聖ドミニコ学園 2025年の大学入試問題を見据えて
★その影響もあって、聖ドミニコ学園の21世紀型教育へのアップデートは一気呵成に進み、今年21世紀型教育機構に加盟し、その意志を学内で共有し実現する構えもできた。
★新しいコースやPBL授業開発に向けて、プロジェクトチームがそれぞれ発足して、先生方は日々格闘している。それにしても、動き始めたら速い。たしかに、石川一郎先生は、3年前に香里ヌヴェール学院とアサンプション国際というカトリック2校の21世紀型教育改革チームに加わり、見事に成功に導いた実績はある。
★そのときも準備は1年くらいの俊足だった。ある意味奇跡である。その奇跡が今度は女子校で起ころうとしている。昨今女子校改革は難しく、多くは共学化している。そんなご時世に、女子校で成功の道を邁進するというのだ。
★しかしながら、この点に関して、確信を持っているのは、もちろん石川先生であるが、何より理事会が21世紀型教育のマインドセットをしている。というのも、今年9月に発行された聖ドミニコ学園同窓会会報巻頭言で、同学園前理事長のメール・マリア・ベネディクタ武田教子先生が、巻頭言でこう語っている。
「聖ドミニコ学園が開校以来追究してきた教育は、実はまことに現代的なのだという最近の私の発見を皆さまと分かち合いたいと思います。というより、「教育の本質は変わらない」ということでしょうか。最近「21世紀型教育」という言葉を耳にします。それが13世紀に聖ドミニコが追究したやり方と実に重なるのです。いや、むしろギリシャ時代の哲学者達がいったこととも重なり、本物の教育を追究していくとき、具体的な形は時代により、場所によって変わっても、本質は同じだという発見です。」
★13世紀にヨーロッパカトリック社会を改革した聖ドミニコのやり方と21世紀型教育は、その本質において同じなのだと。その聖ドミニコのやり方については、武田先生はこう語る。
「ドミニコは、大切なのは『権威を持って』教えるのではなく、『真理を伝える』ことであると確信のもとに、相手と『対話』し、相手との接点を見つけ、相手を理解し、真理の確信を自分のものにしてくれることを目指しました。」
★つまり、これはPBLという新しい21世紀型教育のやり方と同じなのだということを示唆している。というよりも、この聖ドミニコ会が13世紀以降のヨーロッパの学問体系を形作ったわけである。パリ大学を拠点に、ドミニコ会士らは、対話と討論と書籍と科学を生み出し、マックス・ウェーバーが語るように、のちにプロテスタンティズムがグローバル資本主義を生んだその種を、修道会の中で醸成した。
★キリスト教は、実に興味深いことにイエスキリストの愛と裏切り者ユダを生む物語を種に包含している。大天使と堕天使が必ず登場する。
★現在の創造的破壊というイノベーションの重要性を発見した偉大なる経済学者シュンペーターは、すでに中世にドミコ会士聖トマス・アクィナスが出現し、市場の原理や適正価格の決定の理論を生み出した。その経済はのちのヨーロッパの自由都市に大きな影響を与える。そこからプロテスタンティズムが生まれるわけだが、決定的なのは、アクイナスが利息を限定的に認める理論を「神学大全」でつくったことなのだ。
★もちろん、この限定付きという真理としての配分の正義が重要だったのだが、近世・近代はこの配分の正義を捨て去り、交換の正義だけを都合よく活用した。それが生産と消費の市場の交換システムになる。
★それが、今になって、再び配分の正義を復活しようというのである。そのすさまじい最先端技術がブロックチェーンである。「権威」なき配分の正義が作動するシステムなのだ。AI社会において、実現されようとしている社会は、聖書の中には、葡萄の樹のメタファーとして語られている。
★また、2030年までに、SGDsというグローバルゴールズを達成しようという話は、ドミコ会が中世時代に改革したシステムの一部を都合よく使ってきた近代の道を、全部活用するように軌道修正するコトでもある。
★石川一郎先生が日本全体のカトリック学校でやりたいことは、このカトリックの中にもともとあった改革精神の復権なのである。
★その改革チームのリーダー高橋博先生(聖パウロ学園理事長、聖母女学院理事、アサンプション国際副理事長)は、修道会や教会で、その復権をするのは今や難しくなっている。したがって、それを引き受けるのはカトリック学校だよといつも語っている。石川先生は高橋先生と連携しながら、カトリック学校の使命を布教しているわけである。
★そのような歴史的理由や今のカトリック学校の置かれた状況などがからみあわさって、最適な改革が生まれてきている。
(同窓会会報から)
★そういう動きを、聖ドミコ学園の同窓会も応援しているわけである。女子校と言えども、開成や麻布レベルの同窓力の強さを持っているのが、同学園の強さでもある。小学校までは男女共学校なので、同窓会は、男女共学で、女子中高一貫校とは駆動力に違いがあるのも同学園の特徴である。何と言っても父親の会の後援会のパワーもすさまじい。父親の中には、娘が卒業しても、長くかかわっている方もたくさんいる。
★女子校なのに、父親もすっかり同窓生になった気分でいるのだ。同窓会よりも広いドミニコファミリーというコンセプトがあるからなのだろうが。
★一学年80名のスモールサイズの学園。高3になるまでに、転勤で在校生の数は少なくなっていくにもかかわらず、大学合格実績はなかなかのもの。
★そういうことをPRすることのない学園だけに、知る人ぞ知る学園であった。しかし、2040年に向けて、子供たちの待ち受ける未来は決してバラ色ではない。
★戦後、日本の子供たちの悲惨な姿は、あの「火垂るの墓」で多くの方が刻印されているだろうが、焼け野原の現実はもっとすさまじかった。その子供たちを救うべく立ち上がった一つのコミュニティが女子ドミニコ修道会だった。つまり今の聖ドミニコ学園である。
★2040年をそんな日本にしてよいわけがない。聖ドミニコ学園は再び教育活動を開始したのである。
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