« 工学院 学習する組織のメカニズム実現の完成に目途(1) | トップページ | 進化/深化する学校(01)聖パウロ学園の場合① »

2019年3月28日 (木)

工学院 学習する組織のメカニズム実現の完成に目途(2)

★工学院の教務主任田中歩先生と出遭ったのは、6年前。同校が、21世紀型教育改革を生み出す前夜。そのときから田中先生の変わらぬ信念は、学校や教育の変化の契機は教師と生徒、生徒と生徒の対話やコミュニケーションの好循環から生まれてくるというものだった。

★というわけで、田中先生と仲間の先生方と、その対話を実践してみて、いったい何が生まれるのかから始まったのを懐かしく思い出す。基本私も対話は極めて重要で、この言語活動は、実は自問自答という自己内省の場でも、友人同士の場でも、家族という場でも、授業という場でも、学校という場でも、社会という場でも、国という場でも、世界という場でも、同じ構造が貫くというシステム構成主義(対話システム―思考システム―社会システム―世界システム)的な発想でいるから、田中先生とはすぐに共感できた(と勝手に思っている)。

Dsc00192_1

★6年間、田中先生とは学校で・セミナーで・オフ会で、対話の機会を頂いてきたわけだが、今回工学院の21世紀教師人材育成システムづくりをお手伝いしながら、いよいよ工学院の学習する組織のメカニズム完成の最終段階にはいったのだとピンときた。

★6年前、まずは、教師と生徒が問いを共有しそれを解き明かしていく際の考える過程やその過程で新たな発見があり、論理から創造に飛躍する段階を思考コード化するところから始まった。

★それを生みだし、授業で活用してサンプルをつくっていく道のりは、やはり1年はかかった。思考コードを学内の教師と生徒とどうやって共有していけるのか試行錯誤が始まったのも、その時だった。

★東大の入試問題を思考コードで分析することもあったし、他の大学入試問題の解く過程を、教科主任の先生方(2年前まで田中先生はしばらく英語科主任だった)が、教科を越境して思考コード&思考スキル分析をしたときもしばらくあった。

★また、実際のPBLの授業のトレーニング手法として、スクライビング手法を導入しても見た。U理論の創造的スクリビング手法に思考コード分析という工学院独自のアナリーゼを埋め込んでいった。この手法は、この間、授業というより、それぞれの先生方のコア学びのモデルに収斂していくことに気づいた。今回も、スクライビングの活用次元を今までのモノと新しい次元のデュアルモードで展開することになった。田中先生の眼差しは、生徒を見守る時と同じ温かさだったのは印象深かった。

Dsc00120_1
(問いを多角的な視点からとらえなおすために、ポストイットを使うのは、常とう手段だが、実はこのカテゴライズの思考作業に大切なものが隠れていることがワークショップの最後に気づくことになった。それに気づいたのは、実は数学の先生だった。数学教師は、その背景に数学的思考という哲学的素養が隠れているのだと感動した。)

★そして、実は6年前一番最初にはじめて、ついにこれまでなかなかシステム化できなかったのが、授業リサーチシステム。田中先生といっしょに授業をまるまる50分見学し、それを分析シートで再現していく。しかし、50分の授業に対し、何倍もの時間がかかり、現実的ではなかったので、スクライビングに移行してしまった。

★しかし、やはり、最終的には、一人一人の先生の生の授業のリサーチができなければ、大きな気づきを共経験できない。気づきは、経験によるものが最高に良質であることは、それこそ経験上しっているので、そこを何とかしたいと。今回は多くの学校でブラッシュアップしながら効率よく授業リサーチする方法を作成していったので、田中先生もそれを活用しながら、さらにソフィストケートしていこうということになった。

★とにかく、その6年前から対話をスタートしたチームは、意図しないで、学習する組織を生み出していることに気づいたのだった。それは、4年くらい前だった。気づいたからには、田中先生が心理学に造詣が深いというコトもあって、その路線を可視化しようということになった。

★こうして、田中先生方と、思考コードを発見し、それを検証していく様々な過程は、中原淳教授の著書「組織開発の探究」を読んで、振り返れば、アプリシエイティブ・インクワイアリ―という手法と対話型組織開発の手法の融合した形の対話的経験実証過程だったのだなあと思う。

★工学院は、PBL型授業を開発発展させているが、その根底はインストラクションよりもコンストラクションをベースにする構成主義である。もっとも、インストラクションもコンストラクションを巻き込むやり方も最近は流行りのようだが、基本は工学院は構成主義。そして、意図せずして、行われていたアプリシエイティブ・インクワイアリ―や対話型組織開発の手法も構成主義的発想が基礎としてある。

★考えてみれば、アプリシエイティブ・インクワイアリ―はシステム論の流れだし、対話型組織開発はグループダイナミクスの流れ(中原教授の整理による)だから、当然構成主義的になる。

★しかし、田中先生との対話的経験実証活動は、そのような理論が先行していたのではない。むしろ、振り返れば、そのような理論があてはまるという話なのである。こういう話を私がすると、田中先生は、それが自分たちにとってはモヤッとしていたことが可視化されるので、さらに次に進めるというポジティブな言動を投げかけてくる。

★今回タレント・グロウス・プロジェクトと称して、21世紀教師人材育成のワークショップを先生方と行いながら、田中先生とは、今までやってきたことは、こういう理論で可視化できるのだと今気づいたと共感する部分が多い。そして、その多くの気づきが可視化されていくと、それがメカニズムとして組み立てられる。

★6年前、田中先生と仲間の先生方が、自ら思考コードやスクライビング手法を生み出していったように、6年たって、田中教務主任は、新しい仲間になってくれた工学院の先生方と、再び共にメカニズムを創っていくジェネレーター(上記写真の井庭崇先生の本の肝でもある)の役割を発揮している。

★今後がますます楽しみである。

|

« 工学院 学習する組織のメカニズム実現の完成に目途(1) | トップページ | 進化/深化する学校(01)聖パウロ学園の場合① »

21世紀型教育」カテゴリの記事