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2019年2月 7日 (木)

≪C軸思考元年2019_03≫ 帰国生との対話 法思想の水脈と限界費用ゼロ社会 

★いわゆる超難関私大を合格した帰国生は、さらに海外の大学を受けて羽ばたいていったり、これから国内の国立大学にチャレンジする。先日、その一人と対話した。鈴木裕之氏代表のGLICCの生徒。

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★私がお手伝いするのは、小論文指導なんだけれど、合格の決め細かい指導は、GLICCの鈴木代表やスタッフ(外国人教師や帰国生入試で入学した大学生)がサポートする。

★私の役目はその大学の入学試験で出題される言語文化、背景、認知多様性の幅を身体化するコト。だから、一般入学試験や帰国生の入学試験で扱われる素材文の分析をいっしょにしながら、対話によって身体化していく。

★帰国生は、しばらく受験言語である日本語に触れていないから、そういうことも必要なのかもしれない。鈴木代表の長年の経験に基づく、帰国生の特徴を知り尽くしたが故のきめ細かい配慮の1つであろう。

★GLICCの学びの環境はリアルスーペースとサイバースペースの併用。帰国生はしばしば海外に戻ることもあるから、当然だ。しかし、私のようなお爺ちゃんには、それはつらいだろうと「対話」に絞って環境を設定してくれている。感謝感謝。

★しかし、帰国生は圧倒的に、ドメスティックな状況についてのデフォルトモードネットワークとしての知識は不足しているので、ラップトップ持ち込み可である。

★一般受験の知識はとくに社会科はないといってよい。帰国生の小論文対策には、現代文だけではなく、歴史や倫理社会にも接しておく必要がある。

★特に法学部や経済学部は歴史的パースペクティブや多様な歴史観のタイプは知っておいた方がよい。これはメモリー知識というよりはネットワーク知識とか物語り知識とかの次元なので、記憶するという感じのものではないが、やっておく必要はある。デフォルトモードネットワークとして身体化することはできるから。

★ただし、一般受験の問題を解く必要はない。問題文と解答と解説は丸ごと提示する。そしてインターネットでググりながら、背景知識をカテゴライズする作業をする。400字で気づいたコトを随時まとめてくるので、それについて、明快でない部分を質問する。私は、なるほどなるほどと聞きながら、その二つを比較することは何をねらっているのかとよく尋ねる。そして、逆戻りして、決定的な違いを説明して欲しいと。しばらく同じことを繰り返す。

★なぜ?という質問はあえてしないようにしている。結果的には尋ねることになっているのだが、そんな言動をする背景にはどんな視角があるのかを問う。前提の前提の前提を尋ねる。

★社会科学だと、どうしても、3つの視角とその視角を作動させる法思想とか正義に関するいくつかのパターンがある。要は制度設計とその運営ルールとチェックルールだからである。いつもはサンデル教授の本だったり、アダムスミスとルソーについての新書を基本書にするのだけれど、今回は直前だから森村進教授編の「法思想の水脈」と落合陽一氏の「日本進化論」を選んだ。

★3回分(160分×3)のテキスト。その他に受験する大学の例の赤本。1回の授業で対話と400字の原稿用紙は3、4枚は書く。自宅でも数枚書くことになるから、言語4技能と思考の相対化は結構バッチリだ。

★この間は、ちょうどメルケル首相が来日していた時だから、授業がはじまるアイスブレクでは、どうして来日したのとはきかずに、ニュースで報道された事実を教えてよと。要約する力はさすがにバッチリ。で、彼女の戦略は何だったの?ときくと、EPAがどうのこうのとか中国との関係とか、米国の関係とか説明してくれる。

★さすがだねと反応しながら、その関係性を考えているメルケル首相の視角はどのくらいあるの、それは何。どこから見ているのかねえとお爺ちゃんはたずねる。すると、よどみなく話してくれていた彼女が少し考えだす。そして、もう少し絞って質問してくれませんか?と。

★そこで、それはそうだねと。そして、メルケル首相は、どの立場で来日しているのと。エッ、首相じゃないんですか。そうだよね、すると何を考えているのか、彼女の立場に寄り添ったらどうなるの?と。

★すると、平和とか貿易とか、インダストリー4.0ですよねと。そうそう、ということはその背景に首相は何を考える視角を実装しているんだろうねと。ああ、~ですねと。

★いいね。じゃあこの問題やってみようかと、なるわけだ。パースのプラグマティズムとデカルトの方法的懐疑論の比較についての問題だった。これについて、ググりながら、400字で要約する。400字で要約すること自体が無理難題であるが、限られた情報でなんとかまとめてくる。

★明快に違いをと対話はグルグルまわる。パースとかデカルトとかだいたいいつどこで生まれてどこで活躍したんだろうね。すると、両者を比較している文章自体が謎であることがわかってくる。それにデカルトなんて、どこの国という国家の概念がまるで違うというのもわかってくる。

★だからといって、何かが解決するわけではないが、生徒は自分がどっちよりの考え方なのかわかってくる。しかし、それが正しいかどうかはわからない。時代の被拘束性を超えることなどできるのだろうかと疑問をもってくれれればそれでよいわけだ。

★しかし、実際のニュースで、見方が分かれるのを、パースとデカルトで説明するとどうなるのかという対話はする。すると両者のメリットとデメリットがでてきてショートすることがわかる。国際関係のニュースも話題に出す。解決の難局にぶつかることもしばしばであるのは当然だ。法思想の水脈を読むと、このような対話もある法思想のチャンポンによるものであることがわかるのだが。。。

★難局にぶつかるのは、結局制度設計の際の暗黙の法思想がいろいろあるからなのだが、そこまで、一足飛びには飛べない。そこで、じゃあ法思想の水脈を読んでみようかと。

★この本は、ギリシア時代からポストモダンまで法思想の進化の枝が描かれているから、歴史観もセットになっている。歴史を動かす法思想のポリフォニーを聞くことができる。

★この本の基調はリバタリアニズムだから、相対化する必要があるので、私のようなお爺ちゃんがファシリテーターとしてまだ役に立つ。

★社会を構成する3つの視角がそれぞれ大きなウネリを描きながら歴史を構成していく。そのウネリの原動力となる法思想の水脈。というかパターンなのだが、なかなかわかり辛い点も多い。法実証主義という発想がヤヌスの顔を持っているので、面食らうこともあるが、それは自然法論でも同じで、すべての思想はヤヌスである。

★葛藤のダイナミクスは、そのヤヌスを明快に見出すことが肝要で、たいていの現実はそこがいつも曖昧なのだ。

★帰国生はそれを見つけるのに有利な感覚をもっている。明晰な言語の能力を持つ必要性を感じているし、認知多様性は体験済みだからだ。

★体験や現実の中にそのヒントはある。そこから強烈な問題発見ができる。でどうするのだ。そのときその自己決定はその人の法思想や正義論に規定される。

★しかし、ふだんはそこは見えない免疫システムが働いている。そこを知るにはどうしてもクリティカルシンキングが必要なのだが、日本社会はこれは忌み嫌う。クリティカルシンキングを作動させる人は得体のしれない不気味な魔物だと思われるのだ。

★封印したり、神に祭り上げたり、呪術的法思想が深層にある。

★最近のICT関連の教育推進者の中には、メカニックを使いながらも、何かが憑依しているのではないかと思える人々がいる。これを導入しないと学校は変わらないと。

★帰国生にとって、そんな環境は当たり前だし、だからそれがあっても何が変わるのか?変わるには、認知多様な思考対話あるのみ。エッ、お爺ちゃんも相対化したほうがよいのでは。墓穴を掘っていますよと。ありがとう。そだね。


★それと、法思想の水脈はポストモダンまでの話で、現代版限界費用ゼロ社会という古くて新しいユートピアの話も射程に入れておいた方がよいからと言ったら、知のアルミストでしょう。おもしろいので読みますとキッパリ。さすが高感度。

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