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2019年4月21日 (日)

桐光学園 16冊目の「大学訪問授業」のテキスト刊行

★10年以上も前から桐光学園は「大学訪問授業」を行っている。当初は月に1回ペース。各学問領域で活躍している学者を中心に学校に招き、大学授業さながらの講義をしてもらう。自分の関心領域やこの学者のもとで学問したいと思う人の肉声を直接聞けるのだから、生徒のモチベーションは俄然違う。

★そして、最近では、ほぼ月に2回ペースで行っている。あまりに画期的すぎて、他の学校が憧れるも、マネすることができないほどだ。同校の知の交渉人には脱帽である。

★実際、この「大学訪問授業」のプログラムは教養講座的な役割も果たしているが、キャリアデザインの一環として行われている感じが強い。実際に、刺激を受けて学問の道や大学の選択もしているようだ。学者の多くは海外でも活躍しているから、その影響を受けて、ブラウン大学というアイビー・リーグ系の大学やウェズリアンのような3本の指にはいるリトル・アイビー系のリベラルアーツ大学などに合格者も出ている。もはや東大だけではないというのが桐光学園。

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「高校生と考える21世紀の論点」

もくじ

〈第1章 自分の声を聴く〉
決断力を磨く 羽生善治
ものをつくること、現実を生きること 古川日出男
絶対なんて絶対ない 前田司郎
自分という人生を生きる 植本一子
不思議の国フランス 野崎歓
〈第2章 社会の向かう方向を読む〉
「わがまま」が社会を変える 富永京子
世界は日本をどう見ているのか 井上寿一
SDGsってなんだろう 大崎麻子
働くってどういうことだろう 竹信三恵子
コミュ力と生きづらさ 城戸理恵
〈第3章 科学の発想と方法を知る〉
視覚なしで世界を見てみよう 伊藤亜紗
科学とはなにか? 仲野徹
分類と系統の世界観 三中信宏
世界から世間へ 早野龍五
〈第4章 ひととものの歴史から探る〉
食事とは 土井善晴
歩行と時間 島田雅彦
人はなぜ遊ぶのか 山本貴光
アリの巣をめぐる冒険 丸山宗利
印刷と人類が来た道 樺山紘一
〈第5章 AI時代を生き抜く感性〉
豊かな建築を目指して 長谷川逸子
時計じかけの芸術? 三輪眞弘
主と個の芸術 やなぎみわ
伝えることの難しさ(と面白さ) 波戸岡景太
動く大地の暮らし 中谷礼仁
〈第6章 ことばを鍛える〉
いのちと人間 多和田葉子
ことばの不思議 穂村弘
英語の勉強、どこからはじめる?どこまでやる? 阿部公彦
今、なぜ、古典を読むのか 島内裕子
本を読めと大人たちは言うけれど 大澤聡
読むと書く 若松英輔


★それにしても、「大学訪問授業」を講義だけで終わらせることなく、テキストに収めて出版までしているのは、やはり破格である。生徒にとっても、繰り返し想いを馳せられるので、便利である。それに、今年16冊目の本など島崎雅彦さんの講義が掲載されているが、小学生にとっもブームになっている縄文文化の新たな発見についても記載されていて、中学入試で出題されてもおかしくない。

★もちろん、島崎さんの論考は、縄文文化の話が中心ではない。過去や未来を考えても、いまここで考えるべき変わらない原始的なものがある。すべては、この原点から多様なイノベーションが生まれてきたのだから、迷ったらそこに戻ろうという、わかりやすいけれど、カンタン・ミヤスーなどの最近の欧米の新しい哲学である「祖先以前性」をいかにして捉え返すか、つまりカントのアプリオリや物自体をどう乗り越えるかという最先端の思考とシンクロする発想がさりげなく語られている。

★リベラルアーツの現代化が促進されようとも「読書」や「読解リテラシー」、「書く/描く」ことへのトレーニングは当面不変/普遍であろう。島崎さんが、洞窟の壁画について引用している部分があるが、人類の根源には、描くこと、保存すること、それを読み解くことがあったのだということだろう。それは今では、データベースにつながっているし、クラウドコンピュータというイノベーションを生み出しているし、AIにとっては大事な認識データである。しかし、根源的に変わらない原始的な身体機能はいまでもここにあるのである。

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★ちょっと読んだだけでも、思考の翼は大きく広がる。知の空を飛翔することができる。それが、実際に目の前で肉声を聞ける「大学訪問授業」。想像を超える知の化学反応が起きる拠点となっているだろう。今年のプログラムもはやくも公表されている。驚きの知のプロデューサ―が存在する桐光学園。さすがである。

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