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2019年1月18日 (金)

【2019年度首都圏中学入試(20)】 桐蔭学園 炎を伝える教師力と生徒力と同窓力

★昨日、桐蔭学園の平岩理事長、岡田校長をはじめ多くの先生方、同窓生、関係者の方々のお話を拝聴する機会を得た。溝上教授も同席していた。その教師力、同窓力に圧倒されたが、ラグビー、野球、柔道、模擬国連など数々の領域で活躍する生徒力に炎のように力強く温かい何かを感じた。

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★岡田校長は、グスタフ・マーラーの言葉を引用して、今の桐蔭学園の改革のアクティブビジョンを映し出した。「伝統とは火をまもることであって、灰を崇拝することではない」という言葉。英語だと、“Tradition is to pass on the flame, not worship the ash”で、マーラー自身の言葉だと、“Tradition ist Bewahrung des Feuers und nicht Anbetung der Asche”となるようだ。

★ドイツ語でも、炎のことを“Flamme”と呼ぶわけだから、“Feuers”を英語で“flame”と置き換え直しているのは、この作曲家としてのマーラーの心意気を読み取ったということだろうか。いずれにしても、伝統としての火は何か、考えさせられる岡田校長の引用に感動した。

★灰はたしかにもはやそれ以上何かが変わるわけではなく、放っておくとますます風化していくだろう。

★しかし、炎としての火は、エネルギー態であり、その姿は瞬間瞬間変化する。風が吹けば、消えてはなるものかと言わんばかりに、激しく燃える。時代の変化になお一層激しく燃えるのだ。なるほど伝統と進化は表裏一体である。

★そして、同時に炎は温かいのである。光を発するのである。それゆえ、そこに人々は集まるだろう。暖を光を分かち合う。伝統はかくして広がっていく。さらになんと炎は古来から叡智の象徴でもある。


★なぜ炎について、想いを巡らしているのかというと、先生方から、同学園のアクティブラーニング型学びについて熱く語られたからである。

★同学園は、アクティブラーニング型授業、探究、キャリア教育を有機的に結びつけて相乗効果を出すということだ。なるほど小さな火が炎のように大きくなるわけだ。

★その有機的に結びつけるアクティブラーニングという学びであるが、このコアがダウンロード型学びではなくアップロード型の学びで表現を大事にするということだ。

★知識を得るだけではなく、それを活用し、表現するという認知スキルを体得するわけだが、アクティブで炎のような温かさは、認知スキルのトレーニングだけではうまれてこないというのだ。

★やはり、内側から燃える主体性は、自分ひとりでできるのではなく、仲間が何をいっても温かく受け入れる雰囲気ができているから燃えるのだと。だから、心理的安全性を高める相互リスペクトという意味での承認を形成しているのだ。

★4年前に、アクティブラーニングを導入したわけであるが、いきなりディスカッションしようとしてもなかなか活性化しない場合もあったし、プレゼンしようとしてもうまくいかない場合もあったという。今では、信じられないが、そこから出発したということだ。

★そこで、その課題をクリアするために、毎回ホームルームで1分間スピーチを行い、クラスのメンバー全員が、そのスピーカーにエールをおくるメッセージを寄せるという。そのメッセージカードの束を、生徒たちは、それはもう大切にしているということだ。


★また、シアター・ラーニングも行い、表情、ボディーランゲージ、筋肉、脳神経系など繊細で大胆な身体表現を創り出していく体験もしているという。心と体と知性が1つにつながって、オーディエンスの心にメッセージが響いたときの体験そしてその感動は自信になるというのである。

★アクティブラーニングというのは、一回一回の授業の短期的な成果を創り出す場であると同時に、実は6年間、そしてその後に続く長期的な成果への過程としてカリキュラムマネージメントしているのが桐蔭学園の学びのデザインなのだろう。カリキュラムマネジメントをする教師力とその層の厚さに、同学園の組織力の強さも感じた。

★そして、岡田校長は、文武両道を文武一道ともいうべき発想に読み替えているのだが、それは、両者を学びという側面から見てのことだ。まさに伝統と進化を新しい炎として守るために、教師力、同窓力、生徒力はさらに強く燃えているのだ。

★ちなみに岡田校長は、この強さというのは、強硬な強さではなく、しなやかな強さだとここでも読み替えている。大胆な改革は、実は1つひとつの言葉を丁寧に日々紡ぎ直していく過程が生み出すということだろうか。今後の桐蔭グループのインパクトが楽しみでならない。

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