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2019年1月10日 (木)

【2019年度首都圏中学入試(09)】 かえつ有明 アップデート 内生的勢い増す

★かえつ有明は帰国生に圧倒的に人気。しかし、その理由が、他の帰国生入試を行っている学校とは違う。

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★上記の表を見てもわかる通り、これだけの人数を集めている学校が、前年対比120%以上というのは、まだまだのびしろがあるということだろう。前年対比120%以上の学校だけ抽出してみよう。

開智日本橋学園 帰国生
広尾学園 国際生/本科/インター/医 
都市大等々力 帰国生 
立教池袋 帰国児童 
かえつ有明 帰国生
共立女子 海外帰国生 
海城 帰国生 
聖光学院 帰国生 

★こう並べると、開智日本橋は、IBというパッケージが人気の理由だし、広尾学園はインタークラスという帰国生にとって特別なクラスが用意されている。

★都市大等々力は、広尾学園と類似した教育を行い、かつ大学合格実績がぐんぐん伸びている。ある意味、攻玉社志望だった帰国生が、現地での生活を維持ししながら、大学合格に向けてのサポートを受けらるという点で、等々力にシフトする傾向があるだろう。

★立教池袋と海城と聖光学院は、ある意味似た理由がある。それは男子校で御三家に迫る勢いの学校で、グローバル教育に力を入れているのは他にないのである。これに続くのが、学習院、攻玉社だろう。

★聖学院のように、外から見たとき、特に東南アジアからみたとき、世界課題を解決する未来のリーダーが育つと理解できる慧眼の持ち主が志望する学校も男子校には例外的に存在する。

★共立女子は、大規模女子校でありながら、全員がグローバル教育の恩恵に浴することができ、そのスケールメリットは、認知的多様性を生徒が自ら生み出す環境になっているので、そこが大妻と決定的差異となって、やがて、頌栄や洗足を抜いて、人気を独り占めするだろう。

★ともあれ、前年対比120%以上の理由は各学校様々であるが、上記で紹介した理由と全く違うのがかえつ有明なのである。

★かえつ有明の独自のそれでいて欧米やアジアを貫く普遍的な教育を生みだしたのは、もちろん、学内の先生方及び生徒全員だが、そのような対話の安心安全な環境を作ったのは、佐野先生と金井先生である。金井先生は、今は東大大学院で研究しているが、頻繁にかえつ有明に出没しているという。

★この安心安全な環境は、しかしながら、時として居心地の良い予定調和的な世界をつくる。そうしないために、対話を続け、フィードバックをしなければならない。しかし、そのフィードバックが佐野先生と金井先生によってなされている限りでは、油断すれば組織の中に再び防衛機制の見えない壁ができてしまう。

★何度もこの壁を崩す涙ぐましい作業を研修を通して、やってきたのがかえつ有明の先生方であり、ファシリテーターは佐野先生や金井先生だった。

★しかしながら、ここにきて、いろいろな先生方がスペシャルなPBL授業を展開し始めている。アクティブラーニングが基本だけれど、それがPBLに進化し始めている。このPBL手法は、米国から主に持ち込まれている。

★この手法を突き詰めると、実はすごいところに到達する。心理的な安全性が高いだけではなく、高い認知的多様性に到達する。この高い認知的多様性は、高次思考とは共通もしているがまた違うリーダーシップ的な要素も含む。

★いずれまた述べるけれど、そのことに気づいたのは、佐野先生が自らのfacebookでこう述べているのに遭遇したからだ。ちょっと紹介したい。

本日のプロジェクトは田中理紗スペシャル
先日のHTH研修を活用したプロジェクト作り。
三学期丸々使ってのプロジェクトにおけるテーマ・観客・発表・活動のアイデアを広げて、互いにクリティークする。ウォームフィードバック&クールフィードバックが鍵らしい。プロジェクト慣れしている彼らには特にクールフィードバックが。
Have fun!!
★この佐野先生のメッセージは、明らかに今ままでとは違う次元がまたやってきたことを示唆している。154文字のメッセージの中にカタカナと英語が85字入っている。つまり、55%がカタカナや英語なのである。これは珍しく佐野先生がハイテンションになっている証である。

★HTH(ハイテックハイ)というシリコンバレーにあるチャータースクールで行われているPBLをやっているのが楽しくて仕方がないという感じ。そうPBLでは、ウォームフィードバック&クールフィードバックが大切にされている。非認知的能力と認知的能力に対するクリティークを互いに行っていくというコトだが、このクリティークというフランス語的な英語をあえて使っている。たしかにクリティカルという単語より柔らかい感じの語を選択している。

ともあれ、心理的な安心安全な環境をつくり、何をいっても相互に尊重し、受け入れていける関係を創っている。その関係が崩れそうになったときには、互いに我慢しないで指摘することができるのだ。

★しかし、同時に、その指摘が道徳的・規律的ではなく、そう指摘することが創造知を刺激し合う高い認知的多様性がそこに存在する。実にクールだ。多様性を受け入れるからこそクールな受け入れやすい認知的なフィードバックをやりとりできるのであろう。

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★かえつ有明にかかわらず、学校という組織は、結局は、教師と教師、教師と生徒、生徒と生徒の関係が創り出すものである。その関係性が、互いの成長に影響を与えるのだが、レイノルズとルイスの考え方を参照して、私が独断と偏見で少し再構成した座標系をかえつ有明にあてると、今生成的な組織として持続可能になろうとしていることが了解できる。

★よく私立中高一貫校がノーブレス・オブリージュという理念を語るけれど、それはある意味階級的な組織でもある。そこでは、すべての生徒がクリエイティブに成長するわけではない。

★HTHの理念は、どんな子も才能を持っていて、その創造的才能をすべての子が開花することができるといくことだ。それはPBLとおいう五感をフル回転させるチームプレイができる学び方によって支えられるのだと。

★そして、このような信念の根っこが、J.デューイの教育哲学にあると、Jennifer R. Pierattは考えている。米国でPBLを実践する時、実践と理論の両方を教師は学ぶ。Jennifer R. Pierattは、その両側面の支援を教師にしていると同時に、HTHで自らもPBLを実践してもいる。

★彼女は、デューイは、実は実践的なプログラムの提案まではあまりしていないので、そこをHTHや教師をサポートする団体BIEでは研究し実践しているのだと。

★デューイは、米国の政治、経済、教育の改革に大きな影響を与えてきた。100年たった今もその影響力はある。世界に影響を与えているハーバーマスと並ぶ現代哲学者リチャード・ローティ(2007年に亡くなったが)は、デューイを尊敬し、デューイのプログマティズムの思想を現代化しようとしたぐらいだ。

★Jennifer R. Pierattは、そのデューイの思想は、この100年の間、批判されもし賛同されもしてきたが、その有効性をHTHのPBLが証明したことになるだろうと言っている。

★高い認知的多様性を教師も学びながら、生徒とともにPBLを実践していく。日本の教師は、この理論的な部分を軽視しがちで、経験重視になりがち。すると、生成的環境をつくっているつもりでも、いつの間にか、たとえば予定調和的環境になってしまっているというケースも意外と多い。

★かえつ有明は、その点、常に理論と実践の統合を追求してきた。その理論は、それこそ認知的多様性でよいのだ。あるときは、デューイ、またあるときはダライ・ラマ的な技術。

★教育において理論なき実践は横暴であり、実践なき理論は空虚である。そして理論と実践の統合の追究は、新教育ではなく真教育である。かえつ有明は、この真教育の次元を再びアップデートしているのである。

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