« 21世紀型教育の意味(06)「経験」は学びの種である。 | トップページ | 21世紀型教育の意味(08)聖学院 授業デザイン研究会アップデート 学習する組織とU理論を統合 ① »

2019年4月12日 (金)

21世紀型教育の意味(07)ピアジェを体現する紀平梨花選手。

★昨日11日、今季の世界ランキング上位6カ国が出場するフィギュアスケートの世界国別対抗戦が、マリンメッセ福岡で開幕。女子ショートプログラム(SP)で紀平梨花選手が自身の持つ今季世界最高点を更新する83.97点をマークした。注目は今まで紀平選手がSPで外しがちなトリプル・アクセルをビシッと決めたことだった。

★印象的な紀平選手の言葉は、「ギリッギリのギリギリセーフでした」と成功したトリプル・アクセルへの感想だった。最近のスポーツ番組は、アスリートの演戯だけではなく、そこに到る公式練習風景からバックヤードでの選手の調整のプロセスまで取材していることである。

★結果のみならず、そこに到るポートフォリオまでわかるし、アスリートが動画を見返したり内省したりしているリフレクションの様子までわかる。これは、まさにアクティブラーニングやPBL、そして大学入試改革や新学習指導要領のエッセンスとも重なる光景である。フィギュアスケートを他の競技に置き換えるだけではなく、他の学びの領域に置き換えても共通する学びの過程である。

Photo_14

★しかし、今回は、そのような外面的な学びの行動の手順だけではなく、内面的な学びのシステムまで見え隠れしたことがおもしろかった。

★公式練習でうまくいっていたトリプル・アクセルが、演技6分前の練習ではうまくいかなかった。普通ならドキドキしてしまうだろうが、すぐにテープの巻き方の強さを調整した。紀平選手は「違和感」を感じたと言っていた。私のような一般人ならみすごすような違和感だっただろが、紀平選手の幼いころからの経験によって際立って育った身体感覚能力が微妙な違和感をも感じるセンサーを開発していたのだろう。

★それゆえ、すぐに直前ギリギリまで調整した。この「調整」という言葉は紀平選手も使っているが、「調整」するには、何らかの基準に照らし合わせて感じるのであるから、紀平選手は何らかの「基準」を身体の中にもっているのである。これを学びのコアモデルとしよう。

★紀平選手は、今回巧く飛んだトリプルアクセルの感覚を忘れないようにしたいと語り、この感覚を同じように使っていきたい。そうすればミスをなくすことができるとまで語っていた。つまり、これはコアモデルを飛ぶたびに「同化」しようということだろう。

★もちろん、今までも同じように「同化」してきた。しかし、失敗もあった。そのつど「調整」し、再び成功する。しかし、そのときのコアモデルは、パワーアップしている。この「違和感」→「調整」→「コアモデル」の循環(上記図)が、まさに身体の内部で起きている学びのシステムである。

★学びの行動プロセスは、学びのコアモデルという身体内部でできるシステムプロセスによって生まれている。かくして、学びの行動プロセスという「記号」とコアモデルができる身体内部で起こっているシステムプロセスという「意味」の関係によって、学びは生まれているというコトが了解できるニュースだった。

★この記号を構成するシステムと意味を構成するシステムの循環がうまくいけばいくほど結果はすばらしいものになる。これはフィギュアスケートに限らない。他の領域でも応用可能。つまり「同化」できるし、条件の違いもあるから、その時は「調整」するのである。

★トップアスリートの演技、練習風景、バックヤードで起こっているシークエンスは、子供たちの学びに応用が利く。大きなヒントになる。

★かくして、紀平梨花選手は、経験から生まれるコアモデアルの同化と調整を行いながら、「記号」と「意味」の二重のシステムの循環を構成している。まさにピアジェ理論の体現者である。

 

|

« 21世紀型教育の意味(06)「経験」は学びの種である。 | トップページ | 21世紀型教育の意味(08)聖学院 授業デザイン研究会アップデート 学習する組織とU理論を統合 ① »

21世紀型教育」カテゴリの記事