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2019年2月25日 (月)

2020年首都圏中学入試の学校選択(03)恵泉の場合

★恵泉の今年の中学入試も安定的だった。女子校には厳しい時代であるが、それに屈することなく創設者の河井道のランターンの燈火は輝いている。恵泉のような学校が安定的な人気を保っているということは、中学入試市場はやはり健全である。

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★もちろん、高い精神の徴を掲げ、この持続可能性を維持するのは、ポストモダンの時代に在っては並大抵のものではない。何せ、大量生産、大量消費、大量移動、大量情報洪水の時代である。

★しかし、そろそろこのポストモダンと呼ばれる時代も次にシフトし始めていることも確かだろう。合理的なコスト感覚を大衆がもたっというコトよりも、この経済社会の環境破壊によって、自分たちの生活自体、深刻な打撃を被ることが明らかになってきたからだ。

★リスク世界への気づき。どうしたらよいのだろうか?クエーカー的なストイックなそれでいて、いやそれだからこそ愛に溢れた精神への欲求。恵泉の評価は、まさにそこだろう。

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★かつては、大学合格実績と偏差値という選択指標で鴎友に溝をあけられる時代もあった。精神と現実的な進学準備教育の二兎を追っている鴎友学園女子に対して、恵泉は精神の充実のための学びの充実に集中してきた。

★アクティブラーニングだとかPBLだとか最近呼ばれているが、要は、対話とディスカッションとエッセイライティングとプレゼンテーションというドラマツルギー的なパースペクティブを養うイノベーションであるが、恵泉は建学当初から行ってきた。園芸・英語・聖書という学びの場は、それらなくして遂行できないのだ。

★かつては、恵泉は学歴ブランド校かどうかという指標だけで評価されてきた。鴎友学園女子は、戦略的にそれを逆利用して学歴ブランド校に仲間入りした。当局は本意でないというかもしれない。しかし、そういうレッテルを貼っているのが今の中学受験市場であるからしかたがない。

★しかし、恵泉は学歴ブランド校ではないし、望みもしない。では、ICTのような先端的な技術を取り入れ、イノベーションブランド校になろうとするかというと、それもあり得ないだろう。もちろん、ICTは活用するだろう。しかし、正面切ってICT産業と連携しようなどと考えもしないだろう。

★なぜなら、戦後日本の近代的な発展を創る影響を与えた学校の1つが恵泉だし、園芸・英語・聖書は、今もSGDsで活用される最強のイノベーションであるからだ。

★この園芸・英語・聖書のイノベーションを巧みに使い、東急王国を築き上げたのは五島慶太である。もし五島が河井道や新渡戸稲造の薫陶を受けていたら、もっとすばらしい都市計画が実行されたかもしれないが、とりあえず東急沿線の繁栄ぶりは今も続いている。

★五島慶太の東急都市構想は、イギリスの郊外にあるユートピア都市レッチワースをモデルにしている。レッチワース自体は、江戸の町を埋め尽くしていた大小の大名庭園にヒントを得たらしい。つまり、園芸に通じる発想だったのである。

★五島慶太は官僚や財閥オーナーになる前は、英語教師になるべく修行をしていたが、読んだ本が聖書ではなく、聖書の精神をベースにしたプロテスタンティズム倫理によるビジネス書だった。「学問のススメ」と並んで出版当初ベストセラーだったスマイルズの「自助論」だった。

★もし、聖書を英語で読んでいたら、もっとすばらしい田園都市構想が実行されていたかもしれない。

★それはともかく、恵泉の教育は、都市構想を生み出すほどの人材をが育つ秘密の花園なのである。

★園芸・英語・聖書というイノベーションをさらに感話というコンパクトなGrowth Mindsetの場に変換することによって知の泉を守っている。この変換もマインドのイノベーションである。

★もうすぐ平成が終わり、今の皇太子が皇位継承をすることになっているが、皇室外交によって平和主義の礎を築くのに奔走したのも河井道らであった。吉田茂、田中耕太郎、天野貞祐、務台理作、白洲次郎らを相手取ってどんな議論を展開したのだろう。時には相手がマッカーサーだったときもあったとか。そんなこんなで、今日の教育基本法(改正されたが)の成立にもかかわっていたのが、河井道である。

★そういったことを前面に出すことは恵泉の先生方はしないが、秘めたる想いはみな共有している。クエーカー教は、プロテスタンティズム的近代的自由が生み出すリスク世界をはじめから警戒していた。それは新渡戸稲造も内村鑑三も同じだった。

★恵泉という花園からやってくるそよ風は、ふと気づくと時代の魂をゆさぶっている。2020年以降の教育いや社会にどんな覚醒を起こすのだろう。実に楽しみであるまいか。

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