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2018年12月14日 (金)

新タイプ入試(08) 開成・聖学院 女性セブンで取り上げられる

女性セブン2018年12月20日号の記事≪増加する「思考型入試」 レゴブロックを使用する中学も≫で、中学入試問題が、2020年の大学入試改革に先駆けて変化していることを追った記事が掲載されている。その中で、「開成ショック」についての話題と中学入試で「思考力入試」を日本で初めて実施した聖学院の副校長清水広幸先生へのインタビューも取り上げられている。

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(聖学院がレゴを活用した思考力入試を実施できるのは、ふだんの授業も思考力型授業になったいるからである)

「開成ショック」とは、あの開成がこんな新タイプ入試問題を出題したのかあ!と業界が驚いたという話。同じ行為に対する2タイプのシナリオ結果をデータで示し、そのデータをどう読みとり、どう両者の差異を記述できるかという思考力型問題だった。

★開成は、最近東大だけではなく、海外の世界大学ランキング100位以内の大学進学者も多数輩出し、やがては英語入試も考えようかなどとメディアにリリースしているぐいらいで、「開成ショック」は広範囲に広がっている。

★なぜ御三家トップ校と呼ばれている開成が、このような動きをしているのか?それは日本の国力がこのままいけば、半減する軌跡をたどるデータがでているからだ。ユートピアかデストピアか?2タイプのシナリオを考えても、このままでいけば、国力衰退を救うAIテクノロジーと技術のイノベーションを起こす高度人材が約60万人は不足する局面が2030年にやってくる。そう経産省は計算している。

★この高度人材は、創造的思考力を発揮できることが重要であるが、その思考力を育てる環境は90%の学校で作られていない。それは今までの学習指導要領が、知識・理解という基礎学力を身につけることに終始して組み立てられていたからだ。

★だから、学習指導要領にあってもなくても創造的思考力を養おうと思えば実施可能な自由度のある私立学校が先に動き出すのは論理的必然である。

★そして、そのファーストペンギンだったのが聖学院である。同誌の記事を少し引用しよう。

≪各校がさまざまな試みをするなかでもユニークなのは、東京都北区にある聖学院中学校が出題する「レゴブロックを使う思考力問題」だ。
問題例は以下の通り。
 まず、ある国の年間降水量とお米の生産量などのグラフを提示し、その国の抱える課題を読み取らせてから、次のように命じる。
「その解決策をレゴで表現しなさい。また、出来上がった作品について150字程度で説明をしなさい」≫


★グラフおいうデータをみて考えていくという過程は、開成と共通しているが、記述の前にレゴブロックで表現するという第二の脳と呼ばれている手を使って表現するところは違う。これは同校の授業が、学際的なSTEAMをベースにしたPBL型授業を実施しているからともいえる。これについて、清水副校長の言葉を引用する。

≪ 「よく誤解されますが、レゴの上手な子が合格するわけでは決してありません。私たちが求めているのは、レゴのなかに自分で考えた解決策のメッセージを込め、それを文章で表現する能力です。暗記した正解を限られた時間のなかで紙の上に書く力ではなく、与えられた課題を読み取り、社会や歴史を理解し、自然や数学的観点から考える総合的な能力を身につけてほしいのです」

「思考力のある子供たちは勉強や学校生活に“やらされ感”がないのです。自ら課題を持って勉強したいと望んでいるので、入学後にさらに学力が伸びます。かつ学校生活にも前向きで、リーダーシップを取ってみんなをまとめる子が多いです」≫


★この清水副校長の言葉の中に、創造的才能を豊かにする秘密がある。それは、言語化と図式化とアート化が、循環しながら思考を紡いでいくというプロセスと自ら課題を持って立ち臨むというGrowth Mindsetがなされるということ。聖学院では普段の授業からそうなっている。

★このような清水先生の考え方は、実は、今まで見えるカリキュラムと見えないカリキュラムなどという言葉で表現されてきたこともあったが、その見えないカリキュラムの見える化を見事に行ったという日本の教育改革へインパクトのある影響を与えることになる。

★というのは、今年のノーベル経済学賞受賞者の1人ポール・ローマー氏の内生的経済成長論がようやく世界で評価を得る時代がやってきたからだ。

★内生的成長論は、人口論的経済成長が望めない場合、機械や技術のイノベーションだけではなく、いよいよ人材育成イノベーションをやる必要があるという考え方である。基礎学力を身につけるだけではなく、基礎研究視点を生み出す創造的才能者がいかにしたら育つのかをその仕組みをイノベーションしようと言うわけである。

★女性セブンが、どこまで見通して、開成と聖学院を取り扱ったのかはわからないが、この創造的才能者が生まれる人材育成イノベーションを起こすと、今までの偏差値優秀生を乗り越えrてしまう人材が輩出されるということなのだ。

★このことは、開成の校長柳沢先生がご自身の著書で述べている。自分より誰が成績が良いかというような水平比較をするのではなく、自分自身がどのように成長していくのか自分軸にそって自分を自己変容させていく垂直比較にシフトするのだと。この垂直比較を実践して、生徒の内生的成長を、学内中がコラボして行っているのが、実は開成の隣接エリアにある聖学院なのである。

★同誌の最後を、教育ジャーナリストおおたとしまさ氏は、こう締めくくっている。


「思考力型入試に合格するような個性豊かな子供たちが、従来のペーパーテストを得意とする子らと1つの教室でともに過ごせば、違う能力を持つ者が入り交じることで相乗効果が発揮されて、集団で学びの効果が高まります。学校側としても願ったりかなったりですし、受験する側も自分に合った学校を選べるというメリットがあります」



★相乗効果を起こす。つまり、思考力型入試を合格してきた生徒は、その学校のみならず、日本の教育を変えるビッグバーンを起こすということなのである。


★いずれにしても開成と聖学院の動向は、今後も目が離せない。
 

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