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2019年4月29日 (月)

【GW特集】工学院の新たな時代[06]学習する組織の種まき

★田中歩先生との授業リサーチの後、放課後TG(才能成長)プロジェクトチームのワークショップがあった。スーパーバイザーは田中歩先生で、私がバックヤードファシリテーター。今まで田中先生方がファシリテーターとして、内省的/内製的研修を行ってきたが、いよいよ次のファシリテーターにエンパワーメント(権限移譲)する段階にはいった。

★PBL型授業で先生方のロールプレイは、あるときは教師、あるときはコーチ、あるときはファシリテーター、あるときはジェネレーター。したがって、先生同士のワークショップでもそれぞれの先生方がマルチなロールプレイができるようになっているはずだし、ここでできれば、授業でもできる。互いの考え方や価値観を情報共有して、ギャップや気づきが新たなイノベーションを生み出すことにもなる。そんなTGプロジェクトが新しく始まった。

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★授業リサーチとこのTGプロジェクトのワークショップはセットになっている。授業を私と田中先生など数人の先生と見学するが、プロジェクトチームのメンバーが全員で見ることはできない。それぞれ授業を持っているから、そのとき授業を持っていないメンバーに限られるのはしかたがない。

★そこで、ワークショップで、7分間で自分の授業を語ってもらい、シェアリングしていく。今回は臼井先生。臼井先生が自分の行った50分授業を7分間でストーリーテラーよろしく語っていく。

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★TGプロジェクトチームを2つ作って、それぞれ臼井先生の物語をフローチャートに変換していく。まず臼井先生が自らの50分を7分に変換する。その次にメンバーがフローチャートに転換する。情報を物語に変換する作業と物語を図に変換する作業が続く。2つの置換スキルをトレーニングするわけだ。

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★そして、そのフローチャートの各項目で、教師と生徒がどうかかわったか、赤で書き込んでいく。チームで対話する時に、授業の様子をイメージしていくわけだ。ここでは、フローチャートという図式をイメージに変換するという3つめの「置換スキル」をトレーニングする。そしてプレゼン。イメージや図を言葉に「置換」える。このプレゼンは、毎回ディスカッション後に行うので、実際にはこのワークショップで様々な「置換」え作業を行っている。おそらく10回以上行うことになる。

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★「置換」スキルというのは、アリストレスが大切にしてきたミメーシスという思考作業。ピカソも新しい制作ビジョンを生み出す時、活用した。リベラルアーツの大切な知のスキルなのである。ある意味、このワークショップは「置換」のフラクタルな作業なのである。

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★そして、今度はいよいよ「思考コード」分析。それぞれのフローチャートのそれぞれの項目において、生徒はどこまで思考しているのかあるいはどんな思考をしているのかを分析していく。氷山モデルではないが、授業というのが目に見えないレイヤーが幾重にも重なってできていることを共有できるわけだ。ドコデモシートの枚数がレイア―の数なのである。

★思考コード分析で、田中先生が感動していたのは、ジョエル先生チームのプレゼンだった。ジョエル先生が英語で語り、メンバーの1人山口先生が通訳していく。ここでも言葉の置換スキルが発動しているが、通訳しながら、山口先生がわかったと思わず言葉を放ったのだ。議論している時はまだ腑に落ちていなかったことが、通訳という置換をすることで腑に落ちたということ。

★置き換えスキルの効用が現れた瞬間だった。しかし、田中先生は、さらにジョエル先生が思考コードを捉えかえし、一つひとつの項目がなぜその思考コード番号なのか丁寧に紐解いていったことだった。

★もともと、工学院の思考コードは、ブルームのタキソノミーと1970年代に生まれたコンピテンシーを統合したものだが、それは日本の文化ではなく、欧米の学びの文化であるから、ジョエル先生が解釈することによって、田中先生をはじめ、他のメンバーにも腑に落ちる解説となったのである。

★臼井先生は、自分がデザインした授業の意図が分析されながら共有されることに勇気づけられたと感想を抱くと同時に、そこまで意識していなかったという気づきもあったと。つまり、自分では当たり前んとなっている深層にあるレイヤーを掘り起こしてもらった感覚になったのだろう。

★こうして、臼井先生の授業のビジョンが共有され、チームで協力して、分析をシステム思考で行い、互いに異なるメンタルモデルを発見して尊重し合う学習する組織としての新たなプロジェクトの種まきがスタートしたのである。

 

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