武蔵という学校 教育改革の拠点?
★本日3月21日配信のAERAdot.の記事「早大医学部構想どうなる? 『世界で輝くための改革』総長らが語る」を読んで、そういえば、今の早稲田大学総長の田中愛治氏は、武蔵の卒業生だったことを思い出した。2020年大学入試をはじめ初等中等教育も大きく変わる時期に、武蔵出身の総長が早稲田の改革を指揮している。

(写真は、同校サイトから。武蔵の理念「自調自考」がトップページで語りかける)
★五神真現東大総長も武蔵のOBである。東大と早稲田の改革は、必ずしも同じ方向ではないけれど、日本の教育改革に影響を与えないわけではない。
★そういえば、1995年~98年まで中央教育審議会会長だった有馬朗人氏も武蔵のOB。現在は、武蔵学園学園長。1999年は文部大臣にも就任していた。あの「ゆとり教育」を展開していた。そのとき「総合学習」というのが目玉だったし、これからの改訂学習指導要領は、「探究」がキーワード。名前はどうあれ、またその賛否はどうあれ、連綿と武蔵流儀の学問的に深堀していく教育や学問の前提の教養としての学際的な視点・視野・視座を身につける教育を公立私立問わず広めようという情熱を感じないわけにはいかない。
★「1998年」といえば、私にとっては、東京女学館の当時の理事長渋沢雅英先生と出会った時期で、結構ターニングポイントだった。教育研究所の路線を歩むきっかけを与えて頂いた。あのときも英語とICTの両面を東京女学館に導入しようとしていた。当時としては大改革で、伝統と革新を揺さぶる衝撃的でグローバルな活動を渋沢雅英先生は行っていた。
★渋沢雅英先生は、当時の有馬氏の意向にはある程度共鳴していたものと思われるが、考えてみれば、渋沢先生も武蔵のOBである。才能者とか創造的才能という言葉を、私も使うようになったのは、たぶん渋沢先生の影響を相当受けていたのだと思う。
★しかし、その後ゆとり教育に対し脱ゆとりの揺り戻しがあった。渋沢雅英先生の改革もある程度までは進んだが、もっともっとという路線には現場はついていけなかったのかもしれない。いろいろあって、渋沢雅英先生は、理事長を後進に譲り、渋沢栄一財団館長として今も活躍されている。
★それにしても、今度は「主体的・対話的で深い学び」とか「探究」という学びが前面に出てきているが、これもまた結局は総合学習のアップデートということだろう。コンピテンシーという言葉も出てきているが、これも1970年代からすでに米国でトレンドになったり、その後コンピテンシーバブルと言われ、問い直されたり、行きつ戻りつ、再び今回前面に出てきた。
★「ゆとり教育」は、要するにテスト主義、得点主義で能力を測ることに対する挑戦であり、コンピテンシーもテスト主義をどう改めるかという問題意識があり、シンクロしていたのだろう。OECDのPISAもそのはずなのだが、脱ゆとり路線に揺り戻す大きな根拠として活用されたのが、パラドキシカルにも、PISAの結果だったのは記憶に新しいだろう。
★しかし、そのPISAのテストは、その後、公立中高一貫校の適性検査デザインのモデルになっている。全国学力調査テストのB問題もモデルとしている。公立高校入試も適性検査型がモデルだ。そして2020年以降の大学共通入学テストにとっても、PISAはモデルなのだ。
★私立中学入試の新タイプ入試もその影響を受けているし、さらに武蔵や麻布の中の改革派の路線(改革派ばかりではないのが、自由を標榜する両校の特色)の創造的才能者発掘の発想とシンクロしている「思考力入試」までも展開するように発展している。
★武蔵や麻布は、おそらく専門領域に学際的なものの見方を導入しない。あくまで教養レベルで学際的な発想を大切にしているのだろう。だから、専門の道を究めることが重要なのだ。これだと、閉じられた学校という感じを受けるかもしれない。しかし、専門領域を創造的才能者は幾つも探究することができるから、それぞれの専門領域の向こうにはじめて学際的な世界が現れるというのだろう。
★だから、はじめから学際科みたいな領域はなく、あくまで教養主義として学際という言葉、教科横断という言葉を使うのだろう。したがって、そのような専門領域を極める中高以外とはネットワークをはる意味を感じていない。
★自分の学校で、学問を究める学びを粛々と行っていけば、田中総長や五神総長のように、世界を変える人材を多数輩出できるのだから、十分役割を果たせるという考え方だろう。
★それがよいかどうかわからない。私自身は、それだと一握りの創造的才能者しか育たないのではないかと思う。思いは重なるところは多いけれど、路線は違う。クリエイティブクラスは誰にでも開かれているし、そのためには、必ずしも学問的な領域を追究しなくても別路線があるのではないかと思う。それがクリエイティブ・ラーニングとしてのC3思考=創造的思考のPBL型授業の機能ではないかと思っている。
★武蔵のOBは、たしかに教育改革のタイミングに活躍しているが、それ以外の方法もある。実際、教育イノベーションのプラットフォームは学歴ブランド校以外にも出来(しゅったい)しているのだから。

(写真は、同校サイトから。武蔵の理念「自調自考」がトップページで語りかける)
★五神真現東大総長も武蔵のOBである。東大と早稲田の改革は、必ずしも同じ方向ではないけれど、日本の教育改革に影響を与えないわけではない。
★そういえば、1995年~98年まで中央教育審議会会長だった有馬朗人氏も武蔵のOB。現在は、武蔵学園学園長。1999年は文部大臣にも就任していた。あの「ゆとり教育」を展開していた。そのとき「総合学習」というのが目玉だったし、これからの改訂学習指導要領は、「探究」がキーワード。名前はどうあれ、またその賛否はどうあれ、連綿と武蔵流儀の学問的に深堀していく教育や学問の前提の教養としての学際的な視点・視野・視座を身につける教育を公立私立問わず広めようという情熱を感じないわけにはいかない。
★「1998年」といえば、私にとっては、東京女学館の当時の理事長渋沢雅英先生と出会った時期で、結構ターニングポイントだった。教育研究所の路線を歩むきっかけを与えて頂いた。あのときも英語とICTの両面を東京女学館に導入しようとしていた。当時としては大改革で、伝統と革新を揺さぶる衝撃的でグローバルな活動を渋沢雅英先生は行っていた。
★渋沢雅英先生は、当時の有馬氏の意向にはある程度共鳴していたものと思われるが、考えてみれば、渋沢先生も武蔵のOBである。才能者とか創造的才能という言葉を、私も使うようになったのは、たぶん渋沢先生の影響を相当受けていたのだと思う。
★しかし、その後ゆとり教育に対し脱ゆとりの揺り戻しがあった。渋沢雅英先生の改革もある程度までは進んだが、もっともっとという路線には現場はついていけなかったのかもしれない。いろいろあって、渋沢雅英先生は、理事長を後進に譲り、渋沢栄一財団館長として今も活躍されている。
★それにしても、今度は「主体的・対話的で深い学び」とか「探究」という学びが前面に出てきているが、これもまた結局は総合学習のアップデートということだろう。コンピテンシーという言葉も出てきているが、これも1970年代からすでに米国でトレンドになったり、その後コンピテンシーバブルと言われ、問い直されたり、行きつ戻りつ、再び今回前面に出てきた。
★「ゆとり教育」は、要するにテスト主義、得点主義で能力を測ることに対する挑戦であり、コンピテンシーもテスト主義をどう改めるかという問題意識があり、シンクロしていたのだろう。OECDのPISAもそのはずなのだが、脱ゆとり路線に揺り戻す大きな根拠として活用されたのが、パラドキシカルにも、PISAの結果だったのは記憶に新しいだろう。
★しかし、そのPISAのテストは、その後、公立中高一貫校の適性検査デザインのモデルになっている。全国学力調査テストのB問題もモデルとしている。公立高校入試も適性検査型がモデルだ。そして2020年以降の大学共通入学テストにとっても、PISAはモデルなのだ。
★私立中学入試の新タイプ入試もその影響を受けているし、さらに武蔵や麻布の中の改革派の路線(改革派ばかりではないのが、自由を標榜する両校の特色)の創造的才能者発掘の発想とシンクロしている「思考力入試」までも展開するように発展している。
★武蔵や麻布は、おそらく専門領域に学際的なものの見方を導入しない。あくまで教養レベルで学際的な発想を大切にしているのだろう。だから、専門の道を究めることが重要なのだ。これだと、閉じられた学校という感じを受けるかもしれない。しかし、専門領域を創造的才能者は幾つも探究することができるから、それぞれの専門領域の向こうにはじめて学際的な世界が現れるというのだろう。
★だから、はじめから学際科みたいな領域はなく、あくまで教養主義として学際という言葉、教科横断という言葉を使うのだろう。したがって、そのような専門領域を極める中高以外とはネットワークをはる意味を感じていない。
★自分の学校で、学問を究める学びを粛々と行っていけば、田中総長や五神総長のように、世界を変える人材を多数輩出できるのだから、十分役割を果たせるという考え方だろう。
★それがよいかどうかわからない。私自身は、それだと一握りの創造的才能者しか育たないのではないかと思う。思いは重なるところは多いけれど、路線は違う。クリエイティブクラスは誰にでも開かれているし、そのためには、必ずしも学問的な領域を追究しなくても別路線があるのではないかと思う。それがクリエイティブ・ラーニングとしてのC3思考=創造的思考のPBL型授業の機能ではないかと思っている。
★武蔵のOBは、たしかに教育改革のタイミングに活躍しているが、それ以外の方法もある。実際、教育イノベーションのプラットフォームは学歴ブランド校以外にも出来(しゅったい)しているのだから。
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