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2019年3月 6日 (水)

PBLの肝はマインド思考×システム思考(04)京都大学の生物の種分化問題が衝撃的!

★京都大学の生物関係の学部に進みたいというキャリアデザインを描いた生徒にとって、今年の生物の種分化率問題は想定内だっただっただろう。何せ今西錦司博士以来の生態学と進化論の研究は今も京大に脈々と続いているぐらいだから。

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★しかしながら、キャリアデザインが違う絵柄の生徒にとって、この新しい種が生まれるメカニズム関連の問題は衝撃的ではあれ、関心がなければおもしろくない。つまり、生物という教科の授業でこの問題を考えようとトリガークエスチョンが出されたところで、考える必然性を見いだせない。

★それは探究心を育ててないからだと言い放てるだろうか?この新しい種が生まれる、壮大な地球生態学史の問題に関心がもてないのはおかしいと言えるだろうか?

★この種分化に関する研究は、京都大学高橋鉄美理学研究科研究員らの研究グループが、アフリカ東部のタンガニイカ湖(淡水湖)に生息するシクリッド(熱帯魚)Telmatochromis temporalisのサイズ2型を用いて、生殖隔離に「競争」が関係している例を世界で初めて示したぐらいだから、ダイレクトに入試に出してきたというのは、さすが京都大学だし、検索すれば膨大な科学論文が出てくるから、まさに「総合的な探究の時間」にあった問題だろう。

★しかし、それとて、この問題をクラス全員にだしたろこで、みなが興味を持つかというと、そんなことがあろうはずがない。では、どうするのか、関心があるものを自由にやってもらうのが、HTHのような学校のスパンの長いPBLだ。日本の学校もこれでいこう!となるものでもない。

★なぜなら、HTHはPBLに豊かな時間を活用できるのだ。しかし、日本の学校では、週に1時間から2時間程度が関の山だろう。教科授業以下の時間数でできるものではない。

★教科授業では、ただでさえ時間が足りないから、探究はそっちでやってくれということなのだが、その時間が足りない教科の授業よりさらに少ない時間で、教科の授業時間ではとることができない豊かな時間を生み出すというコトはそもそも不可能だ。
★どうすりゃいいのか?少なくともHTHをどんなに参考にしても、憧れても、日本の教育制度を変えない限りできない。ないものねだりをしていてもしかたがない。

★それでも探究をやるのである。それでは、得意の引き算の美学やコンパクトな折り紙発想という日本の文化的な発想で創意工夫するしかない。

★引き算の美学やコンパクトな折り紙の発想は、置換であり変換であり転換である。この京大の種分化率問題と同じ構造の例を探しまくるのだ。たとえばフィードロット方式。通常とは違ういい食肉ができるが、エネルギー保存の法則で、いいものが通常よりできれば、わるいものも通常より多くであるのである。

★種分化率のメカニズムとフィードロッド方式のメカニズムが置き換え可能であることを見抜くことができる生徒は、自分の興味と関心ある分野と置き換えることができる。関心がある領域と置き換え可能なメカニズムを見つけることは、これはその関心領域での新しい発見につながる可能性があるから、嬉々として心膨らむ。

★こうして、種分化メカニズムを自分の関心領域の内包関係に結びつけることができる。心理学的なストレスの問題も、種分化メカニズムとフィードロッド方式のメカニズムと置き換えることも可能だろう。突然変異が起きて種が絶命する可能性を、過剰ストレスによって心が壊れるメカニズムと置き換えることが可能だという気づきによって、新し解決方法の道が発見できたりする。

★このような置換が学際的であり、それゆえ学びが広がり深まっていく。ここで述べた置き換え可能な例は、にわかに私が発想したものだから、違うと言われるかもしれない。

★実は創造的思考は、この違うというズレから始まる。世の人は、このズレを鬼の首でもとったように騒ぎ立て、創造の芽を摘み取っていく。そんなことは日々頻繁にあることだ。

★だからタフなマインド思考が必要になる。そのシステム思考の正当性・信頼性・妥当性は検証すればよいだけだからだ。

★この置換スキルによって、アンチ専門領域を専門領域と結びつけることもできる。そこから、実は世紀の発見が生まれるものだ。みんなが気づいていないことを発見するから発見と呼ばれるのだからあまりに当たり前ではあるが。

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