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2019年5月23日 (木)

順天 マトリクス型組織開発へ

★今や21世紀型教育の実施は当たり前となり、全国の私立中高一貫校で「21世紀型教育」あるいはそれに準ずる名称がパンフレットを覆っている。しかしながら、その内容は、様々であり、その質のよしあしは、受験生・保護者には見分けがつかない。

★たしかに、アクティブラーニングとかPBLはどこでもやっている画像や動画を見ることができるし、英語も四技能に力を入れたり、海外研修をたくさん実施していたり、タブレットやラップトップを活用したり、STEAM教育を標榜したりしている。

★しかし、アクティブラーニングやPBLをやっている教師の割合は少なかったり、英語もCEFRレベルでB1ぐらいしかいっていなかったり、海外研修も語学研修どまりだったり、ICTも調べ学習ぐらいに終始していたり、STEAM教育も理科実験の延長ぐらいだったりと、実際には部分的な21世紀型教育というところが、まだまだ多いのである。

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★そうはいっても、学校説明会やオープンスクールに足を運んでも、ショータイムであることは否めないわけであるから、その実態やクオリティはわかりにくい。

★ところが、学校説明会でハッと気づくことができるトーク内容がある。それは21世紀型教育には21世紀型組織開発をということが推察できる話がされているかどうかなのだ。内製的教員研修の話を聞くことができるかどうか。20世紀型教育型組織における研修は、外部講師を招いて講演を聞くだけというものがほとんど。しかし、21世紀型教育組織の研修は、ファシリテータやジェネレーターは、学内の教師が持ち回りでできてしまうものなのである。

★20世紀型教育は、教科をベースにした縦割りでツリー構造の校務分掌という組織で実施されてきた。この組織がそのままで、21世紀型教育を行っても、やっている教師はやっているで終わってしまう。そして、一人一人の教師が仕事を抱え込み、全体としてのビジョンやバリューは共有されないから、進むのは、伝統的なルーチンワークだけだ。これでは、21世紀型教育の要であり、2007年の改正学校教育法で条文化された学力の三要素×創造的思考が、養われるはずがない。

★そこで、21世紀型教育を推進している順天の学校長長塚篤夫先生は、約50の校務分掌以外にプロジェクトチームをつくった。しかも、そのプロジェクトチームも約50あるのだ。20世紀型教育の改善点を解決するプロジェクトチームを1つか2つ作ったという程度ではないのである。

★学校運営をするルーチンワークも必要であるが、ここをできるだけスッキリ運営し、クリエイティブワークも教師一人一人ができるマトリクス型組織開発に着手したということであろう。

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★マトリクス型は機能的でないという見識者もいるが、仕事の数が一握りの教師に集中する状態をなんとかしなければならないのが日本の学校の問題である。そして、それがなぜ起こるのかというとルーチンワークをはみでた流動的な仕事があとからあとから湧いてくるからだ。

★決められた商品を製造しているわけではないから、これは避けられない。生徒の言動は無限であるからだ。しかし、長塚校長の発想の転換の真骨頂は、この避けられないを事態をクリエイティブワークに転換しようというところにあったのではないか。

★今回、そのプロジェクトの1つである「学習評価プロジェクト」に誘われた。SGHを中心とするプロジェクト学習で培ってきたルーブリックを教科全体に浸透させるにはいかにしたら可能か?eポートフォリオの動きや2024年以降の大学入試改革の本格化が目前に迫っている。一般入試やAO入試、推薦入試の名称ががらりと変わる。名称が変わることによって、中身も変わる。ポートフォリオの活用が始まるわけだ。

★そのとき、ポートフォリオは、ルーブリックをベースに生徒も教師も記入せざるを得なくなる。そういった近未来の変化に対し順天はどんな準備をするのか、そのビジョンを長塚校長はプロジェクトメンバーと共有し、ルーブリックのアップデートへのクリエイティブワークに入っていた。

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★クリエイティブワークの基本は、リサーチから始まる。だから、昨今「思考コード」というある意味メタルーブリックが広がっているが、その考え方をまずは調べてみようということだったのだと思う。それで、私が誘われたのだろう。

★「思考コード」の考え方を語るよりも、すでにできあがっている思考コードがどうやって作られたのかその過程を90分で追体験するワークショップを行った。その既存の思考コードのよしあしを議論するよりも、未来型の議論をということだったので、同じような作り方の過程の中で、プロジェクトの先生方だったら、どう作るのかを体験したほうが、考え方を自分たちでつくることができるからである。

★ワークショップの過程で、2次元にメタルーブリック的なものを描くと、どうしても「要素還元主義的」になる。そこをどうするかだという議論になったり、描けないのだから描けないというデザインをするチームまで出現した。

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★描けないというのは、20世紀型教育における思考は、硬い幾何の平面で置き換えることができるものだったが、クラインの壺ではないが、21世紀型教育的発想は、柔らかい幾何に変換するしかない。しかしそれはもはやn次元だから、そう簡単ではないと。トポロジーとか、アフィン変換とか・・・・。

★自由で創造的な発想があふれでた。そのうえで、ワークショップが終わるや否や、実務的なミーティングにすぐにスイッチが切り替わっている姿も、理想と現実をどう平衡させるかということなのだろう。

★現実優先でも、理想至上主義でもなく、その両者の平衡感覚を互いに対話できる「システム思考」こそが21世紀型教育を生み出す順天の新しい組織開発の肝なのだと感じいった。

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