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2019年3月 3日 (日)

聖学院とかえつ有明 中学受験市場のプラットフォームの多様化を拓く

★プレジデントファミリー(2019年春号)のインタビューを受けたのは、今年の1月。年初めだったから、中学受験市場のプラットフォームの多様化について語ってけれど、図式化まではしていなかった。しかし、2月の首都圏の中学入試を経て、それが終わった今は、その図式化が未完ではあるが、描けてきた。

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★この中学受験市場のプラットフォームの多様化を拓いたのは、聖学院とかえつ有明だと思っている。もちろん、注目の的の三田国際もそうであるが、聖学院とかえつ有明は、経済社会における社会学的な見方をすると、三田国際とは全く違う市場を切り拓いたといえる。


★今年誕生した武蔵野大やドルトン東京学園などは、どちらに与するかはまだ明らかではないが、おそらく三田国際のグループに入ると思われる。

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★2010年までは、学歴ブランド校になるかならないか、バブル崩壊後もまだブランドマーケティング市場の枠組みしかなかった。リーマンショック後もそれは変わらなかった。しかし、さすがに2011年以降は、ブランドの在り方を巡って、偏差値ブランド、大学合格実績ブランド以外に、イノベーションブランドというのが加わった。

★世界同時的なグローバル教育とICTとPBLの教育改革の波は、SNSを生み出したGAFAの台頭によって、拡大した。これを一手に引き受けたのが三田国際だった。

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★一方、シリコンバレー自身が、再帰的近代化の波を自らが生み出していることに気づき、その内部に孕むリスクを回避すべく、マインドフルネスというZENと米国心理学の統合したプログラムを組織システムに流し込み始めた。

★このイノベーションの波が孕むリスクが、日本の教育現場に広がるのを感じたかえつ有明は、このマインドフルネスを基調にしたアクティブラーニングの延長上のディープラーニングを生徒と共に実装した。ここに偏差値比較優位競争から離脱する学校が現れたのである。もちろん、市場はかえつ有明に偏差値を貼り付けるが、かえつ有明自身は、そのようなマインドフルネスなWell- Being価値観を選択する受験者や保護者を説明会で対策講座であるセミナーによって育成した。


★聖学院は、学校の組織の在り方の基礎構造は、かえつ有明と変わらない。しかし、そもそもシリコンバレー系のヒッピー資本主義に対しては警鐘を鳴らし、その経済が実際に生み出している世界の痛みを共有し、その痛みをどのように解決したらよいのか世界マインドと世界の知性を生徒共にプロジェクト学習を通して教師も学んでいる。


★かえつ有明は、基本的には生徒が主体的に動けるように教師はファシリテーター役に徹する。だから、教師のマインドフルスキル研修が盛んだ。安心安全の場を作ることに徹する。

★聖学院は、基本的には生徒と教師がフラットで、共に学ぶ。生徒が成長すれば教師も成長する。教師が成長すれば生徒も成長する。世界の痛みを共有する場は、GAFAが生み出す負の場でもある。このことに気づいているベルリンや東南アジアの新しい動きとシンクロしている。しかし、その痛みを知るには、GAFAのシステムも知らねばならない。だから、世界の痛みと世界の痛みを生み出す両方の場の研究を生徒も教師も懸命にしている。
★近代の良き伝統の1つに、リーダーは、シェークスピアが象徴したようにアンビバレンツを引き受けるという特徴がある。安心安全の場とクリエイティブテンションの両方を行き来できるman for othersのWell-Being精神とスキルを生徒のみならず教師も実装しているのである。

★というのは、そのような場では、教師が盾になって生徒を守る瞬間が予想外に多いからだ。この姿こそ、卒業時に生徒が未来の自分の姿だと確信して飛び立つ。

★かくして、聖学院も偏差値比較優位競争市場から離脱している。やはり、思考力セミナーを中心に、自らの賜物=タラントを大切にしながらもそれを世界に応用していける人間像を共有できる受験生と保護者を育成しているのだ。この新しい動きは静岡でも生まれている。静岡聖光学院が聖学院と連携し始めたのである。
★三田国際は比較優位競争市場において、新たなイノベーションブランド校のポジショニングを創出した。ここに続く、シリコンバレー系の学校やIB系の学校との競争が激しくなるだろう。

★聖学院とかえつ有明は、創造的価値選択市場を創出した。中学受験市場において、この事態は画期的であるが、同時に日本の教育において市場の原理が相対的にではあるが作用しているのは、私立中学受験市場のみであるから、この新たな市場創出は、もっと大きな時代の要請が生まれていることを示唆している。


★私立小学校は、富裕層市場であり、公平な市場の原理が実際にはそう働いてはいない。高校入試や大学入試は、文科省による配分規制がかなり大きな役割を果たしているからやはり、中学受験程市場機能が働いていない。

★そういう意味では、受験市場全体が、現代の経済社会の縮図でもあるが、この中で相対的に自由市場が働いている私立中学受験市場では時代の経済社会の変化の最前線にあるとみなせるのではなないだろうか。

★したがって、比較優位競争市場と創造的価値選択市場の併存が生まれたということは、今後の経済社会のダイナミクスの兆しだということでもあろう。

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