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2018年12月 6日 (木)

New Powerの学校あるいは教師(03)桜美林の使命の光

 

★その記事の中にあった「近江八幡」という言葉が、私の想いを遠くへ飛ばした。桜美林創設者の清水安三は、そこであのヴォーリーズに出会った。ヴォーリーズは、当時近江八幡から世界は変わるのだという信念(もちろんキリスト教の布教活動に日本にやってきた)のもと、教育に医療に、そして建築に力を注いでいた。この出会いが、生涯かけて清水の力となった。

★その後清水安三は、米国のオーバリン大学に留学し、日本の共学教育に決定的に影響を与える清水郁子と出会い、結婚。桜美林という命名は、このオーバリン大学に由来していることは有名だ。結婚後、北京で崇貞学園を創設。戦争によって中国に引き渡され、幾度か名前は変遷したが、北京市陳経綸中学として残っていて、現在は桜美林と交流もあるという。

★米国留学時に、日本の男女平等を提唱した平塚らいてうに影響を与えたエレン・ケイの「児童の世紀」に、清水郁子も影響を受けた。その本には、男女共学論も書かれていた。清水郁子の念願の男女共学校はまず北京で実現できたが、敗戦によって清水夫妻は、日本に帰国、再び崇貞学園と同じような共学校を作った。それが桜美林である。

★昨今、共学化がトレンドであるが、戦後教育基本法によって共学が認められるまで、日本では、共学発想はなかったわけである。その突破口を本格的に開いたのが清水郁子であった。もちろん、与謝野晶子や平塚らいてうのような先人の思想があったからこそだろうが。

★そして、ここからは妄想であるが、教育基本法で共学校を認めることを採用させたのは、清水郁子の「男女共学論」の影響があったのではないか。GHQがこの英訳を作成し読んでいたことは事実のようである。ただ、教育基本法を作成した教育刷新委員に郁子の名前はない。桜美林を創設したばかりだから、辞したということらしいが、定かではない。

★しかし、当時軽井沢にヴォーリーズは、事務所を開設していた。多くの私学人に会って、戦後日本の教育について語り、政財界人と交渉を続けていたに違いない。来年退位することになっている天皇皇后の誕生が、同じ時期軽井沢テニスコートによって実現した。

★このとき、吉田茂や田中耕太郎、白洲次郎などが奔走したことは有名であるが、彼らこそ戦後教育基本法推進者である。

★吉田茂も田中耕太郎もカトリックではあるが、クリスチャンであった。ヴォーリーズが接触していないはずがない。教育刷新委員に、桐朋校長の務台理作や恵泉創設者の河井道もいた。私学人であると同時に、河井は新渡戸稲造の弟子である。教育刷新委員の多くが新渡戸稲造と内村鑑三の弟子だった。座長だった南原繁は新渡戸稲造門下、矢内原忠雄は内村鑑三の門下。

★だいたい内村鑑三も、軽井沢にいて、今の星野リゾートの前身の星野温泉旅館の二代目オーナーの星野の善きアドバイザーであった。成功の法則10か条を贈ったのも有名だ。もちろん、それは今の星野リゾートも忘れてはいない。この旅館では、北原白秋や島崎藤村らによって夏期講習が開かれたが、内村鑑三や新渡戸稲造も講演していたに違いない。内村鑑三の末裔は、今も軽井沢にいると聞き及ぶ。

★そんな感じだったからヴォーリーズが清水郁子をGHQに推薦したということは大いにあり得るのである。神戸女学院、フェリス女学院、聖学院、玉川聖学院をはじめ、多くのクリスチャンスクールはヴォーリーズ建築事務所による設計である。脈々と清水安三・郁子とシンクロした精神が継承され広がっている。なるほど、近江から世界は変わるのだ。

★そんなにヴォーリーズと清水夫妻は親交があったのか?清水夫妻が中国で活動できたのは、中国でメンタームの使用する権利をヴォーリーズにもらったからなのだ。教育活動は、お金がかかる。適性資金調達力は私学人のもう一方の能力なのである。

★かくして、今多くの人が意識はしていないだろうが、桜美林は創設当初からNew Power Schoolだったのだ。今新タイプ入試などを開発実施しているのは、当然と言えば当然である。

★しかし、桐蔭の新しい進学校としての改革の旋風は、田園都市線沿線と小田急沿線に拡大し、桜美林にも影響を与えている。迎え撃つ桜美林は、さらに核心的革新を生み出すに違いない。こうして、神奈川エリアと東京エリアの接点でNew Power Schoolが共生的競争をすることは、教育の質アップデートが、一部の学校を超えて広がっていく。

★桜美林の使命の光がクリスマスイルミネーションのように輝くことが期待されている。

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