装できるのか。その根源がPBLのコアでもある「対話」なのである。
★聖パウロ論を書くにはまだまだリサーチが足りない。始まったばかりだ。しかい、まずは感動的な教師と生徒の関係があることを紹介したかったのである。
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