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2019年2月11日 (月)

【2020年度首都圏中学入試動向の切り口_01】学校組織と市場

★2019年度首都圏中学入試も、本日でほぼ幕を閉じることになる。招集日も本日が多いから、しばらくは繰り上がり情報が行き交うかもしれない。しかし、多くの学校も塾もすでに、2020年の中学入試の戦略を見直したり、再構築したり新機軸を生みだそうとしている。

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★特に2020年に向けては、最後のセンター試験の高3を抱えながら、新たな教育の動きを十分に準備をする最後のチャンスである。

★その準備というのは、しかし、各教員が行えばそれでよいというわけではなく、動くも動かないも、学校全体の組織の問題であり、その組織のシステム全体の問題である。

★学校組織は、外的システムと内的システムに分かれる。そのカップリングがうまくいくかどうかで学校が市場で評価されるか、つまり人気がでるかでないかが決まってくる。

★学校選択者にとって、2013年までは、大学合格実績を出す学校であれば、それでよかった。あとは偏差値が高いか低いかは、子供の学力の問題だし、できればステータスとして偏差値が高ければそれにこしたことはなかった。

★しかし、今思えば、そのような学校は伝統主義的教育校であり、2011年から2015年の間に少しずつ誕生してきたのが、2020年の大学入試改革の歴史的背景を見据えた進歩主義的教育校である。

★2018年までは、その二つの潮流がぶつかり合っていることの意味を明確に市場は意識しようとしてこなかった。進歩主義的教育校については、市場の一部の話で、伝統主義的教育校が圧倒していただろう。

★2020年の大学入試改革がちゃんと実勢されなければ、伝統主義的教育で十分だと学校側も学校選択者側も思っていたに違いない。

★それを高をくくっていたといえるかどうかは、やはり歴史が判断するのだが、どうやら歴史は進歩主義的教育を明確に要請し始めているのではいかというのが、2019年度中学入試において、少しずつ明らかになってきた。


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★しかし、だからといって伝統主義的教育校がダメで、進歩主義的教育がヨイというわけではない。ダメかヨイかは、伝統主義教育とか進歩主義的教育という言葉の問題ではなく、それぞれの教育を実現している学校組織の質が問題であることが、学校選択者はわかってきた。

★分かっていないのは、もしかしたら学校当局なのかもしれない。


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★というのも、学校選択者側は、ストレートに市場で生活しているからであり、学校は、外的システムをマネジメントしている教師がわかっているだけで、内的システムをマネジメントしている教師は無関心な場合が多いからだ。

★それが、外的システムと内的システムの両方をカップリングさせる動きをする教師が多いほど、その学校組織の質は充実し、人気も高くなる可能性がある。

★学校組織は経営と教育の両輪であるが、この比喩は、2013年までの話かもしれない。学校組織は外的システムと内的システムのカップリングであり、システムである以上経営と教育はセットである。

★国公立の場合、経営と教育の足し算だから、経営は自治体と校長教頭などが管理すればよい。しかし、歴史や時代は経済を抜きでは動かないから、日本の教育行政が閉塞状況になるのは、システムの問題以外の何ものでもない。

★私立学校は、その点、外的システムと内的システムをカップリングさせることは可能なので、教育改革のモデルを示すことはできるだろう。

★さて、そのモデルであるが、単純に伝統主義か進歩主義かではなく、それぞれが外的システムと内的システムのつながりがあるかないかで上記のように4つのタイプにわけられる。

★そして、その両システムがつながっている(循環している)か、つながっていない(断絶)かによって、人気が決まる。それを上記表や図にまとめた。

★なんでも見える化すれば人気があがるわけではない。

★今のところ、伝統主義的教育で、大学合格実績がでる内的システムが充実していて、広報活動や外部とのコラボレーションなどが見える外的システムとつながっていることが、見える状態のT〇タイプは人気がある。実質はそうなっているのだが、見えない場合は、人気が今一歩である。

★しかしながら、内的システムは充実していないというコトが見えないけれど、合格実績は予備校のおかげなどででているところは、人気があるということもあるのだ。


★伝統主義的教育校で、内的システムがガタガタであることが見えてしまっている(外的システムがボロボロだからわかってしまう)ところは、市場は論外として反応しない。

★進歩主義的教育校の場合も同じようにタイプ別ができる。しかし、実際には、伝統主義的教育校と進歩主義的教育校のバランスをとっている改善主義的教育校もあるし、質の充実度もグレーゾーンがあるから、上記の表のようにきっぱり分けることはできない。

★それが学校選択の多様化を生み出しているわけであるが、だからこそ学校選択は多角的に考えなければならない時代に突入していて、Amazonで商品ラインナップを並べて人気ランキングを出せるようなものでは残念ながらない。それゆえ成熟化しているといえるのかもしれない。

★改善主義は、2020年の大学入試改革の様子をみながら動いているところが多いだろう。進歩主義的教育校は、2020年の大学入試改革が起こらざるを得ないもっと大きな変化を起点に教育を考案し創っている。

★この辺の事情も、今後多くの中学受験情報誌や中学受験情報シンクタンクが分析していくことになると思う。

★首都圏中学受験という現象は、日本全国どこにでもあるわけでも、世界中にあるわけでもなく、明治の官学の系譜とうまくやりとりしながらも一方で近代民主主義の根源的なものを保守すべく対峙してきたし、その保守してきた近代民主主義の光の部分を戦後教育基本法に反映させる動きまでしてきた歴史的教育機関で、世界でも珍しい存在なのである。

★もちろん、官学の系譜とのやりとりは、たとえな、勝海舟のような付き合い方もあるし、福沢諭吉や江原素六、矢島楫子のような付き合い方もあって、多種多様である。

★経営も基本は市場を活用するから、強欲資本主義にも翻弄される。そんな中で自分軸を失わずポストモダンも生き抜き、AI社会に向かう新たな資本主義のカタチにも対応していくだろう。もしかしたら、AI社会に向かう経済企業に取り込まれてしまう学校もでてくるだろう(すでにそのような学校は気づいていないかもしれないが、加担しているところもいっぱいでてきてしまっている)。そのカオスの状況から、学校という組織が、自ら本当に新しい資本主義も生み出す可能性もある。

★夏目漱石や芥川龍之介が、当時の社会主義や資本主義の両方に与できずに夢見た新しい社会。それは夢十夜のかなたに、あるいは羅生門の向こうに希望としてあったかどうかわからないが、明治以降受け入れた近代のダイナミクスはいずれにしても未完である。

★私立学校の先生方に、そして生徒の皆さんに、期待するのは、私のエゴだろうか。そうかもしれないが、そのような仲間の学校の先生方と共に確かに歩み始めてはいる。そのような時代に立ち会えるのはやはり幸せなのだと思っている。

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