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2019年2月28日 (木)

香里ヌヴェール学院の授業 考えることが好きな生徒が生まれる

★香里ヌヴェール学院の2つの授業リサーチに行った。ハーバード流儀のリサーチレポートを授業内で作って、休み時間に先生と振りかえり、主幹の龍美先生と今後のカリキュラムマネジメントのさらなる振り返りをするという循環を行っている。

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★毎月訪れているのだが、本当に訪れるたびに進化しているのに驚く。中1の社会は、定期試験前の授業だったけれど、実にすてきな授業だった。試験範囲が大部分を占めていたから、問答形式だったが、メディアミックス手法を活用して間髪入れず、多様な思考スキルを発動する問いを連射する。

★生徒は活発に反応していくから、集中力と楽しいという感情がシナジー効果を生みだしているのが伝わってくる。まさに空中マインドマップが描かれている。これぞ本当の脳内仮想空間だ。

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★しかし、知識のやり取りのときに、ふとプロトタイプクエスチョンが投げられた。アメリカの春と冬小麦の農法について問答されている場面だった。ここには自然と経済と人間の知恵がうまく結びついている3領域の循環プロトタイプを描いていく空中マッピングがあった。

★このプロトタイプが適用できるものは他に何かあるか、日本の場合だったらそのプロトタイプはどうなるのかなど知識の問いがロジカルシンキングにパッと広がる瞬間だった。このプロトタイプクエスチョンは、同校の社会科の伝統でもある。

★また、新しく学ぶ農法が現れたときに、生徒はタブレットを持っているから、さあ調べてとなりがちだが、みんなだったらどんな牛肉を食べたいと思う。その場合、どうやって牛を放牧する?と問答していく。誘導しているというより、生活の隣接イメージを活用する修辞学技法を活用して問答を行って、新しい知識の概念に迫っていく。リベラルアーツの手法が使われている。

★メディアミックスや修辞学、プロトタイプデザインなどすばらしいコーチング技法でA軸思考B軸思考C軸思考をミックスしていく。生徒にとって頭はフル回転で、結構きついけれど、脳みそで汗をかくアスレチックは実に楽しい。“Hard Fun”な授業だった。


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★もう1つは高1の家庭科の授業。実習ではなく、高齢者問題について考える授業だった。二時間続きの授業で、リサーチに行ったのは後半の授業。しかも6時間目。後半に入る前の休み時間から訪れた。するとくたっとなった男子生徒グループがいた。


★5時間目だからそうなるのはむしろ自然だと思ったが、授業が始まるや、しゃきっとして思考に没入した。どうやら考えることに集中するためにリラックスして鋭気をやしなっていたのである。

★有料老人ホームの記事や写真などの資料から気づいたコトをロイロノートに書き込み、共有しプレゼンする。それを3種類のドキュメントで3回展開していく。ものすごいタレントトレーニングである。

★そして、最後にその3種類の気づきを編集してまたシェアしていく。完全に教師はファシリテーターになり切り、気づきの喚起とシェアと編集の環境を作るのに徹っしていた。生徒たちは、自ずと、高齢者のリスクとそのリスク回避のための産業化がもたらす深層のリスクに気づき途方に暮れる。

★そう簡単には解決策はみつからない。思いつかない。イージーな問題解決は実は解決していると思いながら危機を孕むリスクを生み出してしまうからだ。

★あっ、これは家政学的社会学なのだと気づいた。これをディープラーニングと言わずして、何といおうか。考えることが大好きな生徒が育つ秘密が香里ヌヴェール学院にはある。
 

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