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2018年11月11日 (日)

大学入試の新テスト 国語の記述問題の作問・採点の苦労それとも徒労?

★今月10日(土)、11日(日)と、センター試験に代わって2020年度に始まる大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)が行われている。毎日新聞 11/10(土) 19:11配信「<大学入試>新テスト センター試験から大きく様変わり」によると、「全国の大学など528会場で始まり、高校2、3年生約8万4000人が新たに記述式が導入される国語と数学1・Aなどの問題に取り組んだ」ということだ。

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★とくに国語の記述の問題に関しては、産経新聞 11/10(土) 19:50配信<「問題文が長い」新形式の共通テストに戸惑いも>によると、<「時間配分が難しい」「問題文が長い」-。「大学入学共通テスト」の試行調査が行われた10日、参加した高校生からは、新形式の出題に戸惑う声が多数聞かれた>ということだ。

★時間が足りないとかいう時間問題は、対策できそうだが、「設問が全体的にまわりくどく、問われている内容が分からない設問もあった」という女子生徒の指摘はなかなか鋭い。

★なぜこうなるかは、2020年度に実際に実施する場合は、試行調査の4倍は受験するから、採点処理ができるように、書くべきポイントを明快にして、そのポイントにマッチングしているかどうかで採点できるようにしているからだ。

★まわりくどく感じるのは、そのポイントがいちいち列挙されているからだ。
★しかし、これは論述も、条件を明示するという意味では、今までのような何を書くべきかは暗黙の了解で、そこは受験テクニックの奥義みたいな話になっていたことを思えば、透明性があるともいえる。

★それに記述の問1では、「置き換え」「レトリック」「文脈から推論」という思考スキルを活用することを狙っていることがわかり、考える「スキル」をトレーニングしてくるようにというメッセージが明快だ。ただし、公表されている問題のねらいにはこうある。

「テクスト(文章Ⅰ)に示され た事項について,文脈との関連 において的確に説明する」


★「事項」「文脈」「関連」「的確」「説明」から、受験生は「置き換え」「文脈から推論」という思考スキルは普段から訓練されるはずというメッセージが込められているのは、見当がつくが、問われている「魔法のような力を発揮する」というレトリックの読み方・置き換えをどうするのかは、公表されているねらいでは扱われていない。

★おそらく隠喩や提喩、換喩ではなく、直喩だから推論できるだろうとスルーされている。いわゆる上位校の生徒は、中学入試の段階で、このスキルはトレーニングされるから、それでよいが、そのような生徒の数は、全体の3%くらいなのである。

★ここまで、問題のねらいが精緻化されているのに、最も重要なスキル「レトリック」をスルーするというコトが、実は本当の問題かもしれない。

★それはともあれ、続く問2は、ほとんど書きぬき問題だから、正答率は50%以上だろう。問1も次の段落を読めば書きぬき同然であると考えられていたのだろうが、レトリックの要素を条件に入れていないから、問2よりは難しくなるだろう。

★産経新聞の同記事で、<都立杉並高(杉並区)の男子生徒(17)は「(記述式など)自分で答えを導かなくてはならない問題が難しかった」。別の男子生徒(16)は「(国語で)複数の文章を読む問題に苦戦した」と漏らした>とあるが、この反応は、問3で、たぶんあまりやってはいけない操作がはいっているからだ。

★この問題、文章1と文章2を読んだだけでも、新たな資料を加味した場合でも、実はどちらの場合でも、解答は同じになる。しかし、資料を加味しなければ、問題のねらい「テクスト(資料)の内容につ いて,複数のテクストを比較し, 別の事柄を用いた例示とその理由について考え,的確に説明する」の中の「~考え、的確に説明する」問題にならないのだ。

★文章1と文章2だけを読んだ場合、考える必要がなくて、結局書いてある箇所を書きぬいて活用すればよいだけなのだ。だから、受験生の自分の考えは必要ない問題。ただ、新たな資料をみた「まことさん」はどう考えたかと問われれば、推理せざるを得ない。

★まことさんは、この新たな資料と文章2に書いてあることを結び付けてこう書いただろうと受験生は考えるのである。

★これは自分の考えを交える論述ではなく、書きぬく箇所を特定し解答欄に合うように書き換えるだけの問題なのに、まことさんはその箇所をこう扱っただろうと考えるスタイルで物語らねばならない。フェイクではないが、トリックが埋め込まれているわけだ。

★そのトリックを明快には見破れなかったが、なんかおかしいと先述の男子生徒は反応したのである。50万人くらい受験する記述や論述の作問と採点の苦労?がにじみでている。

★しかし、だったら、選択式でよいではないかと言われるかもしれない。そうではない。選択式問題は、もっとひどい。文章理解というより、選択のテクニックを学ぶことが主眼だからだ。読解しながら思考スキルをトレーニングするというより、選択式問題解法のスキルをトレーニングするということなのだ。いやいや文章を読む思考スキルが前提だよと言われるかもしれにが、その思考スキルも、選択式解法スキルに合わせることになる。本来、思考スキル>解法スキルなのに、思考スキル=解法スキルになってしまうのだ。

★すなわち、記述や論述の問題は、自由度の高い柔軟な思考スキルを学ぶことが授業の前提になるが、選択式問題解法スキルは、最適な思考スキルのパターンを身につけるだけで、未知のものに対する柔軟思考ができるスキルを学ぶことではない。この差異は、極めて重要である。ジャーナリストは、ここをちゃんと見破らないと。

★見た目や問いの難度だけで、批判することは批判することではない。それでは、良質のいちゃんもんに過ぎない。

★毎日新聞11/10(土) 19:14配信 「<大学入試>新テスト 国語の記述式問題は5段階評価に」によると、「国語の記述式は3問出され、それぞれ字数制限や指示通りの文章になっているかなど複数の正答条件をいくつ満たしたかによって、a~dの4段階で評価する。さらに3問それぞれの評価をセンターが作成した段階表に当てはめ、トータルでA~Eの5段階の成績に分ける仕組みにする」ということだ。

★また「国語の記述式の採点は、通信教育大手「ベネッセコーポレーション」が行う。電子データ化した答案を2人が読み、正答条件に合致するか判断し、評価が一致すれば採点結果として登録する。一致しなければ採点者の指導も担当する「採点リーダー」が採点し、それでも一致しなければ「統括採点リーダー」が判断する。今回は2000人で8万人分を採点する」ということだ。

★ということは、2020年の本番では、採点者が10,000人が必要だというから、これだけで、10億円ぐらいはかかるだろう。まっ、10%消費税というコトでもあり、なんら問題ないというコトだろう。ベネッセも10億円ぐらいはたいした売り上げではないと考えているだろう。

★SGDsのグローバルゴールズ達成を考えれば、税金の使いみちは、もっと考えたほうが良いとは思う。ぶっちゃけ、大学入学共通テストやらなくても、各大学の独自入試と高校がしっかり授業やれば、シンプルにことは成就するのに。そこを棚に上げて、教育改革に異論反論オブジェクションは、考えものではある。

★知識を暗記するコトよりも論理的思考や創造的思考が大事だと言いながら、結局知識理解ベースの大学入学共通テストに膨大なエネルギーを費やしている。歴史を振り返れば、極めて理不尽で不合理な政策であると検証されるだろうに。

★それはともかく、その「トータルでA~Eの5段階の成績に分ける仕組み」は、IBのルーブリックや首都圏模試センターの「思考コード」(メタルーブリック)をよく研究して作られていることに対しては、敬意を表したい。

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★このようなルーブリック的な発想をこのような公テストで実施すれば、現場もそうなるから、まあいいのかもしれないが、生徒に「主体的・対話的で深い学び」を要求しておきながら、学校現場は、お上が変わらなければ、現場も変わらないよと言っているようでは、なんかおかしいと思わないでもないが、実際には、自ら授業を学校を教育を世界を変えようとしている現場の先生方の挑戦する多くの姿を知っているがゆえに、まだまだ活路はあると希望を持ってしまう今日この頃ではある。

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