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2019年3月 5日 (火)

PBLの肝はマインド思考×システム思考(01)名古屋大の世界史をヒントに

★PBL(Project based Learning)の肝は端的に生徒の創造的思考を解放すること。その環境設定が対話空間の創意工夫。あるときは、レクチャー、あるときは、PIL、あるときはグループディスカッション、あるときは個人ワークに没入する。それぞれの対話空間を設定するアクティビティの柔軟な組み合わせによって、眠っていた創造的思考が放たれる。

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★今年の名古屋大学の世界史の入試問題をちょっと見て欲し。パルテノン神殿が、世界遺産に認定された基準の1つを提示し、どうしてこの基準が認定されたのか説明する問題である。

★古代ギリシアの文化、生活、政治経済、宗教、他のポリスとの関係などの知識をつないでいけば解ける問題だから、思考コードでいえばA3思考からB2思考をいったりきたりすればよいわけだ。

★まさしくシステム思考で解ける問題である。同時に、古代ギリシアに思いを馳せるモチベーションとしてマインド思考も動員する。

★実は、マインド思考は、実際にはシステム思考が働く作用で、結局はシステム思考なのだが、感情という面を強調するためにあえてマインド思考と言っておく。

★さて、この問題は、年代とかその時に行われてきた歴史的事件として知識をつないでも実は高得点をとれない。その当時の政治の在り方、他のポリスとの関連、生活文化などの知識要素の外延的つながりを思い浮かべた後、その要素内の内包された背景知識のつながりもさらに必要になる。

★つまり、システム思考は、外延的関係と内包的関係の両方のつながりの複雑系なのであるが、もう一つ重要な関係は、外延的関係と内包的関係をさらに包むメタ関係である。

★この問題の肝は、実は、歴史的意義を説く必要があるから、このパルテノン神殿の時代のメタ関係を、たとえば、ルネサンスや現代民主主義のそれぞれのメタ関係に置き換えてみる置換メタ関係という発想が必要になる。
★この大胆な置換操作がパッと閃くことこそが創造的思考のC軸思考なのである。

★そして、この問題をメタ関係(外延的関係×内包的関係)の置換の連続としてとらえて思考の翼を広げらるようになるには、いかなるカリキュラムが必要なのか、ここからは教師の腕の見せ所。パアッとカリキュラムのストーリに想いを馳せることになるだろう。

★小中高と連綿としたカリキュラムが教科=メタ関係(外延的関係×内包的関係)をつないで一気呵成にできてしまうだろう。

★今まで知識を注入する授業と言われてきたものは、知識の外延的関係を偏って教えられてきたということなのだ。

★知識も大事だというより、ちゃんとメタ関係(外延的関係×内包的関係)としての知識を生徒が習得できる授業をしてこなかったと置き換えたほうが良い。そして、このメタ関係とメタ関係としての知識の関係総体が創造的思考育成の場である。メタ関係とメタ関係という関係の関係は自在に組み替え可能なのだ。

★そして、やっぱり本間の言っていることはわからないと揶揄される方々は、リベラルアーツという伝統的な教育の中の修辞学を少し調べてみることをおススメする。PBLとは新しい発想であると同時に伝統的な発想でもある。

★今年の名古屋大のこの問題は、リベラルアーツを現代に生かすヒントを示唆している。このリベラルアーツには、対話が欠かせない。なぜなら、創造的思考というメタ関係の関係を生み出すその形態は、人によって違うからである。1人の教師が1つのアイデアを押し付けても何の意味もないということなのだ。

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