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2019年3月11日 (月)

【2019年大学合格実績04】世田谷学園の東大合格者躍進の意味。

★今年の世田谷学園の東大合格者数は、inter-edu「速報!2019年 東大・京大・難関大学合格者ランキング」2019/03/10現在によると、13名で、昨年は5名だから、前年対比260%である。


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(世田谷学園の東大合格者数推移)

★世田谷学園の東大合格者実績は一部の私学の寡占状態を除けば、今までも好実績だった。しかし、いわゆる学歴ブランド校の仲間入りをするには、どうしても10人を超えなくてはならないと学内では考えられていただろう。

★今までこれだけの実績をあげてきたのに、それが生徒募集に必ずしもつながらなかった。もともと同校の建学の精神の根っこは、永平寺を本山とする曹洞宗である。あまりにも有名な鎌倉仏教で質実剛健と礼と内省を体現している学校である。

★それゆえ、東大合格実績を出すことを目的とする理念は当然ない。この建学の精神を現代化したのが、“Think & Share”。

★この“Think”は、東大に入るための論理的思考ではなく、論理も創造性も抱え込みながら、最終的にはそれをも超えたところの自己を見出す壮大なスケールの思考行為である。

★“Share”も、互いに情報や気持ちを共有するという程度ではなく、世界の痛みを丸ごと自ら抱え込み、自らの言動をマネジメントしていく人々との協働を意味しているだろう。もちろん、これは私の独断と偏見だが。とにかくそのぐらい壮大である。

★座禅という一見小さな内省を協働することによって、そこには大きな慈悲というか愛があふれ出るのである。

★だから、その建学の精神と東大受験は親和性があるかどうかは迷うところである。ダライ・ラマも訪れる世田谷学園が、権力製造装置とどのように調和を見出すのかは、戦略的にそう簡単な意思決定はできなかっただろう。

★しかし、ZENは一方で、庶民との対話がある意味解脱への道でもあるから、世俗的権力製造装置との対話ができる生徒がそこに分け入っていくことは、実は矛盾しない。

★東大合格実績が4人になって、翌年再び7人になったが、だからといって生徒募集が好調なわけではなかった。昨年再び5人になったとき、さすがに学内は動いたのだろう。今春は、算数一科目入試という新タイプ入試を設定した。

★その目論見はあたり、今年の中学入試における総応募者数は1,532人で、前年対比は141%、実質合格率も2.4倍(2019年2月25日現在:首都圏模試センター調べ)だった。

★しかし、もし算数一科目入試を設定しなければ、前年対比は100%を割っていたかもしれない。

★いずれにしても、東大合格実績に象徴されるディプロマパフォーマンスだけをたよっていては、アドミッションパフォーマンスは上がらない。アドミッションイノベーションも必要だった。

★今回は、アドミッションもディプロマも両方のパフォーマンスがあがった。カリキュラムのプロダクトは、伝統的ではあるが、座禅のようにシリコンバレーも注目するマインドフルネスは、古くて新しいプログラムとして、40代前後の保護者の目には映るだろう。

★それに、世田谷学園の伝統は、世界普遍のマインドで、ジョブスも魅力を感じているぐらいである。

★学歴ブランド校のポジショニングを確保し、その学校群の中で、もともとは釈尊の言葉「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」を、国際的に通用する言葉として、英訳した「Think&Share」の力を広げることは、日本の教育を根本から変える契機となろう。

★かけがえのない価値をもっている私のように、すべての他者も同じなのだ。エゴが支配するポストモダンの波をあまりに受けすぎてしまった学歴ブランド校が、NY国連がノーマン・ロックウェルのモザイク画をギャラリーにディスプレイして、象徴しているように、人類普遍の原理である「天上天下唯我独尊」あるいは「man for others」に再び目覚めるインパクトを世田谷学園が生み出すことを期待する。

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