麻布と聖学院と三田国際に象徴される首都圏中学受験市場の多様性
★前回の「19年2月ホンマノオト21アクセスランキングベスト50」で、上位10位を占める記事の特徴は、今年の中学受験市場の多様性を物語っている。
★もちろん記事は一人の人間私が書いているだけなので偏りはある。しかし、首都圏模試センターのサイト情報やデータ、facebookで情報交換する学校の先生方、保護者の方々、塾の方々と共有させていただいている情報も参考にしている。したがって、ホンマノオト21は、いわばマーケティングダッシュボード的な役割も果たしている。
★「ホンマノオト21」は、以前の「私立学校研究@ホンマノオト」に比べ、記事がまだ少ないので、検索エンジンの反応はまだまだであるが、その分facebookで補ってもいるということだろう。
★いずれにしても、ログ解析は、受験市場の動向を探る1つのデータであり情報である。よくなんで毎日書き続けるのかと聞かれるが、たぶんこの手法で、受験市場動向情報収集を行っている酔狂な人はあまりいないから、ある意味独自性があるので、なんらかの意義はあるのではないかと思っている。
★そんなわけで、首都圏の中学入試の最も盛り上がる(実際ホンマノオト21のアクセスも2月1日から10日までは、通常の10倍くらいになる)2月のログ解析は今年の首都圏中学受験市場の特徴や来年の動向を読むのに役立つデータである。
★枕が長くなったが、そういうわけで、ランキング10位までみると、麻布と聖学院と三田国際と中学受験市場の多様化といった4種類の記事にアクセスが集中しているのがわかる。
★麻布は、「学歴ブランド校」(当局がそう望んでいるのではなく、市場がそういうレッテルを貼っているだけである)の象徴、聖学院は「イノベーションWell-beingゴールデンルール校」の象徴、三田国際は「イノベーションブランド校」の象徴である。
★首都圏中学受験市場は、偏差値主義的な「学歴ブランド校」中心の枠組みをはみ出る、新しいプラットフォームが生まれたわけである。そんなことを、2月に感じながら記事を書いていたわけである。
★麻布と三田国際は「ブランド」というキーワードが共通していることからもわかるように、比較優位競争市場の中で勝ち組を象徴する学校だが、麻布が私学の系譜のルーツとしての威信を守っているのに対して、三田国際は、若い富裕層マーケティングによって勝ち組になっている。
★一方聖学院は、タイ研修や東京パラリンピック支援などのプロジェクト活動(そのような世界システム思考を鍛える学習が中心)にみられるように、優勝劣敗経済社会から抜け出る創造的経済社会(世界フォーラムで度々議論されている新しい経済社会)、そこではウィリアム・モリスのユートピアやミヒャエル・エンデのモモ(時間泥棒の灰色の男たちから市民を救済する物語)の世界が広がっているのだが、そんな社会を創出するクリエイティブな地球市民のマインドと知を育成する教育が評価されている。
★麻布生のような才能児の中にも、小学校6年の段階では潜在的才能をまだ開示していない場合、聖学院でその才能を開花するわけだ。だから、聖学院は偏差値競争より、生徒1人ひとりの賜物=タラントを見出すことをまず大切にしている。
★だから、偏差値60くらいの生徒が偏差値競争を回避して、はじめから聖学院に入学するということがしばしばある。特に思考力入試で入学する生徒の中には、帰国生同様、そもそも自分の偏差値が高いなんてことを意識していない場合も多いのである。
★麻布の創設者江原素六とその系譜を継ぐ聖学院初代校長石川角次郎(開成出身)は、ともに日本の近代化の影、特に官学の系譜のリスクに対峙し、それを回避したり、危機を乗り越えることに尽力した私学人である。
★麻布の前校長氷上先生は、江原素六、福沢諭吉、新島襄を私学の系譜の第一世代と呼び、それに続く、内村鑑三、新渡戸稲造、石川角次郎などを私学の系譜の第二世代と呼んでいる。
★日本の教育の世界は、20世紀末において、近代をモダンとポストモダンの枠組みで語り(佐藤学氏が代表的だろう)、その枠組みの中で教育改革の議論をしてきたのだが、21世紀にはいってから、そこに再帰的近代というリフレクション型近代の発想が付け加わった。
★現状の教育改革論議や経済社会の危機管理の議論では、この再帰的近代化の新たなリスクをまだ外部化している。昨年、今年と、一橋大学の一般入試問題や帰国生入試問題では、さすがにこの再帰的近代の新たなリスクについて考える問題や小論文が出題されるようになった。
★私学の系譜にある多くの私学はどちらかというとまだ牧歌的近代化の発想を持ち続けているが、麻布や聖学院は、再帰的近代化の発想もちゃんと持っている。麻布の前校長氷上校長は宮古南静園ハンセン病歴史史料館企画運営委員会委員長として宮古島と東京を往復している。麻布生の中には、氷上先生と共に活動している生徒もいる。
★聖学院も、タイにメイコックファームという拠点をつくり、タイの少数民族の子供たちの支援活動を教師と生徒が毎年行っている。私学の系譜とは、これほど強烈なものなのである。この視点は、実は本来的な国際バカロレアとも通じるものだし、八雲学園が加盟しているラウンドスクエアという世界の本物エリート私学のコミュニティとも通じる本質的な教育である。
★一方三田国際はポストモダンが生み出したマーケティングの極致を完全適用し、富裕層マーケティングの覇者になった。
★中学受験市場にも、ようやく近代化路線の多様化が影響するようになってきたということだろう。
★枕が長くなったが、そういうわけで、ランキング10位までみると、麻布と聖学院と三田国際と中学受験市場の多様化といった4種類の記事にアクセスが集中しているのがわかる。
★麻布は、「学歴ブランド校」(当局がそう望んでいるのではなく、市場がそういうレッテルを貼っているだけである)の象徴、聖学院は「イノベーションWell-beingゴールデンルール校」の象徴、三田国際は「イノベーションブランド校」の象徴である。
★首都圏中学受験市場は、偏差値主義的な「学歴ブランド校」中心の枠組みをはみ出る、新しいプラットフォームが生まれたわけである。そんなことを、2月に感じながら記事を書いていたわけである。
★麻布と三田国際は「ブランド」というキーワードが共通していることからもわかるように、比較優位競争市場の中で勝ち組を象徴する学校だが、麻布が私学の系譜のルーツとしての威信を守っているのに対して、三田国際は、若い富裕層マーケティングによって勝ち組になっている。
★一方聖学院は、タイ研修や東京パラリンピック支援などのプロジェクト活動(そのような世界システム思考を鍛える学習が中心)にみられるように、優勝劣敗経済社会から抜け出る創造的経済社会(世界フォーラムで度々議論されている新しい経済社会)、そこではウィリアム・モリスのユートピアやミヒャエル・エンデのモモ(時間泥棒の灰色の男たちから市民を救済する物語)の世界が広がっているのだが、そんな社会を創出するクリエイティブな地球市民のマインドと知を育成する教育が評価されている。
★麻布生のような才能児の中にも、小学校6年の段階では潜在的才能をまだ開示していない場合、聖学院でその才能を開花するわけだ。だから、聖学院は偏差値競争より、生徒1人ひとりの賜物=タラントを見出すことをまず大切にしている。
★だから、偏差値60くらいの生徒が偏差値競争を回避して、はじめから聖学院に入学するということがしばしばある。特に思考力入試で入学する生徒の中には、帰国生同様、そもそも自分の偏差値が高いなんてことを意識していない場合も多いのである。
★麻布の創設者江原素六とその系譜を継ぐ聖学院初代校長石川角次郎(開成出身)は、ともに日本の近代化の影、特に官学の系譜のリスクに対峙し、それを回避したり、危機を乗り越えることに尽力した私学人である。
★麻布の前校長氷上先生は、江原素六、福沢諭吉、新島襄を私学の系譜の第一世代と呼び、それに続く、内村鑑三、新渡戸稲造、石川角次郎などを私学の系譜の第二世代と呼んでいる。
★日本の教育の世界は、20世紀末において、近代をモダンとポストモダンの枠組みで語り(佐藤学氏が代表的だろう)、その枠組みの中で教育改革の議論をしてきたのだが、21世紀にはいってから、そこに再帰的近代というリフレクション型近代の発想が付け加わった。
★現状の教育改革論議や経済社会の危機管理の議論では、この再帰的近代化の新たなリスクをまだ外部化している。昨年、今年と、一橋大学の一般入試問題や帰国生入試問題では、さすがにこの再帰的近代の新たなリスクについて考える問題や小論文が出題されるようになった。
★私学の系譜にある多くの私学はどちらかというとまだ牧歌的近代化の発想を持ち続けているが、麻布や聖学院は、再帰的近代化の発想もちゃんと持っている。麻布の前校長氷上校長は宮古南静園ハンセン病歴史史料館企画運営委員会委員長として宮古島と東京を往復している。麻布生の中には、氷上先生と共に活動している生徒もいる。
★聖学院も、タイにメイコックファームという拠点をつくり、タイの少数民族の子供たちの支援活動を教師と生徒が毎年行っている。私学の系譜とは、これほど強烈なものなのである。この視点は、実は本来的な国際バカロレアとも通じるものだし、八雲学園が加盟しているラウンドスクエアという世界の本物エリート私学のコミュニティとも通じる本質的な教育である。
★一方三田国際はポストモダンが生み出したマーケティングの極致を完全適用し、富裕層マーケティングの覇者になった。
★中学受験市場にも、ようやく近代化路線の多様化が影響するようになってきたということだろう。
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