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2019年3月10日 (日)

2020年首都圏中学入試の学校選択(10)工学院の場合 伸びる大学合格実績も

★工学院大学附属中学校・高等学校は、21世紀型教育改革を本格的に行って4年が経過しようとしている。今の高1が高3になる2020年度にスタートする大学入試改革の時に、改革は完成する。

★しかし、昨年。同校の歴史始まって以来の大学合格実績をだし、今年も、現段階で、それをはるかに上回る実績をだしている。平方校長によると、東京医科歯科大学、電気通信大学、東工大などの国立大学にも合格し、いわゆる早慶上理にも30名(2019年3月8日現在)は合格しているという。

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★まだ、すべての発表が終わっているわけではないから、これからもまだ伸びるだろう。

★本格的な改革は、今年の高3には行われていないかもしれないが、チュータ制の探究論文の壮大なプログラムは、すでに行われていて、自分の未来を切り開くモチベーションはかなり強く内燃して、自己マスタリー型授業によって未来へのまずは大きな関門である大学入試に臨んでいる。

★実は、この探究論文は、昨年の卒業生から始まり、それと大学合格実績の伸びの相関はどうやらありそうである。

★また、今年の卒業生は、探究論文に加え、3か月留学制度も実施された。それがさらにパワフルな影響を与えていることも関係しているだろう。

★さらに、AO入試の第一人者とネットワークも組んだのも今年の卒業生からだ。東京医科歯科大学と電気通信大学はその成果でもある。

★また、PBL(Project based Learning)の授業もまだ本格的に実施される学年ではなかったが、中学1年生から高2(この学年はプレ改革学年で、工学院の運命を変えた学年)までは行われており、当然そこで授業を行っている教師が、高3でも担当するわけだから、改革の影響は実際には及んでいたと考えることができる。

★つまり、21世紀型教育は、大学合格実績もちゃんと出ることを工学院は証明したのである。こういうと、いや今の高1が高3になったときにはじめて証明されるのではないかと言われるかもしれない。

★しかし、それは大丈夫である。というのも、実は中1から高1までのPBL授業はエンリッチメントを目的とした学際的で広がりのある拡充型PBL(E型PBLと呼ぼう)であり、フィールドワークからチームビルディングも合わせたPBLだが、高2は、E型PBLがS型PBL(自己マスタリー型PBL)にシフトする学年である。そして高3になると完全にS型PBLになるのである。

★PBLは、自分の道を切り拓くプロジェクトが各教科の授業の中に埋め込まれていることを意味するが、中1から高1までは、それはチームで行う知の相乗効果を活用するE型PBLになっている。

★それが、高1高2で完成するチュータ型探究論文(論文指導の教師が生徒1人ひとりをサポートしていくシステム)という本格的なPBLで、自己マスタリーを深めていく学びの場に転換していく。

★もちろん、自己マスタリーは、学習する組織の1つの重要な要素で、他の4つの要素と結びついいているから、大学合格のためだけではなく、その先の未来において、自分の道を歩んでいく時に出会う仲間と協力して世界の問題を解決していくためにいろいろなコミュニティ(会社もあり、官僚組織もあり、政府関係組織もあり、医療関係の組織もあり、国際的な組織もあり、NGOという組織もありで、多様だ)に所属したり、起業したりしていく準備である。

★しかし、工学院の教師は、このE型PBLとS型PBLの関係は、シフトするシナリオで理解しているかというと必ずしもそうではない。E型PBLで6年間やり切れると考える教師もいるし、S型PBLを6年間やったほうがもっと大学合格実績が伸びると考える教師もいる。

★そして、そんな教師たちの葛藤を、平方校長は和解させようなどとはしない。むしろその葛藤を自分たちでどう解決していくか、それこそが21世紀型組織だと考えている。

★しかも、そんな葛藤の時に、平方校長は、次々と21世紀型教育のアップデートをトップダウンで投げまくるから、現場はさらにストレスを感じる。

★この教師同士及び校長のトップダウンで生まれるストレスをどうとらえるかが、教務主任やカリキュラムマネージメントリーダーの腕の見せ所である。

★このストレスをある程度弱めないと、現場はパニックにおちいる。完全に封印する壁をつくると、安心安全は生まれるが、教育力は停滞する。したがって、適度なストレスを抱えながらそれを乗り越える自己肯定感やモチベーションを内燃させるためにクリエイティブテンションを生み出すのは、教務主任とカリマネリーダーの協働関係にかかっている。

★カリスマ進路主任は、一方通行型の授業も巧みだが、マインドマップなどの思考ツールを活用したグループワークを活用したPBL型授業も実に巧いのだ。それでいて、自己マスタリー型のPBLで圧倒してくるから、その力を学内全体に息吹として転換するのに、教務主任やカリマネリーダーは、実はものすごい戦略的リーダーに日々変貌しているのである。

★一方、平方校長の高い志は、必ずしも中学受験市場に受け入れられるわけではない。しかし、子供にとって、何が最適な学びの環境なのか、妥協しないというパッションが凄い。

★マーケティングを巧みにやって、市場迎合型経営は、教育ではないと考えている。必ず、最高の教育を創り上げていけば、市場は認めざるを得ないという信念を貫き通している。

★東京23区に比べ立地条件がそれほど良いとは言えない八王子にあって、その信念に賛同する保護者がどれほどいるかは、予想がつくだろう。生徒募集は満身創痍であるが、高校受験の生徒が変わりつつある。工学院の教育が自分にとって、未来社会にとって最適なのでないかと考え受験してくる生徒がどんどん増えている。

★平方校長はおそらく四面楚歌状態であろうが、新しい世界には新しい人材が必要である。新しい人材は新しい教育によって育て、市場はそれによって新しく創造的破壊をする必要があるのだという一貫した信念を語り続ける。実はこの考えは、パラドキシカルな話であるが、最高のマーケティングのセオリーなのである。

★わかりやすさを広報し、市場に迎合するマーケティング戦略を語る中学受験市場の見識者は多いが、実はこの方法論は目先の利益を得るには適しているが、持続可能ではない。

★最高の教育、最高の教師、それに賛同し未来を切り拓く気概のある最高の生徒(偏差値はまったくどうでもよい)が集まれば、世界は変わっていく。

★大学合格実績を出すことを平方校長は目的にしてはいない。ただ、出ることは教育の質の証明でもある。説明責任を果たすことでもある。

★ストイックだけれどワクワクする教育。Hard Funな教育を、生徒と共に創る工学院の先生方の笑顔には、そのプロセスが反映されている深い表情なのである。

★2025年問題は、すぐそこまで来ている。本物教育を選択しなければ、本当に子供たちは困ってしまうだろう。2025年の大洪水に備えるために、あなたの子供はどのノアに乗せるのか。賢い選択をする時代がやってきた。

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