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2019年3月

2019年3月31日 (日)

かえつ有明 才能開く学び

★かえつ有明の小畑校長ブログは、出色のブログ。あのアトムのロボットを組み立て、AI(人工知能)を搭載している。ブログが更新されるたびに、アトムがディープラーニングによって成長している姿を現している。二足歩行のメカニズムも動画だけではなく、図によってきちんとベクトルと物理の法則を使って解説されている。

★校長自らが最先端のテクノロジーを使い、メカニズムを作りながら解明し、途中で躓いたとき、その原因を突き止めて修理しながら進む。まさに試行錯誤の可視化そのもの。ディープラーニングは、かえつ有明のふだんの授業の象徴でもある。STEAM教育の最高の在り方を示してもいる。刺激を受ける生徒はたくさんいるだろう。

★かと思うと、そのSTEAMのA(アート)の部分が飛び出てくるような活躍を中学生が行ってもいる。

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(写真は、同校サイトから)

★今月21日から1週間、同校中学生が、渡米し、アメリカンダンスドリルチーム インターナショナル選手権2019にチャレンジ。中学HIP HOP部門 第2位、中学校総合 第4位という成績を収めた。

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★すごいという言葉以外に見つからないのだが、同校サイトの記事からはダンス部の顧問の先生のティーチングとコーチングの絶妙のバランスを前提とした熱い眼差しが伝わってくる。

★ああ、これもふだんの授業がアクティブラーニングであふれていることがつながっているなあとちょっと感動してしまう。顧問の先生も参加していたアクティブラーニングの研修を見学をしたことがあるが、筋金入りのポジティブな性格と精緻な思考のバランスにあり得ない不思議さを感じていたが、たしかに平均モデルの精神力では、生徒といっしょに世界の舞台で挑戦できないと、遅まきながら感じ入った。

★破格のグローバル教育とアクティブラーニングとSTEAM教育とマインドが、バラバラではなく、自然に一つにつながっている。自然体で、それでいてハイレベルな世界標準に通用する学びが行われているわけだ。

★要するに、校長をはじめ教師も生徒も、一人一人が自分の才能を大切にし、それを全うしようという本物の活動をしている。それは、当人にとっては、あたり前のことをしているだけだ。しかし、外から見るとものすごいことをやっている。

★このギャップが外からの評価を高くしている魅力だろう。

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梅沢辰也先生 東京立正新校長に就任!

★21世紀にはいるや、それまで低迷していた中村中をフェニックスさながら復活させた梅沢辰也先生。その後校長になってから中村中の教育を確固たるものにした。しかし、学校組織というのはいろいろあるもである。昨年退職されて、1年間、私学の今後を見据えるために、各学校を行脚してまわり、私学の在り方を構想されていた。

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★その間、多くの学校の理事会から声をかけられたようだが、頑として1年間は固辞し、構想が見えてくるまで、研究していたに違いない。そして、ついに、再び校長として東京立正の新しいビジョンを打ち立て、実現することになったようだ。

★もちろん、梅沢先生のことだから、その影響力は東京立正にとどまらないだろう。真実一路、伝統と革新のケミストリーを見事に生成し、再び私立学校の教育の本領発揮の渦をつくりだしていくことだろう。大いに期待したい。

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2019年3月30日 (土)

工学院 学習する組織のメカニズム実現の完成に目途(3)ピアジェにいったん還る

★昨年2月、5月、今年2月、工学院の田中先生とセミナーを開催する過程でオフ会やメール、電話などで対話をする一方で、多くの学校の先生方や塾人――おそらく毎月50人くらいだから、延べで年間600人――と創発スクライビング、授業スクライビング、授業リサーチ、思考コード分析、思考スキル分析をやりながら(セミナーやシンポジウムの参加者との出遭いはここでは除く)、それらが全部一つの渦のようにつながっていくような気がしてしかたがなかった。

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(工学院のTGプロジェクト。学び及び思考のコアモデルをスクライビングして、思考コード分析しているシーン。)

★それがバシッと降りてきたのは、今月に入てから。井庭崇先生の著書「クリエイティブ・ラーニング」が、前から興味深かった田中先生のビジョンデザインと結びついたからだった。田中先生は、工学院のビジョン全体を自分が描いたものを共有しようとするのではなく、教務主任として、学内の教師一人ひとり思い思いに思考コードを再吟味しながら授業や教育活動のデザインに取り組む作業を通して、教育ビジョンを共有していった。

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★井庭先生は、多様な人間の行動、学びやプレゼン、プロジェクトの企画、料理などの領域において、そこに携わる人々の言動やイメージをパターンランゲージに転化していく。ある意味同化していく。最近流行りのコンピテンシーももともとは多様な人間の行動の中で、成功する人間の言動の特徴を様々なコンピテンシーのパターン化あるいはカテゴライズ化したものだ。思考コードは、それらの非認知的能力と教師や生徒の思考の段階をさらにカテゴライズしたものである。

★つまり、これらはある事柄や言動から抽出された言説や記号なのである。しかし、田中先生は、もう一度自分が仲間と思考コードを抽出してカテゴライズした時と同じ経験を学内の教師にしてもらうようにした。外から見たら、教務主任として学内の先生方にトップダウン的な落とし込みをしたように見えるが、学内では、若い教務主任が経験を共有するには、スタートラインからの経験を共有したいのだという思いを共有したのだということらしい。

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★つまり、企画や行事のシナリオを提示して、これをやりましょうよというのでは、内的モチベーションが燃えないが、経験の共有はGrowth Mindsetになるようだ。それだけ、「経験」は重要なのだ。だれかの頭の中で生まれたプランより、初源的経験から始まるのは説得力が違う。

★この経験重視が、実は構成主義的学習観とシンクロするのだが、工学院は、すでにピアジェの構成主義観は氷山モデルでいえば、深層にあり見えなくなっている。シーモア・パパートの構成主義観も、レゴを活用したりファボラボを頻繁に活用するから、見えなくなり、やはりレズニックの構成主義観やスタンフォード流儀のデザイン思考から出発している。

★田中先生自身、ICTもレゴも構成主義的学習で活用される最先端のツールを有効に活用してPBL型授業を行っているし、英語の教師で、構成主義的学習観ベースのCLILも実践しているから、あえて「経験」に立ち還るのが何とも気になった。すなわち、工学院では、すでに、経験は「make,think,share」というシークエンスになっている。しかし、それの実践者でもある田中先生があえて、「make,think,share」という経験を生み出す「経験」にこだわっていたのがずっと気になっていたのである。

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(平方校長の理念と現場の意識をつないで新たなイノベーションの化学反応を引き出すジェネレーターとしての役割も田中先生は果たしている。)

★しかし、今回井庭崇先生の同書を読み進むにつれ、「経験」「同化」「調整」「構造」「最近接発達領域」というものが、連綿と言説と表現記号とそれに伴うシステムが変容してはいるが、結局はピアジェモデルの進化過程だったのだと理解できた。だから、田中先生がピアジェの「経験」に立ち還るのは、自然なことだったのだ。

★というのも、パパート、レズニックの思考は多くの企業やコミュニティでコモディティ化され、道具化され、本来潜在的なタレントを生み出すという意味でデューイが道具主義だと言ったのを、効率よく正確にタスクを遂行する道具と化してしまっている。産業界とはそういうものである。おもしろい道具であれば、先生方も使うだろうが、思考コードの表をみえて、面白いと思う人はそうはいない。だから、産業界では売り物にならないために、パラドキシカルだが、本質的なものが教育において守られている場がここに広がった。

★しかし、それでは、思考コードをただ使えと言っても、それ以上でも以下でもない。新たなインスピレーションやイマジネーションが湧いてくる魂がこもるには、「経験」から思考コードを見るのに限る。

★今回キックオフワークショップとしてTGプロジェクトをやったとき、ICTやファボラボを使わずに、ただ言語とフローチャートの記号というか絵を活用するだけの経験をした。すると、そこに学び及び思考のコアモデル(コアコンストライクション)が生まれ出て、その同化や調整、その過程で見えてくる「最近接発達領域」などが可視化されていった。

★このコアモデルと同化、調整、最近接発達領域、思考コード、思考スキルの組み合わせが、PBL型授業の基礎構成要素だし、思考の基礎構成要素。教師も生徒も経験からこのコアモデルを生成するとこから始まれば、教師と生徒の進化はすさまじいものになる。

★しかも、今後パパートの理論、そしてレズニックの理論で語れるPBLに進化(すでに現場では進化しているが、進化しているという意識がまだ明快ではないから、これが明快になると)していくと、コアモデルの拡充が起こる。すると、最近接発達領域の現れる場が、ピアジェの理論を超えて拡充していくから、教師も生徒もタレントを豊かにしていけるし、そうなれば、パパートがホストコンピュータ上ですでにつかったテクノロジーとレズニックが1人1台のパソコンやタブレットの環境ででてきた新たなテクノロジーを自覚的に活用したPBLに進化していく。

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★そのためには、学習する組織の質を高めるトレランス(寛容性)が必要になってくる。ここに教師がタレント・テクノロジー・トレランスという3Tを意識するようになる。この3Tこそクリエイティブ・クラスを形成する基礎構成要素。

★これは予言ではない。すでにそれが行われているのだ。ただ、それをリフレクション(内省)とかモニタリングをして、自覚し、質向上とか改善をグローバルアスリートのようにしていくだけなのである。アスリートが向上や進化を止めようとすることはないのと同じことを田中先生はサッカー部の顧問でもあるから、その精神がミメーシスとしてコアモデルになっているのだろう。

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進化/深化する学校(02)聖パウロ学園の場合②

★「進化/深化する学校」の指標として、生徒募集が好調だとか、大学合格実績が伸びているということはあるが、なぜ好調なのかなぜ伸びるのかの理由が教育の「進化/深化」の質によって決まっているということは見過ごされがちである。見過ごされるというより、外から見ることはなかなか難しい。

★ところが、聖パウロ学園の場合、少人数教育だから、学校組織も、人材としての教員の力育成も、シンプルに集中して運用できる。生徒と保護者と教師の関係がマインドとシステムの両面でつくることができる。学校説明会で出遭う教師も、授業で学び合う教師も、進路指導で今そして未来を対話する教師も、生徒や保護者にとって知らない教師はほとんどいない。

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★そして、その教師が組織を運営している。だから、教師が一丸となってコトに臨めば、その勇気は組織全体にすぐに染みわたり、生徒にも保護者にもその力と雰囲気はすぐにも伝動する。

★もちろん、その逆も起こる。そのことを一番よく知っているのは、先生方自身だ。だから、8つのCの能力を互いにモニタリングしながら持続可能にしようと自己研修をしている。

Curiosity

Communication

Creative Thinking

Critical Thinking

Collaboration

Contribution

Confidence

Challenge

★研修の中で最も大事にしていることは、この8つの能力が授業の中で発揮される学びのコアモデル=思考の学びのコアモデルの可視化・構造化の共有である。

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★学びの過程や思考の過程をフローチャート化していくディスカッション、プレゼンテーションを行っているのである。


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★授業のフローチャートをスクライビングする研修だけだと、授業の展開を意味する指導案を再構築しているという発想からなかなか抜けきれない。授業の展開は。学びの過程であり、学びの過程は、思考の過程である。生徒は、そのような思考のコアモデアルが常に展開している授業で、アクティブになりながら、頭で汗をかきながら、試行錯誤しながら、自分の仮説を幾度も焼き直し、検証していく授業での言動に浸りながら、学びの過程や思考の過程のコアモデアルを身体でイメージし、頭脳に同化していく。

★この同化されたコアモデアルに基づいて、今度は学びはじめ、思考し始める。そして、このコアモデルの調整方法も授業の中で体験することによって、今度は同化のコアモデルの再構築の方法も頭脳に同化していく。

★だから、たとえば、先日は「成長」について、自分の仮説を立て、それをチームでディスカッションしていくワークショップをおし進めていった後、その過程をフローチャートとしてスクライビングするワークを行った。この構造の構造をモニタリングする過程こそ、授業のシークエンスを学びの過程に転化し、さらに思考の過程のコアモデアルに転換させるアクションである。

★これによって、生徒が、学び及び思考のコアモデアルを同化し調整できるようになると、自らようやく主体的・対話的な深い学びを自走していけるようにあんる。聖パウロ学園にはこのメカニズムの研鑽が教師によって日々行われているのである。

★このように、カトリック精神の理念=黄金律の理念を21世紀型教育で実現していくというビジョンを共有し、その実現のシステムをチームで考えていく先生方。もちろん、それぞれ考え方や感じ方、価値観が違うことを尊敬し合う寛容さがベースにある。また、それぞれが自分で探究し自己陶冶していくことも欠かさない。つまり、教材研究、新しいネットワーク、新しい理論をそれぞれが研鑽を積んでいる。

★こういう組織を、最強の学習する組織だとMITメディアラボのピーター・センゲ教授は言うのである。PBL型授業に先生方が取り組んだ結果、学習する組織の理論ありきではなく、自然とその理論にあてはまる組織が生成されたのであろう。

★学習する組織はイノベーションを生み続ける組織としてパワフルでもあることは多くの組織や団体で実証済みである。そして、それがゆえに、実行はなかなか難しい。それを聖パウロ学園の先生方はやってのけている。それゆえ、聖パウロ学園の進化/深化はとまらない。この魅力が、少人数制教育が故に、説明会に訪れるや感受性の強い受験生に共感されるのである。

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進化/深化する学校(01)聖パウロ学園の場合①

★高尾山の森の中にある高等学校聖パウロ学園は、今年も人気だった。聖パウロの森に囲まれ、海外研修や交換留学生も訪れる。部活動も盛んで、寮(パウロハウス)を活用して合宿もできてしまう。乗馬もあり、アート工房もありで、米国からやってくる留学生は、アメリカのエスタブリッシュスクールと同質の環境だというコトがすぐにわかる。

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★1学年定員は80名だから、実に少人数教育が徹底している。しかし、20世紀型教育から抜けきれない日本の高等学校は、この質の高い教育に気づくことがなかなかできない。というのも、大量の生徒の教育、それがゆえに知識を注入する授業、部活と勉強の文武両道、道徳教育の徹底、英語はCEFR基準でA2レベルが当たり前で、これと違う教育は、目の中に入ってこないかのようだ。

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★つまり、少人数生徒の教育、創造的問題解決をベースとするPBL型授業、部活と学びのみならず海外研修や自然生活、探究活動など多様な経験を通して自分を見つめ、他者を受け入れて歩む黄金律の道、キリスト教精神に基づく教育、英語は多様な異文化との交流の中でCEFRでC1に挑戦する道も開いている。一般に、自分の基準や最大公約数の基準を超えているものは見えないのはしかたがないのである。

★しかし、時代は変わった。このような平均的なものさしを超えた豊かな教育で、生徒の本来の才能が開くことに気づく中学の先生方も現れた。その証拠に、21世紀型教育という明快なビジョンを掲げたここ数年、毎年毎年応募者が増えているのである。

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2019年3月28日 (木)

工学院 学習する組織のメカニズム実現の完成に目途(2)

★工学院の教務主任田中歩先生と出遭ったのは、6年前。同校が、21世紀型教育改革を生み出す前夜。そのときから田中先生の変わらぬ信念は、学校や教育の変化の契機は教師と生徒、生徒と生徒の対話やコミュニケーションの好循環から生まれてくるというものだった。

★というわけで、田中先生と仲間の先生方と、その対話を実践してみて、いったい何が生まれるのかから始まったのを懐かしく思い出す。基本私も対話は極めて重要で、この言語活動は、実は自問自答という自己内省の場でも、友人同士の場でも、家族という場でも、授業という場でも、学校という場でも、社会という場でも、国という場でも、世界という場でも、同じ構造が貫くというシステム構成主義(対話システム―思考システム―社会システム―世界システム)的な発想でいるから、田中先生とはすぐに共感できた(と勝手に思っている)。

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★6年間、田中先生とは学校で・セミナーで・オフ会で、対話の機会を頂いてきたわけだが、今回工学院の21世紀教師人材育成システムづくりをお手伝いしながら、いよいよ工学院の学習する組織のメカニズム完成の最終段階にはいったのだとピンときた。

★6年前、まずは、教師と生徒が問いを共有しそれを解き明かしていく際の考える過程やその過程で新たな発見があり、論理から創造に飛躍する段階を思考コード化するところから始まった。

★それを生みだし、授業で活用してサンプルをつくっていく道のりは、やはり1年はかかった。思考コードを学内の教師と生徒とどうやって共有していけるのか試行錯誤が始まったのも、その時だった。

★東大の入試問題を思考コードで分析することもあったし、他の大学入試問題の解く過程を、教科主任の先生方(2年前まで田中先生はしばらく英語科主任だった)が、教科を越境して思考コード&思考スキル分析をしたときもしばらくあった。

★また、実際のPBLの授業のトレーニング手法として、スクライビング手法を導入しても見た。U理論の創造的スクリビング手法に思考コード分析という工学院独自のアナリーゼを埋め込んでいった。この手法は、この間、授業というより、それぞれの先生方のコア学びのモデルに収斂していくことに気づいた。今回も、スクライビングの活用次元を今までのモノと新しい次元のデュアルモードで展開することになった。田中先生の眼差しは、生徒を見守る時と同じ温かさだったのは印象深かった。

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(問いを多角的な視点からとらえなおすために、ポストイットを使うのは、常とう手段だが、実はこのカテゴライズの思考作業に大切なものが隠れていることがワークショップの最後に気づくことになった。それに気づいたのは、実は数学の先生だった。数学教師は、その背景に数学的思考という哲学的素養が隠れているのだと感動した。)

★そして、実は6年前一番最初にはじめて、ついにこれまでなかなかシステム化できなかったのが、授業リサーチシステム。田中先生といっしょに授業をまるまる50分見学し、それを分析シートで再現していく。しかし、50分の授業に対し、何倍もの時間がかかり、現実的ではなかったので、スクライビングに移行してしまった。

★しかし、やはり、最終的には、一人一人の先生の生の授業のリサーチができなければ、大きな気づきを共経験できない。気づきは、経験によるものが最高に良質であることは、それこそ経験上しっているので、そこを何とかしたいと。今回は多くの学校でブラッシュアップしながら効率よく授業リサーチする方法を作成していったので、田中先生もそれを活用しながら、さらにソフィストケートしていこうということになった。

★とにかく、その6年前から対話をスタートしたチームは、意図しないで、学習する組織を生み出していることに気づいたのだった。それは、4年くらい前だった。気づいたからには、田中先生が心理学に造詣が深いというコトもあって、その路線を可視化しようということになった。

★こうして、田中先生方と、思考コードを発見し、それを検証していく様々な過程は、中原淳教授の著書「組織開発の探究」を読んで、振り返れば、アプリシエイティブ・インクワイアリ―という手法と対話型組織開発の手法の融合した形の対話的経験実証過程だったのだなあと思う。

★工学院は、PBL型授業を開発発展させているが、その根底はインストラクションよりもコンストラクションをベースにする構成主義である。もっとも、インストラクションもコンストラクションを巻き込むやり方も最近は流行りのようだが、基本は工学院は構成主義。そして、意図せずして、行われていたアプリシエイティブ・インクワイアリ―や対話型組織開発の手法も構成主義的発想が基礎としてある。

★考えてみれば、アプリシエイティブ・インクワイアリ―はシステム論の流れだし、対話型組織開発はグループダイナミクスの流れ(中原教授の整理による)だから、当然構成主義的になる。

★しかし、田中先生との対話的経験実証活動は、そのような理論が先行していたのではない。むしろ、振り返れば、そのような理論があてはまるという話なのである。こういう話を私がすると、田中先生は、それが自分たちにとってはモヤッとしていたことが可視化されるので、さらに次に進めるというポジティブな言動を投げかけてくる。

★今回タレント・グロウス・プロジェクトと称して、21世紀教師人材育成のワークショップを先生方と行いながら、田中先生とは、今までやってきたことは、こういう理論で可視化できるのだと今気づいたと共感する部分が多い。そして、その多くの気づきが可視化されていくと、それがメカニズムとして組み立てられる。

★6年前、田中先生と仲間の先生方が、自ら思考コードやスクライビング手法を生み出していったように、6年たって、田中教務主任は、新しい仲間になってくれた工学院の先生方と、再び共にメカニズムを創っていくジェネレーター(上記写真の井庭崇先生の本の肝でもある)の役割を発揮している。

★今後がますます楽しみである。

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2019年3月27日 (水)

工学院 学習する組織のメカニズム実現の完成に目途(1)

★工学院は、プレ21世紀型教育改革をスタートしてからいよいよ6年目を迎える。6年前から始めたC1英語、PBL型授業、STEAM教育などは、21世紀型教育機構のアクレディテーションの高いハードルをクリアして土台はほぼ完成。

★その土台の上に、多様な留学、模擬国連、探究論文、デザイン思考、ファボラボなどの社会貢献活動が部活動以外にも構築された。ケンブリッジイングリッシュスクール、ラウンドスクエア、MoGというグローバルでハイクオリティなネットワークも拡充した。

★つまり、もはや21世紀型教育を目指すのではなく、それはすでにデフォルトとして当たり前になり、その上に独自かつグローバルな先進的教育が構築されている。

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(PBL型授業のメカニズムを学習する組織として循環させ、それを学内に拡充していく、小さく始めて大きく育てる手法で学内に学びのインパクトを生みだしている教務主任田中歩先生)

★多様な活動が行われているため、外から見ているとなかなか教育の肝が見えにくい。それゆえ、アドミッションゾーンの戦略が必ずしも当たっているとは、たしかに言えない。何せ、消費者というのは、選択肢が多すぎると決められないのだ。これとこれのどちらか選んで、大きく成長しますよという成功事例の二択くらいがあれば乗りやすい。

★しかし、本当は、パーソナライズな(個別最適化)学習が望まれている時代風潮からいって、工学院のような生徒一人一人に対応できる多様な才能を生かすプログラムがたくさんある方が教育の質は高いのは当たり前だ。ちょっと早すぎて、まだ受験市場がそのことの重要性に気づいていないだけであろう。

★ところが、そのカリキュラムイノベーションゾーンの充実は、ディプロマゾーンには絶大なインパクトを与え始めている。学習する組織とは、軍隊的なピラミッド型組織でないから、一見機動力が弱いように見える。しかし、大学入試というのは、知の力で立ち臨むものである。対話型学習する組織で、自らの道を切り拓くように育つ生徒が多数輩出されるようになれば、自ずと大学合格実績は出るものだ。

この信念は、今年ついに実現した。GMARCH以上が109人、工学院は附属だから88人合格している。それ以外に東京薬科大に12名、日大に10名、東洋大7名、芝浦工大10名など卒業生数を超える勢いである。上智の15名もすさまじいけれど、明治大16名、法政大学は30名と、十分な合格実績がでた。

★来年は、もちろんさらに実績は伸びる予定であるが、学内ではきっちり緒を締めるクリエイティブ・テンションの雰囲気がある。このような雰囲気があるからこそ、教務主任田中先生は平方校長と協力して、2年未満勤務の教師で、工学院の教師育成組織を結成した。来たるべき日本経済や政治の低迷に備えて、将来その難局を乗り越えられる生徒を育てている工学院がサバイバルしサスティナブルな良質教育を生み出していくには、最終的には良質な教師力が生まれる学習する組織を創る必要があるというのだ。

★すでに、田中先生を始め、工学院のリーダーの先生方は、一人一人の教師が学習する組織としてPBL型授業を展開していき、視野の広いそれでいて深い学びを行える生徒の成長をサポートできる環境づくりの学内メカニズムの構築に創意工夫をしてきたが、いよいよ画竜点睛を欠かない段階に入ってきたのである。

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2019年3月26日 (火)

工学院 探究型PBLと自己マスタリー型PBLと担任力

★工学院大学附属中学校高等学校(以降「工学院」)は、立地の条件やアーリ―アダプター層の少なさなど様々な壁を、跳躍台に転換させて、グローバル教育3.0の拡充化と急激な大学合格実績の伸長を実現している。

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(東南アジアを舞台に、世界の痛みを共有し、各国各都市各村の人々と未来をいっしょに創る活動をするプログラム。MoG=Misson on the Groundという名称。現在ベトナムで2週間活動しているが、事前準備や事後探究を入れれば、通年プログラム。写真は同校サイトから。)

★MoGやSTEAM教育などグローバル教育3.0の最先端の未来を創る教育=探究型PBLを高2の1学期ぐらいまで行い、それ以降は、自分のキャリアを実現するための大学へ行く挑戦をする。つまり、そのための戦略的な学びや自己マスタリー型のPBLを行っていく。自分を見つめ、社会や世界で自分が何ができるのか探究し続け、その探究を実現するための戦略的な学習を自ら構築して卒業していく。

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★このPBLはProject Based Learningの略で、自分の道を仲間と世界中の人と協働して切り拓いていくプロジェクトであり、研究していくという意味でのプロジェクトなどいくつかの意味がこめられている。

★このふだんの授業となんといっても頼りになるのは担任の先生方。今年の大学合格実績も、教務主任の田中先生によると、学年主任と担任の先生方が協力して、生徒一人一人のカウンセリングや自己肯定感持続のための対話が中高一貫の生徒は6年間、高校から入学してきた生徒は3年間、密にそれでいて見守る姿勢で行われてきたからだと語る。

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★つまり、組織や人材が、フラットでフレキシブルでそれでいてフォースを生み出す対話型の環境になってきているのだと田中先生は語る。大学合格実績については、詳細は、同校サイトでご覧いただきたいが、東京工業大学、東京医科歯科大学に入り始めているのは、今後ある期待感が高まる。それにしても上智大学15名合格というのは、すごい。

★田中教務主任によると、推薦は2名で、他はTEAP利用入試がメインだったということだ。やはり、CLILというPBL型英語教育は効果があったのではないかと。そして、このような入試は、普段から「対話言語」をトレーニングしておく必要があるから、担任の先生方との対話のやり取りは、縁の下の力持ちになった可能性が大だ。

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★今、データなどを分析し、それを証明する試みを展開していくらしい。Growth Mindsetはいかにしてその対話によって生成されたのかというものらしい。いずれ教えてもらおうと期待している。

★いずれにしても、今後の工学院の教育が注目(すでにNews Picksで取り上げられている)されることは間違いない。




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2019年3月24日 (日)

学びの組織を開発する先生方と共に≪09≫「コア」とクリエイティブ・ラーニング

★ようやく本来の意味の「コア」について学び合えるプログラムが実践できるようになった。ただし、これは「コア」を暗黙知として有している人材としかまだできない。構成主義的発想をもっていることが前提なのだけれど、疑似的構成主義者には、まだ適用できるプロジェクト型プログラムはできていない。

★今月出会った若い先生方(高尾山で行った)は、すばらしく潜在的才能があった。つまり「コア」を有していた。もちろん、まだそれぞれの先生方がほよんど気づいていない。また京都で行った若い役職者の方々も同じだった。とくに全員英語が達者だったから、概念の差異に超敏感で、ダメ英語な私なのにポンポン放つメタカタカナ語に禁断症状はまったく現さなかった。

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★時代は本当に変わった。これまで、このような人々がたくさんいるワークショップは、聖学院や静岡聖光学院の先生方と行うコトができたが、たいていの場合は、「コア」を有していない方々も交じっていて、ワークショップが学習する組織に収斂せずに、シナジー効果が生まれにくかった。盛り上がりはするが、それは相乗効果というものではなく、そこに参加した幾人かの方々が自己マスタリーとして気づきを得ていたというのが多かった。

★でも、時代は本当に変わった。少しずつ共鳴共感する方々が増え、磁石のように一期一会が生まれいく。おそらく今週また二か所で行う創発対話で、そうなるのではいかと期待している。というのも、集まってくる人は勉強しに来るのでも学びに来るのでもなく、学び合いその都度生み出そうというモチベーションがある方々が集まってくるからだ。そういう仲間でやろうと意志をもったメンバーが集まってくるのだ。

★実は自身が構成主義かどうか自覚していなくても、「コア」を持っている人はいる。その方々は真正の構成主義を体現することになる。ところが、道具至上主義、マニュアル至上主義、教科書至上主義であるにもかかわらず、自ら構成主義を標榜する疑似構成主義者がいる。

★この方々は、教育界より産業界に多い。だから、その産業界の疑似構成主義の洗礼を受けている学校はかなり辛い。そういう学校では、私は「コア」を持っている先生方を探し、その「コア」をいっしょに堀り起こす作業をする。もし全体の13%のメンバーが「コア」を暗黙知から可視化へ引き出すことができたら、その学校は疑似構成主義者の餌食になることを回避できるからだ。もちろん、管理職が「コア」を持っていたら、そもそもそのような産業界は選ばない。選択センスが起動するからだ。

★IBのコアカリキュラムの影響は、新学習指導要領にかなり与えている。「探究」という言葉が流行るのはその表れである。しかし、IBの場合、TOK、CAS、EEの背景に欧米の哲学的メカニズムが伝統的にあり、それが「コア」を生成し続けていて、その現実態がTOK、CAS、EEだから、問題ない。

★ところが、戦後日本の教育は、この哲学的メカニズムは排除されてきたから、「コア」が育たない負のメカニズムができてしまった。そこから抜け出るには、「教科書」を捨てて外に出て「経験」から学ぶ必要がある。しかし、大人になってからだと、かりに「経験」したとしても、「経験」から学ぶ「コア」としての内的オリジナルの学びのモデル=プロトタイプがないから、汲み取れないという矛盾をなかなか解くことができない。

★疑似構成主義者のコアは、思考の内的メカニズムが空洞化したマニュアル主義になる。どんな教師もできるようになるハンドアウトとか作らねばならない。それでできるようになった試しなど今までないのは歴史が物語っているだろうに。

★クリエイティブ・ラーニングは、この「コア」を生成する「経験」プログラムをマインドセットすることからはじまる。その「経験」は命知らずの冒険から、路上の石や植物を観察する地味なものまで、あらゆることを含む。読書することも、バスケットをすることも、楽器を弾くことも、歌を歌うことも、木工作業をすることも、絵を描くことも、レゴを活用することも、宇宙レンズを観察することも、数学の問題を考えることも、キャリアについて思い悩むことも、すべて「経験」としてとらえ返すことができるかどうか。

★ここにあるものすべてに共通する構造が見えたり、その上で差異に気づきその構造を組み替えたりつくりかえたりする創造的破壊(ピアジェでいえば「同化」と「調整」)としての学びのモデル=プロトタイプとしての「コア」を互いに切磋琢磨していくのが、クリエイティブ・ラーニングというPBL型授業の面目躍如。

★そして、学習する組織は、そのオリジナルのコアに基づく言動の特徴としての各人のメンタルモデルを尊重し合えるかにかかっている。コモンコアをいっしょに持ととうというのは似非構成主義だし、似非共同体主義である。コア教科を共有できるというのは、反構成主義である。

★真正の構成主義や共同体主義は、それぞれが「コア」を生成する環境を共有しようということなのだ。それがミッションだ。「愛や誠」がミッションなのは大切なことだが、その文言を共有するコトがミッションなのではない。その文言を実現する各人の「コア」としての学びのプロトタイプを磨き上げ、多様なアイデアの結晶体が、愛と誠であればよいのである。

★会社であれ、学校であれ、コアなきミッションの共有は独断主義になる。

★そうならないように、互いのコアが一瞬であるが可視化されるメディアが、井庭崇先生が編集制作されているパターンランゲージである。学習する組織において、主にリフレクションで活用するのは、上記写真のカード。枚数が少なくて全体感がイメージしやすいという理由もある。

★カードそれ自体の使い方を経験することもやるが、リフレクションで活用することが多いので、そのカードを通してどんな自分の学びが見える化されるか経験することが中心になる。そのとき実は、各人のメンタルモデルが見え、シェアできる。そして、コアがないメンバーがいると、学習する組織はなかなかできず、ピラミッド型の抑圧組織に成らざるを得ない悲しい場面に遭遇するときもしばしばである。

★ところが、今月に入って、なかなかすてきな学習する組織衛星がたくさんできているので、時代が変わったし、私自身自己変容を始めたのかもしれないと思う日々なのである。

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私立女子中学に触れる会shishokukai 2019年6月4日(火)in 新都市ホール

★今年19年目を迎えるshishokukai(私立中高女子校に触れる会)。今年も新都市ホール(そごう横浜店9階)で開催される。

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★会場は、「7分間学校紹介スピーチ」のスペースと、「学校別相談コーナー」に分かれている。「7分間スピーチの会場」では、いくつかの学校をいっぺんに比較して情報を得ることができる。

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★「学校別相談コーナー」では、じっくり対面対話で、学校の魅力と受験生自身の魅力を重ね合わせて、自分にぴったり合う学校を探すことができる。

★合同説明会にありがちな一般的な話はなく、ダイレクトに学校独自の考え方やその学校の教師の教育センスと人間的魅力を感じることができる。

★共鳴共感共振できる学校に出会える良き機会である。



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グローバル教育3.0にシフトするとき(01)昭和女子大学附属昭和の場合 知の集積場プレミアムトライアングル

★今年の昭和女子大学附属昭和中学校(以降「昭和女子」)の応募者総数は、704人で、前年対比139%、実質倍率1.6倍(2019年2月25日現在 首都圏模試センター調べ)だった。中学入試における女子校人気が低迷する中、注目を浴びている女子校である。

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(英国短期留学 キングススクール。写真は昭和女子facebookから)

★ディプロマゾーンでは、卒業生の60%が昭和女子大に合格している一方で、国公立や早稲田学、慶応大学、上智大学などにも多数進学している。しかも、海外大学の進学者も着実に出始めている。

★ある意味、近未来へのキャリアデザインは安心できるし、大学卒業後の社会の変化に対応するカリキュラムゾーンも充実している。グローバル教育も、世界各地への留学ネットワークは魅力的だが、中でも英国と米国ボストンへの留学は、海外大学進学のベクトルが、世界大学ランキング100位内に向かっている期待が持てる。

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★SGH(スーパーグローバルハイスクール)認定校でもあるので、CEFR基準でB2の英語教育環境をベースにしているし、アクティブラーニングも当たり前である。したがって、論理的思考力育成も充実している。大学入学共通テストへの準備はお釣りがくるぐらいだろう。

★そしてスーパーサイエンスコースの充実ぶりは、今後のSTEAM教育につながることを予感させる。

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(ボストンでグローバルイマージョン。)

★つまり、昭和女子は、国際理解教育ベースのグローバル教育1.0の段階はとっくに過ぎ去り、グローバル教育2.0段階を完成させている。昭和女子の立地は、渋谷―二子玉川―自由が丘に囲まれる東急プレミアトライアングルエリア。グローバル教育1.0と2.0の違いがわかる富裕層が集結している。

★それゆえ、昭和女子は人気があるし、グローバル教育3.0を今まさに完成させようとしている三田国際も隣接していて、昭和女子もグローバル教育3.0に向かう準備ができていることも、人気の相乗効果をあげている。

★このトライアングルエリアの延長上に、洗足学園、森村学園があり、やはりグローバル教育2.0を完成させようとしている。いずれは、3.0に向かうだろうが、その前に三田国際、八雲学園、昭和女子、聖ドミニコ学園の順に完成していくスピード感の方が目立っている。

★もちろん、どこに目立っているかというと、桜新町を中心とするエリアに居住する富裕層の間でであって、まだ中学受験市場全体で目立っているわけではない。

★塾の中には、この富裕層市場と中学受験市場のズレを敏感に意識するところも現れてきている。三田国際、八雲学園、昭和女子、聖ドミニコは、「思考力型問題」を積極的に取り入れている。4科目の入試に30%思考力問題を埋め込んだり、思考力入試や算数一科目入試、自己アピール入試などの新タイプ入試を実施しているが、それは、知識・理解思考からディープな思考育成へシフトしていることの論より証拠なのである。入試問題は学校の顔である。

★したがって、この新タイプ入試の対策講座を開始している塾も登場してきているのである。

★このようなグローバル教育3.0の肝は、もちろん、2025年問題、2040年問題と続く、世界同時的政治経済社会の変化のダイナミクスをマネジメントして世界平和や日本社会のリフォームを果たす人材輩出である。

★特に日本は、バブルがはじけて以降、デフレと少子化に歯止めがかからない。アベノミクスも、ここにきて20世紀型経済の成功体験を追認しているだけだとそろそろ危うさが世間に広まりつつある。閉塞感はどんより重圧になってきている。

★この重圧感に押しつぶされるのではなく、払しょくするには、さすがにAIがやってくれるわけではない。AIを活用し、限界消費ゼロ社会としての新しい経済社会を再デザインする人材育成以外に、乗り切れないだろう。

★かつて、軍事力で世界を支配した大航海時代は、産業革命によって経済力によって支配された資本主義に転換された。しかし、いずれにしても、羅針盤、火薬、活版印刷、石炭、石油資源によるエネルギーの産出といったイノベーションがその背景にはあった。そして、21世紀は知の時代へのシフトであり、その背景には、やはりAIというICTの粋を集めたイノベーションの発明が横たわっている。

★このソフトパワーの生成とマネジメントこそ未来への希望であり、東急プレミアムエリアは、その一大プラットフォームなのだ。

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2019年3月22日 (金)

学びの組織を開発する先生方と共に≪08≫構成主義の系譜とクリエイティブ・ラーニング

井庭崇先生は、著書「クリエイティブ・ラーニング」の中で、構成主義の系譜の中に、クリエイティブ・ラーニングを位置づけている。構成主義は社会的構成主義とも当然重なり(ヴィゴツキーがそれゆえ登場してくる)、二クラス・ルーマンの社会システム論ともリンクしている。

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(井庭崇先生が、構成主義の系譜として取り扱っている学者のラインナップ)

★構成主義のおもしろいところは、小さな日常的現象をプロトタイプに一般化する一方で、大きな社会現象のプロトタイプも一般化する。すると、小さな日常的現象と大きな社会現象が、プロトタイプ同士の親和性でつながるという発見・発明操作をする。

★与えられた知識を受動的に脳に焼き付けるというコピペ認知モデルでもなく、あらかじめ脳の中に埋め込まれている認識カテゴリーを現象にあてはめる生得的認知モデルでもない。

★経験と自己及び他者のコミュニケーション(交換)による認識過程が知識を生み出すという気づき(それは発見であり発明でもある)を得る生成認知モデルである。

★ものを創る作業のみがクリエイティブ・ラーニングなのではなく、知識を結果的に記憶したり、その知識を活用して理解する過程も、目に見えないクリエイティブ・ラーニングが行われているのであって、知識と思考を分断する考え方とは全く違う。

★だから、知識がなければ思考はできないという発想もないし、思考ができれば知識は不要であるという発想もない。

★むしろ、子供も大人も、人ぞれぞれが遭遇する未知の領域で、知識を生成し、それをつなぎながら、そのつなぎの試行錯誤の段階で問題を発見し、その問題を解決していくという知の発達過程を繰り返しているのだ。いったんその領域の発達過程が終了すれば、それは丸ごと知識としてデフォルト・モード・ネットワークとして記憶システムに回収されるだけである。

★だから、人によっては、同じ知識でも、記憶システムに回収する創造的対象だったり、デフォルト・モード・ネットワークである記憶システムから引き出す対象だったりするだけである。

★このような構成主義的学習観が、21世紀型教育として広がっていく=つまり、そういう社会システムとして再編成されることによって、ようやく本格的に学びがパーソナライズ化=個別最適化されると同時に、一方でそれゆえ学びの多様性がコレクティブインパクトを与える協働学習として意味を持ってくる。

★こんな感じで、序章の最初の1ページ(同書30p)を読んだ段階で、想いが広がり、先に読み進めない。いつものように斜め読みできないでいる。どこまで読み続けることができるのだろうか。仕事の合間で少しずつ進めていくしかないようだ。

★こうしている間に、気の合う学校の先生方の幾人かは、4日間のレゴ・シリアス・プレイの合宿研修に参加しているようだ。シーモア・パパートやミッチェル・レズニック、ピーター・センゲなどの構成主義的発想も埋め込まれているはずのレゴ・プログラムの経験を通して、構成主義的学習=クリエイティブ・ラーニングの極みを生成している最中。脳が融けそうだとSNSでM的絶叫を書き込んでいる(笑)。すばらしい♪

★もちろんレゴもいいけれど、パターン・ランゲージも構成主義的発想をデザインするメディアである。私のように、井庭崇先生に一人学びながら、発信して共有する自己マスタリーもいいだろう。合宿から帰ってきたら、先生方から情報を聞き、私からは本書のススメを説きながら、ファンクションシンボルを思考コードグリッドに埋めこみながらクリエイティブ・ラーニングのプログラムをデザインしていく方法を先生方と生成していきたいと思っている。できるかどうかはまだ試行錯誤中。いずれ発表できることを期待している。

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2019年3月21日 (木)

学びの組織を開発する先生方と共に≪07≫社会システムとクリエイティブ・ラーニング

井庭崇先生の「クリエイティブ・ラーニング」は、コミュニケーションの連鎖が生み出す社会システムにおいて、極めて重要な役割を果たしている。井庭先生は、パターン・ランゲージを誘(いざな)うキュートなキャラクターを絶妙に活用して物事の複雑系を解き明かしていくのだが、硬派な社会学者の顔も持っている。

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★あの2011年に、時代の閉塞状況と変容の希望の両方が併存していたのを見事に表現した「社会システム理論」の本を出版している。私たちは、その閉塞状況がゆえに変容の希望を生むために「21世紀型教育を創る会」を立ち上げるという表現をとったのだが、想いは重なっているように思えて(勝手に思っているだけ)、井庭先生の本を読むモチベーションがあがってしまうのだ。。。

★とはいえ、この社会システム論は、二クラス・ルーマンというこれまた硬派のそしてあらゆる制度設計の理論を探究し尽している社会学者の理論がゆえに、井庭先生の本は、やはり買っ読、積ん読、放っ読ということになってしまうのだが。モチベーションはあっても持続可能性がない典型的なミーハー学習者な私なのである。

★とにかく、井庭先生のクリエイティブ・ラーニングにしても、プレゼンやアクティブラーニングなどのパターンランゲージにしても、コミュニケーションシステムを生み出す言語活動のプラットフォームの1つ。

★仮に授業の中で、教師がクリエイティブ・ラーニングを行ったとしても、それは社会システムから隔離されているのではなく、なんらかのリンクがそこには開かれているわけである。

★ただし、それに気づくかどうかはまた別である。というのは、各システムは近代社会では、ある程度までは相対的に自律して運動しているからだ。しかしながら、それがどこかでリンクしているのではないかとなってきたら、その時代の社会システムは限界に達している。

★それゆえ、閉塞感が漂いはじめるが同時にリンクが意識され、それが実行されると、社会システムがそれを取り込んで変容する希望があるし、副作用で死滅する可能性という影の部分が再び現れる不安もあるわけだ。

★現状の授業がアクティヴラーニングとかPBLとかクリエイティブラーニングにシフトしようとしている時、現状の学校組織が社会システムのコミュニケーションの1つの物象態として関係総体をリフレクションして柔軟に変容していくのか、副作用を起こして葛藤をかかえこむかは、その組織の文化として形成されたコミュニケーションシステムの出来具合に寄るだろう。

★もし、デューイのように、未来を見据えてコミュニケーションする学校文化システムであれば、柔軟に変容することは可能である。そして、その変容を市場を形成するコミュニケーションシステムが受け入れるならば、その学校は光を浴び、経済社会社会システムも変容していく希望はある。

★2020年大学入試改革や教育改革は、その社会システム変容の1つの現象であるが、果たして変容すのか、副作用が生まれてその変容は崩れてしまうのか。しかし、パラドキシカルなことに、人間が変わらなくても、社会システムは持続可能の方向性を選択する。そのために変容しなければならないという計算が成り立てば、社会システムは最適化に向かって変容する。それがシステムというものである。

★その変容をはじめは社会システムは外部化するが、変容することがシステムの最適化を持続することだという計算が成り立てば、すぐに変容に向かう。

★そのタイミングが来ていれば、変容のダイナミクスを創る側に立ち臨むのがサバイバルできるということだろう。そういう意味で、教師は教師でもなく、コーチでもなく、ファシリテーターでもなく、井庭先生の言うジェネレーター(アジャイル的あるいはブリコラージュ的に創造するあるいはコレクティブインパクトを生みだす生成者)ということなのかもしれない。

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武蔵という学校 教育改革の拠点?

★本日3月21日配信のAERAdot.の記事「早大医学部構想どうなる? 『世界で輝くための改革』総長らが語る」を読んで、そういえば、今の早稲田大学総長の田中愛治氏は、武蔵の卒業生だったことを思い出した。2020年大学入試をはじめ初等中等教育も大きく変わる時期に、武蔵出身の総長が早稲田の改革を指揮している。

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(写真は、同校サイトから。武蔵の理念「自調自考」がトップページで語りかける)

★五神真現東大総長も武蔵のOBである。東大と早稲田の改革は、必ずしも同じ方向ではないけれど、日本の教育改革に影響を与えないわけではない。

★そういえば、1995年~98年まで中央教育審議会会長だった有馬朗人氏も武蔵のOB。現在は、武蔵学園学園長。1999年は文部大臣にも就任していた。あの「ゆとり教育」を展開していた。そのとき「総合学習」というのが目玉だったし、これからの改訂学習指導要領は、「探究」がキーワード。名前はどうあれ、またその賛否はどうあれ、連綿と武蔵流儀の学問的に深堀していく教育や学問の前提の教養としての学際的な視点・視野・視座を身につける教育を公立私立問わず広めようという情熱を感じないわけにはいかない。

★「1998年」といえば、私にとっては、東京女学館の当時の理事長渋沢雅英先生と出会った時期で、結構ターニングポイントだった。教育研究所の路線を歩むきっかけを与えて頂いた。あのときも英語とICTの両面を東京女学館に導入しようとしていた。当時としては大改革で、伝統と革新を揺さぶる衝撃的でグローバルな活動を渋沢雅英先生は行っていた。

★渋沢雅英先生は、当時の有馬氏の意向にはある程度共鳴していたものと思われるが、考えてみれば、渋沢先生も武蔵のOBである。才能者とか創造的才能という言葉を、私も使うようになったのは、たぶん渋沢先生の影響を相当受けていたのだと思う。

★しかし、その後ゆとり教育に対し脱ゆとりの揺り戻しがあった。渋沢雅英先生の改革もある程度までは進んだが、もっともっとという路線には現場はついていけなかったのかもしれない。いろいろあって、渋沢雅英先生は、理事長を後進に譲り、渋沢栄一財団館長として今も活躍されている。

★それにしても、今度は「主体的・対話的で深い学び」とか「探究」という学びが前面に出てきているが、これもまた結局は総合学習のアップデートということだろう。コンピテンシーという言葉も出てきているが、これも1970年代からすでに米国でトレンドになったり、その後コンピテンシーバブルと言われ、問い直されたり、行きつ戻りつ、再び今回前面に出てきた。

★「ゆとり教育」は、要するにテスト主義、得点主義で能力を測ることに対する挑戦であり、コンピテンシーもテスト主義をどう改めるかという問題意識があり、シンクロしていたのだろう。OECDのPISAもそのはずなのだが、脱ゆとり路線に揺り戻す大きな根拠として活用されたのが、パラドキシカルにも、PISAの結果だったのは記憶に新しいだろう。

★しかし、そのPISAのテストは、その後、公立中高一貫校の適性検査デザインのモデルになっている。全国学力調査テストのB問題もモデルとしている。公立高校入試も適性検査型がモデルだ。そして2020年以降の大学共通入学テストにとっても、PISAはモデルなのだ。

★私立中学入試の新タイプ入試もその影響を受けているし、さらに武蔵や麻布の中の改革派の路線(改革派ばかりではないのが、自由を標榜する両校の特色)の創造的才能者発掘の発想とシンクロしている「思考力入試」までも展開するように発展している。

★武蔵や麻布は、おそらく専門領域に学際的なものの見方を導入しない。あくまで教養レベルで学際的な発想を大切にしているのだろう。だから、専門の道を究めることが重要なのだ。これだと、閉じられた学校という感じを受けるかもしれない。しかし、専門領域を創造的才能者は幾つも探究することができるから、それぞれの専門領域の向こうにはじめて学際的な世界が現れるというのだろう。

★だから、はじめから学際科みたいな領域はなく、あくまで教養主義として学際という言葉、教科横断という言葉を使うのだろう。したがって、そのような専門領域を極める中高以外とはネットワークをはる意味を感じていない。

★自分の学校で、学問を究める学びを粛々と行っていけば、田中総長や五神総長のように、世界を変える人材を多数輩出できるのだから、十分役割を果たせるという考え方だろう。

★それがよいかどうかわからない。私自身は、それだと一握りの創造的才能者しか育たないのではないかと思う。思いは重なるところは多いけれど、路線は違う。クリエイティブクラスは誰にでも開かれているし、そのためには、必ずしも学問的な領域を追究しなくても別路線があるのではないかと思う。それがクリエイティブ・ラーニングとしてのC3思考=創造的思考のPBL型授業の機能ではないかと思っている。

★武蔵のOBは、たしかに教育改革のタイミングに活躍しているが、それ以外の方法もある。実際、教育イノベーションのプラットフォームは学歴ブランド校以外にも出来(しゅったい)しているのだから。

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2019年3月20日 (水)

かえつ有明 2020年度中学入学生から「別学から共学化へ」

★かえつ有明広報部長宇野先生によると「2020年度中学入学生より中高一貫6年間共学化へ移行」するということだ。2013年度から、中学では、学校は共学だが、授業は「別学」という男女別学教育を導入してきたが、2020年中学入学生から中高6年間共学を貫徹するということのようだ。

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★実は、2013年以前にも、かえつ有明は、一部別学を導入していた時があった。共学のクラス、男女別学のクラスという多様なクラス編成だった。その時代はアクティブラーニングなどは行っていなかったから、知識や理解の仕方の違いに対応するためだったようだ。

★実は、これは男女のナチュラルな違いというより、小学校や塾における社会的な男女の役割の違いに影響をうけていた可能性がある。

★ところが、かえつ有明がサイエンス科という独自のプログラムを作成した時に、学年が進むにつれ、その違いがむしろなくなっていくことが学内で起きたのであろう。共学にシフトした。

★しばらくして、つまり2013年には、思考力入試をはじめたために、論理的な思考ばかりか創造的な思考のプロセス、そして何よりモチベーションの燃えるタイミングなどの違いに気づき、それに対応するために再び別学クラスを導入した。

★しかし、3年前から中学のクラスはすべて、全教科アクティブラーニングを導入した結果、その違いが多様性として学びを豊かにすることに気づき始めたのであろう。むしろ共学にする方が、気づきや成長のシナジー効果が表れることが、学内で共有されたのであろう。

★来年からは、中1から中3までアクティブラーニングが完全浸透する。高校の方はプロジェクト科というクラスがすでにアクティvブラーニングを徹底しているし、20%はいるだろう帰国生も多様性は重要な学びの役割を果たす。

★大学入試改革も2024年から本格化し、来年から慶応SFCはAO入試の定員枠を大幅に増やしたり、一部4月入学9月入学を自由選択制にするが、多くの大学で、このような多様性、個別化が進む。この流れは毎年加速していく。

★すると、見えない壁や心の壁を自己開示して、多様な価値観や考え方、多様な感じ方などを尊重しながら自ら壁をぶち破り、新たなポジショニングや役割を意思決定していくことになる。

★学びの環境が異文化のみならず、歴史的社会構造的な違いの多様性を受け入れる感性と知性がますます大切になってくる。かえつ有明のクラス編成は、学校や教師、生徒が外部環境に開かれているからこそ、その変化に応じて最適化がその都度なされるわけだ。

★あなたは、自分の幼少期の写真と今の姿の写真をみて、変わったと思いませんか?でも私は私ですよね。このように、私は成長するけれど、だからといって、自分でなくなるわけではないのです。かえつ有明の変容も同じということではないだろうか。変容とは、柔軟でなければできないけれど、同時に、それは自分をしっかり見つめるメタ的な視点をもっているからこそできるともいえる。


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学びの組織を開発する先生方と共に≪06≫自己表現の罠に陥らないクリエイティブ・ラーニング

★井庭崇先生の「クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育」(慶応義塾大学出版会2019年2月)は、プロローグで、はやくもさりげなくぐいっと入り込む迫力がある。創造だからと言って、自分の主張や自分らしさをつくらねばならないということはない。むしろそんなことをすると自己表現の罠にはまるよと。

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★そのことを説明するために、村上春樹さん、村上隆さん、久石譲さん、宮崎駿さんなどの言葉や考え方を引用している。この「引用」というのもレトリックで、すでに本書自体がクリエイティブ・ラーニングのプロセスで書かれている。

★井庭先生と私のPBLの集合関係は少し違っている。内包と外延というレトリックの分け方がちょっと違う。そのことは今はカッコにいれておいて、いずれ触れることにして、ここでは、クリエイティブ・ラーニングやPBL(Project Based Learning)などは、数学的思考、物語思考、アート思考の相互関係が織りなしていく過程だと考えていることを示しておくことにとどめる。だから、小説家やコンテンポラリーアートの作家、音楽家、映画監督などを引用することは、これらの思考をフル回転させているということを示唆していると思うのだ。

★もちろん、井庭先生がフル回転させる意識などしていないだろうが。

★数学的思考はどうなっているのかというと、これは、アイデンティティは関数であって、ある一つの格子点に固定されることではないと同趣旨のことを井庭先生は語っているから、構成主義そのものが数学的思考の発想だと思う。

★というわけで、自己表現というのは、自己のアイデンティティをそのまま素直に表現するというのは、危ういということなのだ。学習指導要領の中のコンピテンシーに「思考力・判断力・表現力」というのがあるが、ともすればこの「表現力」が「自己表現力」に すりかえられることがある。

★ここに忍び寄る脅迫観念があると。

★私もそれには半分賛成であるが、幼児期の自分の写真と青年期の写真と老人の自分の写真を見比べて、いずれも姿かたちは変わっているが、アイデンティティを感じるのはなぜだろう。

★関数的な自分としてアイデンティティはあるけれど、そのときそのときで、現れる格子点の場所は違うということではないか。

★しかし、これでも、関数方程式は固定されてしまえば、自己表現の罠に陥ってしまいそうだ。

★ただ、アイデンティティ関数方程式は実際には自分が死ぬまでわからないのである。(1,1)という格子点を満たす関数方程式は無限にあるのと同じである。

★禅の十牛図にしても、量子力学的発想にしても、プロセスにける自分は自分であって今の自分でも過去の自分でもない。ギリギリ未来に生まれゆく自分ということだろうか。

★いずれにしても、クリエイティブ・ラーニングの過程で、刻々と自分は成長し、それでいて未知なるアイデンティティと対話しているわけである。

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学びの組織を開発する先生方と共に≪05≫クリエイティブ・ラーニングと学校

★井庭崇先生(慶応義塾大学総合政策学部教授)編著の「クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育」(慶応義塾大学出版会2019年2月)で語られている「クリエイティブ・ラーニング」は、必ずしも学校の範囲だけに収まるものではなく、むしろ学校を越境し、学校外部に広がっていく。

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★だから、新しい学校のイメージが前提になっているのかもしれない。というのも、本書の通奏低音は、プロローグでいきなり始まるデューイの次の言葉にあるからだ。それは「教育者は他のどのような職業人よりも、遠い将来を見定めることにかかわっている」という言葉。

★現状の学校は、実際にはこうなっていない。もちろん、いまここという授業の中で遠い将来を見定めながら生徒と学びの活動をしている多くの先生もたしかに存在しているが、その学校は、少なくとも学びの組織や学校組織そのものを変容させている。

★遠い将来を見定めたとしても、学校の在り方によっては、そのビジョンを目の前の活動に結び付けられない。結びつけるには、学校そのものが変容しなければならない。

★もちろん、学校の変容が先か、教師の変容が先かというのは、どちらからでもよいが、いずれにしても、本書は学校や教師に変容を迫る書であることは確かである。ただし、強迫観念を押し付けるようなものではない。むしろキュートなイラストに導かれるからご安心を。644ページの圧巻の書であるが、どの章から読んでも、行きつ戻りつしながら読めるので、読みながらクリエイティブ・ラーニングもできる。

★現状の学校の中で、クリエイティブ・ラーニングを生かしていくことはいかにして可能か。つれづれなるままに知の旅に誘われていきたいと思っている。

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2019年3月18日 (月)

学びの組織を開発する先生方と共に≪04≫学習する組織の土台システム

★工学院、聖学院、静岡聖光学院などの先生方と行ってきたことを一つの絵にまとめると次のようになる。各学校によって、どのパートを行うかは違っているが、いずれの学校も思考コードという考え方を共有しているために、すべてをつなぐことができる。

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2019年3月16日 (土)

埼玉西武でも私立中高一貫校フェア!体験学習も目白押し。

★今年4月29日(祝・月)、ウエスタ川越で、「埼玉西武私立中高一貫校11校フェスタ」が開催される。各学校の説明会ブースで、受験生自身の魅力と共感する学校を探す場はもちろんあるが、同時に体験学習も開催されている。

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春一番!2020年中学入試へ各学校が動き始める。

★卒業式を盛大に催し、卒業生の未来を祝うシーズンもそろそろ幕を閉じるや、感慨ふける間もなく、各学校は、2020年に新しい仲間を迎える中学入試の準備を始めている。


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2019年3月15日 (金)

学びの組織を開発する先生方と共に≪03≫八雲学園 チームワークのスーパーモデル

★八雲学園と言えば、「チームワーク」という言葉がすぐに思い浮かぶ。教師の「チームワーク」は他校を圧倒するしなやかな強靭さを誇るが、生徒どうしのチームワークもすばらしい。あらゆる行事や部活、委員会はプロジェクトベースでやり抜いていく。

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(写真は、すべて同校サイトから)

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2019年3月14日 (木)

PBLの肝はマインド思考×システム思考(08)SDGs実現のための研究をする授業デザインに転換する。

★今やSDGsについて知らない人はいなだろう。世界の痛みを知る活動は政財官学をはじめいろいろな領域で広まっている。

★もし、この17のグローバルゴールズを知り、各細目の都合169のターゲットを読んで、実行しようと思えば、2020年の大学入試改革は当然行わなければならないし、行ったとしてもSGDsを実現するにはまだまだ改革はゆるやかすぎるということがわかるはずだが、そういう理解は案外乏しい。

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2019年3月13日 (水)

学びの組織を開発する先生方と共に≪02≫組織の成長は柔と剛の複眼思考にかかっている

★この時期は、学校に限らず、4月以降の新年度のステージづくりに組織内は侃々諤々となっています。残念なことに喧々囂々となってしまっているところもありますね。

★そんな中、外部ネットワークをもっている先生方は、いろいろなセミナーや〇〇会に参加し合いながら情報収集もしています。噂話もあり戦略的な話もあり社会を変える学びの真面目な話もありといったところです。

★卒業式のシーズンでもありますから、成人した卒業生と会って、若者の近況報告を聞きながらマーケットリサーチを結果的にすることになっているケースもあります。

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2019年3月12日 (火)

【2019年大学合格実績05】都立中高一貫校の東大合格恒常化の意味

★2019年3月12日現在判明分(inter-edu調べ)によると、都立中高一貫校の東大合格者数は次の通り。

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2020年首都圏中学入試の学校選択(11)八雲学園の場合 進化がとまらない。

★八雲学園の進化が止まらない。この進化のスピードになかなか世間は追いつけないかもしれない。八雲学園は、常に成長し続けているから、小まめに同校のサイトを見たり、facebookなどでフォローしておくことは重要である。

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学びの組織を開発する先生方と共に≪01≫マニュアルやパッケージの背景を読み解くことの大切さ

★2025年問題、2040年問題、2050年問題と世界は多くの問題をかかえていますが、あらゆる問題で出遅れているという意味で、たしかに私たちの国日本は、課題先進国です。がしかし、それはあまり褒められたものではないし、そんなことよりも真剣にその問題を乗り越えることを≪いまここで≫考えて、実行する必要があるのは、説明するまでもないでしょう。

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(今の自分の考えや発想・行動を脱構築するのに役立つ本かなと思っているものです)

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2019年3月11日 (月)

【2019年大学合格実績04】世田谷学園の東大合格者躍進の意味。

★今年の世田谷学園の東大合格者数は、inter-edu「速報!2019年 東大・京大・難関大学合格者ランキング」2019/03/10現在によると、13名で、昨年は5名だから、前年対比260%である。


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(世田谷学園の東大合格者数推移)

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2019年3月10日 (日)

【2019年大学合格実績03】巣鴨の東大合格者躍進の意味。

★今年の巣鴨の東大合格者は、inter-edu「速報!2019年 東大・京大・難関大学合格者ランキング」2019/03/10現在によると、21名で、昨年は11名。前年対比191%である。


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(写真は、首都圏模試センター「イートン校サマースクールに匹敵する巣鴨サマースクール見学記」 の記事から。)

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【2019年大学合格実績02】東京都市大学附属等々力の躍進の意味。 五島慶太の夢実現か。

★東京都市大学附属等々力の大学合格実績速報を下記のように作成。躍進していることがわかる。

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【2019年大学合格実績01】聖光学院 東大+京大合格 100名!その意味。

★inter-edu「速報!2019年 東大・京大・難関大学合格者ランキング」2019/03/10 13:24現在によると、聖光学院から東大93名、京大7名が合格だという。

★東大と京大合わせて100名の合格。昨年は両方合わせて75名だから、前年対比133%。

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2020年首都圏中学入試の学校選択(10)工学院の場合 伸びる大学合格実績も

★工学院大学附属中学校・高等学校は、21世紀型教育改革を本格的に行って4年が経過しようとしている。今の高1が高3になる2020年度にスタートする大学入試改革の時に、改革は完成する。

★しかし、昨年。同校の歴史始まって以来の大学合格実績をだし、今年も、現段階で、それをはるかに上回る実績をだしている。平方校長によると、東京医科歯科大学、電気通信大学、東工大などの国立大学にも合格し、いわゆる早慶上理にも30名(2019年3月8日現在)は合格しているという。

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2019年3月 9日 (土)

PBLの肝はマインド思考×システム思考(07)大阪大学の地理の論述を学ぶ価値

★今年の大阪大学の地理の問題も論述ばかりだった。しかし、基本的には教科書を熟読し、マインドマップで、関連キーワードを時代や地域を超えて結びつけるB軸思考のトレーニングで十分。

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2019年3月 8日 (金)

PBLの肝はマインド思考×システム思考(06)名古屋大学の法学部小論文を学ぶ価値

★18歳選挙権は2016年からすでに実施されている。18歳成人は、3年後の2022年4月1日から施行。高校という時代は、大学準備教育が前面に出がちだが、地球市民として政治経済を担う準備期間でもある。

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2019年3月 7日 (木)

2020年首都圏中学入試の学校選択(09)聖学院の場合

★聖学院は今年も人気だった。しかも男子校であるにもかかわらず、思考力入試で30人も進学する学校になった。明らかに男子校の中で別次元の価値ある学校になっている。偏差値偏重、大学合格実績主義の男子中学受験入試にあって、タレント(才能)、テクノロジー(科学&言語技術)、トレランス(寛容な心)という3Tを土台とした創造的才能者が集う学校である。

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PBLの肝はマインド思考×システム思考(05)東京大学の地理のメッシュマップ問題の2つの意義。

★今年の東大の地理のメッシュマップの問題は、PBL型授業をデザインするときの問いかけとしてはなかなかよき素材。

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2019年3月 6日 (水)

PBLの肝はマインド思考×システム思考(04)京都大学の生物の種分化問題が衝撃的!

★京都大学の生物関係の学部に進みたいというキャリアデザインを描いた生徒にとって、今年の生物の種分化率問題は想定内だっただっただろう。何せ今西錦司博士以来の生態学と進化論の研究は今も京大に脈々と続いているぐらいだから。

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PBLの肝はマインド思考×システム思考(03)一橋大学の地理の問題もすてきな探究への誘い。

★今年の一橋大学の地理の入試問題は、全部で3題。いずれもおもしろい。自然と社会と人間の思惑の循環がうまくいっていない状況を見破っていく問題ばかり。

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2019年3月 5日 (火)

PBLの肝はマインド思考×システム思考(02)東工大の数学の問題はすてきな探究への誘い。

★今年の東工大の数学の入試問題の1番目の問題は数Aの範囲の問題。2021年以降早稲田大学の政治経済学部をはじめ、多くの文科系でも数Aとか数Ⅰは必須になっていく。この問題をみて、教科受験勉強のための問題だと一蹴したとしたら、およそリベラルアーツ的素養はないし、探究のプログラムを創ることは本当はできない。

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PBLの肝はマインド思考×システム思考(01)名古屋大の世界史をヒントに

★PBL(Project based Learning)の肝は端的に生徒の創造的思考を解放すること。その環境設定が対話空間の創意工夫。あるときは、レクチャー、あるときは、PIL、あるときはグループディスカッション、あるときは個人ワークに没入する。それぞれの対話空間を設定するアクティビティの柔軟な組み合わせによって、眠っていた創造的思考が放たれる。

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2020年首都圏中学入試の学校選択(08)桐朋女子の授業は深層で学際的学びになっている。

★桐朋女子の今年の中学入試の応募者総数前年対比は、113.1%で徐々に盛り返している。一方で、形式倍率1.3倍、実質倍率1.1倍(2019年2月25日現在:首都圏模試センター調べ)だから、2019年度は、もっと広く桐朋女子の教育のすばらしさが浸透するようになるだろう。


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2019年3月 4日 (月)

謙虚な問いかけ~C軸思考を解放する問いかけ

★エドガー・H・シャインは81歳の心理学者。キャリア・カウンセラーなら彼のキャリア・アンカーは知らない人はいないというぐらい大御所らしい。彼は、Tグループの創始者の1人だから、1993年あたりに、私も携わっていたPBL型スタッフ研修のプログラムを作成していた時代に、知らないうちに影響を受けていたのかもしれない。

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2019年3月 3日 (日)

いまここで起ころうとしているダイナミクス。

★ここのところいろいろな方に出会ったり、ミーティングを通して感じたことは、対話リスクと世界リスクがGAFAの出現でつながって、リスク増幅が起きているというコト。

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聖学院とかえつ有明 中学受験市場のプラットフォームの多様化を拓く

★プレジデントファミリー(2019年春号)のインタビューを受けたのは、今年の1月。年初めだったから、中学受験市場のプラットフォームの多様化について語ってけれど、図式化まではしていなかった。しかし、2月の首都圏の中学入試を経て、それが終わった今は、その図式化が未完ではあるが、描けてきた。

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2019年3月 2日 (土)

麻布と聖学院と三田国際に象徴される首都圏中学受験市場の多様性

★前回の「19年2月ホンマノオト21アクセスランキングベスト50」で、上位10位を占める記事の特徴は、今年の中学受験市場の多様性を物語っている。

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19年2月ホンマノオト21アクセスランキングベスト50

1:麻布の中学入試問題 東京オリンピック・パラリンピック問題
2:【2019年度首都圏中学入試(47)】 塾の合格実績の一極集中が崩れるか...
3:聖学院の優しさと強さ~聖学院と麻布と武蔵と栄光と
4:【2019年度首都圏中学入試(50)】 中学受験市場のダイナミズム
5:【2019年度首都圏中学入試(49)】 勢いと現実と成熟と 第二次中学受...
6:麻布の中学入試問題④ 理科 おいしいコーヒーの淹れ方を科学する
7:【2019年度首都圏中学入試(48)】 塾の合格実績の一極集中が崩れる可...
8:麻布の中学入試問題② アクティブブレインな算数の問い 麻布に学ぼう
9:麻布の中学入試問題③ 国語 成長のアルゴリズムを組み立てる それにしても...
10:三田国際 学校選択が変わる時代を牽引

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2019年3月 1日 (金)

2020年首都圏中学入試の学校選択(07)香里ヌヴェール学院の場合②教科と探究の結合のヒント!♪

★香里ヌヴェール学院の西川先生の中1の地理の授業を拝見して、気づいたコトがある。定期テスト直前の授業だったため、知識の系統的なつながりの問いを連射していたが、その系統的なつながりに、地理以外のフェーズをつないでいるのだ。

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2020年首都圏中学入試の学校選択(06)香里ヌヴェール学院の場合

★香里ヌヴェール学院の社会科の授業をリサーチしていて感じるのは、マインド思考×システム思考の育成が土壌になっているというコトである。ピーター・センゲは、この両方がループでつながっているから、両方の意味を含意してシステム思考と言っているが、センゲ自身が語っているようにマインド思考を含んでいないと誤解されたり、それゆえ冷たいと揶揄されたりもするので、内包表現から外延的な表現にあえてしている。

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