「深い思考スコア」と「偏差値」(03)首都圏女子中学校 「深い思考スコア」と「偏差値」の関係で強烈にわかるコト
★晶文社学校案内編集部発行の「首都圏中学受験案内2020年度用」に記載されている「思考コード」と「偏差値」の関係を、今度は首都圏女子校でみてみよう。男子校とは全く違う事態が起こっている。これは、ある意味、20世紀社会の鉄鎖をぶち切り未来に向けて動き出すための女性の環境の変化を映し出しているとみなせるかもしれない。
★男子校と同じように、全体「深い思考スコア」と首都圏模試センター「偏差値」を、同書のデータを活用して作成。算数と国語のデータが判明している学校を中心に調べた。新タイプ入試についてのデータがない一部の学校は、私の方で推計した。基本的に、適性検査型は、思考力入試などとは違い、公立中高一貫校のスコアを超えるもはない。新タイプ入試でこの適性検査のスコアを大幅に超えるのは、やはり私学独自の「思考力入試」「自己アピール入試」などである。
★さて、男子校の散布図と比較すると、全く違うコトがわかるだろう。男子校の場合は、相関係数が0.60であるが、女子校の場合は、0.26である。女子校は、男子校に比べ、新タイプ入試を行うところが圧倒的に多いため、このような結果になる。
★この姿を見て、偏差値で読めないから、新タイプ入試は評価が正しく出ないと語る見識者もいる。しかし、これは男性の識者の場合が多い。ここに実はSDGsの17の解決ゴールの1つジェンダーの問題が横たわっている可能性がある。
★全体「深い思考スコア」ではなく、算数と国語だけの「深い思考スコア」と「偏差値」で相関図を作成すると、上記のようになり、今度は相関係数が、0.81になる。男子が0.78だったから、女子校の場合は強烈な相関があるといえる。
★しかし、男子校と決定的に違うことは、算数と国語の「深い思考スコア」40以下の女子校が偏差値の高低に関係なく多いというコトである。これは、結局女子校の算数と国語の問題は男子校に比べ「浅い思考」=「知識の確認」問題がたくさん出題されているというコトを意味している。
★同じ中学受験生でもシングルスクールに応募する男子と女子とでは、思考の深さに違があるというコトを意味する。ここに思考力格差を生み出す環境があるわけだ。
★これは、女子校の数が多く、生徒募集の戦略と学びの質のバランスを前者に重きを置かざるを得ない、受験市場の偏った環境があったからである。これは、女子にとっては長い間「鉄鎖」であっただろう。この違いが、就活や仕事においても影響してくる。
★つまり、中学受験の世界でさえも、社会構造的な男女の格差の影響を受けていたのであった。ところが、新タイプ入試によって、そのような格差の鉄鎖をぶち切る動きを多くの女子校自身が開始したということだろう。
★すでに桜蔭、鴎友学園女子、白百合、雙葉などは、新タイプ入試を行わなくても、「深い思考」を要する問いを多数出題してきた。OGが男性顔負けの活躍をしているのは、そうなる理由がきちんと学びの環境にあるということなのである。
★ところで、女子学院は、これらの学校を超えて、歴史的にも女性の鉄鎖をぶち切る重要な役割を果たしてきたし、今もそうであるにもかかわらず、中学入試では「深い思考スコア」が低い。いったいこれはどういうことだろうか。実はもともと女子学院は面接が独特で、これは試験ではないが、ペーパー試験が受験生にとってはそれほど難しくないので、差がつかない。そこで結果的に面接が選抜判断に参照される。
★したがって、そこで受験生に投げられる問いは、創造性の違いが明快にわかるものになっている。ケンブリッジやオックスフォードでは、Aレベルテストでは、差がつかないので、口頭試問を行う。結果的に女子学院も同様のメカニズムになっているということだろう。つまり、女子学院は、隠れ新タイプテスト実施校であると言えるかもしれない。
★ここ数年話題のミネルバ大学の入試は、口頭試問であり、自覚的に論理的・批判的・創造的思考力を試す問いを投げかけている。中学入試で年々増えている新タイプ入試は、このミネルバ大学の動きとシンクロするとは、ミネルバ大学当局のスタッフが言っているぐらいだ。
★この鉄鎖は、女子のみならず、男子もそうだ。男子は男子の中で格差があり、男子と女子との間で格差があるという多重構造である。この複雑な鉄鎖をぶち切る動きが新タイプ入試を行っている学校から生まれているのである。
★男子校では聖学院と佼成学園などの学校が動き出しているが、男子校の中では少数勢力だ。しかし、だからこそ、これらの男子校が希望の私学と言われるゆえんなのだ。それに比べ、新タイプ入試を行う女子校は多い。女子校は女子校特有の鉄鎖があり、それをぶち切るために、一つは新タイプ入試の開発、もう一つに共学校の動きがある。両方一遍に行う学校もあるのは、説明するまでもないだろう。
★思コードという新しい基準が、中学入試の動向を広報戦略的側面だけではなく、知による鉄鎖をぶち切る真理への自由を解放する根源的な教育出動があることを映し出すコトになっていると言えまいか。
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