かえつ有明 学問に裏付けられた授業広がる
★帰国生の英語の授業の中に哲学授業があるが、ふだんのサイエンス科やプロジェクト科の学びも、哲学授業と同様の洞察力と創造的思考を生徒が自ら開いていく学びの空間が創意工夫されている。
★このような各教科多様な共感体験ができるアクティブラーニングスタイルの授業ができるのは、実はその背景に学問的な理論を先生方が学んでいるからだ。生徒に探究のおもしろさ、開放的精神、批判的思考を求めるのだから、先生自身も自らもその学びを体験し、独りよがりにならないように学問的な検証・研鑽を日々追究しているのである。
★ピーター・センゲの「学習する組織」でいう、プロセスを重視し、対話を通じ共感を得る学びを行うというビジョンがまず共有されている。同校の先生方は、アクティブラーニング入試が象徴的なように、チームワークが得意だ。また、それぞれに学問的な体系を研究し、それらをうまくつなげていくシステム思考が土壌にある。
★チームワークを展開できるのは、メンバー1人ひとりの深層にあるメンタルモデルを言語化し、互いに受け入れる対話を大切にしているからだ。
★そのうえで、先生方1人ひとりが自己マスタリーよろしく日々探究の道を歩んでいるのだ。
★互いのメンタルモデルを受け入れるには、U理論やスパイダー討論の手法を取り入れている。しかもこれらの多様な理論は、授業に具体的に埋め込まれるから、生徒も共有できるようになっている。
★もちろん、そのとき行われる対話は、NVC手法で、安心安全な心的関係がつくられている。
★だから、抽象的な知のコードを具体化したルーブリックを使いながらリフレクションという共内省も日々行われているわけだ。
★今回上記写真の大木先生の変容型シナリオプランニングは、実際に南アフリカの、私たちにとっては想像をはるかに超える困難な政治経済問題を解決する対話法をプロジェクト科の生徒と共有したようだ。
★大木先生は、国語の教師で、アクティブラーニングや思考力入試作成を得意とする。シナリオプランニングは、数学的思考やアート思考というより、物語思考と親和性が強い。
★なるほど大木先生だなあと妙に納得。単線シナリオを未来に創発して、それをみんなでどう現実化していくかという適応型シナリオプランニングではなく、物語はその場その場で、周りとの関係で変容していく。
★その柔軟性が自分を社会を、つまり世界観というパラダイムを変えることにつながる。
★総合学習や探究という教科は、外に出て活動することが中心になる。つまり、シナリオプランニングのアウターゲームを繰り広げていくわけだ。
★探究とかアクティブラーニングとかプロジェクト学習とかいうと、ほとんどがアウターゲームを繰り広げ、派手にぶち上げる。もちろん、それも大事だが、授業というインナーゲームの展開こそ、自分のアイデンティティの物語を紡ぐ内省的な時間なのだ。もちろん、独白ではなく、インナーゲームで重要なのは、やはり対話である。
★それから、このアダム・カヘンの「社会変革のシナリオ・プランニング――対立を乗り越え、ともに難題を解決する 」を読めばすぐにわかるが、結局このシナリオプランニングを描くときに使う思考スキルは拡散、収束、統合、創発、逆説、矛盾といった思考スキルを使っている。
★思考ツールとして座標系も何度も活用されている。
★読解や論文を書くときの基礎的な思考スキルが、学問的なシナリオ・プランニングの理論と一貫してつながっている。
★ふだんの教科としての「国語」の授業が、アカデミックな理論と結びついているというのが大木先生の授業の質の高さを示唆しているが、学者は、その架け橋をすることはできない。それは教師にのみ与えられた最高最強の役割である。
★ファシリテーターやコーチはトレーニングを積めば広くだれでもできるが、授業と学問を結びブリッジを生徒と共にかけることは、教師にのみできることなのだ。
★教師よりもファシリテーターだなんて本質を見失った最近のフェイク教育論を見破るクリティカルシンキングを発動する必要があるが、かえつ有明を訪れれば、本来的な教師の道が開かれている。その中に飛び込めば、迷っている先生も、自ずと道は開けるだろう。
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